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2010.12.31

簡単にできて面白いトランプゲームといったらブラックレディー

 簡単にできて面白いトランプゲームといったらブラックレディーというのが、たぶん、グローバルスタンダード。Windowsにも「ハーツ」という名前でおまけになっている。

WindowsのHearts
Windowsのおまけのハーツ

 ブラックレディーは国際的には有名だが、その割に日本ではあまり見かけないような気がする。以前、小中学生に聞いたら知らないと言っていた。ブラックレディー以外にハーツまたはハートという呼び名もあるし、名前が違っても同じゲームということもあるので、これこれというゲームなんだがと補足しても、知らないとのこと。じゃ、トランプで何やってんのと聞くと、大富豪らしい。僕らの世代で大貧民と言ってあれか。あれは、やれば面白いのだけど、フォローが気持ち悪いんだよな。ルールもローカル多すぎて。ちなみにiPhoneアプリの「大富豪しよっ!!」をみると各種のローカルルールがオプションで選べるので感動した(キャラに感動したわけではないよ)。
 ブラックレディーといえば、現代日本だと、あれ(参照YouTube)が有名かもしれないが、トランプではスペードのクイーンのことであり、プーシキン「スペードの女王」(参照)や、そこから出来たチャイコフスキーのオペラを想起するのが常識の部類ではあるが、あれに使われているトランプはファラオンという一種の賭けで、このトランプゲームのことではない。いずれにせよ、このゲームではスペードのクイーンが不吉な意味を持つ。
 ブラックレディーを一言でいえば、不運のなすり合いである。他人を陥れたい人にはネットで匿名の悪口を書くより向くだろうし、そのほうが平和というもの。
 ゲームのルールはいたって単純。日本のトランプ状況からしてシンプルな欠点があるとすると4人でするゲームということだけだろう(ただし、3人または5人でできないことはない)。

使うカード
 ジョーカーは使わない。
 カードの強さは、強いほうから、A,K,Q,J,10,9,8,7,6,5,4,3,2。

ゲームの目的
 マイナス点が少ないプレーヤーが勝ち。
 マイナス13点になるスペードのクイーン(♠Q)と、ハートのカード()をできるだけ取らないようにする。

スコア
 手札がなくなったら1ゲーム終了でスコア(得点)を付ける。
 獲得したカードの点数がスコアになる(ただしマイナス点)。スペードのクイーンは-13点。ハートのカードは数字でマイナス点。Aは-1点。最悪は-26点になるのだが、この最悪を達成するとグランドスラムまたはシュート・ザ・ムーンとして、達成者以外の3名にそれぞれ-26点が付く。
 -100点に達したプレーヤーが出たら、その人が負けということで、終わり。

配り方
 よくシャッフルしてから、4人に1枚ずつ、計13枚配る。
 誰が配るかは4人で決めておく。(通常、前回ゲームで負けた人。)

ゲームの仕方
 最初に、各人手持ちの3枚のカードを交換する。3枚を選んで左隣の人に渡す。自分も右隣の人から3枚受け取る。
 ゲームの進行の規則は、最初にカードを出した人のマーク(♠♦♥♣)に合うカードを出す(フォローする)こと。手札にそのマークがなければ、自由に出してよい(これが狙い目)。
 1枚目に出すカードは♣2。つまり、この♣2を持っている人からゲームを始める。時計回りに次の人がカードを出す。
 4人で4枚のカードが出たら、マークに合ったなかで一番強いカードの人がその4枚のカードを得る。(言うまでもないが得て嬉しいものではなく、不幸のカードを押しつけられることが多い。)
 手札がなくなったらゲーム終了。スコアを付ける。

3人または5人のとき
 このルールはあまりはっきりしていない。以下を提案。
 3人のときは、♠2を抜いた51枚を17枚ずつ配る
 5人のときは、♠2と♦2を抜いた50枚を10枚ずつ配る。


 これでたぶんゲームができると思うがどうだろう。Windowsがある人は、おまけの「ハーツ」でやってみると理解が深まるだろう。覚えたら、実際に仲間を集めて(小学生でもOK)、バイスクル(参照)のように手触りのいい本物のカードでプレイすると楽しい。
 ブラックレディーの面白さのポイントは、なんと言っても不幸な失点カードをできるだけ嫌な奴に押しつけることだ。当然、そんなことをする奴は嫌な奴なので同じ目にあう。不幸のなすり合いってなんて楽しいんだろうと、トランプで悦楽を堪能して、日常生活でそういう充足をはからないようにしましょうね。
 やってみるとわかるが、かなり高度な戦略が存在する。いろいろ研究されてもいる。例えば、♠Qは最初に相手に渡さず保持したほうがよいことが多いなど。
 このゲームにはどういういきさつがあるのだろうか。私の書架にある松田道弘の「トランプのたのしみ」(参照)を見ると、1885年の「スタンダード・ホイル」の記述から、その5年ほど前から米国だけでプレイされているが、おそらくドイツ生まれであろうとしている。
cover
楽しくはじめる
トランプ入門
松田道弘
 してみると1880年頃に米国でドイツ移民から広まったのではないか。日本でいうと明治13年ころになる。
 私がブラックレディーをするたびに思うのは、その原形である。やってみると誰でもわかるように、これは、非常に基本的なトリック・テーキング・ゲームから出来ている。つまり、オープニング・リード(1枚目を出すこと)をした人のスーツ(マーク)に合わせてフォローする(同じスーツを出す)ことだ。
 不思議に思うのは、そのもっとも基本的なトリック・テーキング・ゲームは何と言う名前のゲームなのだろうか、ということ。
 トランプのカードを構成を見ても、これは明らかに、そのゲームのために出来たカードであるはずなのに、その祖型がよくわからないなんてことがあるんだろうか。もちろん、トランプ自体の祖型は占いカードではないかとは思うが、ゲームとは別であろう。
cover
バイスクル
ライダーバック
 普通に考えれば、ホイストの原形のトリック・テーキング・ゲームとなるので、ホイストの歴史を見ればよいのだろうが、ホイストは2組で争うという特殊なゲームのようにも見える。ついでに、日本で定着した「トランプ(切り札)」という呼称もホイストへの一種の誤解から出来ているから、日本でも明治時代あたりにホイストがプレイされていたのではないか。
 というか、私は何か勘違いしているのかもしれないので、そんなこともわからんのかという方がいらっしゃったら、教えてくださいな。
 では、よいお年を。

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コメント

1月1日家族とリアルハーツをしました。(ブラックレディーというゲームとは知りませんでした)
私はシュートザムーンを2回試みて1回成功しましたが、結果的には3位でした。PCではなくて実際にカードを使ってやるので、我が家ではリアルハーツとよんでいます。finalventさんにも良いお正月でありますように。

投稿: val | 2011.01.02 00:24

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