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2010.04.14

韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈、その後

 先月26日夜、韓国が黄海上の軍事境界線と見なす北方限界線(NLL)(参照)に接する白翎島の南西約2キロ地点で、警備活動中の韓国海軍哨戒艦「天安」(全長88メートル、1200トン)が爆沈した。


白翎島

 乗員104名中救助されたのは58名。一名の遺体が発見されたという報道もあった(参照)。44名は海底に残されているらしい。明日引き上げ開始となる予定だ(参照)。
 爆沈は激しいものだった。韓国地質資源研究院は、TNT火薬で約260キロの爆発に相当する空中音波を観測した(参照)。この火薬量は北朝鮮サンオ級小型潜水艦の魚雷の爆発力に相当する。
 爆沈の理由は現報道ではわからないとされているが、朝鮮日報「哨戒艦沈没:「外部爆発の可能性大」」(参照)では、船底の下で魚雷・機雷などによる外部爆発が発生した可能性を報じ、機雷の可能性を高く見ている。
 機雷であろうか。朝日新聞「軍艦沈没、広がる疑心暗鬼 韓国内で北朝鮮関与説やまず」(参照)は北朝鮮の関与を含め、こう報じている。


 韓国内では「北朝鮮軍の関与」説が飛び交っている。メディアは大々的な報道を続け、国会では与野党を問わず政府に北朝鮮の関与の有無をただす質問が絶えない。
 だが、政府側は慎重だ。これまでの調査では、哨戒艦は潜水艦や魚雷が標的を探すために発信するソナー音を感知していない。機雷の可能性も低いとみられている。原因の特定につながる情報がないなか、金泰栄(キム・テヨン)国防相は「すべての可能性を念頭に置いている」と繰り返している。

 韓国内に、北朝鮮の関与による外部爆発を疑う声も多いのは、ある意味で当然のことだろう。関与が明確になればなったで大きな問題となる。同記事より。

 もし北朝鮮の犯行となれば、ラングーン事件(1983年)や大韓航空機爆破事件(87年)に匹敵する事件となる。対応を誤れば政権の危機にもつながりかねず、韓国政府は調査に万全を期すため国際合同調査団の創設を各国に打診し、米、英など4カ国が参加を表明した。

 朝日新聞報道は曖昧に書いているが、北朝鮮の関与が明確になれば軍事的な対応を取らざるを得なくなるという含みがある。
 同記事は、オバマ政権も韓国側の慎重姿勢に配慮し、調査終了まで北朝鮮との協議自粛を決めたと続くが、問題は六か国協議のほうにある。今日付のロイター「オバマ米大統領、北朝鮮の6カ国協議復帰に期待」(参照)は、「天安」爆沈の文脈に触れず、北朝鮮について展望を述べている。

核安全保障サミット閉幕後に行われた記者会見で、オバマ大統領は「北朝鮮は自国民に深刻な打撃を与える厳しい孤立への道を選択したと言っていいだろう」とコメント。その上で、制裁の圧力がさらに高まれば、北朝鮮は孤立状況から抜け出そうとし、6カ国協議にも復帰することになるだろうと述べた。

 だが、「天安」爆沈の文脈に触れずに六か国協議が再開されることは当面なくなったと見てよいだろう。
 別の言い方をすれば、日本の報道では核廃絶といった美しい文脈に核安全保障サミットが置かれているが、現実の文脈に置き直せば、核安全保障の問題はイランの核化と北朝鮮の核保有の問題であり、後者が今回の事件で抜き差しならぬ事態となりかねない。
 もう少し踏み出して言えば、北朝鮮は核保有をやめることはないという各種のメッセージが出されてきた文脈のなかに、この事件が置かれるのかもしれない。12日付けワシントン・ポスト社説「What is most likely to denuclearize North Korea」(参照)もそうした文脈を暗に重視しているようにも読める。

There's debate over whether such Chinese aid would be useful in restarting diplomacy or unhelpful in easing the pressure that alone might someday spur a deal.What's most likely is that it doesn't matter: that the North Korean regime will never give up its nuclear weapons, because it has nothing else -- no legitimacy at home or abroad.

中国のような北朝鮮支援が六か国協議再開に有益なのか、将来単独で事態を進展させうる圧力の緩和は有益ではないか、といった議論がある。可能性としては大した議論ではない。北朝鮮は絶対に核兵器を放棄しない。もうそれ以外に北朝鮮には何もないからだ。北朝鮮内外に国家存立の正当性はない。

As in Iran, the problem is the regime more than the weapons. That's not an argument against engagement with Kim Jong Il any more than with the mullahs.

イラン同様、問題は核兵器ではなく、国家体制の維持にある。シーア派の大義ほどに金正日の関与も問題にならない。

It is an argument for clear-eyed engagement, though -- with a recognition that in the long run only a change in the nature of North Korea's government is likely to solve this problem.

問題は現実を見ろということだ。北朝鮮政府の体制に変化がなければ、核の問題を解決することなどできないと認識することだ。


 懐かしのネオコン音頭のように聞こえないでもない。だが、その主張を現実の世界でしているのはオバマの米国ではない。核兵器抜きの北朝鮮というものはありえないのだということを、悲鳴のように告げてきたのは北朝鮮だろう。

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コメント

攻撃を受けたかどうかわからないうちはタイトルに撃沈と書かないほうがよいと思うのですが。

投稿: | 2010.04.14 23:27

ご指摘ありがとうございます。誤記でしたので修正しました。

投稿: finalvent | 2010.04.15 07:50

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