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2010.02.09

フィナンシャルタイムズ曰く、日本の財政赤字は問題じゃないよ

 昨日のエントリ「ギリシャ財政悲劇は笑えない」(参照)にも書いたが、菅直人財務相は先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で日本の財政赤字が問われるのではないかと心配していたようだ。経済のことわかってないものね。しかたない。日銀出のかたから少しレクチャーを受けましょうか……おーっと、ちょっとぉ、待った。
 昨日付のフィナンシャルタイムズ社説「Japan’s debt woes are overstated(日本の財政赤字問題は深刻に悩まなくてよろし)」(参照)から学んだほうが256倍ましかも。
 国内総生産(GDP)比でギリシャより財政赤字を積み上げている日本は、ギリシャみたいになっちゃうのだろうか("Is Japan, mired in debt and deflation, the next Greece? ")とまずフィナンシャルタイムズは問い掛ける。
 不穏な動きはある。亀井金融相はゆうちょ銀行の国債保有率を下げて、米国債を買えとか言っているぞ。


Those incendiary comments came just as Standard & Poor’s, alarmed at escalating debt levels and sluggish growth, warned that it might lower Japan’s credit rating.

亀井金融相の発言は、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、日本の財政赤字の拡大と経済成長の停滞から、長期国債の格付けを引き下げるかもしれないとの警告のさなかに出て来た。


 ついに来るべきものが来たか。引き金を引いたのは亀井金融相だったか。
 いや、そんなことはない。日本はギリシャのように債務不履行にはならないとフィナンシャルタイムズは説明する。まあ、知ってる人にはごく普通の常識でもあるのだが、日本の経済は他の先進国とはかなり違っていて同じ物差しでは測れない。理由は4つ。

First, gross debt levels are misleading. Japan’s debt, after netting off the state’s own holdings, is less than 100 per cent of GDP.

(1) 債務の全体が誤解されやすい。日本国の債務は、国の保有分を相殺すれば、GDPの100%以下になる。

Second, the cost of servicing its debt is low, at roughly 1.3 per cent of GDP. That compares with 1.8 per cent in the US, 2.3 per cent in the UK and 5.3 per cent in Italy.

(2) 日本の国債償還費は低く、GDPの約1.3%である。対するに、米国は1.8%、英国は2.3%、イタリアは5.3%である。

Third, Japan has fiscal wiggle room: sales tax is just 5 per cent.

(3) 日本の財政には遊び余地がある。消費税は5%にすぎない。

Fourth, 95 per cent of Japan’s debt is domestically owned. Fickle foreigners have almost no sway.

(4) 日本の債務の95%は国内で消化されている。外国人が気まぐれに影響を与えることはできない。


 なので、日本の財政赤字は、ギリシャみたいな当面の問題にはならない。
 では問題はないのかという、大有り。

Indeed, Japan’s problem is still an excess of savings. Banks are awash with deposits that they need to place somewhere. For some time yet, the government will not find it hard to secure buyers for JGBs. Japan’s debt problem will be worked out in the family.

つまり、日本の問題は依然貯蓄の過剰にある。日本の銀行には預金がじゃぶじゃぶしていて、投資先が必要になっている。しばらくの間は、日本政府が国債の安定した買い手を探すことにはならない。日本の財政赤字問題は、お家の都合で解消されうるものだ。


 まだまだ、日本人は日本国債を買いますよ、と。ほんとかね、という感じもしないでもないが、まあ、そうだろう。
 ようするに財政赤字をタートルネックで気にしているより、デフレ対策しろよ、と。

In short, Japan does not need to apply the fiscal brakes just yet. Better to consolidate the recovery through loose fiscal policy a while longer. In one area, though, it is being too complacent. That is in the fight against deflation.

つまり、日本は財政支出にまだブレーキをかける必要はない。もうしばらく財政緩和政策をすることで、景気回復を確たるものにするとよい。とはいえ、あまりに野放図な分野があるぞ。それはだな、デフレ対策だよ。


 ついでなんで、その先の処方箋までフィナンシャルタイムズに伺うと。

In Japan, hoarding cash is clever investing. Just as bad, debt-to-GDP levels have deteriorated along with nominal GDP, the denominator in that ratio.

日本では箪笥預金が一番賢い投資法になっちまっている。他にもひどいのは、名目GDPの下落に伴い、GDP比の債務が悪化していることだ。

The BoJ should do more. It could increase its purchase of JGBs, monetising part of the debt. Though the fiscal situation is not as bad as it appears, a bit of nominal growth would make it look a whole lot better.

日銀、仕事をしろよ。日銀は国債買い上げをして、その分市場に貨幣供給ができるのだ。日本の財政状況は見た目ほどには悪くはないのだから、もうちょっと名目成長率を上げれば、全体の見た目も大きく改善できる。


 つうわけで、今回のフィナンシャルタイムズは、べたなリフレ提言でした。
 これってどうよ、なんだが、概ね正解なんじゃないの。
 民主党も新成長戦略基本方針で、2020年度までの平均で、名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長を目指すと明言しているんだから、それにもかなうはず。
 ただ、民主党はその方法を「新たな需要創造」でとか言っているけど、とりあえず、当面のデフレ対策には、リフレ政策をしたほうが早いだろう。

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コメント

なんだこりゃ?
FTがまともなことを言ってるぞ? (^_^)

新自由主義よ、さようなら。
緊縮財政よ、さようなら。

でも、ちょっと補足すると。
日本の場合、金融政策は単独では機能しない。
圧倒的な需要不足の日本では、日銀がただ通貨をバラまいても企業・家計は貯蓄に回してしまうのだ。
もちろんベースマネーに続く乗数効果もたかが知れている。
これだけなら財務官僚は正しい。
やはり政府が強引に需要を作らなければ、企業は銀行から借りないし、家計も消費しようとしない。
幸いなことに我が国の社会インフラは老朽化しており、建築物は耐震強度が出鱈目、現行の規格では90年代以前の建物はほとんど手抜きと言って良い状態だ。これらを全部建て替え、更に新新幹線網の整備や、ロシアからのガスパイプラインの設置、新エネルギー施設の建設、地方の上下水道の完備、全ての高速道路の4車線化などなど、必要な仕事は山ほどある。
なんなら80年代に夢見たスペースプレーンや月面年だって作っても良い。
軍拡も良いだろう。ちょうどMRAの次期だし、アメリカがF22を売ってくれないなら、F22を撃墜することを目標に自力で戦闘機開発をしてしまおう。

福祉でいきなりバラまく必要もあるけど、労働を介して通貨をばらまければ更に良い。資源も動くから、その分仕事が増えて乗数効果が大きくなるもんね。

あと、乗数効果が無いとか言ってるインチキ経済学者をお払い箱にすることも忘れちゃ行けない。

投稿: 田舎から | 2010.02.09 20:13

日本へのSOSですね。わかります。
こんなにも明白に米国覇権の終わりを見届けるとは思いませんでした。
ありがとうございました。

投稿: | 2010.02.10 01:50

前のエントリーと一緒にして考えると、

日本の場合、資産家のお父さん(政府)が、勤勉で勉強家で働き者で貯蓄家のお母さんや子供たちから低金利でハードカレンシーの現金でお金を借りていて、家族以外から借りているお金も、大体は親戚のおじさんやおばさんみたいな人たちから健全な金利で借りていて、お父さんが悩みこんじゃうほど深刻な借金ではない、

一方、

ギリシャなんかの場合は、お父さん(政府)に資産らしい資産もなく、ヤクザから高金利で、どのくらい割り引かれるかわからないような手形で借金しているので、イザとなれば指の一本や二本は覚悟しないといけない

とこういうことなのかと思われます。

そんな風に考えると、日本の場合、急いで借金を返したいと思うあまり、バクチに手を出して、たとえば、ロシアの地下資源開発なんかの話(なんか、鳩山首相なんて、丸め込まれて乗っかってしまうそうですね)にはうかつに乗らないほうがよいのでしょう。あそこは、骨がらみ丸っきりのヤクザですから。バルカン半島問題なんか考えると、ギリシャが仮にロシアから多額の借金をしていたりすると、なんか背筋が冷たくなる思いがします。

投稿: enneagram | 2010.02.10 09:42

> 田舎からさん
 民主党が与党の間は無理。

投稿: ほげー | 2010.02.10 12:32

>日本の場合

うーん、こんな感じではないかしら。

旦那(政府)は稼いだ金(供給されたベースマネー)を嫁(企業・家計)に渡した。
嫁はケチでヘソをくくった。(過剰貯蓄)
ヘソをくくりすぎて嫁は小遣いが足りないと思っている。(消費不足)
旦那は嫁にプレゼント(歳出)をしたくて小遣い(税金)が欲しい。しかし嫁は金が無いと言って小遣いをくれない。
そこで旦那(政府)は嫁(企業)のヘソクリをあずかっている妹(銀行)に「貸して?」と言ったら、嫁の金で利子収入を見込める妹は喜んで貸してくれた。

こんな感じ。

さらに詳しくすると・・・

旦那は嫁の妹(銀行)から借りた金を同居している弟(国内の企業)と隣の家の住人(外国)に貸した。
嫁の妹に支払う利子よりも弟や隣人から受け取る利子の方が大きいので、旦那は嫁の妹に返す分を引いた後、内緒でこの利子を貯めこんでいる。

こんな感じで良いんじゃないかしら?
で、オチはこうなる

こういう状況の原因は嫁のへそくりが多過ぎることだが、嫁は何がどうなっているか分からず、不安な毎日をおくっている。

>ほげーさん
まぁ確かに前原とか枝なんとかが主流になれば小泉自民党と同じになっちゃうので日本経済は更にダメダメになりますがね、でもまだ非主流でしょ? 違うの?
それとも小沢失脚で亀井も政権離脱?
そうなると積極財政はなくなり、鳩山不況が襲来します。

投稿: 田舎から | 2010.02.10 21:08

子ども手当に乗数効果が無い、って話、あれ良く判らないんですよね
総体的に見れば、子供を育てる世代って金持ってないんだから、消費する可能性は絶対に高いはずなんですが

子ども手当によって働かなくなる親が増える、見たいな論調にも少しは賛成しますが、それだって子育て世代が税で取られた後で福祉を受けている分がプラスになる常況になってから言うべきで、現状それはまだ言うべきじゃないし

投稿: any | 2010.02.11 08:26

子どもを持つ世帯は余剰を全て貯金に回すよ。
要するに箪笥貯金にしかならないばらまきは止めろって事さ。

投稿:   | 2010.02.11 22:59

金融に預けるなら国債で回収されるので構いませんけど、箪笥預金、通貨の死蔵はまずいですね。
それでも数式に数字を当てればわかりますが、乗数効果が「無い」なんてのはバカも良いところです。
しかし、そのバラマキを疎外するような負の乗数効果を発生させる他の要素(たとえば緊縮財政)がありますから、結果的に個々の支出の乗数効果はある程度相殺されてしまいます。
アクセルを吹かしながらブレーキを踏んじゃいけないということですね。

これは私見ですが、やはり家計に直接ばら撒くのは消費性向が小さくなりがちなんじゃないかと思います。
やはり公共事業を発注して企業から企業へ金が回転するように仕向けた方が良いと思います。
もちろん企業には適正な労働分配を求めなければなりませんし、内部留保は切りくずさせて銀行から金を借りるように仕向けなるのが望ましい。

労働こそ富の源泉・・・と言うのは個人のレベルではなく社会のレベルでそうだと言うことなのでしょう。

あ~、なんかナチっぽくなってきた。

投稿: 田舎から | 2010.02.12 09:21

良く理解できないところがあります。日本の国債(借金)は返さなくても大丈夫ということですか。

投稿: 横野春樹 | 2010.03.25 18:40

First, gross debt levels are misleading. Japan’s debt, after netting off the state’s own holdings, is less than 100 per cent of GDP.

(1) 債務の全体が誤解されやすい。日本国の債務は、国の保有分を相殺すれば、GDPの100%以下になる。

holdingsは
((しばしば~s))(特に株・債券・不動産などの)所有財産
の意味で政府の所有金融資産を相殺するということでしょう。
国の国債保有分は日銀分を合わせても全体の約20%に過ぎず、それを相殺してもGDP比100%を下回ることはありません。
政府の所有資産をネットアウトしたNet General Govenment Debt/GDPは統計によっては100%を下回ります。

(1) グロスの債務水準が誤解されやすい。日本国の債務は、国の所有資産を相殺すれば、GDPの100%以下になる。

のほうがよい気がします。

投稿: | 2010.05.25 21:08

財政赤字とはどこになんであるのか、教えて下さい、
良くわかりません、お願い致します^^

投稿: ソルボンヌ | 2010.08.13 00:05

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