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2010.09.14

菅首相、続投

 民主党代表選挙では小沢氏が勝利すると私は予想していたので、見事に外れた形になった。小沢氏は立候補した時点で民主党国会議員票の半数を組織的に固めており、対する菅氏の組織的な票はその半数というスタート地点から考えれば、小沢氏優位を覆せるとは思えなかった。また世論に近い党員・サポーター票および地方議員票も半々程度に割れるくらいだろうと思っていた。
 予想が外れた理由は二点思い浮かんだ。一つは、世論に近い党員・サポーター票で菅氏が圧勝したことだ。党員・サポーター区分をポイントで見ると、菅氏が249ポイントであるのに小沢氏は51ポイントである。5倍近い差が出ている。総取り方式の影響もあるが、結果からすれば、市井の民主党員の大半は小沢氏をまったく支持していなかったと言ってもよいくらいだ。小沢氏に対する反感というより、首相をころころと変えることに違和感が強かったのではないか。
 もう一つは、民主党国会議員票で小沢氏支持が当初の組織票以上には伸びなかった点だ。明確に菅氏支持を打ち出していない民主党国会議員に向けて、小沢氏支持陣営の攻略がまったく効いていなかったと言ってもよい。つまり、小沢氏のグループは民主党内であたかも別の党派のように独自の結束だけに閉じていただけだったということになる。
 この二点について後付けで思うことは、菅氏の勝利は世論の勝利であったということだ。大差のついた党員・サポーター票は世論に一番近い。世論が民主党員・サポーターを動かし、玉突きのように、地方議員差を産み(菅氏が60ポイント対小沢氏が40ポイント)、さらに国会議員票での菅氏の票の上積みに影響したのだろう。
 私は、今回の民主党の代表選挙は、所詮民主党という一党派内のお家の事情に過ぎず、党派の論理に手慣れた小沢氏の手玉に取られるだろうと思っていたが、結果はそうではなく、国民の世論がボトムアップで民主党を動かしたのだろうと思う。
 今回の代表選では、投票の前に小沢氏と菅氏の順で15分ほど最後の演説をしていた。自民党を割ってから昨年の政権交代前までずっと小沢氏を支持してきた自分としては、これが「最後の小沢さん」の演説になるかもしれないし、彼もそうした意識はあるだろうと思って聞いていた。気迫のこもったよい演説だった。日銀法を変える・インフレターゲットも考慮するというリフレ政策の一点には驚いたが、他は長年聞いてきた小沢氏の持論だった。対する菅氏の演説は石井紘基氏の名前が出てきた以外は退屈極まりないのしろもので、無策の現状を正直に述べていることに終始していた。一に雇用二に雇用といったスローガンも空しく消えているだけだった。
 しかし同時に、私は小沢氏の政治主導の理念は昭和の時代の懐かしい物語だと思っていた。中央の官僚制を打破し、地域主権としてみんなで地域を考え国を考えていくというのは、私にしてみると、終わってしまった物語に聞こえた。
 私は、残念ながらというべきだろうが、現代の政治の実質は一種の工学のようになったと考えている。国民の意見を反映するのが民主主義の本義ではあるが、実際の政策となれば、その背景の複雑さゆえに独自の専門知識からなかなか動かしがたい近似値しか出てこない。経済でも医療制度でも各種保障制度でも、理想は理想としてもテクニカルな前提からはある妥当な水準しか出てこない。そこを逸脱した理想を掲げても、政策には無理が出て全体の利益にはならない。
 小沢首相が実現してまた鳩山元首相時代のような、理想が暴走するわけのわからない政治になるよりは、地味な菅首相の継続のほうがよいと私は思う。そして政権交代というのも無駄だったのだときちんと納得することができた点で、菅首相の続投はよかったと思う。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

何の感慨もありません。当然の結果が当然の形で出ただけだと思います。刑事被告人になるかもしれない人が総理大臣になるべきではないと、民主党員たちもそう思ったのだと思います。「政治とカネ」の問題を清算するのが民主党の出発点だったはずです。

投稿: enneagram | 2010.09.14 17:15

昔も今も、政治は工学的でテクニカルなものだったのだと思います。

ただ、今は、国が経済的にピンチになり、政治による「どんぶり勘定」や
「大盤振る舞い」のような贅肉的な部分が減少している分だけ、官僚や
既存のシステムの持つ緻密でテクニカルな側面がむき出しになってきた
のでしょう。

今回の選挙で、自分は超消極的に菅を支持していましたが、いざ本当に
菅が再選され、またしばらくは財務省永田町出張所的な政治が続くのだ
なあと思ったら、もう何でもいいから総選挙やってセンター決めなおせ
や、という気がしてきました。

投稿: tamtamoo | 2010.09.14 17:41

地方は単純に「小沢と原口うぜぇ」というのが素直な本音だっただけだと思いますよ。地方役人も地方議員も、異常なまでのひも付き具合にキレてる人が多かったので。

投稿: くれふ | 2010.09.14 18:44

外から見てると、
「菅さんに入れるのはジリ貧、小沢さんに入れるのは博打」
に感じられた。
---
菅さん続投決定後の会見で、
「いよいよ本格稼働するという段階にきております」みたいなことを自ら言ってて、
「じゃ、今までなんだったんだよ」と突っ込みたくなった。
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「党員・サポーターおよび地方自治体議員党員」の投票分は、
「選挙期日に間に合うように事前開票」するみたいなんだけど、
議員さんはこの事前結果を知ることができる仕組みなのかな?
誰だって、勝ち馬に乗りたいよね。
順序が逆だったらどうなったんだろ。

投稿: 774 | 2010.09.14 20:40

>市井の民主党員の大半は小沢氏をまったく支持していなかったと言ってもよいくらいだ。

そうでもないすよ。
伝書鳩さんの話だと党員・サポーターの得票比率は13:9だそうで大雑把に言えば6対4。地方議員とほぼ同じくらい。少なくともマスコミの世論調査ほどの差はなかった。

投稿: 佐藤秀 | 2010.09.14 21:37

民主党の方々も何もするなを選んだんでしょうね。早く解散・総選挙をしてほしいものです。(無理なんだろうな。)
これで、経済ガタガタになるのか。大変だな。(棒読み)

投稿: charlestonblue | 2010.09.14 22:11

あれだけ参院選で負けた総理が辞任しなかったのも異例なら、その総理が再任されるのも異例中の異例でしょう。


民主のグループは、自民の派閥に比べゆるやかという元々の特徴はあったとは言え、一つの時代の変化を感じます。


今は長年続いてきた政治システムの破壊期間中ですから、安定政権が出来るまで5年や10年はかかるのではないでしょうか。

与党ボケした自民、野党慣れした民主のどちらの色にも染まっていない政治家が活躍しだしてから本当の変革が始まる気がします。

個人的には小沢首相が誕生しなかった事に安堵しています。


投稿: くに | 2010.09.14 22:36

「民意」は民主党ガン無視でしょうから、それが確認されただけでしょう。

最大の功労者?は鳩山さんでしょうかね。
こんな結果になるほど小沢さんが支えた民主党の八ヶ月に対する国民の呆れた思いや匙を投げる思いはつよいということでしょう。

ところで、原口という人はどうするのかな?

投稿: KU | 2010.09.14 22:38

たっは~♪ 最後は本音が出てやがるぅ。どもども。

投稿: たまむし | 2010.09.14 22:48

菅首相が地味かと言われると、現実路線側への大暴走もあったのでちょっとピンときませんが……民主党内の権力闘争がきっかけで"無投票"ではなしにこの結果が出たことはよかったと考えています。

政治が工学になったことに間違いはないと思います。
しかし、全体の利益のためにその仕事をするに能う人間が、現在の政治家や官僚に与えられている報酬で働くなどということはありえないのではないでしょうか?
政権交代や政治主導に絶望しても、元の鞘とはいかないと思うのです。
政策の質以前に運営上の問題を増加させていくことでしょう。
finalventさんの「自民党はその辺りよくやっていた」という度々の発言が、単に回顧なのか、今後もベストプラクティスであり得るという考えを含んでいるのか、気になっています。

投稿: hamanako | 2010.09.15 02:27

今回の選挙は何のための選挙だったのか。
今一ピンときませんね。
結果としては、野党と対決したら、すぐ解散に追い込まれそうな小沢さんよりは、自分達の寿命が伸びそうな衆議員や、長く政権与党に在籍できそうな参議員・・
と言った思惑が民主党新人議員や日和見議員達の票となり、世論と言うマスコミの言葉に踊らされた、党員・サポーターが政策論議の乏しい対決に対して、世論に迎合したのでしょう。

誰がなっても同じと思うあきらめ感。
毎年税収をはるかに超える支出をして、『平気の平左』で国家予算を作成し、破滅に邁進する政治家たち。
(うちの女房がそんな事したら、即離婚、知らずに続けたら私が自己破産、一家心中ですよ)
最終的には消費税を上げて、一人一人の顔の見えない国民と言う人達に、赤字国債という借金の肩代わりをさせる。でも債権者も国民と言う顔の見えない人で、どっち転んでも既に国民の金を勝手に使ってきた自分達の付けを、又さらに国民に背負わせると言うとんでもない経済観念が当たり前の永田町政治は今後どうなるのでしょう?

円はどんどん高くなり、海外旅行は安くなっても、国内にはお金は落ちません。
生産業はコストの競争で負け輸出減少、又もや生産拠点を海外に流出し、国内には安い海外製品が流通し、国内産業はどんどん疲弊して、失業者の増加
更に高齢化社会が進んで、生産年齢層が減少・・・・・
企業に対する救済措置としての大企業への優遇税制による企業格差で中小零細企業の倒産及び税収の減少
負のスパイラル・・・どこまで行くのか3流政策

菅総理には自民党時代に積み上げられた負の遺産を本当に正し、国民一人一人の生活に目を向け、政府官僚一体となって国政に向かっていける民主党及び内閣を創って頂ける事を切に願うのみです。政権交代はそれを期待してのものだった筈です。

投稿: gomappy | 2010.09.15 02:36

「世論」というか、マスコミ、とくにテレビメディアの影響が大きかったな。あれだけ、朝から晩までネガキャンされて勝つほうが難しいわw
とくに、小選挙区制度ってのは、こういうのが大きい。小泉郵政選挙からしてもそう。
ちなみに、単純な党員サポーター票の得票率だと、菅:小沢=6:4くらいです。でも、この差で、これだけ極端な結果になるのが、小選挙区制度の怖さ。
 
それにしても、小沢の今回の選挙の手法も、高度経済成長時代の自民党のドブ板選挙のまんま。しかし、日本の都市化で無党派層が増えて、彼らはテレビメディアの報道をもろに受ける、しかも、小選挙区制度によって、ドブ板だけでは勝てなくなった。まあ、マスコミという業種には、菅みたいな市民政治家のお仲間が多いから、最初から小沢にとってマスコミ対策などという選択肢は存在してないのだがw
 
これは、自民党にも突き付けられた課題。小沢の今回の弱点は、自民党にも共通する弱点。マスコミ業界は、プロ市民の独壇場なので、小沢とか自民党の味方になるなど永久にないわけで。

投稿: | 2010.09.15 05:33

そして政権交代というのも無駄だったのだときちんと納得することができた点で、菅首相の続投はよかったと思う。

これに皆が気づくのに後何年かかるかなぁ・・・

投稿: ごんた | 2010.09.15 16:34

自民党が中心になって責任政党を独占した場合に比べて関与する国会議員数が単純に倍になって、伸び代が多い人たちの方に経験値が振り分けられるんだから長い目でみたら政権交代はやって良かったんではないでしょうか?グロス経験値的に。

あと、現状を見るとどの政党でも(多分)日本はダメなんでしょうが、高い壁の先にいつの将来でもあるわけで。
素朴すぎる感覚ですけど。諦め感覚のNoよりポジティブ思考のNoの言葉が聞きたいっす。

投稿: buku | 2010.09.16 11:13

私は小沢さんがどうしても我慢ならない派なんですが、このエントリーには同感です。今回結果については安心したような残念なような複雑な気分です。というのも、もし小沢さんが勝てば、彼の政権運営を見ることで、逆に小沢待望論を語る人々の求めるリーダー論が通用しなくなったことをはっきり形にすることもできたのではないかなとも思うからです。それによって政治の停滞については、そもそも有権者自体が迷走しているのだから国政が迷走するのは仕方がないことだと思っています(そこは誰が首相になっても同じ)。

さらにそもそものそもそもを語れば、政治に限らず日本社会の停滞の原因は、日本人が意思決定のプロセスをアップデートせず、いつまでも昭和的なリーダー論から決別できないからだと思います。そんなものにすがっている限り、政治も企業活動も活性化できないのではないのでしょうか?短期的な経済対策なんて目先の不満をそらすぐらいの効果しかないのは明らかで、まったく興味がもてません。

投稿: | 2010.09.18 09:23

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