民主党の成長戦略は新たなる道路建設にあった
民主政権下で道路整備事業財政特別措置法が改正される(参照)。自民党時代には、高騰したガソリン対策や景気対策として3兆円の国税が投入され、利便増進事業として休日上限1000円の割引や、スマートインターチェンジ整備に利用されていた。今回の民主党による改正では、この国税の用途を高速道路建設や車線増設に転用できるようする。この背景には、民主党の新しい成長戦略がある。
道路整備事業財政特別措置法の改正について前原誠司国交相は当初、「高速道路会社にお金を渡して会社が整備するというのはまったく議論していない」(参照)と述べた。しかし要望の背景に、小沢一郎幹事長による、夏の参院選をにらんだ地方の首長らの取り込みがあると理解するや、その後は八ッ場ダムやJALの問題のようにきちんと沈黙を守っている。
大半の地方首長も道路事業費の四分の三を国が負担し、残りの四分の一を地方が負担するだけでよいとなれば、この改正を歓迎し、民主党を支持することだろう。
しかし民主党政権は、無理と知りながらもマニフェストで高速道路無料化を謳った手前、なんとか全国の二割の高速道路を無料にすると発表したばかりだ。さらなる道路増設というのでは、政策上に矛盾はないのだろうか。国税を投入してまで道路事業を推進することを不可解に思う国民もいるだろう。
だが民主党議員にはその疑問はない。馬淵澄夫副国交相にいたっては、料金割引財源の建設費への転用が予算措置を伴わないから新たな国費の投入ではないとまで述べている。道路予算の大幅削減を強調しておきながら、予算計上されない建設資金を捻出する国交省の姿勢に問題を感じているようで民主党議員は務まらない。
しかも6月には休日上限1000円割引制度が廃止され、車種ごとの上限料金制を導入する予定だが、道路建設への転用で割引財源が目減りすれば、新料金は高額になるか税負担となる可能性が高い。この点についても民主党議員には疑問はない。民主党内では、道路増設に関連して検討されてきた、日本経済の新成長戦略があるからだ。
民主党の新成長戦略とは何か。端的に言えば、小沢一郎幹事長の政治的な師匠でもあった田中角栄元首相の列島改造論の新しい展開である。日本列島全域にさらなる道路を増設することで日本経済の復興を図り、デフレ脱却を求める戦略である。
新戦略は今日この日を狙って発表されることになる予定だが、その一部は事前に独立行政法人高速道路機構から公開されている。関連の情報を見ると説得力がある(参照PDF)。
![](http://finalvent.cocolog-nifty.com/photos/blogimg/road01.png)
日本は無駄な道路が多すぎると言われてきたが、この表からもわかるように、GDP比による供用延長指数は、日本が1.95と断トツに低い。つまり日本は、経済規模に見合った道路がいまだ整備されていないのが実情であり、逆に言えば、日本経済を停滞させているのは、日本国が道路に十分な投資をしていないからなのである。
民主党マニフェストにもある高速道路無料化の本来の意義は、高速道路の有効活用によって経済活性が期待できることであった。活用できるなら道路は増えるほうがよい。だから増やそう、地方にもっと道路を増やそう、小沢一郎氏率いる民主党は列島改造論の原点に立ち返ろう、というのである。
道路財源の暫定税率も民主党の新成長戦略に沿って再考されている。政権交代直後は、実質的に暫定税率が維持されたことで公約違反と非難されたものだった。当時はこれを廃止すると、個人消費は0.9兆円増加するものの、年間2.6兆円の税収減となり、さらにGDPは3兆円減少すると試算されていた。
しかしその後、民主党内でさらなる見直しをしたところ、この試算の意味合いが大きく変わった。2.6兆円の税収分を実質的なガソリン減税として利用するとしても0.9兆円の効果しかないが、暫定税率分を効果的に道路建設に回せばGDPを3兆円も押し上げることが可能なのである。
そればかりではない。国土交通省が策定した新たな中期計画をベースに試算すると、1兆円の道路投資を行った場合における10年間の効果の合計は約2.6兆円と推計されることが、マクロ計量経済モデルからわかっている(参照PDF)。
![](http://finalvent.cocolog-nifty.com/photos/blogimg/road02.png)
さらに道路拡張のための用地買収経費の支出は直接に国民経済を潤すことになる。
この計画を見直し、民主党らしく化粧直しをした企画書のレクチャーを受けた菅直人副総理・財務相は「これが乗数効果というものか。ようやくわかった」と蒙を啓かれたとのことだ。
小沢一郎幹事長が地方に道路整備を促すのは単に選挙対策ばかりではない。日本の経済成長のエンジンとなるからである。都市部においても、環状道路をさらに整備することで混雑を解消させれば、地球温暖化防止の二酸化炭素排出削減の効果がある。経済成長しつつ、地球環境も守る。これこそ民主党らしい成長戦略だと言えるだろう。
事業仕分けという名の人民裁判、子ども手当埋め合わせの増税、規律なき赤字国債の積み上げ、政治資金疑惑の曖昧化、普天間飛行場の固定化、高校無料化による格差の拡大、郵政国営化で財投復活、そして道路拡大による経済成長。短期間で大きな成果を上げてきた民主党は、4月1日を契機にさらなる変貌を遂げることだろう。
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コメント
まさしく4月1日にふさわしい(笑)
わたしも大いに感銘を受けました。いやー民主党の慧眼にはホント恐れ入ります。
#誰かこの国を救ってくれないものか...orz
投稿: yuraku_love | 2010.04.01 00:12
民主党が政権を奪った直後に世を儚んだ自民党支持者の皆様にあらせられては、どんどんかつての自民党と変わらなくなってきている昨今の民主党を見て、ご満足いただけてますでしょうか?
……まぁ、それは冗談として。
小沢さんは自分が理想とする形で権力を掌握できるまでは、どんな妥協も平然とやってのける覚悟でいるんでしょうし、亀井さんもそれを承知で図々しく付け込んでるんでしょうけど。
いやぁ、亀井さんの現実を経てたどり着く小沢さんの理想の国家って、凄く住みづらそうで嫌だなぁ。
投稿: 義忠 | 2010.04.01 01:11
政権交代して、ほんとによかった。日本の次の十年は明るいですね。鳩山総理に最敬礼!
投稿: きくち | 2010.04.01 02:14
政権はどこでもいいから、3環状を早く完成させて欲しいですよ。
日本の再生は、首都高環状線、外環道、圏央道の完成から!
それと、もっと、関空と中部国際空港へのアクセスをよくする道路整備もすべきだと思います。
でも、これからの成長戦略なら、道路建設より、大都市圏の地下鉄整備だろうな。大都市圏の地下鉄が発達していれば発達しているほど、大都市圏の都市効率はよくなりますよ。
投稿: enneagram | 2010.04.01 09:26
支持してるのか、皮肉ってるのか、良く分からん文章ですね。
まず国債発行ですが、これを見ると、平成13年度、つまり小泉政権時代から一気にほぼ倍増してるのが分かる。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/hakkou01.pdf
誰が規律無きなのかな?
地球温暖化防止の二酸化炭素排出削減の効果があると書かれてますが、
昨年11月のクライムメートゲート事件で、その効果が改竄されていてのが世にばれて、大騒ぎになったのはご存知ですか?
水面下で欧州と米国の覇権争いがあり、演出された金融メルトダウンの目的は、米から基軸通貨を奪い、来年発行予定のユーロ2の担保を、排出権取引に決めた時に、この事件が起きたのです。
普天間の問題にしても、そもそも2、3年程前に米国からグアムに移転と言い出した訳で、まさか政権交代した民主が、ここまで離米政策を取ると、米が思ってなかったのが原因ですよ。
もしかしたら、それをも織り込み済みで、日中で戦わせたい野望を、米の一部勢力が持っていたとも考えられますがね。
それを承知の小沢さんが、事態を避けるべく中国と協調関係を築いていると思われます。
小沢さんはいい面ばかりでは無くて、外国人参政権の推進や、民潭との関係などもあるので、全面的に支持している訳ではありませんので、あしからず。
政府が最も苦心しているのは、恐らく今年起きるであろう、米の計画的破綻と、中国のバブル崩壊による混乱ですよ。
米国債を大量に持っていながら、売れないし、利息は受け取れていない。これは自民時代の密○のようです。
その資産が破綻により失われた時、日本はどうなります?
全ての指標が暴落するのは目に見えています。
民主になってから、明らかにそれらに対応していますよ。
一例を書くと、 自民政権時に減反させられていたのに対し、民主は増反政策で食料確保の戦略です。
米破綻により通貨危機が起き、実物が跳ね上がる、ハイパーインフレ対策です。
しかも農家戸別に補助金配布は、JAの上位銀行の農林中金が、ファニーメイとフレディマックの社債5.5兆円購入分が、紙屑化を避けられない為の措置です。
時は刻一刻と、その時が迫っているので、それをお忘れなく!
4月に新100ドル札を刷るのが不気味ですよ。
世界情勢が変化し、自民政治ではどうにも立ち行かなくなったその時政権交代が起きた。
政府は現在はそういう特殊な状況下に置かれている事をお忘れなく!
投稿: ももたろす | 2010.04.01 13:05
エイプリルフール!素晴らしい!
投稿: アルベリヒ | 2010.04.01 15:00
私も政権交替してほんとうに良かったと思います。鳩山さん&小沢さんには検察とマスコミの攻撃に負けずにガンバっていただきたいと思います。鳩山さん&小沢さんを応援しています。
投稿: | 2010.04.01 23:59
政権交代して良かったって思える人って頭にウジでも湧いてるの?具体的に何が良かったの?ばらまき?まずはエイプリルフールのこの基地外討論を見てからコメントしてもらいたいものです。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10226855
民主党のマニフェストでは、コンクリート(道路)から人へ。でもこれは逆行してるのでは?
ただの利権構造の付け替え推奨ブログですか?高速道路無料化は?財源は?自民党時代の小沢がたんまりこしらえた国債については?
さて、供用延長指数の定義と意味を説明してもらえますか?GDP辺りの道路の長さを比べて何の意味があるのでしょう。
アメリカは国土面積は広い。そのため必然的に距離を伸ばさざるを得なくなる。そもそも、GDP辺り道路建設にかけられる費用は大体決まっていて、アメリカは日本の半分程度の厚み、太さの橋桁に穴ぼこだらけのフリーウェイ。日本では考えられません。
高い土地代、山川の立地、地震対策など諸外国と全く基本条件が異なるのに都合の良い数字だけを見るのはナンセンス!!
総延長をのばしたところで劇的にGDPが改善するわけでも何でもない。土地代で潤うと言っても極一部。それよりも年間30兆円規模のパチンコ産業をつぶして他の娯楽へ割り振る方がよっぽど経済効果が出ますよ。こういった自民に出来ないことを期待したい。
木をみて森を見ずにならないようにお互い気をつけましょう。
>菅直人副総理・財務相は「これが乗数効果というものか。ようやくわかった」と蒙を啓かれたとのことだ
これが財務大臣て末期症状ですよ。同じ事自民党の財務大臣が言ってたらどうだったでしょうか?
投稿: n | 2010.04.02 17:22
4月1日のコメントと2日のコメント欄の温度差が素晴らしいですね。
>菅直人副総理・財務相は「これが乗数効果というものか。ようやくわかった」と蒙を啓かれたとのことだ
これは非常にいい皮肉だと思います。尤も未だに理解できてないのが現実の財務大臣ですが。
投稿: | 2010.04.08 00:04
のっけから「ウジでも湧いているのか?」などと来るから、できる対話もできなくなる。
そんなふうに来られたら、それこそ、「お前が湧いてると思うんならそうなんだろう、お前の中ではな」とでも申し上げるしかないでしょうね。あなたの長文にレスがつかないのはそういうこと。
他者の意見を聞いてみようなどとは微塵も思わない、あなたのような姿勢は、いわゆる「ネットウヨク」な方たちの際立った特徴ですね。
深めるための議論というのも悪くないものですよ。一度お試しになっては如何?
投稿: rommi | 2010.04.08 04:21
米国より国土が狭いのだから、GNP比で路線長がどうのと持ち出すのはどうかと思う。
他国に倣え的な戦略、ちょっと安易な気が。
「景気対策には、無駄承知で道路を作るべし」という論には賛成できかねるが、
無駄で経済が成り立っているということを認めるならば、自明に道路を作るのも手ではある。
私は人間都合の自然破壊がいやだけど、もう少し知恵を絞れないものか・・・
投稿: pie | 2010.05.07 02:29