「後期高齢者医療制度」廃止よりも長妻大臣大丈夫かなと心配になった
23日、厚生労働省・高齢者医療制度改革会議が現行の後期高齢者医療制度に代わる新制度の原案を発表した。「新高齢者医療制度」とか呼ばれるのだろうか。予定では、年内に最終案をまとめ、来年の通常国会で法案として提出するらしい。
今回の原案について、財源の見通しがない拙速さの点ですでに大手紙社説がこぞって批判しているが、ねじれ国会の中、法案として通るかといえば、案外、通らないとも言い難い。この問題、難問過ぎて野党側としても代案はない。現行の「後期高齢者医療制度」のように75歳の線引きでやっていきましょうとオモテ立って言える政党ももうない。
今回の新案は、実際のところ、裏でさすが厚労省官僚さんたち仕事しているなと感得したのは、「後期高齢者医療制度」とさして変わっていない点だった。全体の負担の五割を税、四割を現役世代からの支援(健保・協会けんぽ)、一割を高齢者の保険料という枠組みにはなんら変化がない。また高齢者の線引きも軒下できちんと生きている。まあ、変わりようもない。絵に描いたような朝三暮四だけど、これが政治っていうものかな。
上手に看板を付け替えて玉虫色に見せてくれたのは、おそらく「子ども手当担当局長を降格=幹部人事を内定-長妻厚労相」(参照)のような左遷人事を長妻大臣させるほど問題をこじらせちゃうのもなんだし、他に名案もないしということなのだろう。
NHKニュースで映し出されていた長妻大臣を見ながら、「後期高齢者医療制度」廃止よりもこの人、大丈夫かなと心配した。厚労省大臣、向いてないんじゃないか。マニフェストで廃止すると決めているからやるのだというだけの理屈なのではないか。
そういえば参院選の際のマニフェストでは達成事項の二番目に国家戦略室があったが、選挙後に菅首相はさっさとこれを潰した。それもなんだかなとは思うが、そのくらいの臨機応変・君子豹変はあってもいいのではないか。というか、日々存在感が薄れていく菅首相も心配だが。
今回の新制度では、「後期高齢者医療制度」が75歳で一律区分けしたのを止め、福田政権以前の自民党時代の制度に戻すことになる。ようこそ昭和時代へ。現行制度の加入者約1400万人のうち、約1200万人が国保に、約200万人が被用者保険に戻る。
露骨に言うと、被用者保険のあるサラリーマンとその配偶者を無職の老人と一緒にすんなよ、と。サラリーマンの息子の扶養に入れる高齢者は保険料負担を免れる。持つべきものは高給取りの息子というか婿。国保だけの一人暮らしの高齢者は世帯主なんだから保険料負担しろよ、と。もしかしてそれじゃ、高齢者間の格差が復活するんじゃないのとかごく若干疑問に思う人もいるかもしれないけど、そう言える世間の空気ではない。
「後期高齢者医療制度」でめちゃくちゃ批判された75歳の区切りだが、これ、実は新制度でも生きている。新制度でも、国保の財政区分を65歳か75歳かいずれにせよ高齢者の線引きで別勘定にすることになっている。区分後は、なぜか都道府県単位で運営する。大きな差が出ないように標準保険料が設定されるとのことだが、補正のカネはどこから出るのだろう。また現役世代のほうの国保は、市区町村単位でやるそうだから、すごく複雑なシステムになる。
結局、この問題も、郵政問題と同様に、なんのための政権交代だったのか非常に悔やまれる一例で終わってしまいそうな感じがしてならない。
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コメント
今この国に必要なのは、いかにして老人から金を上手にむしりとるかということに秀でた、いわば豊田商事的才能にあふれた政治家だと思います。
投稿: ぬま | 2010.07.26 21:10
ニュースの裏側というか、何が起こっているのかを過不足なく把握されていますね。だからなんだって話ですが、現場の人間として嬉しく思います。後期制度の優れた点を少し潰して、看板をかけ替えるだけの話です。
投稿: ボブ | 2010.07.27 11:23