[書評]ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(いしたにまさき)
「みたいもん!」(参照)のいしたにまさきさんが、ブログとツイッターをやっている、著名ブロガー、ネット文化のわかる文化人、ネットで著名なエンジニア、Webサービス運営者、そしてそれに収まらない人110名へのアンケートをもとに、なんでこの人たち、ブログとかツイッターの活動しているのか?という秘密に迫る書籍を出した。
ネットで成功しているのは 〈やめない人たち〉である いしたに まさき |
アンケートはこんな感じ。
- いちばん好きなWebサービスは何?
- これまで一番衝撃を受けたWebサービスは何?
- ネットで情報発信する際にいちばん必要なスキルとは?
- ネットで発信する際に心がけていることは?
- 収入面での変化はあった?
- それはネットをはじめて何年ったってから?
- ブログのアクセス数を増やす努力はしている?
- ツイッターフォロワー数を増やす努力はしている?
私ことfinalventもアンケートに回答してる。
いしたにさんの活動は面白いなと思っていたので、なんかの足しになればいいやと軽い気持ちで回答した。なので、私の回答も掲載されているのだが、いやはや、こういうことになろうとはね。(そして本書も書店に並ぶ前にいただいた。)
回答されている方々がいちいち面白い。マスメディアからは見えないブログの世界ならではの著名人というのだろうか、怪人と言ってもいいんじゃないか、なんとも独自の雰囲気のある方が勢揃いという印象がある。名前がわからなくても、ブログ名を見ると、ああ、あれね、とピンとくる。dankogaiはどうした。
そのピンとくる感じと回答がそれぞれ絶妙にかみ合っている。「そうなんだろうな、そう考えているんだろうな」というのがよくわかる。それでも、これだけずらっと回答集を並べてみると、なんなんでしょうね、この人たち。不思議な感じ。
おそらく、この人びとがリアルな日本の、なんというのかな、言論とも違うし、サブカルチャーというのでもないだろうけど、なんか不思議なインパクトを与えていますよ。
書名に〈やめない人たち〉とあるけど、少なくとも3年もやめないでを発信し、それなりにどっかで受信されている。この通信というのは、3年であれ、多数の人にとって対話的な人生の一部なんだろう。人びとがその中で生活する社会の一種なんだろう。
ブログとかツイッターというのは、マスメディアに対比されるメディアであったり、商品やサービスの消費者メディアのようにも思われるけど、どっちかというと、大学の同級生というかなんかわけのわからない仲間のような、仲良しというわけでもないか、あちこち日々ドンパチしたり炎上したりもしているが、それでもこの砲火とどろくなかで、実名・ペンネームかかわらず発言しつづけ、それを見捨てずに受容している人びとの連帯みたいな、なにか一定の空間なのだろう。
なんなんでしょう、これ。
その不思議さに、いしたにさんは本書で素直に直面している。その素直さには、ジャーナリストやライターにありがちな外連味のないのがいい。知的な産出にエバノートの活用とかの話が出てくるのは若干ご愛敬でもあるが、なんなんだろうと思いあぐねる原石のような疑問は新鮮だし、たんまり回答が集まって、うわぁこれなんなんだろうと、と、しかし楽しげに取り組んでいる感覚も生き生きとしている。
そうした疑問について、本書でうまく話がまとまっているかというと、そこは人それぞれ受け止め方は違うのではないだろうか。私としては、ライフハック型の、暑苦しいよ君、といったまとめがないのは、よいことだと思う。
本書を読んで標題通りに「ネットで成功」できるかといえば、「野暮なこと聞くなよ」というのは別とすると、とりあえず成功の中身は問わず、あるいは〈やめない人たち〉になるというのを成功と仮に見なすなら、きちんと秘訣は描かれている。この怪人たちは、それほど自分と違った人ではないし、ぬるいかもしれないけど表現者になることは誰だって可能だという感覚も見えてくる。一言でいうなら、面白ってことを大切にして、無理をせず、発信続けること、なんだけど。
ブログとかツイッターが面白いなと感じ、本書にもあるように、無理をしないという飛行体勢が3年維持できれば、それ自体が大きな変化だろうし、その変化は各人が意味づけもできるだろう。
そうした一人一人の意味づけに、本書はネット的な距離感でそっと風が通りやすいようにも開かれている。
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コメント
あっしの場合は、記事数が100を超えたあたりからお客さんが30人を超え始め、記事数が400を超えた今、お客さんが60人を超えているという具合です。でも、ときどき休みを入れても、1日に記事を二つ入れるのは大変ですね。結構消耗します。
累計で訪問客が一万人を突破したということは、硬い話題のブログですから、それなりに社会的影響力を発揮し始めているということだろうと思っています。
結構、美術展覧会の批評をキーワード検索で見に来てくださる方もいて、こういう分野も案外関心を持つ人も多いみたいです。
私の書評は、新刊書ではなく、スタンダードに長期的価値を持つ著作の書評を中心にしているんで、集まりは悪いですね。
時事はだめです。今起きていることの意味がよくわかるのは、いろいろ経過して、ずいぶん時間がたってからだから。
今、「革命」の発火点にするつもりでブログを書き続けています。現代版松下村塾というほどレベルは高くはないですけれど。でも、自分の文章は、結構、無意識的ながら陽明学の影響を受けているのかもしれません。
投稿: enneagram | 2010.11.24 10:05