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2010.06.08

ガザ支援船攻撃の背景と米国報道

 5月31日、パレスチナ自治区ガザ地区に支援物資搬入として地中海を航行していた貨物船と旅客船計6隻の船団が公海上でイスラエル軍部隊に急襲され、船団側の1隻で死者・負傷者を出した。具体的にどのような事件であったかについて両者の主張は違う。3日付けNHK「国連人権理 調査団派遣を決議」(参照)はこう伝えていた。


パレスチナのガザ地区の沖合で先月31日、トルコなどの市民団体が派遣した人道支援物資を積んだ船がイスラエル軍にだ捕され、活動家9人が死亡した問題について、ジュネーブの国連人権理事会は、2日間にわたって対応を協議してきました。この中で、イスラム諸国などが、「イスラエル軍の行動は国際法を無視した暴挙で、関係者は厳しく裁かれるべきだ」と非難したのに対し、イスラエルは「兵士たちは鉄パイプなどで襲われたためにやむなく発砲したもので、正当防衛にあたる」などと反論しました。

 5月31日付けAFP「ガザ支援船をイスラエル軍が強襲、10人以上死亡 トルコ強く抗議」(参照)はこう伝えていた。

 船団結成に関与したトルコの人道支援団体IHH(Foundation of Humanitarian Relief)のガザ支部はAFPの電話取材に対し、強襲を受けたのはトルコ船籍の船で、トルコ人を中心に15人が死亡したと語った。

 事態の映像などもインターネットに流れている。私も一部を見たが、映像だけからはどう判断してよいのかわかない。
 国連人権理事会は今回の問題に対して、2日、イスラム諸国から出された「イスラエルの国際法違反を最大限非難し、真相を究明するため現地に独立した調査団を派遣する」決議案を賛成多数で採択した。採決には、米国が「事実関係が明らかでなく、決議は一方的で、調査団の派遣も時期尚早だ」として反対したが、英国とフランスにならって日本は棄権した。事態は国際政治問題化している。
 事件の実態ついては公平な調査を待つしかないが、大筋ははっきりしている。公海上で人道的支援物資を積んだ船舶をイスラエルが拿捕することの正当化には無理がある。まして死者を出すほどの暴力行使は正当化されない。イスラエルの今回行動は国際常識からしても逸脱していて、擁護できるものではない。
 事態の背景にもよくわからない点がある。関連して今回の「トルコなどの市民団体が派遣した人道支援物資を積んだ船」(NHK)または「トルコの人道支援団体IHH(Foundation of Humanitarian Relief)」(AFP)について少し報道を追ってみた。
 2日付け毎日新聞記事「イスラエル軍:ガザ支援船団攻撃 「船団、テロを支援」 イスラエル、正当性主張」(参照)では、こう伝えている。

パレスチナ自治区ガザ地区への支援船団がイスラエル軍に急襲された事件で、イスラエル政府は「船団に参加している団体がテロ組織を支援している」と指摘し、強硬策を正当化している。一方、団体側はテロ組織との関係を否定、ガザ封鎖を続けるイスラエルへの非難を強めている。

 毎日新聞の報道では、イスラエルは船団がテロ組織を支援しているとし、船団側ではテロ組織の関係を否定しているといる。どのような根拠であろうか。

 船団は、キプロスを拠点にする人道団体「フリー・ガザ・ムーブメント」が呼びかけて結成した。
 05年のイスラエルによるガザ封鎖後、これまでに8回接近を試み、うち5回は上陸したという。いずれも1~2隻の船団とみられ、08年のイスラエル軍によるガザ攻撃以降は軍の警告を受けて引き返したり、拿捕(だほ)されるなど、失敗が続いていた。
 これに対し、今回は6隻600人とかつてない規模の大船団を組み、「必ずガザ封鎖を突破する」と事前にアピールしていた。
 中でも最多のメンバーを送り込んだのが、イスタンブールの民間慈善団体「人道支援基金(IHH)」。IHHはガザで広く活動しており、イスラエル政府は盛んに「イスラム原理主義組織ハマスなどテロ組織との関係」を強調していた。
 ただし、イスラエル紙の報道によると、IHHはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争さなかの95年に結成され、米国やトルコなど100カ国以上で合法的に活動。幹部は「ハマスを支援していない」と否定している。

 問題となる団体は「人道支援基金」(IHH:Foundation of Humanitarian Relief)である。そして、この組織がテロ組織を支援していないとする毎日新聞報道のソースだが、明記されていないイスラエル紙報道の伝聞だ。
 国内報道では、今回の問題の核となるIHHについてよくわからない。
 イスラエル政府は、IHHを「善の連合」(The Union of Good)と関連づけている。Israel Security Agency「The Union of Good – Analysis and Mapping of Terror Funds Network」(参照)では、IHHをそのトルコの支部として描いている。

Middle East and Africa – the Saudi Arabian WAMY and the Committee for the Relief of Palestinian People, the Palestinian People's Support Committee (Al Manasra) in Jordan, and IHH Turkey.

 「善の連合」(The Union of Good)は、米国ではテロ組織とされている。「November 12, 2008 HP-1267: Treasury Designates the Union of Good」(参照)より。

The U.S. Department of the Treasury today designated the Union of Good, an organization created by Hamas leadership to transfer funds to the terrorist organization.

米国財務省は今日より、「善の連合」(The Union of Good)について、ハマスの指導によるテロ組織資金供給団体と指定する。


 IHHと「善の連合」(The Union of Good)の関係については、2点の議論があるだろう。(1)米国はイスラエル同様、IHHを「善の連合」支部と見ているか、(2)前項に関連するが米国はIHHをテロ組織として見ているか、である。
 後者については公式アナウンスがないので、米国はIHHをテロ組織とはしてないようだ。前者についてはやや難しい。FOX系のブログ・エントリ「Gaza Clash: Turkish Charity’s Terror Links」(参照)で、その関連の示唆が示されている。

Fighel’s report also notes that the C.I.A. report that was declassified in 2001 and titled “International Islamic NGOs and Links to Terrorism” states that the IHH had links with extremist groups in Iran and Algeria and was either active or facilitating activities of terrorist groups operating in Bosnia.

フィッシェルの調査書によれば、2001年に機密解除されたCIA文書「国際イスラムNGOとテロの繋がり」で、IHHがイランとアルジェリアの過激派と繋がりがあり、ボスニアで活動するかあるいはテロ活動促進活動をしていたという。


 ネットを探すと該当文書と思われるものが見つかるが、私には真偽がわからない。また同エントリは、IHHは米国ではテロ組織とはされていないとの伝聞も伝えている。
 現状、IHHと「善の連合」(The Union of Good)、さらには直接的なテロ関与についてはイスラエル側以外の情報はないようだ。
 しかし、5日付けワシントンポスト紙社説「Turkey's Erdogan bears responsibility in flotilla fiasco」(参照)はそれを前提として描いているので驚く。

The relationship between Mr. Erdogan's government and the IHH ought to be one focus of any international investigation into the incident. The foundation is a member of the "Union of Good," a coalition that was formed to provide material support to Hamas and that was named as a terrorist entity by the United States in 2008.

トルコのエルドアン政府とIHHの関係は、今回の事態についていかなる国際調査であるにせよ、焦点とされるべきものだ。この団体は、ハマスに物資を提供をする組織であり、米国が2008年にテロ組織と指定した「善の連合」(The Union of Good)のメンバーでもある。


 米国ジャーナリズムでは、米政府見解とは別に、IHHを「善の連合」(The Union of Good)の下部としてテロに結びつける論調が受け入れられているのだろうか。
 同社説はIHHの背景よりも、そのテロとの連繋をトルコのエルドアン政府に結びつけ、さらにイラン問題にも言及している。ここで私は、米国ジャーナリズムで何が起きているのか、と問うべきなのだが、現状ではよくわからない。

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