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2010.04.22

天明の飢饉に学ぶこと

 江戸時代の日本ではだいたい50年周期で飢饉が発生した。大飢饉は江戸四大飢饉とも呼ばれ、寛永の飢饉(1642-43)、享保の飢饉(1732)、天明の飢饉(1782-87)、天保の飢饉(1833-39)がある。最大のものが天明の飢饉である。

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近世の飢饉
 なぜ飢饉が発生したかについては、天候不順による凶作がよく挙げられる。虫害もある。米の生産側の問題に対して、米を扱う政策上の問題もある。江戸時代後期になるにつれ貨幣経済の発展から財政難の各藩は備蓄米を大阪で売って貨幣化していた。ヒトよりもカネといった次第であった。飢饉の背景には、騰貴もあったし流通の問題もあった。
 飢饉の原因は複合的に考える必要があるが、それでも予想外の天候不順の要因は大きい。天明の飢饉にも冷害が関係しているが、この冷害を引き起こした一つの要因に、日本から遠いと見なされるが、アイスランド南部のラカギガル火山(Lakagígar)の噴火も想定されている。同火山はエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)火山の北西60キロメートルにある。
 ラカギガル火山の噴火は1783年6月8日に始まり、1784年2月7日まで8か月も続いた。規模は1991年のピナトゥボ山の噴火に相当すると見られている。ラカギガル火山の噴火により1億2000万トンもの有毒な二酸化硫黄が放出され、その影響で何千万人も亡くなった。
 その二酸化硫黄粒子は成層圏に達し、ジェット気流に乗り北半球全体を覆った。二酸化硫黄の粒子は、火山灰やブラックカーボンとは異なり、長期間空中に留まり酸性雨の原因にもなるが、なにより気になるのは、「火山の冬(volcanic winter)」と呼ばれる広域な気候の変化としての寒冷化を引き起こすことである。
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“不機嫌な”太陽
気候変動の
もうひとつのシナリオ
H・スベンスマルク,
N・コールター
 噴火に伴う火山灰や霧状の二酸化硫黄が太陽光を遮ることで寒冷化がもたらされると説明されることが多い。が、「[書評]“不機嫌な”太陽 気候変動のもうひとつのシナリオ(H・スベンスマルク、N・コールダー): 極東ブログ」(参照)でも触れたが、硫酸分子は雲の核となる。大気中の硫酸分子は太陽光を遮断する雲の生成を促し、地球規模の寒冷化をもたらす。なお、成層圏についてはエアロゾルが太陽光の輻射を吸収するため温度が上がる。
 実際ラカギガル火山の噴火後、北半球全体が寒冷化した。米国北東部では冬の平均気温が2度から氷点下6度に下がった。日本も寒冷化した。天明の飢饉に関係すると見られるのはこのためである(なお、天明飢饉には浅間山の噴火も関連している)。フランスでも農作物不作により食料が不足し、1789年のフランス革命の原因の一つになった。
 火山の冬が歴史に痕跡を残すように、さらに生物進化に影響を与えることもある。仮説にすぎないといえばそうだが、トバ・カタストロフ理論(Toba catastrophe theory)によれば、7万年前、インドネシア、スマトラ島のトバ火山噴火による火山の冬が引き起こした長期の地球の寒冷化によって、生き残ったホモ属はホモ・ネアンデルターレンシスとホモ・サピエンスのみとなった。

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コメント

7年→7万年

投稿: | 2010.04.22 15:53

いつも楽しみに読ませていただいております

誤字だけ指摘させてください、トバ・カタストロフは7万年前とのことです

投稿: _ | 2010.04.22 16:20

誤字ご指摘ありがとうございます(Twitterでも)。訂正しました。

投稿: finalvent | 2010.04.22 16:27

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