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2010.07.10

明日に迫った参院選

 参院選が明日に迫った。関心がないと言えば嘘になるし、関心があるかというとそれほどでもない。民主党には投票しないと決めているが、ではどこに入れるかというのが依然決まらない。自民でもなく民主党でもなく、現下の政治的な状況から効果的な票となれば、みんなの党ということなのだろうが、個人的には気乗りしない。
 個人的にと言うなら、舛添さんが一番首相としての見識を持ち合わせているように思うが、新党改革という小党が政治的に機能するほどの票を得ることはないだろう。ついでに不思議なのだが、新党改革は、みんなの党より明確にインフレターゲット政策を掲げているが、いわゆるリフレ派的な支持を得ているふうにも見えない。
 状況的にはどうか。民主党はそれほど大敗しないのではないかと思うが、まあ上限から見ると、民主党単独過半数の60議席なら、政権交代をぐちゃぐちゃにした国民新党を放り出せるはずだが、その線はまるでない。内心では郵政国有化に反対であろう枝野さんまで郵政国有化の血判を押したようなことをしている(参照)。要するに、民主党的にも単党の路線は無理だと諦めている。
 国民新党を抱え込んだまま現状の民主党の混迷路線を良しとしても、連立与党で過半数の56議席が必要になる。そこで民主党としては54議席を勝敗ラインとし、国民新党から3議席ほど加えるという線で進めようとしているのだろうが、可能だろうか。そこがわからないが、意外とその線に行くかもしれない。そうなると、政治の風景はまるでなんにも変わらない。民主党はそれほど大敗しないのではないかと冒頭書いたのは、そのあたりだ。
 もう少し民主党が低迷するというのが現実的な見方かもしれない。菅首相の面白ろパフォーマンスの成果で民主党の人気は面白いように落ち込んできていることもある。それがどのくらい選挙に反映するか。民主党があと4議席減らし、概ね50議席くらいになるだろうか。それだと、国民新党と連立しても過半数には届かず、3議席ほどの社民党と個別提携で乗り切るということだろうか。それでも政治の風景は変わらない。なんかうんざりするような疲労感を覚える。
 政治の風景に変化が生まれるのは民主党が50議席を割ったあたりからになる。露骨にいえば、国民新党と社民党を切って、みんな党と公明党と個別に提携する可能性も見えるあたりからだ。そのほうが本来の民主党らしさが出てきてよいと思うのだが、同時にその状況はあっけなく菅さん終了でもあり、小沢さん再登場という別の面白劇場を伴うだろう。そこまで行くだろうか。
 自民党側から見ると別の風景が見える。自民党が意外と善戦しそうで45議席くらい行くかもしれない。そもそも自民党にお灸を据えるとしたはずが自身で火傷を負ったあたりの層が自民党に返ってくるだろうし、外国人参政権・夫婦別姓制・人権侵害救済制度といった民主党がマニフェストから隠している部分への忌避の票も流れるだろう。
 仮に自民党が46議席、みんなの党が10議席とれば、可能性としては、これで参院の過半数が取れる。その可能性が見えるだけでがらっと政治の風景は変わるだろう。そのことを懸念してみんなの党は自民党の別部隊だとか一生懸命ツイッターとかでふかしている勢力もあるが、まあ、それはない。自民党は一枚板ではない。
 仮にというなら、もう一つ面白いシナリオはある。たぶん、菅さんの内心にくすぶる思いというか、財務省のプランBでもあろうが、増税へ向けての自民党との大連立という線だ。このまま日本の政治をさらに混乱させて、大手紙あたりを誘導していけばそれも不可能ではないだろう。
 そもそも民主党が名目成長率3%として、増税回避の名目成長率4%を切っているのは、財務省へ秋波を送るための糊代みたいなもので、このあたりは自民党の合意とも近い。ついでだが、7日時事「消費増税不要は無責任=みんなの党を批判-民主政調会長」(参照)を見ると、玄葉さん、内心ではみんなの党に負けたとうっすら思っているのだろう。


 民主党の玄葉光一郎政調会長は7日、福島市内の会合で、みんなの党が年率4%以上の名目経済成長を達成できれば消費税率引き上げは不要と主張していることについて「誰が考えても税の抜本改革は避けられない。それが必要ないというのは真っ赤なうそであり、国民に対して無責任だ」と厳しく批判した。 
 玄葉氏は「(経済が)成長すると確かに税収は上がるが、金利も上がる。国には世界一の借金があり、利払いが雪だるま式に増える」と指摘。「名目成長率が4%になれば財源ができるというのは百パーセントうそだ」と強調した。

 ただ、そのあたりの合意はまるで民主党内で整合しているわけでもない。大連立なら多少党内整理してもよいとするのかもしれないが。
 まとめると、少し国民の気分が変われば、それなりに面白い風景の見えそうな選挙だが、それほどの変化はなく、民主党のうんざりした政権が続くのではないかと思う。そのあたりが財務省の実質的な思惑でもあるのだろう。
 余談だが、いわゆるリベラルといった人たちが、結果的に財務省に取り込まれていく姿は、ゆうパックのドタバタでも思った。元大蔵省官僚斎藤次郎・日本郵政社長も元郵政省官僚鍋倉真一・郵便事業会社社長もなんら責任は取らないし、原口一博総務相も業務改善命令は出さず、郵政民営化委員会を葬った。いわゆるリベラルといった人たちからその批判の声は聞かなかった。国家を批判しているかに見える人びとが、国家主義に転換していく歴史の公式通りの展開は醜いものだなと思うが、国民がそれをどう見ているか、この選挙の結果に出てくるだろう。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

郵政解散から5年。政治の風景はずいぶん変わりました。本格的に変わっていくのは、これからですよ。衆議院は任期満了まで持ちこたえて今のままだとしても、次の参院選(3年後)は、めちゃくちゃいろいろ動くと思います。そして、ダブル選挙か直後かの衆議院総選挙もまたまた激震だろうと思います。

投稿: enneagram | 2010.07.10 13:50

日本人が占領される外国人参政権や日本人が奴隷させられる人権擁護法案とか日本人が地獄に堕ちる法案にたいしてどう思ってんだ?参院選で民主党に過半数取られたら日本終わりやぞ!経済経済ってみんないうがこの法案通ったら後だと経済良くなろうが中国人や朝鮮人が甘い汁吸えて日本人は甘い汁一切吸われないんだよ。チベットやウィグル地区みたいになるんやぞ!国民新党は外国人参政権を阻止してくれただけで十分よくやってくれたよ。ほかはともかく。参院選後は国民新党切られるだろう。次の連立相手がみんなの党や新党改革や公明党や社民党ではこの法案通ってしまう。表向きみんなの党や新党改革は外国人参政権反対だけど信用出来ない。民主党ではない大きな党に入れるしかない。民主党ではない大きな党は良い事悪い事色々あったけど、今はそんな事いってる場合ではない。この法案を防がないと。

投稿: あ | 2010.07.10 13:54

 みん○○党でいいんじゃないですかwww
 郵政改革に踊り、政権交代ではしゃいだおQ層の御用達!!
 後から考えてみないと分かりませんが、みん○○党の存在意義は、おQ層を隔離できたかどうかにあると評価されるようになるかもしれませんね。

投稿: MF | 2010.07.10 18:22

金持ちの中国人からは不動産買われるし、貧乏人の中国人からは生活保護をたかられるし、外国人参政権が通ると中韓から退去して日本を乗っ取ろうと大勢人がやってくるらしいし、日本人はタイヘンダナー(棒読み)。
いっそまた鎖国でもしたらどうかなー。

まぁ、それはともかく。
みんなの党も、公務員2割減はいいけど、それで低下する行政サービスの質の維持をどうするとか、浮いた2割分の雇用をどう吸収させるつもりなのかとか、一切言及ないんだよね。
公務員歳費浮かせた分、雇用対策積み増す羽目になったら意味ないと思うんだけどもなー。

投稿: 義忠 | 2010.07.10 23:42

【要注意】みんなの党は新自由主義・小泉改革自民党の直系政党

asahi.com(朝日新聞社):与党、過半数は困難 朝日新聞終盤情勢調査 - 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0708/TKY201007080575.html
与党過半数厳しく 参院選全国終盤情勢 - 中国新聞
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201007060399.html
「参院選、終盤情勢 与党過半数割れ濃厚 みんななど第三極10議席以下」:イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/412174/

情勢-- 現 要 朝日推計 共同推定 産経予測 過半数
------+--+--+--------+--------+--------+------
民主-- 62 -- 42-49-57 44-49-57 48-51-55 ------
国民新 03 -- 00-01-01 00-00-01 00-00-01 ------
無所属 01 -- -------- -------- -------- ------
(小計) 66 56 42-50-58 44-49-58 48-51-56 不可能
社民-- 02 -- 01-01-02 01-02-02 01-02-02 ------
(小計) 68 54 43-51-60 45-51-60 49-53-58 困難--
共産-- 03 -- 02-04-05 02-04-04 02-02-04 ------
(小計) 71 51 45-55-65 47-55-64 51-55-62 ギリ可

終盤情勢は民+国+社+共で過半数がギリギリ可能。これ以上、与党の議席数を減少させると危険水準です。
「民+み」で過半数がギリギリ可能。★★★「民+み」の連立になると、非正規雇用が大幅に増加します。
みんなの党は新自由主義・小泉改革自民党の直系政党なので、小泉時代のように状況を悪化させるだけです。
『当面だけの』消費税率維持に乗せられて、みんなの党へ投票を考えている有権者は、目を覚ますべきでしょう。
民+保守各党の連立になれば、消費税は 10% どころか、10% → 15% → 20% と青天井になります。
よって、比例代表は社民の保○○人氏に、また与党の議席数が予定以上に減少しすぎたので、
選挙区は民主党に投票し、議席数を調整します。

みんなの党 清和会 小泉 - Google 検索
http://www.google.co.jp/search?ie=auto&q=%A4%DF%A4%F3%A4%CA%A4%CE%C5%DE+%C0%B6%CF%C2%B2%F1+%BE%AE%C0%F4

cf. http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/liveplus/1276782795/34-

投稿: nobody | 2010.07.11 09:11

【参院選】政治とカネ、普天間…首相「クリアした」―参院選投票必須マニュアルで本当に重要なことで知らないことがない状態で投票しよう!!

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」

こんにちは。本日はいよいよ、参院選です。今回の参院選、争点がなぜか消費税などに限定されてしまった感がありますが、それ以外にも多数あります。私のブログでは、こうした争点で有権者が見落としがちな事柄に関して、参院選投票必須マニュアルという形にまとめてブログに掲載いたしました。マスコミが報道する政局など内容とは一線を画し、ものごとの本質、根底、歴史などの根源的なものを捉えて記事とするように努力させていただきました。そうして、記事の内容はすべて事実にもとづき、私独自で考えたものばかりです。選挙に行く前に、是非御覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2010.07.11 09:20

たま〜に前から読ませてもらってます.

政治の風景変わりましたね.
今後はどうなるんでしょうか
0時の段階では,公明・自民・みんな いずれも大連立はないといいきっていますが・・.
創価学会は民主に前から色目を使っているとの話はありますので,
公明が与党にとりこまれないことを祈ります.
いよいよ支持の弱体化をさらけ出した国民は
与党から早く放出されてほしいものです.

私は 松下生計党に比例は一票(名簿の候補者に城内
さんがいればたちあがれにいれるつもりだった)
小選挙区は自民に入れました.

山梨で輿石さんに肉薄する自民新人には 心躍りました
あの3800票差!!
本当にあそこが陥落していればもっとこれからの
政治に期待できたのに!!

(自分の選挙区は島根でしたが早い時期から
 プライドをかなぐり捨てたどさ周りをしていた民主候補が
 大差で敗れるとは思っていなかったので結構驚きました.)

投稿: きくらげ | 2010.07.12 02:13

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