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2010.07.03

[書評]タングラム・パズルの本 Tangram Puzzles: 500 Tricky Shapes to Confound & Astound(Chris Crawford)

 10歳くらいの子供にちょっと気の利いたプレゼントをするかなという機会があり、アート的な写真集や絵本がよいだろうか、知的なパズルなんかもよいかなと、いろいろ考えて、タングラム・パズル本「Tangram Puzzles: 500 Tricky Shapes to Confound & Astound(Chris Crawford)」(参照)を選んだ。日本のアマゾンから購入できたのだが、現在でも「通常2~3週間以内に発送します」とあり、米国に発注するのではないだろうか。私の場合も、2週間ほどで届いた。
 タングラムとはなにかだが、この本の表紙を見ると、皆さん、ああ、あれかとピンとくるだろう。そうあれです。正方形を7つのピースに分割して、それでいろんな形を作るというものだ。

cover
Tangram Puzzles: 500 Tricky Shapes to Confound & Astound
Includes Deluxe Wood Tangrams
Chris Crawford

 自由に形を作ってもよいのだが、パズルとしての遊び方は、最初にできあがったシルエット(影絵)が提示されて、それに7つのピースをどのように収めるかということだ。
 お子様向けと思われているし、その程度の影絵だとたしかに、1分もしないで完成するのだが、簡単ではない影絵もある。大人がやっても、苦戦するというか、その面白みにはまる。西洋では1800年代に流行して、ナポレオンも隔離されたセントヘレナ島で暇つぶしにやっていたという話もある。不思議の国のアリスの作家ルイス・キャロルもこれが好きだったらしく「不思議の国の論理学 (ちくま学芸文庫): ルイス・キャロル」(参照)にもタングラムのパズルが載っている。私(1957年生)の世代だとサム・ロイドの本が有名で、ちょっと懐かしいなと古本をあさったがなかった。復刻してもいいんじゃないかな。

 このプレゼント用の英書だが、英語の部分は序文くらいなもの。あとは淡々とタングラムのシルエットがタイトルどおり500も掲載されている。実際に捲ってみると、鳥、犬、横顔、ランプ、人びと、幾何学図形と分類されていて、パズルというよりアートのインスピレーションがわきそうな感じが楽しい。こういう、アートセンスというのはこの手の洋書ならではのものだ。
 タングラム・パズルには類書が多いなか、これがよいと思った理由は2つある。1つは、表紙の木片だが、現物が付録になっているのだ。シュタイナー教育ではないが、木という自然の物に触れるのはよいなと思った。実際に手にしてみると、思ったより厚みがあり手触りもよい。なかなかよい木片だった。
 もう1つの理由は、リング閉じである。学生時代英語の教科書をよく使ったものだが、ハードカバー、ペーパーバックスの他に演習問題集によくリング閉じがあった。日本ではリング閉じ製本というのをあまり見かけないように思うが、何かをプラクティスするときは、開きが楽で便利なものである。余談だが、ノートもリング閉じがよいと思う。先日中学生にノートを薦めるとき、リング閉じがよいとアドバイスした。

cover
ビッグタングラム
 プレゼントとしてどうだったか。それなりに好評みたいだったが、それを見た他の子供も関心を持ったらしい。もう少しお子様向けのものはないかと、アマゾンを見回したら、「ビッグタングラム―知のパズルをときあかせ! 7つの図形がうみだす難問奇問(パナソニックセンター東京リスーピア)」(参照)がよさそうなので、買ってみた。パズルのシルエットは等身大で、これに添付されている磁石付きのピースをはめていく。ページの裏には添付されている鉄を含んだ厚紙をひく。いかにも知育玩具という感じだ。このしかけなら4、5歳くらいから楽しめそうだ。
 気になったのは、大半のピースはひっくり返しても同型なのだが、平行四辺形だけはそうではない。英書のほうは、木片を自然に使っているので、ひっくりかえすという操作は自然に内包されているが、「ビッグタングラム」のほうは、そこが自然に禁止されている(裏面が磁石面)。企画者もわかっていたのだろうが、こういうディテールに大きな感性の違いが出てくる。
 そういえばと、iPhoneアプリにもこの手のものはありそうだなと探ってみると、けっこうあった。無料のものもある。いくつか試してみると、ひっくり返しに対応していないのが多い。対応していてよさそうなのは、TanZenというのだった。iPad用もある。
 しかし、こういうのは、デジタルな世界から離れて静かにするのが楽しみではないかな。テーブルにリング閉じの本を置いて、木材の感触を手で確かめながら。

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2010.07.01

さすがの菅首相、消費税額分に4.5%の金利を付けて全額還付ですよね

 菅首相の経済音痴には困ったものだな。デフレに増税とか、増税で強い経済とか、それってトンデモでしょ。消費税発言もブレブレだし、まともに話を聞いていても鳩山元首相同じことになりそうだな。それに9月には小沢さんが頑張りそうだな。次は原口首相? という感じで、菅首相の発言にあまり耳を傾けなかった。だが、おや、なかなかすごいことを言っている。消費税額分を全額還付することを検討するらしい。そりゃいい。
 昨年の還付加算金は4.5%だから、1年間で200万円消費したら20万円に9千円追加になって返ってくる。いいんじゃないか。なかなか菅首相、斬新なアイデアだ。麻雀点棒計算機につづくヒットアイデアだ。
 どの銀行に預けるより消費税として国に預けておくのが高金利というのが魅力的。これにセブンイレブンのナナコカードのポイントとか1%だから、こういう制度を上手に使って消費すると、6%くらいお得になりそうだ。
 消費税還付の話は今日のNHKで伝えていた。「参院選 消費税めぐる議論活発に」(参照)より。


菅総理大臣は、カナダで開かれたサミットから帰国後、先月30日から参議院選挙の全国遊説を再開しました。そして、山形市で行った街頭演説で、菅総理大臣は、消費税率の引き上げをめぐって、超党派の協議をあらためて呼びかけるともに、「所得の低い人に負担はかけない。例えば年収300万円、400万円以下の人には、かかる税金分だけ全部還付するという方式、あるいは食料品などの税率を低い形にすることで、普通に生活している人には過大にかからないようにする」と述べ、低所得者への負担軽減策として、年収400万円以下の世帯については、かかった消費税額分を全額還付することも検討したいという考えを示しました。

 野党は批判している。

自民党の谷垣総裁は札幌市で「高齢化が進むなか、介護、年金、医療をどうしていくのか、正面から目を向けなければ社会の安心をつくれない。菅総理大臣は、消費税を何に使うのか、発言するたびに中身がぶれている。また『10%消費税を公約だと思って差し支えない』と言っていたのに『野党と話し合いをするのが公約だ』と言ってみたり、総理大臣のことばがこんなにグラグラしていいのか」と批判しました。

消費税率の引き上げをめぐって、公明党は、社会保障のあるべき姿を議論するのが先だとして、財政再建のための増税は反対だとしています。

また、共産党は、低所得者への負担が増え、景気をさらに悪化させるだけだとしているほか、社民党は、社会的弱者を取り巻く環境をさらに悪化させるとして、消費税率の引き上げに反対しています。

一方、国民新党は、まずは大胆な景気対策が必要だとしているほか、みんなの党は、徹底的な税金のむだづかいの解消が最優先だとして、現状での税率の引き上げに反対しています。

また、たちあがれ日本と、新党改革は、社会保障費の増大に対応するため消費税率の引き上げは避けられないとして、時期や税率に言及しており、参議院選挙は、11日の投票に向け、消費税をめぐる各党の議論が、より活発になっています。


 各党の批判は、どうも、還付加算金のメリットを理解していないようだ。
 国や地方が課税で取りすぎた分を返還するときには、還付加算金として市中金利とは比べものにならない高金利が付く。日本銀行が定める基準割引率+4%だ。1999年末までは7.3%だが、2000-2001年は4.5%、2002年以降は4.1%(参照)。昨年は4.5%なので、そのあたりが今後も目安になるだろう。
 従来でも徴税に際して、必ず還付されるとわかってる税金は納めておくのが常識だった。国に高金利で貸し付けているようなものだから。これが消費税に適用されるとは、菅首相、なかなかのアイデアマンである。
 もちろん、NHKの報道にあるように、この恩典が受けられるのは、「年収300万円、400万円以下の人」という限定があるが、消費税の逆進性や消費の活性からすれば、納得できる限定だろう。
 またNHK報道では、還付金ではなく「食料品などの税率を低い形」という考えもあるようだが、今日付け読売新聞「消費税上げで首相「年収2百~4百万以下還付」」(参照)では、還付金の制度が有力なようだ。

 税金の還付対象について、首相は同日、青森市での街頭演説では「年収200万円とか300万円」、秋田市内での演説では「年収300万円とか350万円以下」と述べた。これに関連して、政府高官は同日、「(食料品などに)軽減税率(を適用する)より税金還付方式の方がスムーズではないか。所得税と住民税の非課税世帯の人が(低所得者ほど税負担が重くなる)逆進性で苦しまないようにしないといけない」と語った。

 税金還付方式の方がスムーズだし、高金利が付くし、そのほうが断然よい。
 
 ……というエントリはどうかな。
 今日は7月1日だよ。4月1日じゃないのにどうなの?
 嘘もフカシも入れとらんけど。
 あのさ、あの菅さんだよ、経済音痴の菅さん。そもそも還付加算金のこと、知らないんじゃないの?
 税金収めてんでしょ。知らないわけないんじゃない。
 年金も納めてなかったんだよ、菅さん。
 でも、これ、えいってやっちゃったらいいんじゃないの?
 あのさあ、消費税の話、民主党のマニフェストにも書いてないんだよ。食品の例外とか還付にかかる費用や制度なんかも、菅さんが考えていると思う?
 ……

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2010.06.30

親指の規則(rule of thumb)

 英語に"Rule of thumb"(ルール・オブ・サム)という慣用句がある。直訳すると、「親指の規則」になるが、慣用句としての意味は、「経験則」ということ。よく使う慣用句らしく、ニュース検索しても出てくる(参照)。


As a general rule of thumb, many of Prague’s higher-end restaurants, like Le Degustation and V Zatisi, are nonsmoking. An exception is the well-known upscale riverfront restaurant, Kampa Park, which has a smoking section.

一般的な経験則として、"Le Degustation"や"V Zatisi"のようなプラハの高級レストランの多くは禁煙。例外は有名な超高級レストラン"Kampa Park"で、喫煙室がある。


 ほかにもマクリスタル前司令官の報道を巡るFOXニュースの対談(参照)にこういうのもある。

GOLDBERG: I'll tell you what my rule of thumb is. My rule of thumb is that if I do any piece and I know it's going to be, you know, something that the person I'm interviewing may not like, I still want to be able to watch that piece on television sitting in the same room with that person.
O'REILLY: With the person. Right.
GOLDBERG: They could turn to me and say, "I didn't like the piece but it was fair." So that's my rule of thumb.

 口語でよくわからないところあるが、報道人たるものインタビューを切り貼りするなら、こそこそしない覚悟をもて、それが「俺のやり方」という意味で、"Rule of thumb"に"my"を付けて言っている。
 "rule of thumb"を英辞郎を引くとこうある(参照)。

1. rule of thumb
〔よく使う〕おおまかなやり方◆正確ではないが実用になる方法を指す。◆【語源】きこりが長さを測るのに、親指を使ったことからと考えられている。しかし、妻を殴るのに許容されていた板の厚さが、親指の太さまでであったからという説もある。
2. 経験則
・As a rule of thumb, Japan is efficient in manufacturing, but quite the contrary when it comes to distribution. : 経験からいって、日本は製造に関しては効率的だが、こと流通となるとその逆です。

 説明を見ると曖昧で混乱している印象もある。英辞郎は辞書の専門家が作ったものではないので、いろんなところから情報を見つけて適当にまとめたものだろう。
 そうなってしまうのも、英語ネイティブも"rule of thumb"という表現にこだわっていろいろ議論をしているからだ。そのようすは、Wikipediaの同項目から窺える(参照)。語源ははっきりしていないらしい。

Origin of the phrase
The exact origin of the phrase is uncertain: either it is derived from the use of the thumb as a measurement device ("rule"), or it is derived from use of the thumb in a number of apocryphal "rules" (law, principle, regulation, or maxim).

この句の正確な語源はわからない。親指を測定具として使ったのか、根拠不明の法則や原理によるのかもわからない。


 語源はわからないのだが、面白いのは、"rule"について、「定規」として見るか、「法則」としてみるかで、いろいろイマジネーションがわいてしまうようだ。特に、後者については、"rule of law(法の支配)"、"law of nature(自然の法則)"、"rule of inheritance(遺伝の法則)"というフレーズの連想が働くのだろう。
 英辞郎では、「きこりが長さを測るのに、親指を使った」と書いているがこれはWikipediaにもある。
 語源としては、Wikipediaにもあるように、印欧語の関連から考えるのが妥当だろう。親指の幅を1インチとしたとして。

This sense of thumb as a unit of measure also appears in Dutch, in which the word for thumb, duim, also means inch.

計測の単位としての親指という意味はオランダ語にもある、そこでは"duim"はインチを意味している。


 ということで、これが印欧語に広がっていると指摘している。

The use of a single word or cognate for "inch" and "thumb" is common in many other Indo-European languages, for example, French: pouce inch/thumb; Italian: pollice inch/thumb; Spanish: pulgada inch, pulgar thumb; Portuguese: polegada inch, polegar thumb; Swedish: tum inch, tumme thumb; Sanskrit: angulam inch, anguli finger; Slovak: palec inch/thumb.

 サンスクリットまで広がっているので、親指幅の計測はかなり古代に遡るのかもしれない。ちなみに、「寸」は0.8インチだが、東洋人の親指ならそんなものかもしれないので、同起源かもしれない。
 ただし、"inch"自体の語源は"uncia"で、その意味は「12分の1」ということで、フィート(feet/foot)の1/12になる。そう考えると、フィートが先にあるようにも思えはする。なお、"inch"は"ounce"(オンス)とも同語源だが、なぜか1ポンドは16オンスである。なぜかというと、これは、troy ounce(参照)なのだろう。
 親指の規則(rule of thumb)の雑談はまだ終わらない。英辞郎にも「妻を殴るのに許容されていた板の厚さが、親指の太さまでであったからという説」という変な話があるが、Wikipediaでもこの話題がてんこ盛りになっている。
 英辞郎の「妻を殴るのに許容されていた板の厚さが、親指の太さ」という表現はこなれてないが、ようするに親指の太さまで棒であれば、夫は妻をそれで叩いてよいと慣習法があったらしい。叩く際に基準はなにかというと、夫の気分次第というか夫の勝手でいい、つまり、親指の規則(rule of thumb)ということだ。
 この慣習法がコモンロー(common law)、つまり、世俗法であったようなのだが、そこには"thumb"という規定ではなく、"moderate correction"というのだが、まあ、許容される夫の権威みたいなものだろうか。ただ、それが親指の太さの棒と理解されていたかもしれないことは、Wikipediaにも当時の漫画が掲載されている。世俗法なのだが、その後米国にも伝わったらしい。


 これが歴史的な事実なのかがよくわからない。1993年頃、この問題に関心がある人がメールで議論していた記録が「Origin(s) of "Rule of Thumb"」(参照)にあり、そのあたりの騒ぎがWikipediaなどにも反映されたのではないか。

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2010.06.29

Panasonicマルチグリラーで魚や肉をこんがり焼いたらうまかった。煙もほとんど出ない

 暑くなると食の趣向を変える。それ以前になんか作るのもおっくうになる。そうなると、私なりに世界の人の調理を見てきた結論でもあるが、適当に食材を切って塩をしてオリーブオイルをまぶしてオーブンで焼く。野菜でも肉でも魚でも、それなりにうまくなる。意外に野菜は焼くとうまいものだ。魚は蒸し焼きならホイルしたり、塩釜にしてもいい。それはそれで美味しいのだが、ちょっと不満もあった。
 特に魚がそうだが、オーブンだと七輪で焼いたうまさに及ばない。村上春樹の紀行「遠い太鼓 (講談社文庫)」(参照)だったと思うけど、一番美味しい魚料理としてギリシア人が七輪で魚を焼く話があった。この紀行文に春樹さんが雨のカバラを訪問するという話があるが、私もカバラに行って鰺の塩焼きを食べた。ああ、塩焼き。
 情けないなと思うのだが、毎度おおきに食堂の塩焼き秋刀魚がけっこううまい。私は秋刀魚はフライパンにオリーブをひいて蒸し焼きみたいにすることが多い。これだと蓋して煙が閉じ込められるからだ。そこそこ美味しいのだけど、実家の庭で煙をもうもうとさせて七輪で焼いたのにははるかに及ばない。毎度おおきに食堂の塩焼き秋刀魚も食いたくなる。
 あれ、どうやって焼いてんのと疑問に思った。それほど煙が出ているふうでもない。見ると、業務用のロースターだ。業務用といっても、大量に焼くという程度、構造的にどうというものでもないみたいだ。ああ、ロースター。
 人からも勧められていたので、こりゃロースターを買うかなと思った。これ以上調理器具増やしたくないんだがと思ったが、ちょっとやけくそ。それで調べてみると、いろいろある。それなりに絞り込んで、さて迷った。気立てはよいけど背の高いお嬢さん、かわいいけれど漫画家志望、さて、といった選択ではない。「Panasonic おさかな煙らん亭フィッシュロースター」(参照)か、「Panasonic マルチグリラー」(参照)。
 調理器具は高ければよいというものでもない。ベーカリーマシンでもそうだが、高機能機で美味しいパンが焼けるというものでもない、というものでもないけど、それほど高価格の機械がよいわけでもない。炊飯器も高価なのがあるけど、鍋で炊いてもそれほど変わらない。この手のものは高ければいいというもんじゃないし、焼き魚が食いたいんだよということからすると、フィッシュロースターかなとは思う。

cover
Panasonicマルチグリラー
 迷ったのは、仕様を見ていると、この2機、違いがよくわからないことだ。値段差もさしてない。フィッシュロースターのほうが魚焼きに特化されているんだったら、決まりだと思うだが、わからない。ので、パナソニックに聞いてみた。あまり変わらないということだった。マルチグリラーのほうが遠赤外線機能が強化されているというくらいらしい。へぇ。じゃ、そっち。(私は松下電工の「いもまるくん」という焼き芋器を使っているので松下の遠赤外線機能は信頼しているのだった。)
 価格の安いところはどこかなと調べてみると、アマゾン。あはは。そういう時代か。というわけで、ぽちっと。翌日届いた。昔のパソコンみたいにでかい箱に入っているのかと思ったがそうでもない。重さもそれほど重くない。微妙なサイズ。
 さて、魚を焼くかと魚屋に突っ走る。銀ダラの切り身を買って、塩して焼いてみる。うまー! ありえないうまさ。泣けてきそうなのは、皮がうまいのよ。子供のころ、鮭の切り身でいちばんうまいのは皮だよなというのを、ふっと思い出した。当時は七輪で焼いていたもんな。
 翌日も魚屋に突っ走る。鮎を焼いてみる。うまー! もともと鮎はガスレンジで焼いてもそれなりにうまいのだけど、これガス臭くない。皮もうまい。熱は上下からくるのでひっくり返す必要もない。
 その翌日も魚屋に突っ走る。鰺を焼いてみる。うまー! うざいループになってきたが、ほんと驚いた。焼けた鰺にオリーブを垂らし、レモンを絞って瞑目するとカバラの港が思い浮かぶ。猫はどこだ。
 肉はどうなん? 鶏モモ肉買ってきて、ねぎまを焼いてみた。うまい。豚のスペアリブを買って、下ゆでして、たれに付けてから焼いてみた。泣けるほどうまい。
 煙が出ない。ゼロということはない。でも、ほとんど出ない。どういう仕組みなのか、取扱説明書には書いてあるがよくわからない。でも出ない。臭いもほとんど漏れない。メンテナンスもそんなに難しくない。
 魚屋行って旬の魚選んで、塩焼き用にわたをとってもらって、このグリラーで焼いて食えば、年を取っても幸せなんじゃないかなと思えてくる。というか、松下さんこれを世界の人に売りまくったらよいのに。そして、私も海外脱出…とかね。


追記
Panasonic マルチグリラー シルバー NF-MG1-Sの取扱説明書(参照PDF

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2010.06.27

[書評]中国に人民元はない(田代秀敏)

 25日付けの日本経済新聞の社説「変わる中国の労働事情 踏まえた戦略を」(参照)で少し気になったことがあった。話題は、中国の労働者問題である。


 ホンダが系列部品工場のストで乗用車の生産停止を一時余儀なくされたのに続き、デンソーの工場のストの影響でトヨタ自動車が生産停止に追い込まれた。
 ブラザー工業や韓国の現代自動車、台湾の奇美電子の工場でもストが起きた。目立つのは賃上げを軸とする待遇改善の要求だ。スト回避のため賃上げに応じた外資も多い。

 中国も国力を増すにつれ労働者意識も自然に向上するだろうということに加えて、日経ではあまり明白には書いていないが外資ということもありあそうだ。その点はAFP「中国労働者の「反乱」、外資系工場に集中する理由とは」(参照)のほうがわかりやすい。ようするに外資なら相手にしてくれるだろうという読みが背景にある。

 一方、国内企業ではなく外資系企業が相手なら中国政府も労働者の支援にまわりやすいことを、労働者側はよく心得ていると指摘するのは、香港に拠点を置く労働権利保護団体、中国労工通報(China Labour Bulletin)のジェフリー・クロソール(Geoffrey Crothall)氏だ。「中国企業のオーナーたちは政府高官とよほど関係が深い。その事実と一連の争議は大きな関係があると思う」
 国内工場の悪質な労働環境については国営メディアでも大きく取り上げられ、社会的混乱への懸念が高まる中、温家宝(Wen Jiabao)首相は今週、出稼ぎ労働者の待遇改善を呼び掛けた。しかしメディアが焦点を当てているのは外資系工場の争議で、中国企業の工場にはなんの問題もないような印象を与えている。
「ストライキは普段、中国では報道されないが、われわれが知らないだけで、中国企業の工場でもたくさんあるはずだ」とクロソール氏は述べている。

 案外国内問題を外資にぶつけているという構図もあるのかもしれない。
cover
中国に人民元はない
 ところで日経社説で気になったのはそこではなく、次の部分だった。中国で労働者が不足しているというような印象を与える。

 待遇改善の要求が高まった原因として、労働市場の構造変化が指摘されている。無尽蔵ともいわれた農村部の余剰労働力が、30年来の産児制限政策の影響もあって急速に減少しているという。
 農民工と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者の賃金は長らく伸び悩んできたが、ようやく買い手市場の時代が終わったようにみえる。

 そうした統計があるのだろうかとまず、疑問に思い。ああ、そういえばと、以前に読んだ「中国に人民元はない(田代秀敏)」(参照)を思い出した。もう一つ、この本を思い出したのは、社説がこう続くことだった。

 「量」だけでなく「質」も変わっている。従来は蓄えができたら故郷に帰る農民工が多かった。現在、若い農民工の大半は出費のかさむ都市部での定住を目指している。「より高い収入を」との思いは切実だ。

 日経の視点では、(1)量として農民工が減っている、(2)質として農民工が都市定住のためにより賃金を求めている、ということだ。
 そうなんだろうか。そうなのかもしれないが、この問題はもっと中国に由来する問題だろうということで先の本を思い出したのだった。「中国に農民の失業はない」としてこう書かれている。

 学生の就職難や失業も大きな問題だ。しかし、農地を捨て都市に流れ込んできた一億人を超える「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者たちの失業は、さらに深刻だと思われる。

 として深刻な状況を描くのだが、

 ところが、中国の統計のどこにも、農民の失業はないのである。

 本書は2007年のものなので、その後の変化もあるかもしれない。日経社説のように農民工の労働力も足りなくなっているのかもしれない。
 本書をなぞると、そもそも農民は農村戸籍上、失業もできないようになっているらしい。ないのはそれだけではない。

 農民が排除されているのは、失業統計だけではない。農民には、年金がない。医療保険がない。最低賃金の保証もない。


 中国で農民は職業ではなく、階級であり身分である。

 そういうことなのだが、これには本書で書かれていない別側面がないわけでもない。農村籍では事実上、農地と住居は保証されている。
 しかし、全体の傾向は変わらない。

 都市民と農民との経済格差は拡大するばかりである。その結果として、一億人以上の農民が農地を捨てて都市に流れ込んでいる。だが、農民は都市で社会保障を受けることができないし、その子供たちは義務教育の小中学校にさえ通えない。


 近い将来、そうした子供たちが長じて労働市場に参入しようとしたときには、様々な障壁に直面し、社会そのものに深い恨みと憎しみとを持つのではないかと危惧される。

 本書は2007年でそれから3年の予言というには射程が短か過ぎるようにも思えるが、この問題は2007年以前からもあるという意味では、「社会そのものに深い恨みと憎しみとを持つ」という現象が顕在化したのではないか。冒頭日経社説でひっかかったのはそこだった。
 別の言い方をすると、不足する労働力というのは農民工をベースに見るなら、統計もなく議論のしょうもない問題ではないか。また、「都市部での定住を目指している」というのは、この階級差を前提にしてみたとき、賃金格差の不満という以上のものがあることはわかる。どれほど賃金があっても農民は都市民にはなれない、という問題。
 いや、なる方法もあるというか、なる方向性もある。8日付け人民網「農民工、点数に応じ都市戸籍取得可能に 広東」(参照)より。

 広東省政府は7日、「農民工(出稼ぎ労働者)積分制都市入籍業務の展開に関する指導意見(試行)」を発布した。今年から2012年まで、同省は省内に戸籍を有する農民工および共に連れ添った親族の約180万人について、点数に基づいた積分制により都市戸籍取得を促す。
 新たに発布された農民工都市入籍積分制は、積分指標が全省統一指標と各市が独自に定めた指標の両者からなり、各指標に対して一定の値が与えられる。原則上、60点を満たした農民工は都市戸籍取得が申請可能となる。
 「今回の規定は社会政策上、突出した学歴と技能を同様に重んじ、農民工の文化・技能の学習を奨励するもの」。広東省人力資源・社会保障庁の林王平・副庁長によると積分指標について、社会貢献経歴がある場合は加点され、違法犯罪があった場合は減点対象となり、農民工の積極的な社会貢献を奨励する。

 ところでこうした話を聞いて私が思うのは、簡単にいえば、ああ、賄賂が必要なんだろうなということである。
 つまり、なのでカネだよな、ということでもある。
 そんな公私混同でよいのだろうか。
 というあたりで、本書にある「中国に公私混同はない」という議論がためになる。この説明が爽快なほど。中国では公私は歴然と区別され混同しようもなく、そもそも公の物を私物化するのが「能力」ということ。
 本書は、他にも中国のないない話が続く。
 タイトルにもなっている「中国に人民元はない」は歴史背景もあって面白い。実は、親中派というお花畑な人はさておき、ある程度現代中国に関心をもつ人なら本書のネタの大半は既知だろうと思うが、ところどころ、へぇと思う。

 それでは「人民幣」が中国の通貨なのかというと、そうではない。
 「人民幣」が最初に発行されたのは一九四八年一二月一日である。その翌年の一九四九年一〇月に中華人民共和国が成立した。だから、人民幣は中華人民共和国よりも古い。したがって、人民幣が中華人民共和国の通過であるはずはない。

 人民幣を発行している中華人民銀行は共産党が設立したものであるとして、だから共産党の通貨だとする。
 歴史の経緯としては面白いが詭弁くさいかなと思っていると、追い打ちがくる。共産党の通貨は、穀物や肉など物財本位制度として国民党の通貨を打ち負かしたのだという経緯が語られる。ああ、なるほどね、である。
 この話の締めはこう。

 だから、中国共産党にとって、物価と対ドル為替レートの安定は国是ならぬ党是なのである。

 ここは、ああ、なるほどねとはちょっと言い難いが、なかなか日本や米国から見えてこない視点だ。
 そうえばAFPの記事では、労働問題を抱えているのは外資だけではないだろうとしているが、「中国に企業はない」を読むと、ちょっと視点が変わる。
 企業内の指揮系が確立されないかに見える中国企業で、企業統治はどうなっているのか?

 結局、企業の内部に形成された中国共産党員のグループである「党組」つまり党組織が、企業の経営を実質的に統括することになる。
 外国企業と合弁している中国企業はもちろん、日本やアメリカの外国企業の中国法人にも、たいてい、党組織が形成されている。党組織がなかったら、山猫ストライキは頻発するし、通知も徹底しない。

 まあ、そういうことなんだろう。(どうでもいけど、「山猫ストライキ(wildcat strike)」なんて懐かしい言葉。)
 ところで、中国ってほんとどうなるんだろうと本書を読んで中国のことが心配になる人がいたら、ご安心を。民主党政権で日本もそうなるから、気にならなくなるよ。

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