« 前原外務大臣辞任、呆れた | トップページ | メア氏講義メモ私訳 »

2011.03.08

フィナンシャルタイムズの日本政局評価もトホホ

 前原外務大臣辞任を世界がどう見ているか。それほど気にしてないかもしれない。が、フィナンシャルタイムズは社説を出していた。見方によってではあるが、すごい冒頭だった。「Japan resigned to political drift(流浪するしかない日本)」(参照


Woops. There goes another Japanese minister. In less than 18 months, the Democratic Party of Japan is already on its second prime minister and third finance minister. Now, with the resignation of Seiji Maehara over a minor funding scandal, it is looking for its third foreign minister. It is a sorry testament to the thin layer of talent within the DPJ that pundits are struggling to come up with a credible name.

うへぇ。また日本の大臣が辞めちまったぜ。18か月にもならないのに日本の民主党は、二人目の総理大臣に三人目の財務大臣。現状、たいしたことない資金スキャンダルで前原誠司が辞任しちゃったから三人目の外務大臣を募っている状態だ。日本民主党の人材が薄っぺらなのは、政治通ですらまともな人選に苦闘する残念の証である。


 うへぇ。民主党の上に輝く金文字、「残念の証」。
 しかし、フィナンシャルタイムズはどちらかというと日本を称賛している。ここまで残念な政治でありながら国民生活が維持されている秘密を見抜いている。これだよ。

This, remember, from the party that promised to put politicians in charge and cut bureaucrats down to size. The sad fact is that rudderless politicians are more than ever relying on a professional – albeit overly conservative – bureaucracy. If Japan were not blessed with a cadre of well-trained mandarins it really would be in trouble. Its policies, both internal and external, could lurch dangerously from pillar to post.

思い出してごらんなさいな、これがさ、政治主導と官僚制縮小を公約した政党だったことを。悲しい事実を述べれば、舵取り不能な政治家たちは、保守的すぎるにせよ、プロの官僚にいっそう依存することになっているのだ。不運にも日本に熟練した官吏の中核がなければ、日本は本当に困難に陥っていだろう。内政であれば外交であれ、危険なたらい回しになりえた。

Thankfully, even though politicians come and go with metronomic regularity, the thrust of policy stays more or less consistent.

ありがたいことに、政治家がメトロノームの振り子のようにきちんと行ったり来たりしても、政治の推進力はなんとか一貫性をもっている。


 どうでもいいけど、フィナンシャルタイムズの社説は、いやはやの名文。英語で読んだときはなんとなく意味を取っていたのだけど、試訳するとなると、意味だけじゃない、詩的な隠喩がうまく訳せないものだね。
 ご指摘を受けるまでもなく、日本の官僚制度がエジプトの軍部なみに巧妙なクーデーターを実施したとしても、むしろそのおかげで日本が維持されているのは、悲しい事実としかいいようがない。
 もっともそれで万事うまく言っているわけではなく、フィナンシャルタイムズの社説はこの先の文脈で、日本を挟んで米国と中国の関係を不安定にしてしまったと嘆いて見せる。そのあたりは、中国贔屓とも見えるフィナンシャルタイムズなんで、適当に聞き流していいのだが、それでも日本の外交が面目丸つぶれという事実はいかんともしがたい。
 前原ボクちゃんよくやってくれたもんだよと、私などは呆れるのだが、フィナンシャルタイムズの社説は奇妙な締めになっている。むしろ、前原さんに期待しているふうなのだ。ほぉ。

Mr Maehara could probably have toughed it out. His offence was to have received a political donation worth $3,000 from a long-time resident of Japan of Korean origin, illegal under Japan’s insular laws. His pre-emptive resignation means there is a slim chance he could yet return as prime minister.

前原氏はなんとか切り抜けたのかもしれない。彼の違反はといえば、韓国系の日本長期滞在者からの3000ドルの政治献金である。日本の島国法では違法なのである。彼の辞任には先見の明があって、僅かであるにせよ首相に返り咲くチャンスとなるかもしれない。


 そんなものかねと思うがオチはきつい。

The question is: by then, will anyone care?

問題はといえば、その時に、誰が気にかけるだろうか?


 前原首相なんてものが出現しても、日本国民も世界も、誰も一顧だにしないだろうということ。
 まあ、それは、そうだろう。

|

« 前原外務大臣辞任、呆れた | トップページ | メア氏講義メモ私訳 »

「時事」カテゴリの記事

コメント

その締め、期待じゃなくて、http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110307/plt1103071135000-n1.htm みたいな話を念頭に置いてるんじゃないですかねぇ

投稿: naruse | 2011.03.08 22:21

 次期首相の器でなかったのでしょう。これまで言動の軽さで二度も自滅し、疑念をもたれても仕方がない行動が多くありました(北朝鮮でよど号メンバーと会う等)。永田メール事件では一人の議員の政治生命を絶ち、今回の外国人献金問題では自己保身のために外交を放り投げる。もし続けていても日本外交に致命傷を与える失態をするに違いありません。そう考えると、外相を退いてくれたのはむしろ歓迎すべきかもしれません(尖閣を仙谷の失態とすると)。

投稿: | 2011.03.09 00:49

残念ながら前原は総理の器、いや政治家の器すらないと思います
彼なりの正義感やら信念は別の所で活かして欲しいですね

投稿: 軟弱若者 | 2011.03.09 16:28

これだけ、東京の中央政権がだめなのに、北海道か沖縄の若者から日本の改革者が出てこないのが残念ですね。

菅内閣が倒れたら、大連立でもない限り、前原首相の芽は無いでしょう。

今後、中央政府の力が弱まる中、霞ヶ関は、ガイドラインを決めるところになって、実際の運営は、自治体に任せるケースが増えると思います。規制仕分けでも、そうしたほうがいい話はたくさんありそうです。

投稿: enneagram | 2011.03.10 11:56

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フィナンシャルタイムズの日本政局評価もトホホ:

» ファイナンシャルタイムズが図星の社説-Woops. There goes another Japanese minister. [godmotherの料理レシピ日記]
 フィナンシャルタイムズの社説にJapanの「J」を見た瞬間、げっ、と思ったら、社説も「Woops」で始まっている。前代未聞だな、こりゃ。今度は何を言われているかと注意深く読んだのは、同日の早朝に「前... [続きを読む]

受信: 2011.03.09 11:57

« 前原外務大臣辞任、呆れた | トップページ | メア氏講義メモ私訳 »