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2010.05.31

オバマ・ドクトリンはブッシュ・ドクトリンとどこか違うのか?

 この数日、日本でルーピー・ショー(The Loopy Show)が盛り上がっている間、米国では戦没将兵追悼記念日に前にして、27日、オバマ政権発足後、初めての国家安全保障戦略、通称、オバマ・ドクトリンが発表された。国家の安全保障を示すドクトリン文書は政権ごとに議会への提出が義務づけられている。米国オバマ政権にとって、外交政策の指針となる文書でもある。
 日本の大手紙社説ではまだこれを扱っているところがないようだ。明日あたり扱うのだろうか。このところどうしたわけか、大手紙の社説の情報感度が非常に悪い。口蹄疫の問題でも、このブログでは9日に「2000年と2010年の口蹄疫: 極東ブログ」(参照)で取り上げたが、大手紙社説で最初に口蹄疫問題を取り上げたのは13日の毎日新聞だった。他大手紙はさらに遅れた。あるいは、オバマ・ドクトリンについては社説で扱うほどの問題でもないのかもしれない。
 オバマ・ドクトリンについて国内情報がないわけではない。28日付け朝日新聞「「軍事より外交的解決を優先」 米、新安保戦略を発表」(参照)では、冒頭、ブッシュ・ドクトリンとの差を伝えていた。


軍事力を安全保障上の礎石としつつも、国際協調主義と外交的関与による解決を優先する方針を明確にし、ブッシュ前政権の単独行動主義や先制攻撃論などと一線を画す姿勢を示した。

 28日付け産経新聞「「オバマ・ドクトリン」発表 「先制攻撃」排除、北とイランには圧力も」(参照)も同じような切り出しだった。

「武力行使の前に他の手段を尽くす」とし、ブッシュ前政権が国家安全保障戦略で打ち出した「先制攻撃」を排除し、「ブッシュ・ドクトリン」との違いを明確にした。また、国際協調を進め、国際社会における米国の指導的立場の確立を目指すとした。

 こうした報道を見ると、さすがチェインジを掲げたオバマ政権だけあって、安全保障においてもブッシュ政権と随分変わったかのような印象を受ける。
 でも、それって本当?
 27日付けフィナンシャルタイムズ社説「Obama’s nuanced security policy(オバマの微妙な安全保障政策)」(参照)は、そのあたり日本国内報道とは違った側面から伝えていた。概ね、ブッシュ・ドクトリンと変わらないというのだ。

The differences between the national security strategy announced by Barack Obama’s administration and previous US doctrine are smaller than the White House says. The tone has changed since a humbled Bush administration issued its last pronouncement on the subject in 2006, but the substance mostly has not.

米国オバマ政権が発表した国家安全保障戦略ことオバマ・ドクトリンは、米国政府が言うほどには、前ブッシュ政権のそれと違いがあるわけではない。語り口調は何かと難癖のついた前ブッシュ政権が提出したドクトリンとは違っているが、実質的には大半には違いなどなかった。


 フィナンシャルタイムズは、オバマ・ドクトリンはブッシュ・ドクトリンと実質的な違いはないというのだ。

That hardly sounds like Mr Bush. Yet the strategy says that US power is undiminished. It insists on US global leadership. It does not rule out unilateral use of force.

印象としては前ブッシュ大統領と同じには思えない。だが、オバマ・ドクトリンによれば、米国の国力はいささかも減じていない。米国は国際世界の指導者主張している。軍事力を一方的に行使することも排除していない。


 日本ではオバマ政権はブッシュ政権とは異なり、多元的な世界観を基本にしているといった愉快な意見もあるが、フィナンシャルタイムズはそう見ていない。
 日本の鳩山政権ほどではないが、政権公約違反ではないかと思われる実態もある。

Expedients favoured by the Bush administration and deplored by many Democrats, such as indefinite detention of terrorist suspects without trial, are not renounced. Drone attacks of dubious legality, at best, will continue. The prison at Guantanamo, which Mr Obama keeps promising to close, is still there.

ブッシュ政権が好み民主党議員の多数から避難した、泥縄的な対応にも破棄されていない。裁判もなくテロ容疑者を無制限拘留するのもそのままだ。合法性に疑念のある無人飛行機による攻撃も継続されることになる。オバマ氏が閉鎖を公約したグアンタナモ収容所もそこにそのままある。


 グアンタナモ収容所閉鎖問題については、日本の鳩山首相の沖縄問題での公約違反ほどには直接的な被害を受ける人がないものの、それでもひどいことになっている。法治国家の放棄に近い。
 結局、オバマ・ドクトリンがきれいそうに見えるのは、オバマ大統領お得意の修辞ということかかもしれない。

Words are important; actions speak louder. In national security, Mr Obama’s words and actions do not yet cohere.

言葉は重要であるが、行動はより物語る。国家の安全保障において、オバマ氏の言動はまだ一致してはいない。


 とはいえ、フィナンシャルタイムズとしては議論の展開上、オバマ・ドクトリンの口調の差だけでも肯定的に受け止めているし、むしろ、ブッシュ・ドクトリンと差がないことを積極的に評価している。

This is not in itself a criticism: the broad principles are correct. The challenge, as the administration is discovering, is living up to them.

(ブッシュ・ドクトリンと同じだということ)それ自体が批判対象になるわけではない。広義の原則として見れば正しいからだ。オバマ政権も理解しつつあるが、課題は行動に移せるかということだ。


 オバマ大統領の任期はまだ残されている。ブッシュ・ドクトリンに戻って立て直すという余地もある。ここで日本を顧みて思うことがあるかといえば、特に、ないな。

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