ホワイトハウス大統領執務室でその時、何があったか?
ネタの趣向としてはパクリだし趣味も悪い話になる。
Part 1
もうすっかり過去の人となったブッシュ前大統領のことを少し思い出す。彼の出身大学は有名なイェール大学だが、恐らく父ブッシュの意向を酌んでの特別枠だったのだろう。特別枠といえば、ベトナム戦争では徴兵逃れをしたのではないかとの噂もある。酒に溺れて飲酒運転容疑で逮捕されたこともある。卒業後は、というと石油会社に勤めた。石油、それがブッシュ家のビジネスだったからだ。
そんな彼にも希望はあった。父のような政治家なりたい。ブッシュ家の石油会社の富と人脈を背景に下院選挙に出て、落選した。石油企業に戻り、エネルギー関連会社に勤めつつ政治界を目論んだ。
1994年、メキシコ湾に臨むテキサス州の知事に当選し、大統領選への足がかりとした。奇跡か。石油屋上がりのボンボンは大統領となった。
Part 2
新しい大統領が職務に就いた数か月後のことらしい。彼が率いる政権は、メキシコ湾沖合水深一マイルにある油田採掘に認可を出した。大統領選で気前よく寄付金を送ってくれた社員を抱える英国石油への採掘権である。同社は海岸汚染を引き起こすかもしれない壊滅的な海底油田漏れなど発生しないと軽々と言ってのけた。
(Imagine that a few months after a new president takes office, his administration approves an offshore oil well a mile beneath the Gulf of Mexico. It is to be run by BP, whose employees were very generous donors to the president's campaign. The oil company airily dismisses the possibility of a catastrophic leak that might destroy the coastline. )
ほぼ一年経過。大統領は沖合採掘を大幅に拡大したいとの声明に、環境保護団体は狼狽する。直後、英国石油施設は爆発し、原油が湾岸に溢れ出る。
(Nearly a year later, the president—to the dismay of his environmentalist supporters—says he wants to greatly expand offshore drilling. Soon after that, the BP well explodes, and oil spews into the gulf. )
海底原油の噴出が、政府出動を要する壊滅的な事態であることは、誰に目にも明白。しかし、事件発生11日後に現地視察した大統領の最初の発言はといえば、ご心配無用、浄化作業は英国石油が支払うことになるというものだった。
(It's clear to everyone that the blowout is a major catastrophe, requiring a federal mobilization. But the president's initial response is to say, in effect: do not worry, BP will pay for the cleanup. Eleven days pass before he goes to survey the scene.)
Part 3
「徹底的な事態調査のために、特別検査官が指名されるだろう。焦点となるのは、湾岸で起きている事態についてではない。ホワイトハウス大統領執務室で何があったかについてだ」
( "There'd be calls for special prosecutors, investigations everywhere. The focus wouldn't be on what was happening out in the gulf—it would be on what happened in the West Wing.")
Part 4
ホワイトハウス大統領執務室でその時、何があったか?
米国民は一斉に疑惑の目を向けた-----ということはなかった。
なぜか?
Part 2の大統領は、Part 1のブッシュ前大統領ではなく、現オバマ大統領だから。
この趣味の悪い趣向は、ハワード・ファインマン(Howard Fineman)記者によるニューズウィークコラム「Can’t Touch Him(彼には触れるな)」(参照)を借りた。
ブッシュ大統領だったら怒り心頭になるのに、オバマ大統領ならホワイトハウス内のことはそれほどの騒ぎにはなりそうもない現下の状況のだまし絵だ。
私はその悪趣味に、Part 1を添えてみただけ。いや、英国石油は現在では単にBPとすべきではあるが。
Part 5
オバマ大統領が選挙期間中に公約したグアンタナモ収容所の閉鎖問題はうやむやになっているが、問題とする声は小さい。自分の問題に跳ね返る部分にはみなさんご事情というものがある。
ブッシュ大統領時代は非難の的になった愛国法(Patriot Act)もオバマ大統領は承認したが、タイムズスクエアのテロ未遂のせいか、あまり話題にならないようだ。
テロとの戦いアフガン戦争にオバマ大統領は増派したが、それほど非難はない。でも展望もない。
ブッシュ大統領時代は即時撤退が求められたイラクには10万の米兵は釘付け状態だが問題化しない。このまま撤退するのだろう。
ブッシュ大統領はハリケーン・カトリーナ被害地訪問の遅滞で随分バッシングされたが、オバマ大統領のメキシコ湾入りはゆったりとしたものだ。
その違いは、なぜ?
オバマ大統領だから。
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