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2010.01.18

小沢疑惑について各種マスコミの印象

 小沢疑惑をめぐり、検察リークや各種のつてからの報道が錯綜している。ざっとしか見回していないのだが、同じ内容と思われる話や、同一テーマと思える対象への解説などで、報道社ごとにそれぞれ微妙な違いがあり、なんとなく心に沈んでくる印象がある。あくまで個人的な印象だが、一市民の感覚として書いておきたい。
 小沢疑惑について一番正確で問題の核心をうまくついているのはNHKのようだ。独自のソースもあるだろうが解説委員らの長年の研鑽も大きいようにも思われる。NHKはよくバッシングされるし、経緯の上から朝日新聞と反目している部分もあるだろうが、私の印象ではもっとも公平にも思える。
 NHKが際立った例として、二点挙げたい。まず、疑惑の4億円の口座についてだが、小沢氏が主張する自己の口座からの引き出しについては、うち3億円について、NHKが他に先行して報道している。他のソースでは見かけたことがないので、NHKの誤報の可能性もあるが、経緯からみておそらく正しいだろう。17日付け「口座から引き出しは3億円余」(参照)より。


関係者によりますと、この4億円について、石川議員は特捜部の調べに、「小沢氏から借りたものだ」と供述しているということです。また、小沢氏は16日、民主党の党大会で、「土地の購入の際、何ら不正なカネを使っているわけではない。私どもが積み立ててきた個人の資金で、金融機関の名前、支店名もはっきり申し上げ、検察当局でお調べくださいと返答した。その後、検察当局からその預金口座の書類は入手したと返答があり、この資金についての疑いは晴れたと考え、安心していた」と述べました。関係者によりますと、特捜部が小沢氏側の説明に基づいて該当する信託銀行の口座を調べたところ、土地を購入する6年前の平成10年ごろ、あわせて3億円余りが引き出されていたことがわかりました。特捜部は、土地の購入資金に充てられた4億円のうち、残りの1億円近くをどのように工面したのか説明を求めるため、引き続き小沢氏本人に参考人として事情聴取に応じるよう要請しています。

 小沢氏が党大会で述べた話は、4億円中3億円については小沢氏の説明どおり検察側で確認していたことになる。
 別の言い方をすると、小沢氏がこの説明をするまで検察側はこの情報を隠していたことなり、検察側としては小沢氏との駆け引きもあったのかもしれない。疑惑は1億円であるにもかかわらず4億円と見せかける情報操作をしていたとも言えるだろう。
 私の興味は、この小沢氏発言の裏を検察が確認していることをNHKがどの時点で知ったかである。これは推察なのだが、民主党大会前に知っていたのではないか。というのは、このNHK報道を知ってから、「小沢氏土地疑惑へ強制捜査: 極東ブログ」(参照)で触れたNHKの要点がようやく理解できた。NHKは13日に現下の小沢疑惑を4点にまとめていた。

  1. なぜ複数の口座に
  2. 4億円の融資
  3. 土地購入の時期
  4. 資金をどう捻出

 私としては、「なぜ複数の口座に」が筆頭で「資金をどう捻出」が最後に来るのは、あの時点ではおかしいのではないか、疑惑は「資金をどう捻出」が中心ではないかと思っていた。
 しかし、疑惑の4億円中3億円が小沢氏自己資金であるなら、1億円の追跡こそが問題になる。そしてその1億円中の半分の5000万円は水谷建設に由来する疑念があり、このカネの混入はまさに「なぜ複数の口座に」に関連してくる。NHK報道の当初の見立てに整合性が高い。これが後からわかったことだが、二点目になる。
 なお、この見立てだと、小沢氏は疑惑の4億円ではなく、当初から3億円であり、石川容疑者による口座分散のプロセスで4億円に膨れたのかもしれない。また、小沢氏個人の資金、通称深沢銀行(参照)由来とされる3億円だが、昨日付読売新聞記事「小沢氏発言に疑問…4億円は自己資金?預金は?」(参照)によると過去の収支報告書との整合は取れそうにない。また、6年間もの深沢箪笥銀行も常識的には理解しがたい。ただし、この3億円自体に検察の目が向いているのではなさそうだ。ついでに言うと、小沢氏の説明を民主党が党一丸で受け入れた背景には、鳩山首相と、実際のところ小沢氏に次ぐ権力を持つ輿石東参院議員会長への、小沢氏の独自の情報開示と戦略があるのだろう。
 他の報道では、野党に下野したという産経新聞記事は面白いが、事実の核となる部分はそれほど大きくはなく、産経新聞の解釈がかなり入り込むので日刊ゲンダイのようなタブロイド紙を読むような心構えは必要だろう。毎日新聞は産経新聞とは方向性が違うが、事実の核となる部分より解説に重点が置かれている印象が強い。
 読売新聞は産経新聞をやや薄めた感がある。読売新聞は日本のジャーナリズムでは政局の当事者側に位置していることもあって、報道はその政治的なスタンスと共鳴していることが多い。小沢氏の今後の権力維持を見込んでいるような印象を受け、中立性というより空気を読みつつ報道しているように見受けられる。
 朝日新聞の報道は、いわゆる民主党シンパと見られることが多いが、こと小沢疑惑についてはそうした偏りはないようだ。偏りがあるとすれば、小沢後の民主党を見据えてという印象を受ける。小沢疑惑についてはおそらく社内でいろいろ伝達の工夫が検討されているのだろう。報道も概ね正確に見えるが、先のNHK報道と比較すると、検察リーク的な情報の解説という印象が強い。
 今回の疑惑で意外な印象を受けるのが東京新聞(中日新聞)だ。独自のソースがあるのだろうか、他紙に先立って情報が流れることがあるような印象がある。「年明け早々から多発するカネを巡る小沢疑惑: 極東ブログ」(参照)で今回の小沢疑惑の直接的な関連はないだろうとしたものの、「藤井財務相(77)はなぜ辞任したのか?: 極東ブログ」(参照)で触れた藤井元財務相にまつわる疑惑のカネだが、東京新聞は元旦記事「小沢氏関連団体 数カ月で15億円出入金」(参照)で触れていた。これはその後、15日の産経新聞記事「小沢氏団体に15億円 旧自由党資金 藤井前財務相あて助成金装い」(参照)にも現れ、なぜか昨晩共同通信から「小沢氏団体に簿外15億円 旧自由党への交付金還流か」(参照)として出て来た。このあたりの、報道の背景がどうなっているのか奇妙な印象を受ける。自民党筋であろうか。
 共同通信の報道が微妙な鈍さをもっているの対比して、時事通信は速い。たとえば「水谷建設幹部の名刺押収=石川議員事務所から-「裏献金手渡し役」・東京地検」(参照)も他報道に比べて早い(ただし、この話は毎日新聞も同じ)。小沢疑惑に限らないが、このところ時事通信の記事が早いように思われる。私の印象にすぎないが、他大手紙ではどのような報道にするかスタンスを思案している遅れの差ではないか。
 今回の疑惑の4億円を巡る小沢疑惑だが、検察リークのあり方も問われるが、個々の報道の錯綜も非常に興味深い。

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コメント

民主党報道で一番偏向しているのは、たぶん、日本テレビですよ。

昨年の8月30日の総選挙のとき、総選挙の開票速報を、イモトアヤコの苦闘の走行を撮影し終えた後に開始した放送局だもん。

日本テレビは、民主党の揚げ足取りばかりしていて、ある種の面白さがありますね。

投稿: enneagram | 2010.01.18 12:28

政治資金規正法って元々は総務省の管轄。
捜査能力を付与されていないので、形式的に審査する。そして形式上の不整合を指摘、修正をさせるのが一般。
いきなり検察が乗り出すのが異常。

要は闇献金として立件するのが困難だから、虚偽記載で立件。鈴木宗男のように、解釈次第で虚偽記載とする事は容易だからね。

問題は検察側の正当性。
検察は普通に裏金をつくり、天下りしている。
また民主党の政策である尋問の全面可視化(欧米では普通)が行われれば検察の権力は殺がれる。

検察と民主党間には利害関係があるんだよね。

投稿: まぐ | 2010.01.18 13:54

>昨年の8月30日の総選挙のとき、総選挙の開票速報を、イモトアヤコの苦闘の走行を撮影し終えた後に開始した放送局だもん。

24時間テレビのマラソン視聴率が一番得られるソースであり、ゴールを放送しなかったらどれだけクレームが来るかを考えたら、選挙結果を8時ちょうどに流すよりよほど賢明な判断だと思いますけどね。

それとも私の知らないところで「総選挙の20時からは選挙速報を是が非でも流さなければならない」というルールでもあったのかしら?

話がそれました。

>他大手紙ではどのような報道にするかスタンスを思案している遅れの差ではないか

その通りだと思います。下手すると小沢氏が検察から逃げ切ってしまうのではないかということでその報復を考慮したうえで二の足を踏んでいるのだと思われます。

投稿: | 2010.01.18 17:59

別に管轄が総務省だからどうって話じゃ…
むしろ郷原あたりの「獅子奮迅の働き」で、世論に一定以上の割合で政治資金規正法を軽視する見方が出てきてる方が心配ですね(まぁ今日あたり発表の世論調査だと小沢辞めろが7割だそうですから、案外普通の国民はよく見てるのかもしれませんが)。この法律は元々度重なる政治と金の問題が国民の政治不信を招いたことから何度も改正が繰り返され、ようやく1円以上のすべての支出についてまでガラス張りになり、まだまだ足りないとはいえ何とか先進国の政治資金を監視する法律として見れたものになってきたというのに。第一条の「目的」を読んでも彼らは形式犯だと言い張るつもりでしょうか?

「この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の接受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。」(政治資金規正法第1条)

投稿: | 2010.01.18 18:43

検察が作ったストーリーをそのままマスコミが垂れ流しにしていると批判してる人たちがそのまま自分で作ったストーリーを垂れ流して検察を批判しているのが何とも……

投稿: 康芳英 | 2010.01.18 23:47

 政治資金の問題が、政党助成法の成立により一定の解決がはかられて以降、政治資金規正法の解釈・適用がより厳密になるのは当然ではないでしょうか。西松建設がダミーの政治団体を介して小沢氏の資金管理団体に政治献金していたことは、同社の報告書ではっきりしています。
 「当社が行った、二つの政治団体を設立し、しかも社員に対して、特別賞与加算金を交付して、社員名義での寄附をさせるという行為は、巧妙に仕組まれた脱法行為であって、他に類を見ず、極めて悪質との評価を受けるものと思える。
 もとより、政治献金を行う自由、権利があることも真理であって、ただその方法を間違ったとの評価もあるかもしれないが、本件は、巧妙に仕組まれた犯行であって、非は全面的に当社にある。前記のとおり、政治資金規正法が改正されたにもかかわらず、企業である以上政治献金を行うのは当然であるとの意識から、本件のような過ちを犯してしまったものであるから、真摯に反省するとともに、本件と同じ轍を踏まないとの決意が最優先である。」
 従って、この事件を、政治家との請託関係の証明が難しい(選挙区への公共事業誘致をえさに業界の談合組織と結託し、その利益の一部を政治資金として環流させる手口、つまり、正式の権限に基づくものではない裏の金権閥を介しての権力行使であるため、請託関係の証明が極めて難しい)というだけで、すんなり単なる政治資金収支報告書の”記載ミス”=「形式犯」ですますわけにはいかないと思います。だって、もし記載ミス(献金の事実を記載しなかったこと)が証明されれば、そこに現出するのは、政治家個人への企業からの違法献金ですからね。これが、西松建設だけでなく、水谷建設や鹿島建設との関係も疑われているわけです。
 さらに、小沢氏は政党交付金の新進党、自由党解党時「残金」の自己政治団体への寄付による”独り占め”が疑われていますね。当該法の不備により違法とはならないようですが、政党助成法の立法趣旨に反していることは明らかです。
 これらが収支報告書の「記載ミス」とか「計算の間違い」とかで済まされるべきことでしょうか。まして氏は、こうした日本の政界の明治以来の宿痾ともいうべき政治資金問題を解決することを、自らの権力闘争を正当化する「正論」として高く掲げてきた人物です。
 その氏が、重ねて言いますが、政党交付金をうけとるようになって後も、脱法的政治献金を企業団体に要求し続け、あまつさえ、政党助成法の不備につけ込んで解党時の政党交付金を独り占めし自らの政治資金として溜め込んでいたとすれば、その政治倫理が問われて当然です。
 現在は、氏は幹事長として「自分は馬主で首相はジョッキー」という田中首相の言そのままに、独裁的権力行使をしています。こうした実態を見れば、上記の通りの政治倫理を書いた権力行使が、今後は正統な政治権力として行使されることになるわけで、それを恐れるのは私だけではないでしょう。
 検察も官僚組織の一部であり、小沢氏の官僚「敵視」的政治主導を阻止しようとしている、と見れなくもありませんが、「敵視」ではなく「官僚内閣制」から「内閣官僚制」への転換であるべきで、そのことは検察とて分かっていると思います。(あくまで予想ですが)
 目的が手段を正当化するのではなく、手段が目的を正当化すると考えるのが、民主主義における基本モラルです。この点、小沢氏にはそうしたモラルが欠如しているらしいことは、その言動ではっきりしています。
 小沢氏自身は「検察と戦い民主主義を守る」といっていますが、はたしてどちらの「民主主義のモラル」が本物か。それを見極めることが、日本の戦後民主主義の成長を占う試金石になると思います。
 それにしても、西松建設の「調査報告書」は大したものですね。談合からコンプライアンスへの決意が語られているわけで、日本の企業は本物だと言うことですね。政治も早く本物になってもらいたいものです。

投稿: tikurin | 2010.01.19 04:45

小沢氏が清廉潔白だなどとは思わないけれど、検察の度の過ぎるリークには嫌気がさします。
小沢氏に罪があるか無いかは現時点では明らかでは無いのに、すでに政治的なダメージや政権に対するダメージは大きいものがあります。

民主党や小沢氏が良いとか悪いとか言う以前に特捜部という一握りの人間たちがこうだと決めたら、何が何でも悪者だという印象を国民に植えつけることが可能であるということが恐ろしいです。繰り返しますが実際に罪があるか無いかではなく、社会的なダメージを与えられるという事です。

これは小沢嫌いとか民主党嫌いという人も人事ではありません。自民党が政権を取っていても、鈴木宗男氏や佐藤優氏、堀江貴文氏のようなことが起こっている訳です。誰も特捜部に逆らえないのであれば、このままでは日本の最高権力は特捜部ということになりかねないです。

投稿: ただの | 2010.01.19 15:19

>民主党や小沢氏が良いとか悪いとか言う以前に特捜部という一握りの人間たちがこうだと決めたら、何が何でも悪者だという印象を国民に植えつけることが可能であるということが恐ろしいです。繰り返しますが実際に罪があるか無いかではなく、社会的なダメージを与えられるという事です。

一握りの人間が決めたら、・・・ではないでしょう。
捜査した証拠に基いて、事情聴取が行われるのですよ。
小沢が言う、「何ら、疾しい事はない」なら、正々堂々と説明すりゃ、いい。記載事項を、第三者が、納得のいくよう、理路整然と、説明すべき。
日本は、三権分立の確立した国家です。
中国のような、一党独裁国家、(民主化運動を、軍事力で踏み潰してしまう、あるいは、政府が情報操作をする。)といった、偏向国家ではない。

度の過ぎるリークとは、どういう裏づけでしょう?あなたは、検察に、盗聴器でも仕掛けているのですか?
鈴木も、ホリエモンも、はっきりとした証拠があり、服役してきた犯罪者ですよ。決して、冤罪ではありませんでした。

小沢こそが、日本の独裁者、いや、特捜になろうとしているのでしょう。「政府主導」とやらを標榜し・・・

投稿: | 2010.01.31 23:19

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