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2010.12.04

日本のヤクザについてフィナンシャルタイムズが語ったこと

 先月18日指定暴力団山口組ナンバー2弘道会会長・高山清司容疑者(63)が恐喝容疑で逮捕された。京都市土木建築業の男性からみかじめ料4千万円を脅し取った容疑である。そして今月1日同ナンバー3宅見組組長・入江禎容疑者(65)が暴力団対策法違反の疑いで逮捕された。ちなみにナンバー1の組長・篠田建市受刑者は銃刀法違反罪懲役6年の服役中で来春出所する予定である。
 山口組がトップ不在に近い状況にされたことから、警察がこの機に山口組を狙っての連続逮捕という印象があると同時に、ヤクザとはいえ警察の行為は遵法であったかについては少し疑問にも思えた。1日付け産経新聞「狙い通りのトップ3不在」(参照)では、陳腐な物語風の記述にそのあたりの微妙なトーンがあった。


 ようやく空が明るくなり始めた1日午前6時32分、大阪府豊中市。閑静な住宅街に構えた自宅で捜査員から令状を示された男は、淡々とした様子で逮捕に応じた。指定暴力団山口組のナンバー3である総本部長、入江禎(ただし)(65)。「逮捕しようと思えば、もっと早くできた」(大阪府警幹部)。時機をうかがい続けてきたターゲットを、大阪府警がついに捕らえた瞬間だった。


 だが高山は異例づくしの状況に、強引ともいえる手法で臨んだ。不満分子とみられた直系組長らを相次いで絶縁。篠田の代理として巨大組織を取り仕切ってきた。


 高山の逮捕後は幹部の間に広がる動揺を収拾。高山に代わって山口組を切り盛りしていくとみられていた。その矢先の逮捕について、冒頭の大阪府警幹部は言う。
 「京都府警が高山を逮捕するのをずっと待っていた。入江を逮捕するなら、実質トップになってからの方がはるかに組織に与えるダメージは大きいやろう」

 ナンバー3の逮捕は可能だったが、ナンバー2実質ナンバー1代理の逮捕は個別の違反ということでもなさそうだ。毎日新聞「山口組:ナンバー2逮捕…弘道会会長、恐喝容疑 京都府警」(参照)はそのあたりの曖昧な部分を説明している。

 府警によると、高山容疑者本人は直接恐喝行為に加わっていないが、05年に京都市内の飲食店で男性と面談していた。また、淡海一家の組員らは男性に「名古屋の頭に持っていく」「名古屋の頭が言うてる」と高山容疑者の存在を示しながら現金を要求したのに、山口組から何ら処分を受けていないとみられることなどから共謀が成立すると判断。上下関係から高山容疑者が指示したと見ている。

 ナンバー2の逮捕については共謀が成立すると判断とのことだが、今後の司法では別の判断が出るかもしれない。
 私はヤクザについてほとんど関心はない。この話題にたまたま関心をもったのは、日本関連の英文ニュースで見かけたからだ。例えば、1日付けウォールストリートジャーナル「Osaka Police Nab Another Yakuza Boss as Crackdown Continues」(参照)がある。訳文も日本版に掲載された(参照)。

 1日午前の入江容疑者の逮捕は、警察の取り締まりが強化されるなか、日本の暴力団にとって新たな打撃となった。山口組の事実上の組長、高山清司容疑者(63)は11月18日に恐喝容疑で京都府警に逮捕されている。同容疑者は2005年に当時の山口組組長に銃刀法違反容疑で実刑判決が下ったことにともない、事実上の組長に昇格した。
 入江容疑者逮捕の背景には、裏社会に生きるマフィアを描いたテレビドラマ「ザ・ソプラノズ」をほうふつとさせる筋書きがあった。事の発端は1997年8月にさかのぼる。宅見組の宅見勝組長が、山口組の二次団体、中野会の組員4人にホテルで射殺された。その後、入江容疑者が組長の座を引き継いだ宅見組は、1999年9月に組員1人が中野会の幹部を射殺する報復殺人を起こした。

 ドラマ的に描いているが、欧米からは、特にその日本在の特派員からは、日本のヤクザが異文化的で面白い話題というのもあるだろう。
 日本経済の文脈でも見ている印象もある。ガーディアン11月18日「Yakuza chief arrested in Japan」(参照)ではこう触れていた。

Aside from gambling, loan sharking, protection rackets and prostitution, the yakuza have added stock market manipulation and front companies to their myriad illegal activities.

ギャンブル、貸付金搾取、ショバ代、および売春以外にも、ヤクザは株式市場を操作したり、トンネル会社を通じて多数の違法行為をする。


 11月22日付けだが経済紙フィナンシャルタイムズも社説「Yakuza crackdown signals change」(参照)で扱っていた。これがなかなか興味深い話だった。

For too long the police – and public opinion in general – have been overly indulgent towards the tattooed gang members. Yakuza have been tolerated partly because some Japanese cling to romantic myths about them:

長年にわたり、日本の警察や日本の世論も、入れ墨のあるギャングについて寛大であった。ヤクザが許容されてきたのは、日本人にとってロマンティックな執着があるからだ。


 そうか? 疑問に思わないでもないが、以前フィナンシャルタイムズのデイビッド・ピリング氏が宮崎学氏にインタビューした日本ヤクザの記事「Lunch with the FT: Manabu Miyazaki」(参照)をふと思い出した。

ヤクザのイメージは変ってきているとしても、昔の京都と江戸を結ぶハイウェー(東海道)にルーツを持つロマンチックなイメージや、名誉を重んじる行動基準や一般市民に迷惑をかけないという誓約が、一般大衆の心情の中では特別な位置を占めていることも確かである

 フィナンシャルタイムズ社説に戻る。

These codes are often more honoured in the breach. However, it is true that Japan remains a much safer society than most. The institutionalisation of crime – in the form of an estimated 83,000 registered gang members belonging to more than 20 crime syndicates – may play a role in that. That makes dismantling the system all the more tricky.

ヤクザの掟は尊重されるよりも破られることが多い。だが、日本の社会は他の国の社会より安全だ。犯罪の制度化はそれなりの役割を担っているのだろう。日本のヤクザは20個もの犯罪組織で8万3千人も擁している。ゆえにヤクザを擁するシステムの解体は難題になる。


 先のピリング氏の話では、日本のヤクザ人口を10万人とし、イタリア系アメリカ人マフィアの25倍としていた。国際的に見ると日本社会は確かに異常なまでにヤクザを抱えているし、であればそれが社会制度の一環として見るほかはないだろう。いつだったか、私が冗談混じりでヤクザは警察の民営化と書いたら、罵倒コメントを脊髄反射的に書いた人がいたが、しかし、対外的にはそう見えないでもない。

Gangs maintain a web of links with supposedly more respectable elements of society. Yakuza, for example, have a symbiotic relationship with the police, with whom they have traditionally shared the spoils from the country’s red-light districts. Gang members overlap with the nationalist groups whose menacing black vans have the run of cities. And yakuza are deeply involved in “legitimate” businesses. Even western investment banks employ experts to vet deals for unacceptable levels of gang involvement.

ギャングは尊重されるべき社会要素とより多くのつながりを持っている。例えば、ヤクザは、日本の売春指定域での上がりを分け合ってきた警察と共生的な関係を持っている。ギャングのメンバーは居丈高な黒塗りの街宣車を持つ国粋主義者とも重なっているし、合法ビジネスにも深く関わっている。欧風の外資銀行ですら、取引にあたりギャング関与の許容範囲のレベルを調べる専門家を雇っている。


 ヤクザ対応の専門家といえば昨今の週刊新潮ネタが連想されないでもないし、そう不思議なことでもない。
 とはいえなぜここに来て、警察がこの動向に出たのか。民主党政権と関係があるのか。フィナンシャルタイムズはこう見ている。

As the excesses of the bubble years fade, society is less willing to allow the yakuza a cut of diminishing spoils.

バブルの時代が終わり、社会は少なくなった上がりの分け前を許容しづらくなっている。


 警察としてもヤクザに回すカネがないんだよ、ということかもしれない。ヤクザを日本社会から無くすのが善であるというなら、その事態に警察を追い込んだのは、民主党政権の結果的な功績と言えないこともない。


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2010.12.02

ウィキリークスに見る米国の中東戦略、あるいは、けなげなニューヨークタイムズ

 ウィキリークスで暴露される公電も現状特に驚愕すべき内容はない。もともとこの秘密情報とやらも、実際のところは50万人以上もの米連邦政府職員によって共有という名のもとにだだ漏れに近い状態であった(参照)。端からその程度のものなのかもしれない。また、実際の情報を検証すると、隠されていた事実というよりは誤認といった類(参照)もあり、誤認情報をことさらに流せば別の種類の情報操作にもなりかねない。
 まあ、それはそれとして、まったりと眺めて見るなかで、普通に興味深いのは米国の中東戦略だろう。
 日本でも多少報じられている。ブルームバーグ「サウジ国王がイラン攻撃主張、内部告発ウェブで判明-NYT」(参照)より。


 NYTによれば、サウジアラビアのアブドラ国王はイランへの攻撃を頻繁に要求。時間はまだあるとしながらも、米国に「息の根を止める」よう訴えた。(中略)
 オバマ政権は28日、在外大使館から米本国への報告は「率直で、しばしば不完全な情報であり」、政策を表したものではないとの声明を発表した。

 アブドラ国王がイランへの攻撃を米国に要求していたのは「頻繁」となるのだが、それでも中心的な日時はあるだろうし、なによりそれが米国のどの政権だったかは、事態を読み解く上で重要だろう。いつであったか。
 該当のウィキリークス(参照)を見ると"2008-04-20 08:08"とある。対応する内容は以下だろう。

The King was particularly adamant on this point, and it was echoed by the senior princes as well. Al-Jubeir recalled the King's frequent exhortations to the US to attack Iran and so put an end to its nuclear weapons program. "He told you to cut off the head of the snake," he recalled to the Charge', adding that working with the US to roll back Iranian influence in Iraq is a strategic priority for the King and his government.

アブドラ王は特にこの点に確信をもち、年長の王子も繰り返し述べた。アル・ジュベイルは、王が米国に対して頻繁にイラン攻撃し、イランの核化プログラムに終止符が打てと奨励したことを思い出した。「彼は蛇の頭を切り落としなさいとあなたに語った」と彼は関与について思い出し、イラクに対するイランの影響力を引き戻すように米国と協調することは王とサウジ政府にとって戦略的な優先課題であると付け加えた。


 時期は2008年以前であり、当然ブッシュ政権下のことだった。
 私もブログでイラク空爆の話題を扱ったことがあるが(参照)、あのころはあたかも好戦的なブッシュ元大統領のことだからというめちゃくちゃな情報が行き交っていた。しかし実際のところブッシュ政権はイラン空爆を実施しなかった。
 公電で興味深いのは、アブドラ国王による、イランの核化プログラム阻止への意思もだし、さらにイランのシーア派への敵対心もあるが、イラクへのイランの影響力への懸念もある。アブドラ国王はイラクが気になっている。
 今後、イラク戦争に至るプロセスを解き明かす公電なりが公開されると興味深いが、あの時期、サウジとの対応はチェイニー米元副大統領自身が先頭を切っていたので出てこないかもしれない。それでも、あの歴史過程にサウジからの要請や米国内での受け止め方には複雑なプロセスは存在しただろう。
 サウジとしては湾岸戦争時に軍をサウジに進めてきたフセイン元大統領はそのままにして脅威であったし、かといって米国のネオコンが推進しようとしたイラクの民主化もサウジに好ましいものでもない。米国としても、サウジに軍事的危機の状況が減少すれば、米国兵器の売り込み先にも困る。入り組んだ物語があるはずだ。
 その関連でいえば、実際的にはウィキリークスの今回の公電暴露から多少外された形になったニューヨークタイムズの見解もそれなりに興味深い。29日付け「WikiLeaks and the Diplomats」(参照)より。

The best example of that is its handling of Iran. As the cables show, the administration has been under pressure from both Israel and Arab states to attack Tehran’s nuclear program pre-emptively. It has wisely resisted, while pressing for increasingly tough sanctions on Iran.

最も適切な例はイランの扱いである。公電が示すように、米政府はイスラエルとアラブ諸国からイランの核プログラムに先制攻撃をせよとする圧力下にある。これは巧妙に抵抗され、その間イランへの制裁を強化してきた。


 これはブッシュ政権が方針を決め、オバマ政権が継いでいる米国の外交政策でもある。

The Times and other news media have already reported much of this. What the cables add is sizzle: Defense Minister Ehud Barak of Israel warning that the world has just 6 to 18 months to stop Iran from building a nuclear weapon; King Abdullah of Saudi Arabia imploring Washington to “cut off the head of the snake”; Bahrain’s king warning that letting Iran’s program proceed was “greater than the danger of stopping it.”

ニューヨークタイムズと他のメディアはすでにこの件を報じてきた。公電公開は問題を厄介にしている。エフード・バラックイスラエル国防相はイランの核兵器開発阻止までには6か月から18か月しかないとしている。サウジのアブドラ国王は米国政府に「蛇を頭を切り落とせ」と要望している。イランの計画を放置することは、それを阻止することよりも危険だとしている。

The Israelis publicly raise the alarm all the time. Most Arab leaders never do. If they believe Iran poses a major threat, they need to tell their own people and work a lot harder to pressure Iran to abandon its program.

イスラエルは常に危機警告を高めているが、アラブ諸国の指導者はそうしない。彼らがイランの脅威を確信するなら、彼らは自国民にその必要性を語り、イランに対して核化プログラムを停止への圧力により強固に共同作業をしなければならない。


 なかなかニューヨークタイムズの足下がよくわかるトーンだ。
 微妙にアラブを非難しつつイスラエルを援護しながら、辛い役目は米国が背負っているのだと言いたい。しかも、その辛い役目を最初に背負いながら世論の攻撃を受けてきたブッシュ政権については語らず、なんとなくオバマ政権の功績のようにして明るい未来を見続けている。
 ニューヨークタイムズ、けなげじゃないか。


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2010.12.01

ウィキリークス(笑)に舞い上がった英国ガーディアン

 ウィキリークスによる今回の公電まき散らしに事実上既存ジャーナリズムとして、先頭風を切って荷担した英国ガーディアンだが、自身ではどのように考えているか。その一端を示す話が30日付けの社説「US embassy cables: hanging North Korea out to dry」(参照)にあった。賛同する人もいるだろう。私としては、なかなか笑える話だった。


Nor should we axiomatically accept that the release of this information is harmful. Today's revelation from the embassy cables that North Korea had lost its strategic value to China as a buffer state between their forces and US ones, and that Beijing would accept the reunification of the peninsula under Seoul's leadership, should send shivers down the spine of the right person – the ailing dictator Kim Jong-il. Pyongyang could be about to lose its only insurer. Long before last week's lethal shelling of a South Korean island, it is clear from the private views of senior Chinese officials that their strategic asset had turned into a major liability.

私たちは、この情報の発表が有害であると杓子定規に受け入れるべきではない。中国にとって、中国の軍事力と米国の軍事力の緩衝国としての、北朝鮮に戦略的価値は失われているし、また中国政府は韓国政府による朝鮮半島統一を受容するだろうとする今日の公電暴露は、病にある独裁者、金正日当人を震え上がらせるだろう。北朝鮮政府は自身の唯一の保護者を失うことになるかもしれない。先週に起きた韓国の島への致命的な砲撃の随分前から、中国高官談話によれば、中国の戦略的な資産が主要な負債に変わったことは明らかである。


 あの韓国発公電の馬鹿話をまじめに受け止めてしまうガーディアンのメンタリティだからこそウィキリークス(笑)が信頼を寄せたのかもしれない。
 少し物を考える人間なら、その間に起きた韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈の意味を理解できるはずだ。まさかあの爆沈は北朝鮮によるものではないかもしれないとかいう田中宇さんの国際ニュース解説のようなネタ話(参照)を真に受けたり、中国の対応も適切であったとでも思っているのだろうか。ガーディアンがまさかそこまで知的劣化を起こしたわけもないから、ウィキリークス祭りで舞い上がって、問題のパーペクティブを見失っているだけだろう。
 ガーディアンによる今回の公電の読み取りも微妙に歪んだものになっている。

The implication is clear: as long as US troops stay south of the demilitarised zone that bisects the Korean peninsula, China would not stop the regime collapsing after the death of Kim Jong-il. It had already, in their view, collapsed economically and, despite efforts to secure a succession to the inexperienced youngest son Kim Jong-un, it was likely to collapse politically. If the leaking of these cables was read and absorbed by North Korea's ageing generals, this would be an example of disclosure instilling realism into a military dictatorship which so clearly lacks it. China is currently attempting to mediate a return to the six-party talks, after the latest military clashes. There is clearly a length to the leash China has already allowed North Korea, and Kim Jong-il may already have reached it.

公電の意味するところは明らかだ。二分された朝鮮半島の南に米軍がいる限り、中国は金正日が死んでも、北朝鮮体勢の崩壊を押しとどめることはないだろう。公電が示すように、すでに経済的には崩壊しており、未熟な金正恩を正嫡にしようと努力しても、政治的には崩壊することになる。もし暴露された公電を、北朝鮮の老いたる将軍たちが読み理解すれば、現実主義を欠く軍事独裁政権に現実を示す公開事例となるだろう。中国は、前回の軍事衝突後、六か国会議への復帰を仲介している。中国にしてみれば北朝鮮をつなぎ止める綱には一定の長さの限界があり、金正日はすでにその限界に達しているかもしれない。


 欧州に属する英国のリベラル派がそう思いたいという幻想を語っているの趣だが、今回の六か国会議への呼びかけも単なる国際的な口実作りに過ぎないのは、過去の中国の動向を見ても明らかだ。それ以前に正恩体勢への肩入れや、習近平中国副主席のイカレた歴史認識からも明らかだ。日本の「仙谷」政権が沈黙してしまうのはしかたないとしても、韓国が反発したのは当然だろう。中央日報10月27日「韓国政府、習近平氏の「6・25は正義の戦争」発言に反論」(参照)より。

 外交通商部は26日、中国の習近平国家副主席が前日「偉大な抗米援朝戦争(中国の6・25参戦)は平和を守り侵略に対抗した正しい戦争だった」と発言したのに関連し、「韓国戦争(6・25)が北朝鮮の南侵で勃発したというのは国際的に公認された否定できない歴史的事実」と明らかにした。
 外交部はこの日、習副主席の発言に対する立場を尋ねる報道機関の質問に対し、こうしたメディア向け資料(Press Guidance)を出した。習副主席の発言が北朝鮮の6.25南侵を否定したものと解釈され、政府レベルで対応の立場を表明したとみられる。
 習副主席は25日に北京で開かれた「抗米援朝戦争」60周年記念式でこのように述べ、「中朝の人民は、両国の人民と軍隊が流した血で結ばれた偉大な友情を忘れたことがない」と強調した。

 北朝鮮がしかけた朝鮮戦争について「平和を守り侵略に対抗した正しい戦争」だったと述べるのが次期中国の最高指導者なのである。というか、最高指導者に向けての戦略的な発言と見るべきでだろう。つまり、ここに今後の中国の対北朝鮮戦略を読み解く鍵がある。
 では、中国にとって北朝鮮とはなにか。
 延坪島砲撃事件を口実に北京の喉元に米軍が現れ、中国は多少慌てふためいたのか、お行儀の良い自国メディアにちらちらとビジョンを語りだしている。サーチナ「「北朝鮮は中国の『核心的利益』」、日米は挑発するな―中国紙」(参照)からの情報になるが、恐らくソースは環球網の「李希光:朝鲜是中国一级核心利益」(参照)ではないかと思われる。

 中国政府は今年3月、初めて米政府高官に対し、「南シナ海も中国の領土保全にかかわる核心的利益に属する」との方針を正式に表明した。その後、外交部は7月、「中国の核心的利益とは、国家主権、安全、領土保全と開発利益を指す」と明確に示した。
 戦略面と国家安全面から見て、北朝鮮は中国にとって最も重要な隣国のひとつであり、中国東北3省の安全は、朝鮮半島の安定によって維持される。東北3省の安全は、中国のさらなる改革開放と現代化建設に向けた良好な外部環境を創造する上で必要であり、中国が世界の多極化推進に寄与し、平和を実現するためにも必要だ。

 それほど大した話ではないかとも思われるなら、「核心利益」という用語を取り違えている。核心利益は、従来、チベットや台湾などの領土問題で使われてきた用語だ。つまり、そこは中国自国領土だという主張なのである。だから、尖閣諸島でもこの核心利益が出てきた。
 中国にしてみれば、北朝鮮はすでに中国の領土の候補地である。朝鮮族の第二の自治区である。
 おめでとう、東北第4省、いずれ君も中国の仲間だ。もうしばらくすれば、先っぽの地域とか東海の小島も仲間にやってくるよ(参照)。


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2010.11.30

ウィキリークス(笑):中国は統一朝鮮を支持しないってば

 ウィキリークス(Wikileaks)で米国の機密公電が暴露されるているが、現状、イラン・コントラ事件を連想させるような、世界を震撼させるような暴露がなされているわけでもない。
 ベルルスコーニ伊首相が無能であること、サルコジ仏大統領が権威主義者であること、メルケル独首相が創造性に欠けることなど、いったいどこが機密情報なのか失笑を買う程度の雑談に過ぎない。北朝鮮からイランに向けて中距離弾道ミサイル19基が輸出されたという情報も、あーそりゃそうかも、といったくらいのものである。今後のネタを期待したいところだ。
 今回リークを外された悔しさもあるのかもしれないが、ワシントンポスト「After the WikiLeaks cables: Close the barn door」(参照)も、現状の暴露情報について、気まずいがたわいない("embarrassing to their authors or subjects, but otherwise harmless.")、また多少役立つ情報もあるというくらいに見ている。フィナンシャルタイムズ「WikiLeaks opens the diplomatic bag」(参照)では、情報をリークするなら責任を取れというスタンスを取っている。逆に言えば、リークに関連したガーディアンやニューヨークタイムズでそれなりにフィルターが掛かっているということもしれない。
 今後さらに情報は出てくるだろうが現状、日本についての情報はあまり出てこない。米政権は通常それほど日本に関心を持っていないということもあるだろう。ただ日本が関係する国際状況、特に北朝鮮と中国については、それなりに興味深い情報もあるのだが、これが少し頭をひねればわかるように困った代物である。
 BBC「Wikileaks release 'shows China thinking on Korea'」(参照)にもあるが、朝日新聞記事「中国「北朝鮮は駄々っ子」 暴露の米公電に赤裸々本音」(参照)の紹介のほうが読みやすい。


 ガーディアンがネット上に掲載した今年2月22日付のソウルの米国大使館発の公電によると、韓国外交通商省の第2次官だった千英宇(チョン・ヨンウ)氏(現・大統領府外交安保首席秘書官)が同17日、米国のスティーブンス駐韓大使と昼食をとった際、6者協議の韓国首席代表当時の中国側との私的会話のなかで、中国政府高官2人が「朝鮮は韓国の管理下で統一されるべきだと信じていた」と説明。千氏は、北朝鮮が米国の影響力を緩和する「緩衝国」としての価値をほとんど持たなくなったという「新しい現実」に中国は向き合う用意がある、とも語った。
 また、千氏は、北朝鮮が崩壊した際には、中国が韓国と北朝鮮との軍事境界線近くの非武装地帯(DMZ)の北朝鮮側での米軍の存在を歓迎しないことは明らかだ、と指摘。韓国が中国に敵対的な姿勢をとらない限り、統一朝鮮はソウルが管理し、米国はその「無害な同盟国」になる状態が中国にとっても「心地よい」との見方も示した。

 あたかも中国が、北朝鮮崩壊後、韓国政府による統一挑戦を支援する意思があるかのように読める。

 さらに、千氏は北朝鮮が経済的にはすでに崩壊しており、金正日(キム・ジョンイル)総書記の死後、「2、3年で体制が崩壊するだろう」と指摘。中国も金総書記の死後の北朝鮮崩壊は止められない、と指摘し、北朝鮮に対する影響力は「おおかたの人が信じているよりずっと弱い」とも述べた。「中国の戦略的、経済的な利益は今や北朝鮮ではなく、米日韓にある」とも指摘した。
 スティーブンス氏が日韓関係強化が日本の統一朝鮮受け入れの助けになる、と指摘したのに対し、千氏は「日本は朝鮮の分裂状態を望んでいる」とし、「日本に統一を止める影響力はない」と語ったという。

 あたかも中国は北朝鮮よりは、米日韓を重視しているかのように受け取れる。また、日本が統一朝鮮を望んでいないという指摘までおまけに付いている。
 爆笑ものだろ、これ。
 機密情報じゃなくて、ジョークだろ。
 この馬鹿話はそもそも、中国が対韓国で吹いたという枠組みがなくてはまったく意味をなさない。中国の対韓国戦略のなかで、愉快な話が語れているというくらいにしか国際政治上の意味はない。
 ただし、「日本は朝鮮の分裂状態を望んでいる」というのは、韓国の猜疑心という以上に、普通に国際政治を見るなら常識の部類ではあるだろう。統一朝鮮を願う朝鮮半島の人びとの気持ちは多数の日本人も日本政府も理解するし、それが実現する際には、惜しみない援助をすることは間違いないとも言えるが、普通の国際政治の枠組みで見るなら、日本は隣国に日本に匹敵する国力を持ち核保有をする国家の台頭を望んでいないし、恐らくその時には、残念ながらという言うべきなのだが、日本国内で核化の議論が進むだろう(参照)。
 この点は中国も同じだ。自前で核保有する国家が国境を接して出現することは中国も望んでいない。中国にはさらに懸念材料すらある。中国はその内部に多数の朝鮮族とその居住域を抱えているが、統一朝鮮が登場すればいずれその歴史観の変更から鴨緑江を超えて領土や同民族の主張すると見ている。中国としては、北朝鮮という国家がロシアの前身であるソ連によって傀儡国家として成立したために、白頭山と鴨緑江で封じられた現状に安定感を持っている。
 中国の対北朝鮮戦略については、フォーリンポリシー「China Help with North Korea? Fuggedaboutit! 」(参照)でエーダン・フォスター・カーター氏(リーズ大学名誉上級研究員)が書かれている話が、ごく普通にリアルである。日本版ニューズウィークにも抄訳がある(参照)。原文は気の利いたエッセイ風でもあるが要点は以下である。

 日本、ロシア、韓国など他の国々が手を引いていくなか、中国だけは北朝鮮を保護するつもりらしい。「中国は北朝鮮が崩壊して国境地帯が不安定化し、大量の難民が流入することを恐れている」という趣旨の解説をよく聞くが、中国の行動の動機はそれだけではない。中国は長期的な戦略を意識して行動する国だ。
 20年近く前に中国と韓国が国交を開いて以来、中韓の貿易やその他の結びつきは極めて深くなった。中国は韓国の最大の貿易相手国であり、最大の対外直接投資先でもある。
 普通に考えれば、中国にとって賢明な道は北朝鮮を放置して自壊させ、東西ドイツ統一のときのように韓国に北朝鮮を吸収させること。その上で、新しい「統一朝鮮」がアメリカの庇護の外に出るよう誘い出し、中立化させればいい。
 しかし、中国はこの道を選ばなかった。ブッシュ政権時に国家安全保障会議(NSC)のアジア担当部長を務めたビクター・チャが指摘しているように、中国は最近になって、南北朝鮮の統一が自国の国益に根本的に反するという戦略上の判断を下したようだ。

 つまり新しい「統一朝鮮」を中立化させていくという、あたかも韓国で千英宇氏が吹いたウィキリークスの話は、中国の国家意思としてはすでに破棄されている。
 そうはいっても、ウィキリークスにある中国外務省次官が言うように、いつまでも北朝鮮を「駄々っ子(spoiled child)」にしておくというわけにはいかない。中国はそれなりの躾もするにはするだろう。
 今日になって北朝鮮は、数千基の遠心分離機を備えたウラン濃縮施設について、平和目的の核開発だとアナウンスした(参照)が、中国から「そう言っとけばいい」と諭されたのだろう。中国の技術が関わっているとも見られるこの施設は、核兵器開発というより実際にエネルギー支援の一環なのかもしれない。
 ウィキリークスの馬鹿話に戻れば、韓国もこれを鵜呑みにしているわけではないことは、延坪島砲撃を国連安保理に提起しないことでもわかる。提起しても中国は拒否権を行使するしかないし、そこまで中国を追い詰めても韓国にメリットはない。あるいは、そういう最終的な判断をしたのは、韓国というより米国でもあるだろうが。
 と、ここでエントリを終えるつもりだったが、言い忘れていたことがあった。
 フォーリンポリシー記事の日本版ニューズウィークの抄訳で興味深いヌケがある。まず訳文はこうだ。

 ただし、いくつか注文もつけるだろう。第1に、北朝鮮に金をつぎ込む前提として、国内システムの立て直し――実質的には市場経済原理の導入を求める。
 第2に、「ならず者国家」的な行動を(直ちにではないにせよ)やめるよう求める。具体的には、核実験の中止と将来的な核放棄だ(それと引き換えに中国が北朝鮮の安全を保障するかもしれない)。
 北朝鮮もほんの少し頭を働かせれば、自分たちにパトロンが必要だと分かるはずだ。中国の「衛星国家」となるのは屈辱かもしれないが、国や体制が存在しなくなるよりはましだろう。

 該当する原文はこう。

First, Beijing will not pour money into a broken system. North Korea must fix itself first. That means finally embracing markets, as Deng Xiaoping first urged a much younger Kim Jong Il 30 years ago. (Imagine if the Dear Leader had heeded him then.)
 
Second, the roguery has to stop, if not all right away. That means no more nuclear tests, and in the long run denuclearization -- perhaps in exchange for a Chinese security guarantee.
 
What if the Kims won't play ball? Then China has its own Kim who will. No. 1 son Kim Jong Nam went strikingly off message last month, raining on little brother's parade by saying he was against a third generation succession. Who did he say this to? Japan's Asahi newspaper. Where did he say it? In Beijing, where evidently he still lives -- and is protected.
 
True, a regime so introverted, vicious, and world-historically stupid as North Korea's could yet foul up. The Kims may chafe and rattle their new cage. It could all go wrong, for China and them.
 
But if they have an ounce of sense, they must know the old game is up. Militant mendicancy won't cut it any more; no one will buy that old horse again. There is only China. Meanwhile their hungry subjects watch pirated South Korean DVDs, and grow restive.

 けっこう抜けている? まあいい。大きく抜けている太字のところだけ訳出しておこう。中国が北朝鮮を傀儡国家に仕上げるというゲームについてだ。

 金家の人びとがこの新ゲームをやらないとしたらどうなるか? 中国は、やる気の金さんを抱えている。長男の金正男君は、弟正恩のパレードの際、王朝第三世代への継承に反対だと先月メッセージを放った。誰に向けて語ったかって? 日本の朝日新聞社だよ。どこで語ったかって? 彼が実際に保護下で暮らしている北京さ。

 爆笑ものだろ、これ。
 でもこっちはジョークに見えて、真実。

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2010.11.29

2010年沖縄県知事選挙雑感

 沖縄県知事選挙が終わった。私は当初から現職の仲井真弘多さんが勝つだろうと思い、どのくらい票差が出るかなと高を括っていたのだが、地元に詳しい人の話を聞くと存外に接戦とのことだった。私が沖縄で暮らしていたのは8年も前になるのでそろそろ地元の勘が働かなくなることもあり、冷静に見ると、なるほど前宜野湾市長の伊波洋一さんが勝つ目もないわけではないなと思いなおし、なかなか読めなかった。
 伊波さんが勝つと沖縄は大きな変化になるので、そうなる趨勢ならエントリーも起こすべきだが、概ねそうはならないだろうと思いつつ、昨日、当日となり、午前中にツイッターのほうには予想を書いた(参照)。


沖縄県知事選の予想: 仲井真さんの勝ち。理由:争点が明確ではなく状況的に関心が下がっているので浮動票が伊波さんに流れにくいから。

 結果からすると予想通りの展開であり、沖縄の今後についても特に考えを変更することはないだろうということになったが、実際昨晩の選挙速報を見ながら、いろいろ思うことはあった。
 まず私にしてみると自明なのだが、今後普天間飛行場の辺野古移設はどうなるかというと、どうにもならない。つまり、移設はできない。では、現状の普天間飛行場はどうなるかだが、筋立てて考えると固定化するだろう。
 その間に、2004年8月13日にあった沖国大米軍ヘリ墜落事件(参照)のような事件があれば、普天間飛行場移設問題は再度大きな騒ぎとなり、県外移設しかありえなくなる。
 実際のところ、本土の人は記憶が薄れているかもしれないが、現地の人にとってあの事件はかなり重くのし掛かっているので、現状でも県外移設しかないと思う人が多いだろう。こうした問題は、いずれ配備されるオスプレイの騒音や危険性についての統計的な資料を見せられてもなかなか納得がいくものではないし、その次元で揉み合う話でもない。
 本土側のメディアでは仲井真さんがかつて名護市辺野古の移設を容認していたことから、条件さえ揃えば移設容認になるだろうと推測したり、また民主党政権もそれに期待している向きもあるが、それはない。
 私は沖縄少女レイプ事件から8年間現地で暮らし、この動向を見てきたが、沖縄では移設先の市町村の受け入れがないかぎり、県側は動けない。仲井真さんがかつて移設容認であったのは、当時の名護市が条件付きであれ受け入れの意向を示していたからだ。それが政権交代後の民主党特に鳩山前首相によって崩されたので、ほぼ無理な事態となった。
 その具体的な経緯は2009年5月の琉球朝日放送「検証 動かぬ基地 vol.89 次期政権狙う党の基地政策は」(参照)がわかりやすいが、ここで仲井真知事は「名護市が受け入れてを言っておられる間にきちっと移した方が現実的だということで私は県内移設やむなし」としている。つまり、辺野古移設が可能であるなら、1月の名護市長選前までの決断が必要だった。
 しかしその後、1月の名護市長選の趨勢から9月の同市議選でも移設反対の市長派が勝ち、名護市議会は10月に日米合意の撤回を求める意見書を可決し、デッドロックとなった。
 今回の選挙では、どうも本土側で勘違いをしている人もいるようだが、宜野湾市は現普天間飛行場を抱える側なので、移設自体への反対派が優れて多いわけではない。
 今回の選挙結果(参照)を見ると、宜野湾市では伊波24010票、仲井真21421と伊波さんが優勢だがずばぬけて差が開いているわけでもなく、現地としては普天間飛行場による賃貸料が途絶えることを嫌う人脈も移転反対の意向をもっていたりする。
 対する名護市だが、仲井真15213票、伊波13040票と仲井真さんが優勢になっている。率直にいえば、自民党時代のように地味に対応していけば、鳩山前首相が滅茶苦茶にしたちゃぶ台を以前に戻す下地がないわけではない。
 他の地域での得票差を見ると、大票田の那覇市で仲井真76327票、伊波68108票と大差があり、続く沖縄市、うるま市、浦添市でも仲井真さんが優勢であり、これらを見てもわかるが沖縄の都市部市民としてはいわゆる本土の反基地・反安保という考えが優勢ということはない。もっとも、伊波さんもそう差を付けられたわけでもないことは、おそらく沖縄県民は自分たちにだけ米軍基地を押しつけられたという本土への反発感があるのではないか。

 私が現地で暮らして見て思ったり、名護市にも何度か行って思ったことだが、名護市は地域的に大きいためか、住民の多い西岸と辺野古のある東岸とではかなり風景も違う。むしろ、西側は交通のせいもあるがリゾート地の多い恩納村などとつながりがある。対する東側の辺野古はすでにキャンプ・ハンセンやキャンプ・シュワブを持つ宜野座村や金武町とのつながりが深い。
 東岸の選挙結果を見ると、宜野座村で仲井真1614票、伊波1260票、金武町で仲井真3228票、伊波1778票となっており、現米軍基地を抱える小さな市町村のほうが仲井真さんの支持が高い現実がある。この傾向は嘉手納町にもあり、仲井真3887票、伊波2628票となっている。
 観点を変えると、反基地・反安保という政治的なスローガンの問題より、具体的な地域経済としての県政への期待が高いとも言えるし、その部分でのフォローが明確に見えない点が伊波さんの敗因でもあっただだろう。
 この間、現地の様子を私が見ていて一番印象的だったのは、先のツイッターでも書いたが、選挙に対する関心が本土側からの温度差で見ると、比較的低いことだった。私は前回の知事選よりも得票率は伸びないだろうと見ていた。結果は3.7ポイント減少した(参照)。
 朝日新聞による事前の調査「伊波氏と仲井真氏が競る 沖縄知事選情勢調査」(参照)でもそれは窺えた。


 投票する際に何をいちばん重視するか、四つの選択肢から選んでもらった質問では、「経済の活性化」が49%で最も多く、次いで「基地問題」の36%が多かった。「経済の活性化」を最も重視する人のなかでは仲井真氏、「基地問題」を最も重視する人のなかでは伊波氏への支持が厚い年代別にみてみると、伊波氏への支持は50代と60代が多めで、仲井真氏への支持は70歳以上でやや厚めだ。
 職業別では、伊波氏は事務・技術職層と主婦層で、仲井真氏は製造・サービス従事者層で支持が厚い。
 地域別にみると、伊波氏は沖縄本島の中部で、仲井真氏は南部で支持を広げている。

 自分も8年ほど沖縄県民であったが、実際に沖縄での住民として日々の生活にのし掛かってくるのは本土と同じく、経済の問題である。基地問題も経済の問題に包括するような形で提出されないと住民の生活の課題としてはなかなか受容しづらい。石垣市や宮古市など先島における仲井真さん優位もそうした総合的な県政の期待の延長にあるだろう。
 今回の選挙結果を見て、一点だけ意外に思えたことがあった。幸福実現党公認の金城竜郎氏が13116票も得ていることだ。500票もいくかなと思っていた。
 沖縄における各種宗教の力は他のアジア地域と似ている傾向があり、創価学会が存外に強かったり、天理教の組織などもあったりするが、さすがに幸福実現党の浸透は少ないと見られる。なので、金城さんの得票は宗教の文脈より、本土ナショナリズム的な主張への賛同票と見てよいだろう。選挙の構図でいえば、これが仲井真さんの票を食ったことになるが、そうした意図からの立候補ではないだろう。
 本土ナショナリズム的な影響は候補者三氏にそれぞれ見られ、その分析は存外に難しいが、いずれにしても沖縄は沖縄の道を行くという点では大きな変化はないことは今回の県知事選挙でもはっきりした。
 つまり、そのことが沖縄というものの依然大きな意味でありつづける。


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2010.11.28

延坪島砲撃を米国は事前に知っていたのではないか

 延坪島砲撃事件を受けた形の米韓合同軍事演習が始まった。12月1日まで続く予定である。経緯を振り返ってみると、これは最初から米国のシナリオ通りの展開だったのではないかと思えてくる。
 なぜ北朝鮮が延坪島砲撃に及んだかについての推測は24日のエントリー「韓国人が居住する延坪島に北朝鮮が砲弾を撃ち込んだのはなぜか」(参照)でも言及した。
 同エントリーでの参照はリンクも英国高級紙テレグラフと米国高級紙ニューヨークタイムズに限定したものの、多少推測を交えたため、陰謀論的に読まれたかたもいたようだった。だが、私としてはそれほど突飛な推測をしたわけではないと思っていた。そうしたやさき、エコミスト誌の元編集長でもあるビル・エモット氏も似た推測をされているのを知った。ダイヤモンド・オンライン「緊迫の朝鮮半島、ビル・エモット特別インタビュー」(参照)より。


 金正日総書記が深刻な健康不安を抱え、金正恩氏への権力移譲が急がれる中で、指導部の“タフネス”を示すためだとか、朝鮮半島西側の黄海上での韓国軍による軍事演習への対抗措置だったとか、あるいは制裁の緩和や新たな援助を引き出すためといったもっともらしい説明が各メディアで報じられているが、はっきり言って、どれも説得力を欠く。
 それだけの理由で、韓国側の本気の反撃を招く覚悟を持って、民間人の住む島に本当に砲弾の雨を降らすだろうか。北朝鮮も、今回の延坪島(ヨンピョンド)砲撃で一線を越えたことは認識しているはずだ。

 金正恩氏への権力移譲のための示威説と黄海上での韓国軍による軍事演習への対抗措置説を説得力に欠けるものとして見ている。

 今回の攻撃が意図せざる突発的なものだったとする見方も少なからずあるようだが、私はそれはないと思う。新たなウラン濃縮施設が確認された時期から日が近すぎる。それに、北朝鮮軍による場当たり的な博打だったとしたら、そちらのほうが深刻だ。指導部が軍を制御できていないことになるからだ。

 突発説も退けている。これは同時に、26日のエントリー「延坪島砲撃事件で最初に挑発をしたのは韓国側か」(参照)でも触れたが、ニューヨークタイムズや中国が取る、韓国側が先に挑発したという議論も排していることになる。
 ここまでは私の議論とほぼ同じだし、その先も似ている。ただ、エモット氏の推測は私の推測とは違った点で踏み込んでいる。北朝鮮と米国の水面下交渉を彼は推測している。

推察するに、最近新たに確認された北朝鮮のウラン濃縮施設にからんで、ピョンヤンとワシントンとの間に水面下で抜き差しならぬやりとりがあったのではないか。

 米国から事実上の最後通牒に近いものを北朝鮮が受け取っての行動とエモットは見ているが、それがなんだったかについては彼は言及していない。私はすでに言及したように、北朝鮮へのピンポイント空爆ではないかと考えている。
 エモット氏も私も現状の公開情報からは推測になるが、それほど陰謀論といった突飛な推測にはならないだろう。
 この推測が正しいとすると、事後についても、米国側が北朝鮮の強行な反発をかなり予想できたことになる。重要なのは、米国側が延坪島砲撃まで予想していたかだ。
 もし米国が延坪島砲撃を予想していたとすれば、韓国を見殺しにしていたにも等しいので、この推測は難しいところでもある。
 予想していたのではないかと思われる筋がまったくないわけではない。
 24日付けワシントンポスト記事「N. Korea attack leaves U.S. with tough choices」(参照)では、米国政府が金正日総書記と正嫡と見られる金正恩が同地域を訪問していたことを24日以前に知っていたことを語っている。

Administration sources also said North Korean leader Kim Jong Il and his third son, the heir apparent Kim Jong Eun, visited troops over the weekend in the region where the barrage originated - apparently as a kind of pep rally.

高官筋によると、金正日総書記と彼の三男の正嫡と見られる金正恩が、週末、集中砲火を発した地域で軍の訪問をしていた。おそらく一種の激励としてである。


 韓国側ではどうだったか。評価の難しい報道がある。26日付け朝鮮日報「北朝鮮砲撃:韓国軍、ロケット砲の移動知りながら対応できず」(参照)より。

 北朝鮮軍は23日の延坪島砲撃に先立ち、同日第4軍団に所属する122ミリロケット砲(多連装ロケット砲)1個大隊を黄海道カンリョン郡のケモリ基地に移動・配備し、射撃準備訓練を行っていたことが25日、分かった。韓国軍当局は北朝鮮軍のこうした動きを事前にキャッチしていながら、北朝鮮の第1次砲撃に対応する際、ケモリ基地ではなく、茂島地域の海岸砲基地の攻撃に重点を置いていたことが明らかになり、こうした兆候をキャッチする韓国軍のシステムなどに問題があるとの指摘が上がっている。
 軍消息筋によると、北朝鮮軍は砲撃当日の23日、122ミリロケット砲1個大隊(18門)をケモリ基地に配備していたことが分かったという。
 この消息筋は「北朝鮮軍は砲撃の数時間前に当たる午前、ロケット砲1個中隊(6門)を展開させ、午後に2個中隊(12門)を追加配備した。砲撃前に射撃準備訓練を行い、韓国軍も事前にこれを把握していたと聞いている」と語った。122ミリロケット砲は北朝鮮の海岸砲部隊には配備されておらず、第4軍団に所属するロケット砲旅団からケモリ基地まで移動させなければならないが、韓国軍当局はこうした動きを事前に把握していたというわけだ

 事前とはいえ、延坪島砲撃の当日のことなので、それ以前に察知していたとまでは言えないようだが、北朝鮮側からの砲撃が開始される以前から、北朝鮮側をそれなりに注視していたことは理解できる。
 私は素朴な疑問を持つのだが、こうした事前の動きについて、人一人を識別できるほどの解像度を持つ衛星からでも察知できなかったのだろうか? 朝鮮日報が伝えるように事前が当日であっても、数時間の時間差は取れるわけで、その情報を活用すればかなり被害は防げたはずではないのか。
 この報道からは、韓国側は北朝鮮の動向を注視しても、それを延坪島砲撃への対処としては活用していなかったとされ、韓国側の落ち度を示しているにとどまっている。
 問題は米側である。事前に知らなかったのだろうか。もし知っていたと仮定すると韓国を見殺しにすることになる。素朴に考えると、ありえないことにも思える。
 私が一つ気になっているのは、今回延坪島砲撃で民間人を含めた死者まで出し、生々しい砲撃跡の映像も報道されるが、この二人の民間人は出稼ぎ労働者として島の北側の韓国軍側施設におり、むしろ軍の下にあった。北朝鮮としては、民間人被害を痛んでもいることから(参照)、いちおう軍のある島の北部をそれなりに焦点としていただろう。対する延坪島の住民は北朝鮮とは反対側の南岸の地域に暮らしていて、砲弾の命中率も高くなく、実際民間人に死者が出なかった。米側では砲撃があっても、これらを読み込み、それほどの被害はないと見越していたということはないだろうか。
 延坪島砲撃が行われたことで、北京の喉元でもあり、中国が曖昧に主張する排他的経済水域(EEZ)に関わる地域で、米韓合同軍事演習が始められた。国際世論の手前、中国としても今回の演習には表立って反対はしづらい。と同時に、EEZについては、実質黄海での中韓の中心線が意識されることになった。曖昧な形で支配海域を押し広げたい意思を持つ中国としては、致命的なストッパーをかまされたことになる。
 その意味は、中韓のEEZもだが、中日間のEEZにも影響するだろう。中国としては中日間のEEZについても、尖閣諸島を偽装漁船によって蹂躙し、いずれ軍で実効支配したいところだが、日米同盟が機能している限り、EEZについては国際的な中間線を飲まざるをえない前例となってしまった。
 もともと米国による黄海での演習は、中国が東シナ海で太平洋側に押し出てくることに対するストッパーの意味もあったが、7月の演習では中国の強行な反発に配慮して、ジョージ・ワシントンを黄海への派遣を断念し、日本海に移した経緯がある。しかし、当然ながら黄海での演習を狙っていたものだった。
 中国側としてみると、今回の米韓演習によって、実質現状のままに海域が封じ込められるという、かなり苦々しい結果となった。
 これは今後、中国内政にどのような影響を与えるだろうか。存外に現政権の共青同側の勢力は米国を悪玉にしたてて、軍を抑え込むというシナリオもあるかもしれない。そもそも原点の問題でもある北朝鮮の核化だが、北朝鮮にウラン濃縮技術をもたらしたのは中国内の勢力である可能性もある(参照)。
 しかし、実質米国に抑え付けられた軍側がさらに反発するというシナリオもあるだろう。どちらかといえば、そのほうがありそうなシナリオだろう。

追記
 韓国では活用はされてはいないが、さらにそれ以前に情報があったようだ。


 【ソウル=牧野愛博】韓国の情報機関、国家情報院の元世勲(ウォン・セフン)院長は1日、国会情報委員会での北朝鮮軍による大延坪島(テヨンピョンド)への砲撃を巡る答弁で、今年8月に北方限界線(NLL)近くにある同島を含む島々に対する攻撃の兆候を把握していたと説明した。関係議員が明らかにした。
 北朝鮮の通信を傍受した結果、攻撃の可能性が高いと分析した。関係議員は、政府が対応措置を取らなかった理由について「北の似た行動が多いため、同程度に考えたようだ」とした。民間人を巻き込む無差別攻撃も予測できなかったという。8月9日には、北朝鮮軍がNLLから1~2キロ離れた韓国側の海上に向けて十数発を砲撃する事件が起きていた。

 北朝鮮の通信傍受が韓国に閉じていたかは疑問が残る。


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