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2010.06.25

マクリスタル司令官辞任、後任はペトレイアス中央軍司令官

 アフガニスタン駐留米軍マクリスタル司令官が辞任し、後任にはペトレイアス中央軍司令官が指名された。表面的にはローリング・ストーン誌の記事(参照)で、マクリスタル司令官がバイデン副大統領やアイケンベリー駐アフガン大使を含めオバマ政権高官を批判したため、これに怒ったオバマ大統領が事実上の解任したように見える。
 実際には、記事は下品な代物ではあったが、マクリスタル司令官の任務の問題とは見えない。むしろ、軍部の政権批判に対して文民統制の視点から規律をもたらす必要性にオバマ政権が駆られたと理解したほうがよいだろう。バイデン副大統領とゲーツ国防長官の対立といったオバマ政権内の問題の悪化を留めたいという思いのほうが、オバマ大統領には強かったのではないか。そして実質的にはバイデン氏を立て、ゲーツ氏が負けた。
 事実上解任されたマクリスタル司令官に失態はあったかというと、評価は難しい。が、なかったと見てよいだろう。彼は昨年5月に国際治安支援部隊(ISAF)司令官に就任後、12月米軍3万人増派のアフガン新戦略を主導してきた。もともと難しい任務であり、そもそもオバマ大統領が最終的に決断した戦略でもあった。責任の大半は、選挙前公約に対する焦りに駆られたオバマ大統領にある。
 こうしたことから、ワシントン・ポストは23日付け社説「Why President Obama should keep Gen. McChrystal」(参照)ではマクリスタル司令官の続投を論じた。
 ニューヨークタイムズは、独自指令で秘密活動をしていたペトレイアス中央軍司令官(参照)に批判的なこともあり、22日の社説「Afghanistan, After McChrystal」(参照)ではマクリスタル司令官の問題よりアフガン戦の危機的な状況への問題提起を論じた。
 おそらく問題の背景には誰が任務にあたっても、アフガン戦に好転はないだろうということであり、マクリスタル司令官は事実上それを暴露したに等しかった。
 泥沼のベトナム戦争を終結させたニクソン大統領時代の大統領補佐官キッシンジャー氏も、22日付けのワシントン・ポスト寄稿「America needs an Afghan strategy, not an alibi」(参照)でこの問題を論じ、新しい戦略が必要だと指摘したが、結果的にはオバマ大統領の方針への批判と読めないことはない。
 ざっくり言ってしまえば、現状のままではアフガン戦は負け戦になる。
 ペトレイアス中央軍司令官はそれを承知で、お国のために引き受けたという形になっている。この話がお涙頂戴となるのは、ペトレイアス中央軍司令官がイラク戦争の英雄として時期大統領候補としての名声が高まっているからだ。その名声の可能性を捨ててまでお国に尽くすということである。明確にはされていないが、大統領候補としては共和党から立つとも見られていた(参照)。
 24日付けワシントン・ポスト社説「Gen. Petraeus needs the support his predecessor lacked」(参照)もそこを指摘していた。ペトレイアス中央軍司令官について。


After his triumph in Iraq, Gen. Petraeus could have retired and spent the rest of his life collecting accolades; he could have encouraged the speculation about a presidential candidacy.

イラク戦の勝利の後、ペトレイアス中央軍司令官は引退し、後生を名声獲得に充てることもできた。つまり、大統領候補への期待に自信を持つこともできた。

That he would choose to take on the formidable and risky job of rescuing the mission in Afghanistan at this critical moment is, as Mr. Obama rightly put it, "an extraordinary example of service and patriotism."

彼が、この重要な時期でアフガン戦救済の任に当たることは、並外れて危険な職務となるだろう。それは、オバマ氏が「奉仕と愛国心のとてつもない例証となる」と正確に述べているとおりだ。

He deserves and will need the unqualified support of the president and his national security team.

彼は、大統領とその配下の国家安全チームから条件なしの支援を受けるに値するし、またその必要があるだろう。


 簡単にいえば、この恐るべき任務をこなせばペトレイアス中央軍司令官は次期大統領となる。たぶん、共和党の大統領だろう。そうなればブッシュ前大統領の歴史評価の見直しにすらつながるかもしれない。が、それに民主党のオバマ大統領は賭けるしかない。
 意地悪く見れば、負け戦に乗じて未来の強力なライバルを上手に潰すということでもあるのだが、米国民は共和党も民主党もそういう邪推はしてないようだ。

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