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2010.10.13

北朝鮮の核開発が一段と進展するなか中国は非核化にコミットしない

 北朝鮮の核開発が一段と進んでいる。国内報道がないわけではないが、重要な問題のわりにあまり注目されていない印象があるので言及しておこう。
 ざっと見渡すと毎日新聞とNHKの報道が目に付いた。問題の概要を知ることと、日本での報道を検証する意味もかねて9日付け毎日新聞「北朝鮮:ウラン濃縮、開発拡大 米研究所「試験的生産」--「実験成功」裏付け」(参照)から見てみよう。


【ワシントン草野和彦】米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所」(ISIS)は8日、北朝鮮のウラン濃縮計画が「実験」から「試験的生産」へ拡大した可能性があるとの報告を発表した。今後、北朝鮮の核を巡る交渉が再開された場合は、ウラン濃縮計画の破棄に優先的に取り組むべきだとも警告した。

 報道のきっかけは、記事にも言及されているように、米国科学・国際安全保障研究所(ISIS: the Institute for Science and International Security)の報告書によるものだ。
 同報告書のオリジナルは同研究所のサイトで "Taking Stock: North Korea's Uranium Enrichment Program"(参照PDF)として公開されて、誰でも閲覧できる。
 毎日新聞の記事はAFP"NKorea forging ahead with uranium weapons work: study"(参照)以上の内容は含まれていないので、記者がオリジナルの報告書を参照したかはよくわからない。
 同種の欧米報道としては、7日付けワシントン・ポスト記事「N. Korea pressing forward on nuclear program, report says」(参照)が詳しい。
 今回のISISの報告書をどう受け止めるかだが、見方によってはとりわけ衝撃的な内容ではないとも言える。すでに北朝鮮は昨年9月の時点で国連安保理に向けて、ウラン濃縮実験が成功し完了段階に入ったと報告しており、なるほど北朝鮮は有言実行であるということでもある。
 とはいえ、北朝鮮の核問題を扱う国際的な枠組みとしての六か国協議では、ウラン濃縮の問題よりも、実際の核実験に利用されたプルトニウムによる核兵器が重視されてきた。今回の報告が提起するのは、国際的により包括的な北朝鮮対応が求められることだ。
 NHK報道も毎日新聞報道に似ているが、こちらは中国の関与を明確にしている。9日付け「北朝鮮 ウラン濃縮技術進展か」(参照)より。

そのうえで報告書は、北朝鮮がウラン濃縮に必要な物資を隣国の中国を介して調達したケースが頻繁に見られるとして、中国の対応を批判しました。北朝鮮は核問題をめぐる6か国協議の再開に2年近く応じておらず、今回のアメリカのシンクタンクの報告書は、北朝鮮による核開発を食い止めるため、中国を含めた国際的な取り組みを急ぐよう警告しています。

 六か国協議の枠組みで、北朝鮮の核化抑制でもっとも期待されている中国が、端的に言えば、最大の問題になっている。実質北朝鮮の核化をバックアップしているからだ。
 さらに中国は、米国側からのこうした報告のさなかに、金正恩の権力ショーに中国共産党の周永康政治局常務委員を堂々と参加させている。このことは、「北朝鮮による核開発を食い止めるため、中国を含めた国際的な取り組み」とやらが、すでに明確に機能していないことを示している。米国オバマ政権の対北朝鮮政策がすでに破綻していることも同時に意味している。
 プルトニウムについての問題も提起されている。NHKの報道には言及がなく、毎日新聞記事では次のように曖昧な言及があるが、これだけでは意味が取りづらい。

 ISISは先月30日、北朝鮮の核施設の無能力化措置として爆破された寧辺(ニョンビョン)にある黒鉛減速炉の冷却塔跡地で、何らかの建設工事が進んでいることも明らかにしている。

 先のAFPやワシントン・ポストの記事などを参照するとわかるが、この新施設はプルトニウム生産設備の疑いが濃い。
 いずれにせよ対応は六か国協議の枠組みが基点になるのだが、この対応上で難問となるのは、先月行われたカーター元米国大統領の北朝鮮訪問の際、彼が出した混乱したメッセージである。9月15日のニューヨークタイムズに「North Korea Wants to Make a Deal」(参照)として寄稿されている。朝鮮半島の離散家族問題への前向きな対応の文脈で。

Seeing this as a clear sign of North Korean interest, the Chinese are actively promoting the resumption of the six-party talks.

北朝鮮国益の明確な兆候を見つつ、中国は六か国協議再開に注力している。

A settlement on the Korean Peninsula is crucial to peace and stability in Asia, and it is long overdue. These positive messages from North Korea should be pursued aggressively and without delay, with each step in the process carefully and thoroughly confirmed.

アジアの平和と安定において朝鮮半島問題の解決は重要であり、すでにその解決期日を超えている。北朝鮮からのこれらの前向きなメッセージは、各段階を注意深く推進しつつも、精力的に遅延なく推進されるべきである。


 カーター元大統領は今回の訪問で、北朝鮮の権力が金正恩に継承されるのはただの噂にすぎないと中国筋の奇っ怪な情報を振りまいて国際的な失笑を買ったものだが(参照)、こちらの提言は失笑で済ますには非常に危険なものになっている。
cover
誰がテポドン開発を許したか
クリントンのもう一つの“失敗”
 繰り返すが、すでに中国は、北朝鮮の核化が進むという報道のさなかに北朝鮮を支持する表示を行うことで、北朝鮮の非核化にはコミットしていないという明確なメッセージを出しているのである。
 対中問題という文脈で言うなら、尖閣諸島のいざこざなどたいしたことではないと思えるほどの問題がここに存在している。

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  タイトルの言い回しが「非核化」「コミットしない」と二重に否定形となっていて、何故このような言い回しになっているのか奇異に感じながら読み進めていくと、極東ブログが六カ国協議の立場から書いているという... [続きを読む]

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