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2010.02.25

アムネスティ・インターナショナルに問われる良心

 十分にフォローしていた話題ではないが気になるうちに書いておこう。日本語として読める関連記事は、ニューズウィーク日本語版に寄稿されたクリストファー・ヒッチェンズ(Christopher Hitchens)氏による「問われるアムネスティの良心(Suspension of Conscience)」である。実際のところ、この記事が話題の起点にもなっているようだ。オリジナルは「スレート(Slate)」の同記事(参照)で読むことができる。この記事がニューズウィークに転載された形になっている。なお、同種の記事は14日付タイムズ紙「The conscience stifled by Amnesty」(参照)も扱っている。
 ヒッチェンズ氏の記事では冒頭、アムネスティ・インターナショナルの歴史的な背景に触れている。どのような理念で形成されたかを確認したいためだ。それは今更に言うまでもなく、「良心の囚人」を支援するものだった。人が良心にしたがって発言したことが国家の処罰の対象になることに反意を示すものだ。
 話題はこうだ。アムネスティ・インターナショナルがタリバン支持者を人権活動家とみなしたことを、アムネスティ・インターナショナル上級職のギータ・サーガル(Gita Sahgal)氏が「大きな間違い(a gross error of judgment)」だと批判したところ停職処分となってしまった。
 獄に捉えられたわけではないが、良心に従って行動するはずのアムネスティ・インターナショナルがその組織のなかで良心の声を封じたに等しい結果になってしまった。
 ブログを中心にサーガル氏支援の声が上がり、現在では専用のサイト「Human Rights For All」(参照)も設置されている。アムネスティ・インターナショナルがこの問題への対応に変化をつけるか、あるいはサーガル氏を中心に新しい人権団体が創設されるかは、現状ではよくわからない。
 私の関心は2点ある。1つは、こうした、政治団体にありがちな分派的な問題なのかということ。もう1つは、サーガル氏が正しく、アムネスティ・インターナショナルの下した判断が間違っていると言えるのかということだった。
 前者については先に触れたようによくわからない。後者についても難しい問題があるようには思えた。問題となったタリバン支持者は、2001年のアフガニスタンの戦闘で逃れパキスタンで逮捕された英国国籍のモアゼム・ベッグ(Moazzem Begg)氏である。彼はグアンタナモ収容所に収監されたが釈放され、人権団体「ケージプリズナーズ(Cageprisoners)」に参加し、グアンタナモ収容所閉鎖運動を展開している。
 アムネスティ・インターナショナルがベッグ氏と協調したのは、このグアンタナモ収容所閉鎖運動の接点だったようだ。それはそれで理解できる。
 が、ケージプリズナーズの幹部アシム・クレシ(Asim Qureshi)氏は、イスラム過激派組織ヒズブド・タフリル(Hizb-ut Tahrir)の集会に同席し、聖戦擁護発言を行っている。サージ氏が問題視したのはここだ。 彼女は、クレシ氏とアムネスティ・インターナショナルの同席が、「囚人の権利団体を超えた活動("way beyond being a prisoners' rights organization" )」に思え、批判し、停職処分となった。
 背景を知ると、それなりに難しい問題だということはわかる。そして、この問題は視点によって判断は異なるだろうし、アムネスティ・インターナショナルの判断が必ずしも誤りとはいえないだろう。
 記事を執筆したヒッチェンズ氏は、良心に基づく言動活動の帰結と、実際の思想活動の間に線引きをしているようだ。つまり、言論活動であればアムネスティ・インターナショナルは支援するが、それが実際の過激派の活動に関与している部分への加担と見なされる行為は避けるべきだということだ。私も、どちらかと言えば、そう考える。
 あと余談めいた話になるが、日本版ニューズウィークの翻訳記事では、以下の部分が省略されている。が、この部分は非常に重要であると思われる。日本版ニューズウィークはなぜこの部分を省略したのであろうか。


Cageprisoners also defends men like Abu Hamza, leader of the mosque that sheltered Richard "Shoe Bomber" Reid among many other violent and criminal characters who have been convicted in open court of heinous offenses that have nothing at all to do with freedom of expression.

ケージ・プリズナーズは、アブ・ハムザような人物も擁護している。彼は、靴爆弾のリチャード・ライドを匿ったモスクの指導者であり、他にも、凶悪犯罪公開法廷で有罪とされた武装活動家や犯罪者も匿ってきた。これらの犯罪は、表現の自由とはなんら関係はない。


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