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2010.12.11

カンクン気候変動枠組み条約会議で、カオナシ日本と神隠しの菅

 メキシコ、カンクンで開催されていた気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が閉幕した。結果については、「緑の気候基金」、温暖化の影響を受けやすい国々の対策強化、途上国も温室効果ガスの削減に取り組むといったことが挙げられないわけではない。だが事実上拘束力はなく、徳目という以上のものではない。今回のCOP16で重視されたのは、京都議定書について、その期限切れとなる2013年以降も継続するかという問題だった。これは来年に先延ばしになった。実質的に見るならCOP16には成果はなかった。
 そのことで、国際社会から菅首相と日本が非難されることになった。国際社会にソフトパワーを維持したい日本には大きな打撃となってしまった。
 日本としては、COP16に成果がないことで安堵した面がある。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づける京都議定書が継続されれば、先進国といっても大量の温室効果ガスを出す米国は含まれておらず、実質日本が屋根に上ったものの梯子を外されたようにもなる。
 しかし、COP16の問題は今回特有の問題ではなく、コペンハーゲンで開催された昨年のCOP15でも同じだった。昨年のCOP15でも、京都議定書を継続させないためにと言ってもよいと思われるが、日本からは鳩山前首相自身が出席し、鳩山イニシアチブが提示された。
 鳩山イニシアティブでは、2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減するとし、さらに途上国資金支援を銃リアの約90億ドルから約150億ドルに積み増しをした。だが、COP15は実際のところ決裂寸前となり、鳩山氏の帰国後、出席していたオバマ米大統領が尽力し、会合の決裂を避け、なんとか「コペンハーゲン合意」をまとめた。昨年のエントリーでも触れたが(参照)、2009年12月19日共同「コペンハーゲン協定の要旨」(参照)も引用しておこう。


 一、われわれは(産業革命以来の)気温上昇を2度より低くするためには、世界の温室効果ガスの排出量を大幅に減らす必要があるということに合意。この目標を達成するために行動する。
 一、先進国は、発展途上国が温暖化の影響に適応するために十分、かつ予測可能で継続的資金を提供するべきであるということに合意する。
 一、先進国は個別、または共同ですべての経済活動をカバーする2020年までの排出削減目標を定め、10年1月31日までに付属書に掲載する。京都議定書の加盟国はこのようにして議定書による削減目標を強化する。
 一、途上国は、付属書に定めるものを含めて、排出削減につながる行動を取り、2年に1度、条約に報告する。
 一、森林の破壊や劣化による温室効果ガスの排出を減らすことの重要性を認識する。
 一、先進国が共同で10~12年の間、途上国に提供すると約束した新規かつ追加的な資金の額は300億ドルで、排出削減や適応、森林保護などに充てられる。
 一、先進国は20年までに、途上国のニーズに応えるため、共同で毎年1千億ドルの資金を可能にすることを目指す。

 昨年のCOP15について、共同通信の要旨を読むと、京都議定書の扱いがよくわからない。だが、この時点で、実質的な2013年以降の新議定書の採択期限は含まれていない。昨年もただ先延ばしだった。
 話を今回のCOP16に戻すと、今年は昨年とは打って変わり、日本から首相、米国から大統領が出席するという熱気からはほど遠い。昨年の鳩山イニシアティブやオバマ米大統領によるコペンハーゲン合意の位置づけも、報道からはよくわからなかった。
 少なくとも日本は、もっと熱意を示すべきではなかったか。単純な話、鳩山氏が民主党から特命で参加すべきだったのではないだろうか。日本が京都議定書の終了のために、是非鳩山イニシアティブを推進したいというなら、鳩山氏の出席はよい意思表示になっただろう。
 とはいえ、非常に疑問なのは、現在の民主党政権はこの問題をどう考えているのかがよくわからないことだ。
 COP16で日本は結局、総攻撃にあった。国内報道では10日付け産経新聞記事「「世界を暗黒に落とす」日本を英・ブラジル批判 COP16議事録入手 」(参照)が一部を伝えていた。

 京都議定書は、先進国のみに12年までの温室効果ガス排出の削減目標を義務付けている。批准していない米国や途上国扱いの中国などが対象外なので、日本は先月29日のCOP16開幕早々、延長を認めない方針を表明。新興国などから批判の集中砲火を浴びてきた。
 議長のエスピノサ・メキシコ外相は、14カ国の閣僚級を分野ごとの調整役に専任。京都議定書担当は、中国などと延長論を主導するブラジルと、延長やむなしとする英国となった。


 英国とブラジルは議定書を暫定的に延長し、その後に米中を含む新しい枠組みと統合させる案などを持ち出して妥協を求めたが、日本側は、米中が枠組みに加わる保証がないとして「ノー」を繰り返した。
 業を煮やした英国は「金曜日(10日)の段階で決裂したら世界中の人々を暗黒に突き落とすことになる」と批判。さらに「会議が失敗に終われば人々が日本について何を言うかは明らかだ。日本が新聞のヘッドライン(見出し)になる」と脅しともとれる言葉をかけたが、日本は「だれもレッドライン(最後の一線)まで追い詰めずに現実的な解決策を見いだすべきだ」と主張。1時間10分の攻防を終えた。

 英国から見ると、日本のせいでCOP16が実質失敗となったので、明日あたりフィナンシャルタイムズに厳しい社説が出てくるかもしれない。
 日本に閉じこもっている菅首相への攻勢も厳しかったようだ。10日付けBBC「Japan targeted on Kyoto climate stance at Cancun Summit」(参照)が伝えていた。

As this year's UN climate summit nears its end, nations looking for a new deal have launched a diplomatic assault on Japan in the hope of softening its resistance to the Kyoto Protocol.

今年の国連気候サミットがその閉幕が近づくにつれ、新しい取り決めを模索している国々は、京都議定書への抵抗を軟化することを望んで日本に外交の攻撃を開始した。


 菅首相への電話による呼び出し攻勢は、11日NHK「COP16 妥協模索の動きも」(参照)がその様子の一端を伝えている。

こうしたなか、10日夕方、草案作りに関わっているイギリスのキャメロン首相が菅総理大臣と電話で会談し、日本に協力を求めたほか、関係者によりますと、国連のパン・ギムン事務総長も菅総理大臣と電話会談したということで、日本への働きかけが強まっています。こうした動きを受けて、政府内には、日本が合意の障害となったという批判を避けるためにも、合意に向け妥協を図るべきだという動きも出ていることが明らかになり、大詰めを迎えた交渉への影響が注目されます。

 菅首相が電話攻勢にどう答えたかについては報道からはわからない。結果を見るかぎり、日本側からの妥協はなかったので、率直な推測をいえば、菅首相は、まいど国会で原稿を棒読みするようなようすで電話に答えたのではないだろうか。
 菅首相の引きこもりは予想された事態でもあったため、今回のCOP16の最中、10日フィナンシャルタイムズに、日本への要望を掲げた意見広告が出た。共同「菅首相にパロディーで訴え 議定書めぐる交渉姿勢で」(参照)より。

京都議定書を押し流さないで―。メキシコでの温暖化会議に合わせ、米国の市民団体が10日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)に、菅直人首相に対し日本政府の交渉姿勢を和らげるよう求める意見広告を掲載した。
 菅首相の顔写真を、アニメ「千と千尋の神隠し」の画像に合成し、映画の宣伝に見立てたパロディー。「菅首相は議定書の新たな削減目標を拒否できるという幻想に生きている」と批判。「交渉は泥沼化している。菅首相は目を覚まして」と呼び掛けている。
 アニメの制作会社スタジオジブリの広報によると、市民団体から画像の使用許可要請は来ていないという。

 これである。


JAPAN PRESENTS
A THREATENING TO ABANDON KYOTO FILM
Climate treaty: Washed Away?
日本がお届けする
京都フィルム断念の脅威

Japanese Prime Minister Naoto Kan is living in a fantasy–imagining he can refuse a new Kyoto Protocol commitment period without wrecking hopes for a global climate treaty. As UN talks in Mexico bog down, the world needs Kan to wake up: if he abandons Kyoto, the climate treaty will be washed away!

日本の菅直人首相は幻想に住み、地球気候条約のための希望を破壊せずに新しい京都議定書への関与期間を断ることができると想像している。国連会議がメキシコの沼にはまるなか、世界は菅に目覚めて貰う必要がある。もし、京都議定書が見捨てられたら、気候条約は流出するだろう。

AVAAZ.ORG & TCKTCKTCK.org, IN ASSOCIATION WITH ALL LIFE ON EARTH, AT THIS WORLD-IN-THE-BALANCE MOMENT, URGES NAOTO KAN AND THE GOVERNMENT OF JAPAN TO RECOMMIT TO THE KYOTO PROTOCOL TO PREVENT US ALL FROM BEING WASHED AWAY

AVAAZ.ORG & TCKTCKTCK.orgは地球上の生命とともに、世界が均衡にあるうちに、菅直人と日本政府に再び、京都議定書に関与し、すべてが流出されるのを防ぐように促している。


 米国は実質、すでにCOP16を見捨てているし京都議定書にも関心はない。中国は自国を途上国としているから中国の温暖化ガス削減義務を負わない京都議定書を日本に押しつけようとしている。英国や欧州からの信頼もCOP16で失っている。
 日本には重たい課題が残されることになった。


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コメント

 要するに、二酸化炭素の“排出権取り引き”という「温暖化詐欺」が破綻しただけのことでしょう。
 そりゃあ、唯一残った飯のタネを潰された英国やそれで儲けようと思っていた途上国等は怒るでしょうが、日本としては旨味も何もない話しなので、結果自体は悪くはなかったのではないですか。
 まぁ、自民党政権ならやりにくかったでしょうが、今回の問題で、先のない民主党の空き菅総理が泥をかぶってくれるなら、民主党の唯一の外交的な成果となるかもしれませんね(それを見越して官僚が主導したようにも思えますがw)。

投稿: optec | 2010.12.12 15:38

私は25%の鳩山さんよりも菅さんの対応の方がもっともだと思います。京都議定書の延長反対で攻撃されると言っても欧州とNPOだけ。日本は省エネに努めているし、米中のように悪い成績の国ではありません。
「緑の気候基金、温暖化の影響を受けやすい国々の対策強化、途上国も温室効果ガスの削減に取り組むといったこと」から再スタートするのがよいのではありませんか。

投稿: kappnets | 2010.12.15 17:00

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