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2010.07.13

民主党参院選挙大敗、責任論のゆくえ

 しかたがないとは思うのだが、民主党内で参院選挙大敗の責任論がわいてきた。朝日新聞のように社説(参照)で「菅政権がまず直面するのは、今月から本格化する来年度予算編成だ」と、現実にまず直面する選挙大敗責任問題から目をそらそうとする援軍もいないわけではないが、形の上だけであれ、選挙体制で幹事長に就いた枝野幸男氏の責任が問われないわけにもいかないだろう。当面はそこが上手に落としどころになるのかということだ。現状ではこじらせているように見える。
 昨日NHKの7時のニュースを漫然と見ていたら、討論スペシャル「有権者の声にどうこたえる」(参照)という番組が始まり、主要政党党首が雁首を揃えるなか、まるで針のむしろの罰ゲームのように民主党からは猫背の枝野氏が登場していた。枝野氏はアップで見ると福耳の縁起のいいお顔である。これでいつのもの、幸運を呼びそうなにへら笑いが見られるのかと期待したが、さすがに小さい目をさらに点のように緊張させていた。
 番組は幸い各党首の意見が錯綜したうえ、民主党内議論でもないことから罰ゲームといったふうにはならなかったが、枝野氏は「個人的な思いは別として」といった発言をされているのは印象的だった。他所でもそう述べているようだ(参照)。菅氏の顔を立ててはいるものの、責任論は看過できないと思っているのだろう。
 菅氏は、民主党党首として幹事長を動かさないという党内事情の手前から、内閣のほうも当面、改造・党役員人事に手が付けられなくなった。このままでは9月の民主党党代表選までフリーズした状態になり、マニフェストは大きく変えたものの、依然後期鳩山内閣継続ということになる。フリーズには今回落選した千葉法務大臣の続投も含まれるが、大臣は議員である必要はないのだから、その点について言えば、9月までのことでもあるし問題はないだろう。
 内閣がフリーズした状態で9月の民主党党代表選が迎えられるかというと、その前に大きな関門がふたつある。一つは普天間基地移転問題で8月末までに工法を決定しなければならないが、それには沖縄の同意が前提になる。そうでないと民意を踏みにじるということを意味するわけだが、今回の沖縄選挙区の動向(参照)を見るに無理だ。NHKの番組では枝野民主党幹事長は8月末の期限は専門家の意見をまとめるだけだとし、並行して沖縄県民に理解を求めていくというふうだったが、鳩山前内閣のような話のすり替えでうまくいくわけはない。沖縄県への具体的な民主党のアプローチも見当たらない。
 二点目は、臨時国会で可決すると全国郵便局長会(全特)に向けて枝野氏が念書(参照)まで書かされた実質郵政を国営化にするための郵政改革法案だが、以前の衆院のように6時間で強行採決という暴挙はできなくなった。
 このふたつの難関を菅内閣がするりと抜けるわけにもいかないし、じっくりと取り組むには9月は早すぎる。9月前に菅首相が辞任ということはないだろうが、反発の圧力を高めてしまうのではないか。
 朝日新聞が民主党大敗責任論を煙に巻くために、ねじれ国会を避けよと論じてるように、ねじれ国会が問題だという話も諸処でふかされている。いわく、野党が反対すれば法案が通らなくなるというのだが、実質郵政を国営化にするための郵政改革法案みたいのを6時間で強行採決でよいわけもない。国会は議論の場なのだから、きちんと個々に議論を積み重ねていけばよいだけのことではないか。民主党としては衆院選挙時のマニフェストは実質なかったことにして済まそうとしているようでもあるが、あれを信じて当選させた衆院議員の意味はきちんと議論されたほうがよいだろう。
 ねじれ国会から連立・政界再編といった心躍る話もある。だが、9月の民主党党代表選前に動きが出るとも思えない。民主党は、いわゆる都市民型の政党であるとともに、連合や自治労などの労組の政党でもあり、後者の部分だけを分離すれば、公明党くらいの中政党に縮退してしまう。それがみんなの党より小さくなってきたところに、大きな政治潮流がある。
 本来なら労組が市民社会を包括する理念を打ち出せるとよいのだが、また中枢の理論家たちはわかっているのだが、具体的な展望はない。末端は「新自由主義反対」とか極楽浄土を目指して念仏を唱えている。
 そこで民主党の残りの都市民型の政党という性格が強く出てくると、公明党やみんなの党などとも連繋しそうでもあるが、その前に自民党内の都市民型の政治志向の勢力が割れてくる必要がある。政界再編というなら、問われているのはむしろ自民党ではないか。
 その他、今回の参院選大敗をもって、総選挙で信を問えという意見もあり、産経新聞は社説(参照)でぶちあげていた。野党時代の民主党の意見からするとそうであるべきなのだろうが、参院選で国民としてはそれなりに民意を出した形にはなっているので、広く支持される意見にはならないだろう。

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コメント

>一つは普天間基地移転問題で8月末までに工法を決定しなければならないが、
工法→方向でしょうか?

投稿: 一読者 | 2010.07.13 13:21

そもそも菅さんって、このてのプレッシャーに耐えられる人なんでしょうか?逃げ菅の逃げ道が塞がれて。

投稿: てんてけ | 2010.07.13 15:01

枝野幹事長、そんなに責めを負う必要あるかなあ。

総数では大敗でも、比例は勝ち、2人区は全部引き分け、東京では2勝していて、失点の1人区は、これは、枝野幹事長だから負けたというものでもないと思います。

彼はよくやったと思ってます。選挙前にいきなり公約破りの消費税増税議論を持ち出し、選挙直前にぶれまくった菅首相に全責任があるでしょう。そう思います。

投稿: enneagram | 2010.07.13 15:36

> 工法→方向でしょうか?

いや「工法」で間違ってないと思う。
移設先の具体的な工法を来月末までに決定する、という事になっているので。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2010071300093

投稿: 渡辺 | 2010.07.13 16:07

権力の使い方も分からないまま自民との大連立に走り、結果行政組織だけが肥大化という最悪の選択をするに一票。

まあ、さすがにそこまでの愚は犯さないと思いますが。

投稿: 斉藤 | 2010.07.13 16:23

はじめまして、これは酷い。

特措法は薦田さんを従わせる為に作られた! 前々からワクチン接種に同意しない農家が予想されましたので、特措法を急きょ作っていただいたといういきさつがございます~7/13山田大臣記者会見 http://bit.ly/bp70mz

投稿: ro | 2010.07.13 21:54

自民と大連立→右派と左派に分裂→二大政党時代到来ということでいいんじゃないですか?本当は福田首相の時に大連立をやっとけばよかった。そうすれば政界再編がもっと早まっていたのに。綺麗事ばかり言っていたマスコミの責任は重いと思う。

投稿: oza | 2010.07.14 00:15

あちこちのブログで菅首相の選挙敗北の責任論が唱えられています。
でもこの責任の本質は党に対する責任であって、国民に対するものでないので、部外者が騒ぐ意味はない。
むしろ菅首相を負けさせたのは国民なのだから、この結果について責任があるのは国民なのです。

投稿: レイ | 2010.07.14 18:14

千葉大臣引き続き死刑執行に決済を拒否。

投稿: しらかし | 2010.07.14 23:19

千葉大臣死刑執行の決済を拒否。

投稿: しらかし | 2010.07.14 23:20

産経の主張するように解散総選挙をして、仮に民主党が過半数を確保しても、この参議院の過半数割れという状況は少なくとも向こう3年間は全く変わらない。また、自民党プラスみんなの党が衆議院で過半数を取ったとしても、これも参議院では向こう3年間は過半数割れの状況が続くことになる(しかも3年後の参議院選挙でこの両党で今よりプラス27議席を取って過半数を確保することは不可能に近い)。たとえ社共以外の現在の野党が全部集合して連立を組んでも122議席にしかならず、極めて不安定な状況になる。
みんなの党がキャスチングボードを取ったとして一人はしゃいでいるが、勘違いも甚だしい。民主党が負けすぎたことによりみんなの党の思惑は全く外れてしまっている。
当面、日本の政治、社会は停滞の状態が続き、失われた30年になるのか?
打開策は民主・自民の大連立か、あるいは民主・公明の連立しかない。大連立は大政翼賛会として問題があるという意見も強く、さすれば民主・公明の連立しかあり得ないことになるのでは。公明党もいつまでもレッドカードなんて言っていないで、ここは国家・国民のための大英断が求められることを覚悟するべきである。。

投稿: | 2010.07.15 11:32

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