菅改造内閣の印象
まずざっと閣僚を見ておきたい。
総理:菅直人(63)
学生運動家(全学改革推進会議リーダー)として政治活動を開始。第二院クラブ・市川房枝の挙事務所代表を勤めた後、日本社会党離党の国会議員らによる社会市民連合に加わり、1980年の衆院選で初当選。余談だが、このころ私の恩人が彼の後援会活動をしていたので妙に懐かしく思い出した。実家に色紙かなんかあるかもしれない。
総務:片山善博(59)
民間起用。元・自治省の官僚。後、鳥取県知事を二期勤め、鳥取県においては公務員採用の国籍条項を外した。
法務:柳田稔(55)
民社党→新進党→民主党。1973年東京大学理科Ⅰ類入学も寿司屋修行(参照)のため退学、1981年東京大学工学部船舶工学科に再入学。司法関係の背景はない。
外務:前原誠司(48)
日本新党→新党さきがけ→民主党。松下政経塾。2005年の民主党代表選挙で菅直人に2票の差で勝利し民主党代表となるも、永田偽メール事件でテンパり、お茶の間の失笑を買って辞任。
財務:野田佳彦(53)
留任。日本新党→新進党→民主党。松下政経塾。永田偽メール事件でも活躍して臑に傷を負う。
文部科学:高木義明(64)
民社党→民主党。新進党→民主党。元・三菱重工業長崎造船所の労組役員。安倍政権成立時には国対委員長として「閣僚の顔ぶれに新鮮さがなく、政策もあいまいだ」と語っていた。
厚生労働:細川律夫(67)
昇格。社会党→民主党。世襲。前内閣ではILO総会で公務員の労働基本権について「今後、労働基本権を付与する方向で検討を加速する」と明言していた。
農林水産:鹿野道彦(68)
自民党→新進党→民主党。世襲。2002年から一年間民主党を離党していた時期がある。理由は、元秘書尾崎光郎の逮捕。彼が役員を務める「業際都市開発研究所」で公共事業の口利きがあった。
経済産業:大畠章宏(62)
社会党→民主党。小沢支持。元・日立製作所の労働組合・専従役員。「茨城から日本を変える」が旗印の人生。
国土交通:馬淵澄夫(50)
昇格。元・三井建設社員。政策秘書・大西健介を通してアルファーブロガー「きっこ」と連繋し「耐震偽装問題」を追及していたことがある。「どこが無料にならないと路線名を上げると地元の方の感情がありますから選挙前は言いにくかったんです」 という調子で高速道路無料化の法案も担当していた。
環境:松本龍(59)
社会党→民主党。社会党・松本英一の秘書として政治活動を開始。世襲。部落解放同盟副委員長。
防衛:北沢俊美(72)
留任。自民党→新進党→民主党。長野県議会議員の父・北澤貞一を継ぐ。政治家としては世襲。
官房:仙谷由人(64)
留任。社会党→社民党→民主党。全共闘の活動家として政治活動を開始。
国家公安・消費者・少子化:岡崎トミ子(66)
社会党→社民党→民主党。社会党・土井たか子によるマドンナ旋風で政治家となる。元・東北放送の労働組合・副委員長。マスメディア。2001年参院選直前に、政治資金規正法で禁じられている外国人として朝鮮籍の学校法人理事長と韓国籍の会社社長から献金を受けていたことが発覚し返金してことなきを得たことがある。
特命 政策調査会長・国家戦略:玄葉光一郎(46)
留任。さきがけ→民主党。松下政経塾。妻の父・佐藤栄佐久は福島県汚職事件で懲役2年・執行猶予4年の高裁判決を受けるも、無実を求めて上告を検討している。
特命 行政刷新・公務員改革:村田蓮舫(42)
留任。元・グラビアアイドル(参照)。台湾系日本人。マスメディア。
特命 経済財政:海江田万里(61)
税金党→日本新党→民主党。小沢支持。自民党・野末陳平に私淑し、お茶の間経済評論家から政治家となる。マスメディア。
特命 金融・郵政改革:自見庄三郎(64)
留任。自民党・国民新党。学位は医学博士。
各種濃度
閣僚の平均年齢は、菅総理大臣も含め59.06歳。つまりだいたい60歳。団塊世代内閣。
初入閣9人で、半分入れ替え。新鮮度、50%。
元社会党から5人。社会党濃度、28%。
元自民党から3人。海江田氏を自民党系に含めると、自民党濃度22.2%。
55年体制濃度、44.4%。
世襲4人。世襲濃度、22.2%。
マスメディア出身3人。マスメディア濃度、16.6%。
松下政経塾出身3人。松下政経塾濃度、16.6%。
労組出身者3人。労組濃度、16.6%。
小沢支持者2人。小沢濃度、11.1%。
印象
幹事長には岡田克也(57)。イオングループの創業者の次男坊。元・通産省官僚。民主党代表も経験したがいわゆる郵政選挙に惨敗して辞任。なお、幹事長代理は直前の参院選挙の敗北責任者・枝野幸男(46)が降格という建前で晒しの残留。これってなんかの罰ゲーム?
普天間問題蒸し返しはなく、また米国受けのよい前原氏を外務省にしたことから、米国は一安心と思われる。中国としては逆にそのあたりが懸念材料。
小沢氏の支持が2名とはいえ、鳩山グループなので、事実上小沢派は入っていない内閣。民主党国会議員の半分の勢力を事実上はずした内閣なので、党としての腰は弱そう。とりあえず政調機能はできたが依然総務会機能はないので、小沢派がダメとかいうと党運営が行き詰まる。ねじれ国会以前にねじれ党。
旧社会党と労組出身者の割合が高く、社会党内閣という印象も強い。
政権成立の論功行賞人事というだけなのだろうが、厚労相が顕著だが、他も、経歴や背景知識からしてなぜこの人がこの大臣なのかという疑念が多々浮かぶ。まあ、官僚を信頼してということなのだろうか。赤松前農水相みたいな人が政治主導をするとろくでもないことになった反省からかもしれないし、意気を買って厚労相とした長妻氏も結局ぼろぼろだったので、大臣なんて素人でもよいという判断もあるのだろうか。
崩壊予測点。国家公安に反日デモとかに参加していた岡崎トミ子氏というのがつい笑えるところなので、そのあたりから崩壊するかというと案外、そうでもないかもしれない。失言・面白いという点からすると国土交通の馬淵澄夫氏だろう。前任者の前原が残した諸問題をさらにぐちゃぐちゃにしそうな気配があり期待される。失言といえば、すでに消費税問題でやらかした菅首相だが、だいぶ周りから抑え込まれているのでつまらない。ということで、この内閣は意外と、厚労省とか農水省とか現状あまり関心が向けられていないところからボロっと壊れるかもしれない。
ねじれ国会はどうか? そこは55年体制濃度の濃さが有利に働くのではないか。
小沢一派はどうなるか。こんな内閣で大丈夫なのかという傍観をしばらく決め込むだろう。小沢氏の政治生命と金脈がどこまで続くかというとそれほどでもないかもしれない。つまり実は小沢一派のほうがじり貧かもしれない。
日本はどうなるのか? 少なくとも鳩山氏がいない分だけ鳩山政権よりはマシだし、政調機能のない小沢政権の可能性よりはマシだろうから、これで少し我慢するしかないのではないか。マシというならずっと麻生政権のほうがマシだったがもう自民党は壊れてしまったし。
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コメント
経済関連諸問題が目の前に転がってる中で,労組系の人事が余計なことをしないか不安なところです.
投稿: umiushi | 2010.09.17 23:48
岡崎トミ子女史とか警察の大臣ですから、final先生もわたしも国家権力に監視されるかもしれませんよ。
そんなわけで、自分のブログでは基本的に菅内閣の話をするのはやめようと思っています。
わたしが亀有警察署で取り調べられた一件とか周辺の話なんかも、岡崎大臣に全部筒抜けになるんだろうな、きっと。
投稿: enneagram | 2010.09.18 07:18
>マシというならずっと麻生政権のほうがマシだったがもう自民党は壊れてしまったし。
麻生も福田もまだ輝かしく思えますが。
安倍内閣がどんなんだったかぜんぜん思い出せないんですけど。
でもまあ谷垣君以下、自民ご一行様にはここで山にこもって修業、くらいの気構えで修業して貰いたいもんです。こないだの野党時代よりはまだマシだと思いますから。
投稿: とおりすがりの。 | 2010.09.18 21:27