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2010.08.30

フィナンシャル・タイムズ曰く、間違えられた男・小沢

 現下の日本政局を論じた、29日付けフィナンシャル・タイムズ社説「The wrong man for Japan(日本にとって間違われた男)」(参照)は、厳かに始まる。


If Dante’s version of hell had nine circles of suffering, then Japan’s version of politics must have at least nine circles of farce.

ダンテが語る地獄が九層の苦痛から成り立っているというのであれば、日本政治という地獄は少なくとも九層のおふざけから成り立っているに違いない。


 細い蜘蛛の糸をよじ登ろうとしている、あの痩せて弱々しく笑う男は誰? そしてその下に群がるそれは何?

After only three months in the job, Naoto Kan – the third prime minister in a year – is being challenged for the leadership of his party

たった三か月仕事に就いたのち、菅直人、すなわちこの一年間で三番目の首相であるが、自党からその指導力を問われている。


 対する、間違われた男・小沢はどう言及されているか。

If Mr Ozawa, who recently referred to Americans as “single-celled organisms”, becomes prime minister, he will be Japan’s most interesting prime minister since Junichiro Koizumi left office in 2006. He would also be a disaster.

米国人を「単細胞生物」と呼ぶ小沢氏が仮に首相ともなれば、2008年に首相を辞した小泉純一郎以降、日本にとってもっとも興味深い首相となるだろう。小沢氏は災厄ともなるであろう。


 フィナンシャル・タイムズは、小沢氏をなるほど多細胞生物(doubtless a multi-celled organism)だと呼び、かつては重要な政治家であったと評価しつつも、外交で何を考えているのかわからないと論じている。内政面でもかつての政局混乱を想起させている。

The last US ambassador to Tokyo could not even arrange to meet him when he was leading a revolt against a Japanese mission to refuel US ships operating near Afghanistan.

アフガン近隣で活動する米国船給油に自衛隊が任務に当たることに反対する点で小沢氏は主導的な役割を果たし、そのおりには、前駐日米国大使は小沢氏と面会スケジュールを組んでもらうことすらできなかった。



More than his confusing foreign policy stance, Mr Ozawa is unfit to be prime minister because of his domestic record. Though strategically brilliant, he is quixotic and destructive.

小沢氏の混乱した外交姿勢に加え、首相に適さない理由には内政面の過去がある。彼は政局に鋭敏ではあるが、破壊的なドン・キホーテなのだ。


 これからどうなるとフィナンシャル・タイムズは見ているか。

The Japanese public dislikes him. In a recent poll, 79 per cent of respondents said they did not want him returning to an important party post. (He quit as secretary-general in part because of an alleged funding scandal.) Yet so out of touch are Japan’s politicians that he may win anyway.

日本人の多くは小沢氏を好んでいない。最近の世論調査でも、79パーセントが主要なポストに返り咲くことを拒絶している。(小沢氏は政治資金疑惑で幹事長職を辞任してもいる。)にも関わらず、日本の政治家は非現実的なので、小沢氏が勝ち切るかもしれない。


 民主党のこの、お笑い地獄の最終層はどのようになっているか。

If the DPJ makes him its head, and hence prime minister, it will have betrayed its promise to bring Japan a new kind of politics. If it goes on to surrender power, it will only have itself to blame.

民主号が小沢氏を首相に据えるなら、日本に新しい政治をもたらすという公約を裏切ることになるだろう。そしてもし与党を辞すことになれば、それは自らを責める以外にはない。


 不吉な話になってしまった。ここはお笑い地獄なのだ。
 それらしく、懐かしのナンバー、Jojoの"Wrong man for the Job"をどうぞ。

You're the Wrong man for the job.

I Thought that you were the best part of me,
Baby I guess that we just believe what,
We wanna believe
I Thought I knew you so well , I couldn't tell
That this was sinking so deep,
I see it now,
I'm breathing now,
Its time for me
For me
To let it go

あなたはこの仕事を間違ってしているの。

あなたが私のベストだと思ってた
そうよ、信じたいと思っていることを
私たち信じているだけ
私はあなたをわかっていたと思ってたから言えなかった
それは心に沈んでいった
今わかるの
ようやく息をしてみるの
自分のために
終わりにしましょう

(コーラス)
It was cool when it started but now the flame has gone
You're The Wrong man for The Job,

出会いはすてきだったけど燃え上がる心はないの
あなたはこの仕事を間違ってしているの




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コメント

>アフガン近隣で活動する米国船給油に自衛隊が任務に当たることに小沢氏は主導的な役割を果たし、

志村ー、逆逆!
"when he was leading a revolt against..."

投稿: アルゴン金 | 2010.08.30 16:54

4カ所目の引用のところで「自衛隊が任務に当たることに」とあるのは「自衛隊の任務に反対することに」などと訳すべきではないでしょうか。小沢氏は給油に反対していたはずので。

投稿: yunadoki | 2010.08.30 17:10

ご指摘ありがとうございます。訳したつもりでいました。修正しました。

投稿: finalvent | 2010.08.30 17:26

このwrong というのは「不適任」という意味ですよね。

投稿: | 2010.08.31 07:09

小沢首相が実現するとして、あまりの支持率の低さに民主党の中から「加藤の乱」を起こす人が出てこないかな。

出てこないかもしれないけれど。

投稿: enneagram | 2010.08.31 07:27

フィナンシャル・タイムズはあいかわらず、日本をばかにした記事を書いている。彼らは自国の窮状もどこ吹く風、どこからの資金で食いつないでいるのかもわからないらしい。白人以外は不要という考えがよく読み取れる。

投稿: 黄色人種 | 2010.09.04 11:42

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