[書評]多面体折り紙の本、3冊
折り紙が趣味と言えるほどのことはないが、好きでたまに折る。三つ子の魂百までの部類かもしれない。三歳くらいから折っていた。実家の書棚に昭和30年代の折り紙の本が一冊あるはずだ。
折り紙にはいくつか思い出がある。一つは、20代のころ知的障害児と遊ぶということをしていたときのことだ。何だったら遊んでくれるかなと、いろいろ単純なおもちゃを揃えたなかに、折り紙も入れてみた。そしてやってみた。うまくいかなかった。折り紙というのは、けっこう難しいものだと思った。
30代のころ、インドに行って地元のNPOと子どもを交えたちょっとした交流会があって、そうだな何をするかなと、折り紙を持って行ったことがある。とりあえずパフォーマンスはできたものの、率直に言って、現地の子どもは関心を持ってなかった。外国人なら、折り紙関心あるだろうなとそれなりに思っていたのだったが、そういう関心があるのは、むしろ工業製品にあふれた先進国の子どもや大人のようだ。
そのおりのことだが、現地で予定がキャンセルされたりしてぽかんと暇になり、暇つぶしをかねて余った紙でユニット折り紙をした。いくつかのピースを組み立てて立体を作るのである。これも面白いかなとは思った。
すごいぞ折り紙 折り紙の発想で 幾何を楽しむ 阿部 恒 |
この本は白黒二色で地味な感じというか、もろに幾何学である。レベルは中学生の幾何学程度。上手に説明すれば中学生の教材にもなるだろう。ぱらぱらと見ているだけで、ああ、そうだこの長さは3のルートだととか思う。その点はわかりやすい。実際に立体を作ってみると、やや地味かなという感じもするのと、素材の紙は正方形の以外の作品が多い。きちんと切り出して多少厚みのある紙で作れば面白いのだが、普通の折り紙を切り出すとやや弱々しいものになる。
Chapter1 作図問題
Chapter2 一定比率の用紙を使って
Chapter3 正三角形ユニットで作る正多面体
Chapter4 正八面体から立方体へ
Chapter5 正二十面体から正十二面体へ
Chapter6 ユークリッド幾何学で作図不可能な問題を”おりがみ”で解く
同書には、「ハミルトンの世界一周パズル」の話もある。ハミルトン路(Hamiltonian path)である。これ、平面でアルゴリズムを考えるというより、実際に正12面体で考えると、なかなか味わい深い。
同書を購入した際のお薦めに「はじめての多面体おりがみ―考える頭をつくろう!(川村みゆき)」(参照)があり、こちらはどうかなと買ってみた。
はじめての多面体おりがみ 考える頭をつくろう 川村みゆき |
作品はまさに多面体が意識されているせいか、立方体なども簡素な一例のみであり、クラフト的な意味合いは薄い。できあがった構造もやや弱いのでノリで補強したほうがよい点もある。
ユニット折り紙 エッセンス 布施 知子 |
ユニット折り紙は手間がかかる。その間、ぼんやりとしているわけでもなく、きちんと折り目を作るなどそれなりに集中する。多数のユニットを作成していくうちに、折りの手順も暗記する。もしかしてこれってボケ防止にもよいのではないかと思ったら、その手も本もありそうだし、子どもの早期教育なんかへの応用もありそうだ。しかし、そういう二次的なアプリケーションというより、純粋に多面体の面白さやできあがった達成感みたいなものだけでも十分いいんじゃないか。
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コメント
定規とコンパスだけでは不可能な角の三等分ですが、折り紙を使うと可能であることをダンコーガイ氏が教えてくれました。
先生は、折り紙を使った角の三等分の方法はご存知ですか。
投稿: enneagram | 2010.08.01 08:24
小学生の頃に「多面体の折紙―正多面体・準正多面体およびその双対(川村みゆき)」を読んで色々作ったなぁ、懐かしい。
折り紙による角の三等分はこの本にも書いてあったような。
投稿: naruse | 2010.08.02 14:36