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2010.10.06

No Pressure: ひとつの表現手段? 悪い冗談? エコテロリズム?

 我ながら趣味が悪いなと思う。まじめな話題のエントリーにもついくだらない冗談を交ぜてみたくなる。案の定、その手のエントリーにはBLOGOSさんからの転載依頼は来ない。もっとも転載依頼のなかった昨日のエントリーがBLOGOSに転載されていたりもする。
 ロッキーホラーショー(参照YouTube)も好きだし、モンティパイソン(参照youtube)も好きだ。サウスパーク(参照YouTube)も当然。だから、その手のものは理解したいと思う。ただ、これはなんというか、当初、ちょっと微妙な感じもあった。主張に対するひとつの表現手段? 単なる悪い冗談? まさかエコテロリズム?

cover
Mr.ビーン Vo.1
 話は今月1日に公開された「ノー・プレッシャー(No Pressure)」いうショートフィルムだ。作成したのは、地球温暖化を10%削減しようとする運動団体「10:10」。同団体は、この問題に関心のある個人や団体によって支えられている。地球温暖化をテーマにし、日本でも話題を呼んだドキュメンタリー映画「エージ・オブ・ステューピッド(The Age of Stupid)」の監督フラニー・アームストロング(Franny Armstrong)が2009年に設立したものだ。
 「ノー・プレッシャー」の作成にはフラニーに加え、「Mr.ビーン」や「ブリジット・ジョーンズの日記」を手がけたリチャード・カーティス(Richard Curtis)がいる。テレグラフの報道「Richard Curtis and an explosion of publicity」(参照)などを見るとカーティスのほうが話題になっている。
 「ノー・プレッシャー」というショートフィルムはどのようなものなのか。
 地球温暖化を10%削減しようというメッセージを伝える映像だが、該当YouTubeをここに貼り込む前に、その内容をもう少し説明してからにしたい。率直に言って、なんの説明もなく直に見るのは、悪い趣味が好きな私でもちょっと引くしろものだからだ。というか、私はリアル・スプラッタ系が好きではないこともある。
 4分ほどのショートフィルムだが、全体は4つのシーンに分かれている。最初のシーンでは、明るく朗らかで優しげな若い女性の中学校の先生が、二酸化炭素排出量を削減するためになにができるでしょうと生徒たちに教える授業だ。そして、では、これから二酸化炭素排出削減に取り組む人、手を上げて、と彼女は問いかける。全員がさっと挙手するかに見える。「ファンタスティック!(すばらしい)」 だが、二人の生徒は腕組みをし、うたがわしい顔して挙手しない。すると先生は、「いいですよ、かまいません。あなたたちの選択です、「ノー・プレッシャー(押しつけません)」とにこやかに語り、授業終了のベルで授業を終えようとするのだが、その前にと教材らしき紙の下にあった、赤いボタンが一つだけある起爆装置をおもてに出し、そのボタンを押す。と、挙手をしなかった二人の生徒が爆破され、血と内臓らしきものが飛び散る。教室中血だらけ。なつかしのキャリー(参照)かよ。
 二番目のシーンは階下のフロアに集まるオフィスワーカーに対して、内接階段の踊り場から管理職が見下ろし、10%の二酸化炭素排出削減の重要性を語る。そして、参加する意思のある者は?と問いかける。みんなか?と見回すとそうでもない。じゃあ、反対は?と問うと、四人ほど物憂げに挙手する。そして、「ノープロブレム、きみたちの選択だ」と管理職は語るが、そこで起爆装置が手渡される。「ゴージャス」と彼はつぶやき、ボタンを押す。すると反対挙手した人が爆破され、血と内臓らしきものが飛び散る。フロア中血だらけ。
 三番目のシーンではフットボール練習で選手らにコーチが語るのだが、このシーンではコーチに対して選手サイドが10%の二酸化炭素排出削減の重要性を順に説く。だが、コーチはそんなことに気をそらすなと諭す。すると、選手側の老人が起爆装置を取り出し、ボタンを押す。コーチが爆破され、血と内臓らしきものが飛び散る。さあ、練習再開だ。
 三番目のシーンの後には、プレゼンテーションよろしく10%の二酸化炭素排出削減のメッセージが表示され、ナレーションが流れる。その後、いかにもそのナレーションを収録している裏方のスタジオのシーンになる。エンジニアリング担当の若い男がガラス向こうのナレーションの女性に10%の二酸化炭素排出削減を問う。彼女は「冗談? ナレーションで貢献になるでしょ」と答えると、男は、「ノー・プレッシャー」と語り、彼女も「OK、バイ」と答えて作業終わりかに見える。と、そのとき彼は身近の起爆装置のボタンを押す。ナレーションの女性が爆破され、血と内臓らしきものがスタジオに飛び散る。最後の最後は血塗られた壁に、cut your carbon by 10%(10%二酸化炭素排出を削減せよ)」と表示される。
 まあ、そういう内容です。かなりグロいです。スプラッタです。
 映像を見たいかたは以下の画像がリンクになっています。なので、見るのは、Your choice(あなたの選択), No Pressure(押しつけません)。


No Pressure映像(グロ注意)

 このフィルム、もちろん、話題になった。すでにウィキペディアにも該当項目が出来ていた(参照)。
 こんな映像を公開してよいのかという怒りの声も上がった。一応、すぐに、数時間もしないうちに、引っ込められた。「一応」というのは、上のリンクから閲覧できるように現在でもYouTubeに掲載されており、予告などから想定すると、当初からそういう仕掛けだったのかもしれないと思えないでもないからだ。もっとも団体側はすぐに引っ込める意図はなかったとは述べている。
 先のテレグラフ記事では団体側アナウンスをこう伝えている。


“With climate change becoming increasingly threatening, and decreasingly talked about in the media, we wanted to find a way to bring this critical issues back into the headlines whilst makgin people laugh.

気候変動の脅威が増すのにメディアでに話題されることは減っているので、わたしたちは人びとを笑わせつつ、この重要な問題をメディアの見出しする方法を見つけたかったのです。

“Many people found the resulting film extremely funny, but unfortunately some didn’t and we sincerely apology to anybody we have offended.

このフィルムの成果がきわめて面白いと思う人が多くいますが、残念ながらそう思わない人もいます。私たちは気を悪くした人に心から謝罪します。


 米国の保守的なメディアであるフォックスでは「Enemies Among Us: Environmental Terrorists Release Disturbing TV Ads」(参照)」のように否定的な意見を強く出しているところもある。

A British television advertisement to promote the 10:10 climate change campaign to reduce carbon emissions has created a psychologically traumatizing series of commercials, which show how violent the environmental movement could become.

二酸化炭素排出削減団体10:10の運動を推進する英国テレビ広報社は心理的外傷になりそうな広報を作成している。この広報を見れば、環境運動がどれほど暴力的なものかがわかる。


 つまり、二酸化炭素排出削減運動の暴力性をこのフィルムに見るというのである。
 そういう見方もあるだろうし、それらを環境ファシズムや環境テロリズムといった文脈に起きたい人もいるようだ。
 私はというと、逆の感想を持った。やや度が過ぎるとはいえ、Mr.ビーンなどにも出てくる下品な顰蹙ネタの一種ではないかと思う。そして結果的に、環境保護運動もあまり熱心になるとテロリズムのように見えちゃうな、あはは、という自虐的なギャグなんだろうと思った。
 環境保護が主題なら、起爆装置のボタンを押すのは、二酸化炭素排出削減運動を説く側ではなく、それに疑念を抱く側が知らずに押しちゃったみたいなシナリオのほうが自然だっただろうし。

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「環境」カテゴリの記事

コメント

乙です。
そういえばうろ覚えですが、どこかの研究で、学生を無作為に2分し、

①のグループには
『環境に配慮したエコ製品を使用』させ
②のグループには
『普通の製品を使用』させる…

その後、あるゲームを行った所、①のグループに属する学生には、②のグループの学生に対して傲慢な態度をとったり、勝つためにルールを破ったり…という行為が多くみられたそう。
環境保護活動に身を投ずる人間が、他の人間に対して尊大な態度をとるのは、仕方ない事なのかも知れませんよねー。

ちなみに、プリウスによく煽られます、私。

投稿: | 2010.10.06 22:18

あぁそうか、環境保護のためにもっとも手っ取り早く正しいのは「人類十分の一刑(Decimatio)」なんだ。と素直に見るのは間違いなのでしょうか?

投稿: KU | 2010.10.06 22:48

サウスパークのリンクがあったのでついコメントを。こういう皮肉はセンスを問われるねぇ。

サウスパーク シーズン10-2 "Smug Alert"
http://www.southparkstudios.com/full-episodes/s10e02-smug-alert
環境保護なんて自分のケツから出るガスに満足してるだけだろ!というメッセージ。でもハイブリッドカー買ったら自慢したくなるよね。

サウスパーク シーズン10-6 "ManBearPig"
http://www.southparkstudios.com/full-episodes/s10e06-manbearpig
元副大統領のアル・ゴアさんは、地球温暖化二酸化炭素原因説を主張してノーベル平和賞をもらったよ!出落ち。最初の2分がすべて。

投稿: ぽぽん | 2010.10.07 07:27

終風さんのご理解で正しいかと。ブリティッシュジョークはこんなものだと思います。

投稿: richmond | 2010.10.08 23:56

文中の「二酸化炭素排出運動」は「二酸化炭素排出削減運動」が妥当だと思います。

投稿: 万打無 | 2010.10.09 21:32

万打無さん、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2010.10.09 22:35

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受信: 2010.10.07 05:23

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