« [書評]地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?(久繁哲之介) | トップページ | 民主党参院選挙大敗、責任論のゆくえ »

2010.07.12

2010年参院選、民主党大敗

 参院選挙で民主党が大敗した。言うまでもな敗因の責任者は菅直人首相である。民主党のマニフェスト崩壊、政治とカネの問題、普天間基地問題失態、さらには保守勢力が懸念する外国人地方参政権、夫婦別姓、人権救済機関設立といった諸問題を、「日本は財政破綻国家になるぞ、すわっ一大事」という国家主義的な嘘演技で覆い隠そうとし、あまつさえ自民党にもヒンヤリと抱きつくという奇策は、壮烈なまでの失策だった。当の論点であるべき財政問題も消費税もまったく理解していない経済音痴がせっせと墓穴を掘り続けていた。急な坂を転げるような民主党の失墜では、鳩山前首相のように人間離れした言明を通すのとは違い、菅首相は人間らしい弱さで右往左往し選挙直前にはごめんなさいと首をすくめたが、民主党内ですら、ああこの選挙はやる前からダメだなという嘆息が漏れていた。鳩山さんが憎めない人であるように菅さんも憎めない人だなとは思うが党首にも首相にも向いていない。
 民主党が50議席を割ればいいなと私は思いつつ、しかしそこまで大敗はしないだろうと思っていたが、蓋を開けてみると44議席だった。反面、自民とは51議席とこれも大方の予想を超えて前進した。存外のことだと言えばそうだが、内実を仔細に見ると、誤差の拡大と見えないこともない。民主党は選挙区で28議席と比例で16議席の44議席、自民党は選挙区39議席と比例で12議席の51議席。単純に政党への人気がどうかと比例で見るなら、民主16対自民12ということで、依然民主党が上回っている。菅首相の消費税奇策は失敗だったが、消費税増税がいずれ避けがたいことは国民にある程度は織り込まれていると見てよさそうだし、民主党への国民の支持が完全に揺らいでいるわけではない。
 選挙技術として見れば、民主28に対して自民39なので、選挙区での民主党の失敗は大きい。2人区を独占しようとした小沢前幹事長の読みが完全に外れたが、一昨年の衆院の勢いからすればその戦略はしかたがないと言えないこともない。戦略変更が必要になる時期はすでに鳩山前首相の辞任の遅れで逸していたから、枝野幹事長も方向性修正はできなかった。民主党は日本軍みたいなものだ。
 民主党のタレント路線も失敗した。目玉の柔道家・谷亮子が通るのは当然としても、民主のタレント候補は総崩れした。個人的には岡崎友紀さんと庄野真代さんが並んだら楽しいような感じもしないでもなかったが、私ですら投票しない。この戦略も状況の急変に対応できない民主党の失策だった。
 反面一人区では自民党が手堅く拾った。民主党が二人区でリソースを消費していることの敵失と言っていいだろう。小泉政権以降の地方自民党の選挙組織が立ち直ったというより、残存勢力を梃子入れする範囲で思わぬ利が取れたくらいものなので、この幸運が続くわけもない。自民党もまた低迷の道にはある。二大政党化が積極的に進んでいるわけでもない。
 こういうとなんだが、民主党の失墜は暴走の歯止めとして好ましいものの、自民党の躍進で自公が民主党を上回ってしまえば、またかよの懐メロ政治になりかねない危険性があった。今回の参院選の結果、参院では民主党が106議席で、自民党84議席プラス公明党19議席を若干上回った。自公が参院でグリップを取るというほどは伸びていない。おかげで民主党としては、地味に他党と政策を摺り合わせていく必要がある。ねじれを懸念する声もあるが、これでよかったと思う。参院というのはそういう議会でもある。
 みんなの党のここまでの躍進は私には想定外だった。かく言う私自身、「棄権・白票も大人げないし、舛添さんも政局を読み違えるということ自体失策だし、しかたないな、みんなの党か」と思って入れたものの、公明党に匹敵する躍進は想定しなかった。東京都の選挙区では、かなりためらったが、「共産党の票が減るといいな」と松田公太氏に入れた。私の一票など大勢に影響はないと高を括っていたら、開票終盤で面白い風景を見ることになった。共産党が負けて、松田氏が勝った。まさかと思ったが、その前に共産党のようすがNHKに映し出され、そのお通夜のような暗さに、よもやとは思った。55万票も組織票があり、共産党が東京都で負けるということがあるんだろうか。時代がなにか終わったなという感じはした。
 終わったといえば、風味は違うようにも思えるものの、国民新党も立ちあがれ日本も新党改革も、終わっていた。社民党も終わりに入れてよいのではないか。概ね、政治の老化現象みたいなものだ。もっとも、老害諸悪の根源みたいな人が当選したので、歴史の動きは鈍いところは鈍い。現下日本の本当の問題は、高齢者世代内格差にあるのだが、そこもまだ顕在化しない。
 想定外と言えば、みんなの党の躍進によって、これまで却下されてきた日銀法改正法案が出せると渡辺党首が喜んでいたが、そういう光景も見ることになろうとは思っていなかった。
 ただし、これでみんなの党がさらに躍進するかというとわからない。日銀法改正法案もすんなり行くとは思えない。それでも、民主・自民の重苦しく退屈な政治に少し変化があるかもしれないし、民主・自民が大連立を起こす危険性へのリスクヘッジにはなるとよいなとは思う。

|

« [書評]地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?(久繁哲之介) | トップページ | 民主党参院選挙大敗、責任論のゆくえ »

「時事」カテゴリの記事

コメント

そういうコンテクストで「戦犯」ということばを使わないで下さい。意味わかってますよね?

投稿: ほげ | 2010.07.12 11:18

ほげさん、ご指摘ありがとうございます。適切ではないと思いましたので書き換えました。

投稿: finalvent | 2010.07.12 13:57

大敗ですかねえ。比例では、民主の勝ち、東京でも二議席確保。基礎から破壊されつくしたわけではないと思います。山梨県も勝ったし。民主も味は残しましたよ。

まあ、荒井広幸さんが当選してくれてよかったですよ。種石はとられずに済んだ。みんなの党が、民主党の地をずいぶん荒らしてくれました。汚い並びの石みたいな小政党群も掃除してくれたしね。

この結果で、まあ、安心しています。

投稿: enneagram | 2010.07.12 16:23

高齢化世代内格差。頭の中で何かがカチリとyh待ったような気がしました。そうか、これだったんだなと。

投稿: kurosio | 2010.07.12 23:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2010年参院選、民主党大敗:

» 参院選結果 国民の判断はおおむね正しい [野分権六の時事評論]
昨年の衆院選で大勝した民主党の横暴ぶりはまったく目に余るものであった。思い上がり [続きを読む]

受信: 2010.07.12 10:00

» 極東ブログ「2010年参院選、民主党大敗」で思うこと [godmotherの料理レシピ日記]
 極東ブログはこの選挙の風景をどう見たか、気になるその風景画に私の風景も重なるところはあった(参照)。が、一点だけ今ままで私が言い控えていたことに触れておくことにしようと思う。 みんなの党が、日銀法改... [続きを読む]

受信: 2010.07.12 12:08

» [妄想]参院選分析 [懐柔する怪獣]
  選挙結果→参議院選挙2010 - Yahoo!みんなの政治 参院なんて無視すれば良い(→)と言ってた俺だけど、なんか書いてみる。 ・民主敗因 普通に菅首相の「消費税発言」と読む。 「衆院選挙の前に『消費税上げる』マニフェストで戦って勝たなければ消費税上げない」 という方... [続きを読む]

受信: 2010.07.14 00:15

« [書評]地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?(久繁哲之介) | トップページ | 民主党参院選挙大敗、責任論のゆくえ »