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2010.04.04

みんな亀井ポジションになりたい病

 政局にはあまり関心ないし、率直に言って裏でうごめくものについては何にもわからないが、昨日与謝野馨元財務相が自民党を離党したことに触れて、たわいない印象だが書いてみたい。
 与謝野氏の離党では二つのことを思った。一つは、ああこの人は本気なんだなということだ。この自民党ではだめだと判断し、かつ自民党に縛られない自身の政治理念にきちんと向き合っているのだと。もう少し言うと、比例復活してしまった自身に恥じているとともに、自分の命をかけても政治(消費税のきちんとした道筋)をやろうとしている漢なのだろうなと思った。政治家の倫理としては立派なものだ。
 そしてもう一つは、それでも私は与謝野氏の経済理念を支持できないということだ。与謝野氏は頭の悪い人ではないから、民主党のようなとんでもない政治をすることはないし、要所要所ではそう間違った判断もしない。しかし、中期的に見れば麻生内閣でもっともまずい経済政策を推進してしまったのがこの人だったと私は思っている。この人がいなかったら、麻生政権はもっとましだったのにと残念に思う。
 与謝野氏は無所属の平沼赳夫元経済産業相と合流するらしい。平沼氏は保守的な政治家として見られている。臆断はよくないが、私はいわゆる保守主義には関心ないせいもあって平沼氏には関心がない。平沼騏一郎の養子といった歴史的な関心が若干あるくらいだ。彼がなぜ与謝野氏と合流するのかは皆目わからない。政治理念になにか一致するものがあるのだろうか。これでさらに鳩山邦夫氏と合流するなら、私は結成されるだろう新党というものがまったく理解できない。園田博之元官房副長官にも関心がない。党名が「わしらの党」「新老人クラブ」とかだったら、少し納得はするかもしれない。老人会となれば、読売新聞主筆のナベツネこと渡邉恒雄氏も活躍するだろう。
 与謝野氏の自民党離党に関連して、自民党では人気が高いと言われる舛添要一前厚労相がこの動きに同調するかという話もあるようだ。が、しないのではないか。舛添氏はその背景からしても国際的なレベルで日本の政治・経済を考えられる人なので、消費税重視の財政規律先決という与謝野氏とは方向性がまったく違うだろう。だが、これで自民党がまったくなくなってしまうということなら話も違うのだろう(あと述べる病気にかかるかもしれない)。
 中川秀直自民党元幹事長も、与謝野氏の離党についてはいろいろ言っているようだが、またしても動きはない。中川(秀)氏は、どたばたの推移をじっと待ちながら、自民党の再生を待っているのかもしれないし、ここまでへたれたのだから、もうそれはそれでよいのではないかとも思う。中川(秀)氏については、与謝野氏とはまったく逆で政治家的にはどうなんだろうとは思うが、表面に出てくる政策的には自分が一番納得できる政治家でもある。
 与謝野新党は、その人脈的な経路から民主党の小沢一郎幹事長との関連も噂される。過去の小沢氏の政局の仕掛けから見るとそれもないとは言えないだろう。その場合の思惑は何か。自民党側からすれば自民党への打撃ということがまずあるだろう。国政レベルでは見る影もない自民党だが、地方的はまだ組織的な余力があるようでもある。小沢氏としてはここで自民党を跡形もなく解体しておきたいのかもしれない。
 が、小沢シンパだった私にしてみると、それはそれほど大きな動機にはならないかのではないかと思う。与謝野氏もそんな線だけで小沢氏に乗せられるほど愚かなわけもない。であれば、与謝野氏の自民党離党は小沢氏とは関係がないのか、あるとして別の線なのか。私は多少は関係はあるだろうと思う。
 ここでふと思考実験的にこう思う、小沢氏は、内心、現在の民主党に満足していないのではないだろうか。あるいは、民主党崩壊時に備えた手を打っているのではないか。民主党の瓦解の線で、与謝野氏も賭に出ているのではないか。民主党は、このままの推移なら普天間問題で結果的に社民党を追い出すことになるだろうし、各種の間違った政策がさらに政権批判として跳ね返るだろう。なにより来年度の予算も組めない。民主党に来年はない。
 与謝野氏の動きは、小沢氏を介して民主党が崩壊する時点を読んでいるのだろうか。この思考実験はどうだろうか。私は、強いていえば、それも違うように思う。
 小沢氏は、民主党に固めた、いわゆる左派勢力を手放さない、民主党内の旧社会党的な勢力を見限るといったことはないと私は思う。小沢氏による輿石東参院議員会長の取り込み、端的に言えば、戦後左派的な政治勢力の飲み込みは、単に政局や権力闘争のための最適化ではなく、実際に小沢氏の内面はすでに、戦後左派的な政治理念、露悪的に言えば反米路線は、自身の政治理念と合流しているのではないか。私は戦後左派を飲み込む小沢氏の政治情念は、結局のところ、ナショナリズムなのだろうと思う。
 ナショナリズムというと、ネットなどでは、日の丸・君が代・靖国・反中国といったシンボルで表層に語られ、そのシンボルがいわゆる左派的なものを区別しているかに見える。だが、その実際的な政治の動きは、どちらも大きな政府を志向していくだけだ。その大きな政府は、「日本」という大看板ではないのかもしれないが、税を介した国家の機能の強化に集約されている。そして、税という国家システムによって守られた人々(公務員・公務員の外注産業・大企業組合員)が、その外部にある人にお慈悲を与えるという正義だけが許されている。税という国家システムから自立しようとする人を排除していく。
 この左派ナショナリズムが不安定な多党構造(あるいは大連立)のなかでマスコミを巻き込んで大衆迎合的な次の「正義」を作り出していくだろう。いや、すでに民主党は亀井静香金融・郵政担当相がそのポジションに立っている。このこと自体、すでに民主党が政策を堅持する政党としては終わっていることを示している。
 みんな亀井ポジションになりたい病にかかっているのだ、と、そう考えてみると、「わしらの党」も「みんなの党」もわかりやすい。政党だからどんな政策があるのかと考えると迷路にはまる。
 小沢氏の実力で民主党が、自民党時代のように無内容でも維持できたような維持の力学(左派の飲み込み)で成り立っているなら、そして首相というのがそうした党のいち調和機関でしかないなら、そのひび割れで小政党が、なんでもできるようになる。かつてこうした状況でなにが生まれたか歴史を学ぶものには恐怖を覚えるところでもあるが。

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コメント

文章が長いので、要点を最後にまとめていただけると助かります。

投稿: | 2010.04.05 00:17

>「消費税重視の財政規律先決」


与謝野支持かどうかは別にして、消費税率増税に言及しない政治家は、全部ペテン師なのでは?


「郵政官業化」(笑)の現在、NHK民営化なんて訴えてくれる政治家なんていないだろうな。大切な話だと思うのだけれど。

投稿: enneagram | 2010.04.05 08:18

左派陣営的ナショナリズムっていうか完全な人民独裁じゃないですかーやだー

投稿: | 2010.04.05 18:51

財政再建のための消費税アップはよくないという意味では?

投稿: 南の原っぱ | 2010.04.05 20:06

現下の政党の整理として明快な文をありがとうございます。愛国心とか憲法改正とかちょっと後でもいいでしょう、という空気が読めない右翼は笑い話としても、民主を支える左翼勢力が怖いです。近未来にソ連や昔の中国のような、超巨大官僚組織ができるのでは?政治家→官僚→寄生する周辺企業社員が国家の指導者になり、自営は搾取する資本家としてパージ、知識人は焚書坑儒される世の中になるのではと本気で怖いです。テレビで耳障りのいい改革を唱える民主の政治家の裏でコニュニスト達がうごめいていることを監視しなければいけません。

投稿: | 2010.04.06 21:52

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