« 鳩山由起夫首相の尖閣諸島帰属問題意識について | トップページ | オバマ・ドクトリンはブッシュ・ドクトリンとどこか違うのか? »

2010.05.30

連立与党から社民党が離脱

 米軍普天間飛行場問題で民主党鳩山由紀夫首相が、連立党である社民党の福島瑞穂党首を閣僚から罷免した。福島氏としては、民主党が進める沖縄県内移設は容認できないということだ。確かに容認したら自衛隊を合憲とした社会党の村山元首相のようなことなり、歴史に残る失笑を買ったことだろう。
 社民党は連立政権から離脱することにもなった。まだ国民新党が付いているものの三党連立の枠組みは崩壊した。
 なんと言っていいのやら。
 私は、福島氏はマスコミ人気をあやかった看板とはいえ社民党の党首なのだから同僚議員の政治生命のことも配慮して自身が閣僚を辞任するくらいで収めるかもしれないと思っていたが、自身に非はないから辞任はしないと言い通して罷免となり、どたばたと社民党は政権離脱した。ニュースでありがちの町の声を拾っているなかで、最初から民主党と社民党の連立が無理だったというのがあった。それもそうかなとも思わないでもない。昨日の読売新聞社説「普天間日米合意 混乱の責任は鳩山首相にある」(参照)もそんなことを言っていた。


 社民党は、「日米安保条約は平和友好条約に転換させる」「自衛隊は違憲状態」との見解を維持している。そもそも、民主党が、基本政策の異なる政党と連立を組んだこと自体に無理があった。

 それを言うなら、民主党は「郵貯・簡保を徹底的に縮小し、官から民へ資金を流します」(参照)と主張する政党だったのに、郵政国営化の国民新党と連立しているのも奇っ怪な話だ。
 社民党にしてみれば、民主党鳩山党首は、普天間飛行場問題で「最低でも県外」と述べていたのだから、それを建前でも信じるというのはあっただろうし、これもそもそも論だが、社民党を抱き込むために鳩山首相はそう述べてきたのだろう。
 だが、鳩山首相が変わった。ユーチューブに鳩山対鳩山(参照)という、過去の鳩山氏が今の鳩山氏を糾弾するネタがあったが、沖縄県内移設が容認できない閣僚を罷免するというなら、罷免されるべきは、そうした過去を持った鳩山首相であった。福島氏は過去の鳩山氏と同じことを言っていたにすぎないのだから。
 結局は福島氏の罷免に終わったが、その間に他党から福島氏への不信任案が出ていたら鳩山首相は、福島氏を信任するとして他党の不信任案を否定して、それから信任をころりと忘れたかのように罷免したということになったのだろうか。
 鳩山首相のなかに人格の時間的な同一性というものがあり、過去と今の差違を認識しその責を負うというなら、鳩山首相こそが辞任し、この内閣を解散し、総選挙を行うべきだろう。選挙の洗礼を受けぬ首相ということで自民党を責めていたのだから、それがスジというものだろう。スジが通る御仁ではないのだろうが。
 社民党が民主党を離脱することでどうなるか。
 二つ思い浮かぶ。一つは、この連立の意味を問い返せばわかること。つまり、全日本自治団体労働組合(自治労)と日本教職員組合(日教組)の丸め込みが不安定になるということだ。
 2007年だが、そもそもこの連立を画策していた小沢一郎氏の思惑はそこにあった。2007年12月30日付け共同「社民の民主合流を提案 小沢代表、有力労組幹部に」(参照)より。

 民主党の小沢一郎代表が10月下旬、同党と社民党を支援する全日本自治団体労働組合(自治労)と日本教職員組合(日教組)の幹部に社民党の民主党合流を提案し、後押しするよう要請していたことが分かった。両党関係者が30日、明らかにした。

 この時は失敗した。理由は、自民・民主の大連立話が立ち上がり、小沢氏は代表を辞任した。今にして思えば、小沢氏を挫くための策略のように見えないこともない。
 この時点の話で学べることはもう一つある。

 小沢氏の提案を伝えられた社民党幹部は「野党共闘を呼び掛けておいて、党の吸収を考えるとは失礼にもほどがある」と拒否する考えを表明。

 社民党というか、自治労と日教組には多少小沢氏への警戒があった。今でも消えてはいないだろう。
 そして現下、社民党が与党から分離し、社民党支持色も強い自治労と日教組がどういう活動するだろうか。反自民という排他の論理だけでまとまるものだろうか。自治労と日教組に不満があれば、政権内から調整する能力が弱った分、政治の裏の部分でさらに宥和的な配慮をしなくてはならなくなる。オモテに出てくる民主党の行動としてはさらに理不尽なものになってくるのではないか。
 もう一つ思ったのは、普通に選挙の票の問題である。社民党は国民の支持という点から見ればその存在の確認は誤差の範囲くらいなものだが、昨年の衆院選比例選では類計300万票を獲得している。しかも、きちんと組織票で動く。
 今日付け読売新聞「社民連立離脱で選挙協力に暗雲…民主打撃」(参照)では、民主党との選挙協力がうまく行かない可能性を示唆していた。

 社民党は過去4回の参院選で、選挙区に10~20人の公認候補を擁立してきたが、今回は7人にとどめた。独自候補擁立を見送り、民主党候補を推薦する選挙区が多かったからだ。
 しかし、社民党が連立離脱を決めた30日、党岩手県連は岩手選挙区で独自候補を擁立する方針を決定した。こうした動きがほかの選挙区にも広がる可能性もある。

 多少はそうかもしれない。

 一方で民主党との選挙協力の見直しは、社民党にとっても悩ましい問題だ。特に改選定数2の新潟選挙区では社民党が公認候補を立てたことに配慮して、民主党が候補者を1人に絞っており、社民党が今後、民主党批判を強めれば、協力態勢に影響することは避けられないとの指摘が出ている。

 そこはまだ小沢氏の采配の内だから、なんとか整合が付くだろう。
 総じて言えば、見た目のドタバタは若干浮動票に影響を与えるだろうが、民主党と社民党が反自民の方向を向いているかぎり、さほど選挙の構図に変化はないだろう。
 問題は、浮動票の半数からすれば、反自民党と反民主党は同じということだ。私は、これこれの理由で鳩山首相は辞任して内閣解散せよと思うが、世の中の空気は、単純に「もうこんな政治はいやだ」というだけで突き進むかもしれない。それを決めるのは、不測の事態がなければ、景気の問題だろう。

|

« 鳩山由起夫首相の尖閣諸島帰属問題意識について | トップページ | オバマ・ドクトリンはブッシュ・ドクトリンとどこか違うのか? »

「時事」カテゴリの記事

コメント

沖縄基地の移転先として韓国の名前が全く上がらないのは何故ですか?
米対中で考えるのなら、韓国もひとつの選択肢だと思うのですが、太平洋に面していないからダメなんですかね?

投稿: Nopp | 2010.05.31 00:17

陰謀論みたいな言い方になってしまって、考えることも悔しいのですが、鳩山総理を誕生させた地検特捜部は小沢氏との試合に負けても勝負に完全勝利したのではないでしょうか。

小沢氏なら、違ったというのも鳩山首相以上に私の頭があったかくなっていると認めることになるのかもしれませんが。公約はさして変わらないものだったでしょうから

投稿: | 2010.05.31 03:58

社民党みたいなことをいっていたら、日本では、共産党同様、政権与党としてはやっていけないはずだと思います。日本がおかれている現実に対して、責任を負えないのだから。

でも、社民党支持者が国会で、選挙による正統な議席を獲得できないとなると、社民党支持者の政治活動がアングラ化するので、やはり、政党としての社民党は、存続の努力をすべきです。

そのためにも、福島大臣には、政党の政見、安全保障政策の考え方の話よりも、まず、自身の職掌の行政実務である少子化対策、消費者庁業務の健全化の仕事に最大限の努力をしたうえで、自ら、社民党党首としての立場上、この事態での必須の結論であることを明らかにして、内閣に辞表を提出するべきであったと思います。

投稿: enneagram | 2010.05.31 09:45

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 連立与党から社民党が離脱:

« 鳩山由起夫首相の尖閣諸島帰属問題意識について | トップページ | オバマ・ドクトリンはブッシュ・ドクトリンとどこか違うのか? »