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2010.03.24

[書評]テルマエ・ロマエ Ⅰ(ヤマザキマリ)

 今さらなという感じもしないでもないし、今見たらアマゾンで品切れだった。すごい人気である。「テルマエ・ロマエ Ⅰ(ヤマザキマリ) 」(参照)。面白いんだものね。というわけで、面白いギャグ漫画について面白いという以上を語るとろくなことにはならないが、無粋なブログなんで無粋な話でも。
 私がこのマンガを知ったのは、日経新聞のコラム春秋だった。3月15日のコラムにこうあった。


 古代ローマの建築技師が時空のトンネルを抜け、現代の日本と行ったり来たり。昨年末に出版され漫画好きの注目を集めている作品の筋立てだ。画期的なのは主人公を浴場専門の設計家にした点。日本側の出入り口も風呂に限っている。

 面白そうな漫画だなと思った。しかし、まったく思い当たらない。周りに漫画を読む人も減ってきている。
cover
テルマエ・ロマエ I
ヤマザキマリ
 いつごろからか漫画をほとんど読まなくなった。10年くらい前だろうか。15年くらい前か。惰性で読んでいたスピリッツが読んでいて苦痛になってきたし、沖縄の僻地では週刊漫画の販売が遅いし、買いづらかった。奈緒子というランナーの漫画は終わったのだろうか、月下の棋士という石井隆タッチの漫画は終わったのだろうか。知らない。星里もちるは何書いているんだろうか。マック使ってるんだろうか。知らない。知ってもろくなことがないかもしれない。先日、美味しんぼが終わってないことを知って愕然とした。私が終わりを知らない漫画もどっかで連載しているのかもしれない。そういえば、巨人の星って本当に終わったのだろうか。そういえば真樹日佐夫のワルって終わったんだろうか。以前、これが最終巻だというのを買ってすごく後悔したことがある。話が逸れたな。
 春秋のコラムにはその漫画の書名がなかった。書名くらい書けばいいのにと思ったので、教えてネットじゃないが誰か教えてくれないかなと思っていたら、教えてもらった。本書である。その場でアマゾンでポチッとしたらその日に届いた。ので、読んだ。面白かった。春秋に書名がなかったのは、逆にそれを狙ったヴァイラル・マーケティングでもあったのだろう。まんまと引っかかったわけだが、面白かったからよいよ。


アマゾンの書籍ページより

 その直後、マンガ大賞2010の大賞受賞したと聞いた。そして関連のニュースで作者が女性で、旦那さんがイタリア人だとも知った。産経新聞記事「【マンガ大賞授賞式】「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリさん 「主人公は夫のイメージ大きい」 」(参照)より。


 イタリア人の夫は大の「ローマおたく」であることを明かすと、「主人はイタリア人にしては珍しく硬派で融通のきかない性格で、漫画のキャラにしたらおかしいだろうなあと常々思っていた。(主人公は)主人のイメージが大きく、若干私の理想を加えながら描いています」とはにかんだ。

 なるほどね。だろうな。
 私が本書で一連爆笑したあと、しんみりと考え込んだというか、ある種奇妙な感動をしたのは、第5話である。ハドリアヌス皇帝がエルサレムに赴き、バル・コクバの乱に向かうところを描いているところだ。物語には「紀元134年ローマ帝国属州ユダヤ」「バル・コクバ反乱対策司令本部」とある。まさに、乱の終結の時期であり、ユダヤ教最大のラビ・アキバの最期が私などには想起させられる悲痛な物語である、は・ず・な・の・だ・が、何、この漫画。
 ローマ兵が求めていたものは風呂?
 エルサレムのオンドルでみんな元気になってユダヤ滅亡。んな話描いちゃっていいのか。いや、それこそギャグ漫画というものだろう。ギャグ漫画のもつ本当の戦慄がここにある、ってか、英訳することがあれば多少は各方面に配慮したほうがよいと思うが。
 作者もそれがわかってないわけもない。ハドリアヌスに「貿易と文明の交差路であるこの土地がローマ帝国にとっていかに大切なものなのか。それを示す為に新たな街「アエリア・カピトリナ」を建設しようとしたのに」と語らせている。その壮大なギャグに気がつく人が平たい顔族の読者にどのくらいいるだろうかとも思った。そして、それがギャグなんだよ、みんな裸で風呂に入ろうぜ、となれば、今のその地に新しく、神のシャロームを迎えるかもしれないと、私は夢想した。とはいえ、イスラムでは男の裸体も「[書評]イスラムの怒り(内藤正典): 極東ブログ」(参照)のような話もあるが、それでもローマの風呂はハマムに継がれている。

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コメント

美味しんぼ、まだやってますよ。

投稿: てんてけ | 2010.03.24 21:52

そう言えば、塩野七生も『ローマ人の物語』の中で、ローマ人と日本人は意外と似てるという根拠の一つに、両方とも風呂好き(温泉好き)だって書いてましたね。

投稿: | 2010.03.24 21:55

テルマエも面白いですけど筆者のエッセイのモーレツイタリア家族とその続編も面白いですよ。

投稿: にゃ太郎 | 2011.03.06 16:18

平たい顔族発言面白く思いますが誤解を正せば日本人は平たい顔族ではありません。単に幼児を仰向け寝でのっぺり顔O脚に育てることを好む猿顔文化を頑なに行う稀な国です。疑うなら外人同様うつ伏せ寝で幼児を育ててみてはいかがですか。あなたが多分理想にする外人顔体型人に育ちます。人の顔をよく観察すれば仰向け或いはうつ伏せで育てられた証拠が随所に見てとれます。あなたの発言は単に無知で人種的遺伝などでは断じてないのです。

投稿: MTWTDSHT | 2012.04.28 13:23

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