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2010.03.07

朝鮮国連軍と普天間飛行場

 5日の参院予算委員会の質疑で、鳩山首相は普天間飛行場が国連軍の指定基地であるのを知らないと告白した。シビリアン・コントロールにおいて有事には自衛隊の長に立つ人がこんな認識でいいんだろうかというのと、やっぱりあれかなと思うことがあった。
 報道としては鳩山政権に批判的な産経新聞の5日記事「普天間に国連軍 首相、官房長官知らず 質問の「ひげの隊長」あきれ顔」(参照)が取り上げている。詳細は「参議院インターネット審議中継」(参照)で確認できる。


 鳩山由紀夫首相と平野博文官房長官は5日の参院予算委員会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)が、休戦状態にある朝鮮戦争の再発に備え日本にいる国連軍の指定基地であるのを知らないという失態を演じた。普天間移設には国連軍の扱いも必要だが、国連重視を唱える政権にもかかわらず、首相と平野氏の念頭にはなかったことになる。
 質問したのは、陸上自衛隊のイラク先遣隊長だった「ひげの佐藤」こと佐藤正久参院議員(自民)で「そこも分からずに移設をうんぬんするのはおかしい」とあきれ顔だった。

 質問を受けた鳩山首相は「教えていただいたことに感謝する」と白っと述べて頭を下げたが、その重要性を理解しているふうではなかった。産経新聞記事の「失態を演じた」という表現は適切であろう。
 平野官房長官はまた、「国連軍の形でいるか分からないが、座間に国連軍の旗を掲揚している」「正規の国連軍は日本に駐留したことはない」とも答えた。産経新聞はこれを「迷答弁」としているが、ここは少し違う。
 先程「やっぱりあれかな」と書いたのはこのことで、平野官房長官が返答したように、座間の基地でも普天間の基地でも行けば国連旗があるのはわかるものだし、要人の訪問ならきちんと説明を受ける。このあと、佐藤氏の質問は社民党党首の福島瑞穂少子化・消費者担当相に向かうのだが、その応答でも福島氏はこれらの基地を訪問して国連旗を確認していると述べている。
 つまり、鳩山首相は在日米軍基地というものを見たことがないということなのだ。あるいは説明を受けてきちんと見たことがないと限定してもよいのだが、少なくとも普天間飛行場移設問題が課題になる政権でありながら、この首相は一度も普天間飛行場の視察をしてはいないということだ。沖縄の人の思いを大切にと口では言いながら、沖縄を訪問し沖縄の人と対話もしたこともなければ現状も視察していない。そういうことなのだ。
 FNN「普天間基地移設問題 日本政府、あくまでも「ゼロベース」を強調も地元からは怒りの声」(参照)も補足しておこう。

 参院予算委員会で、自民党の佐藤正久議員は鳩山首相に、「勉強してください! 朝鮮戦争は終わっていないんです。まだ休戦状態なんです。日本の7カ所に、後方支援なり国連の基地がある。その1つが普天間基地なんです!」と述べた。
 これに、鳩山首相は「今、教えていただきましたことに感謝いたします」と答えたが、佐藤議員は「そこもわかんなくて、普天間の移設、ちょっとおかしいと思います」と批判した。

 普天間飛行場は、国連軍の基地でもあるのだが、これは朝鮮戦争の国連軍であって、正規の国連軍ではない。正規というのは、国連憲章第7章第43条が規定する特別協定により、加盟国から募られた軍隊を意味する。だが、この特別協定が過去結ばれたことはない。
 それゆえ、この国連軍は「朝鮮国連軍」とも言われる特殊な形態のものである。「[書評]ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(ディヴィッド・ハルバースタム): 極東ブログ」(参照)でも扱ったが、1950年に朝鮮戦争の勃発した。このおり安全保障理事会に提出された武力制裁決議が当時の理事国ソ連の合意を欠いたまま議決され安保理勧告となった。この勧告に基づき、米国、英国、フランスなど10か国が「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(通称、国連軍地位協定)(参照)を結び、16か国が参加して朝鮮国連軍が結成された。
 同協定に基づき、日本国内では、キャンプ座間(現在は横田飛行場)に国連軍後方司令部が設置され、 7つの在日米軍基地、座間、横田、横須賀、佐世保、嘉手納、普天間、ホワイト・ビーチ(現うるま市)が国連軍基地に指定された。このため、これらの基地は国連軍基地として朝鮮国連軍(現在8か国)の軍機が現在も利用している。
 この国連軍地位協定だが、利用について次のような規定がある。

第五条
1 国際連合の軍隊は,日本国における施設(当該施設の運営のため必要な現存の設備,備品及び定着物を含む。)で,合同会議を通じて合意されるものを使用することができる。
2 国際連合の軍隊は,合同会議を通じ日本国政府の同意を得て,日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及び区域を使用することができる。
3 国際連合の軍隊は,施設内において,この協定の適用上必要な且つ適当な権利を有する。国際連合の軍隊が使用する電波放射の装置が用いる周波数,電力及び類似の事項に関するすべての問題は,合同会議を通じて相互間の合意により解決しなければならない。
4 国際連合の軍隊が1の規定に基いて使用する施設は,必要でなくなつたときはいつでも,当該施設を原状に回復する義務及びいずれかの当事者に対する又はその者による補償を伴うことなく,すみやかに日本国に返還しなければならない。この協定の当事者は,建設又は大きな変更に関しては,合同会議を通じ別段の取極を合意することができる。

 この条項をどう解釈するかが難しい問題で、過去参院で「質問第四一号 普天間飛行場における国連軍地位協定の位置付けと在日米軍基地再編に関する質問主意書」(参照)が提出され、答弁書第四一号(参照)が存在する。
 これらの経緯について、鳩山首相と平野官房長官もまったくレクチャーを受けていなかったとしか思えない。佐藤氏が質疑後次のようにつぶやいているのも同情できる(参照)。

昨日の委員会、首相や防衛大臣「普天間基地が国連軍施設であること、海兵隊が沖縄でジャングル戦訓練を行っていること」を知らなかった事が判明。即ち政府が海外移転や九州移転を真剣に検討していないことの裏返し、始めから沖縄ありき故に事務方も説明していない模様。他方知識もゼロベースとのヤジも

6:23 AM Mar 6th via web
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SatoMasahisa
佐藤正久


 この問題はどう扱ったらよいのか。佐藤氏の質疑はこのあと、執拗に福島少子化・消費者担当相に朝鮮戦争の認識を問う形になり、福島氏は応答を拒絶する展開となったが、ことは朝鮮戦争というものの性質に関わっている。
 よく知られていることだが(鳩山首相は知らないかもしれないが)、朝鮮戦争は現状休戦状態にあり、朝鮮国連軍も、それに準じて存在している。地位協定の第24条・第25条に明記されているとおりだ。

第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は,すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は,すべての国際連合の軍隊の日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれかの日を合意することができる。

第二十五条
 この協定及びその合意された改正は,すべての国際連合の軍隊が第二十四条の規定に従つて日本国から撤退しなければならない期日に終了する。すべての国際連合の軍隊がその期日前に日本国から撤退した場合には,この規定及びその合意された改正は,撤退が完了した日に終了する。


 では、この朝鮮国連軍の規定を理由に普天間飛行場の移設ができないのかというと、そうではない。実際上、地位協定の同項は基本的には国連軍は安全保障条約に従属することになるので、普天間飛行場の取り扱いについても、日米間の合意が優先されるとは言えるだろう。その意味では、普天間飛行場が国連軍利用に置かれているとはいえ、米国が承認する代替機能が提供されれば、本質的な問題とはなりえない。
 ただしこの問題に関連して、さらに難問が控えている。朝鮮半島有事の際、在日米軍はどのように行動するのだろうか。日米安全保障条約に基づくと思われているが、おそらく過去の関連経緯を見るに米軍は朝鮮国連軍下に入るだろう。この際、かつての朝鮮戦争がソ連不在で動いたように、ロシアや中国の合意なしに動くことがありえるだろうか? 私はないのではないかと思う。では、朝鮮有事に巻き込まれたとき、在日米軍はそれ以外にどう機能するのだろうか?

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コメント

フランスは、政府の飛行機が海外領土(ニューカレドニア)に往くのに、中継地として、国連軍基地としての横田を使うのだそうで。
航空専門誌の写真投稿欄にときどきそれらの機体が載ってる。

投稿: himorogi | 2010.03.07 14:37

朝鮮有事に巻き込まれたとき、在日米軍はそれ以外にどう機能するのだろうか?

つ 米韓条約

投稿: F.Nakajima | 2010.03.07 15:29

具体的に朝鮮有事はどういう形で起こると思いますか?

韓国軍が先制攻撃するとは思えないのですが。

北朝鮮は、トンネル利用攻撃で、ソウルを一撃で襲撃するのでしょうか?

朝鮮有事が現実味があったら、北朝鮮は、日本人拉致も認めなければ、拉致被害者の返還もしないと思うのですが。

可能性として、国境での艦船の銃撃戦から戦闘が暴発することはあると思います。

近日の中国と北朝鮮のやり取りで、中国側から、唐家せん氏とか武大偉氏とか、日本語に堪能な人たちが送り込まれているのを見ても、中国は北朝鮮の南進を歓迎していないと思います。

もちろん、尖閣諸島問題や台湾問題を考えれば、中華人民共和国自体が日本国に対して何らかの軍事行動を取る可能性が未来永劫ありえないとは考えませんが。

投稿: enneagram | 2010.03.07 17:55

朝鮮戦争開戦は1950年では?

投稿: nil | 2010.03.07 18:28

nilさん、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2010.03.07 18:52

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