« 「愛は花、君はその種子」と「The Rose」 | トップページ | [書評]ヒトラーの秘密図書館(ティモシー・ライバック) »

2010.01.24

小沢一郎民主党幹事長被疑者聴取

 昨日小沢一郎民主党幹事長被疑者聴取が行われた。その後小沢氏の会見も行われたが、この過程でとりわけ新しい事実が発覚したり、事態が進展したというものでもなかったが、一つだけ気になる点があった。任意聴取ではなく、被疑者聴取であった点だった。
 今日付の赤旗記事「小沢幹事長を被疑者聴取/土地疑惑関与が焦点/本人「秘書任せ」と否定/東京地検」(参照)がこの点を一番前面に打ち出していた。


 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」による土地取引をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は23日午後、小沢氏を任意で被疑者聴取しました。事件は、政権最大与党の現職幹事長が捜査当局の聴取を受けるという異例の事態に発展。本人関与の解明が最大の焦点となってきました。同日夜、都内のホテルで会見した小沢氏は、聴取は黙秘権を告知された上でのもので、供述調書2通に署名したことを明らかにしました。

 被疑者聴取については毎日新聞の解説記事「質問なるほドリ:事情聴取って、どういうもの?=回答・北村和巳」(参照)がわかりやすい。

 Q 事情聴取は必ず応じないといけないのかな。
 A 出頭や証言を強制されることはありません。憲法は「自己に不利益な供述を強要されない」と定めており、捜査も対象者の意思を尊重する「任意」が原則です。通常は「参考人」として話を聴きますが、罪を犯した疑いが強い人や告訴・告発された人は「被疑者」とされ、聴取を始める前に「話さなくても良い権利(黙秘権)」を告げて任意で事情を聴いていることを明らかにします。告発された小沢幹事長はこちらのケースです。毎日新聞は、逮捕が確実な人の事情聴取を「取り調べ」と表記することがあります。

 ということで、小沢氏は「罪を犯した疑いが強い人や告訴・告発された人」であり「被疑者」であった。被疑者とはなにかだが、手元の広辞苑を引くと次のようにある。

犯罪の嫌疑を受けた者でまだ起訴されない者。容疑者。

 ウィキペディアは不正確な情報も多いが次のように説明している。

 被疑者(ひぎしゃ)とは、捜査機関によって犯罪を犯したとの嫌疑を受けて捜査の対象となっているが、まだ公訴を提起されていない者のことをいう、司法手続及び法令用語である。
 一般に用いられる容疑者(ようぎしゃ)は「被疑者」のいい換えであり、司法手続及び法令用語としては「被疑者」が用いられる[1]。

 「容疑者」は一般的な用語で、実際上は報道機関が定めるものだが、法的な意味での「被疑者」と同義に見てよいだろう。つまり、小沢氏は、小沢容疑者と記しても、輿石東民主党幹事長代行に怒られることもない。ちなみに、産経新聞社は22日付朝刊大阪版の記事で一箇所「小沢容疑者」と誤記してしまったが(参照)、一日半後であればそれほどの問題もなかっただろう。
 とはいえ現状では、小沢容疑者は形式的な意味合いしかない。今日付の読売新聞記事「小沢氏の共謀が焦点、土地疑惑の解明詰め」(参照)の説明が日常的にもしっくりくる。

 そのうえ今回の事情聴取は、「被告発人」として黙秘権を告げたうえで行われ、2通の調書が作成された。
 これは、事情聴取の直前に、陸山会の政治資金収支報告書の虚偽記入について小沢氏が元事務担当者の石川知裕衆院議員(36)らと共謀している疑いがあるとして、市民団体から告発状が出されたこともきっかけとなっている。刑事告発を受けた捜査機関は、容疑が事実かどうか捜査する義務が生じ、告発された人は、形式的に容疑者として扱われることになる。


 しかし、今回の黙秘権の告知は、形式的なものにとどまらない可能性がある。
 15日に逮捕された石川容疑者がその後の特捜部の調べに、土地代金に充てた4億円を収支報告書に記載しない方針などを、同年10月下旬に小沢氏に報告し、了承を受けたと供述しているからだ。この供述が事実なら、小沢氏が共犯の容疑に問われる可能性がある。
 「容疑者として聴取した理由を刑事告発としたのは一つのテクニックで、特捜部は実質的な容疑があると考えている可能性がある」。ある特捜部OBは指摘する。

 日常的な「容疑者」の意味合いで重要になるのは、小沢氏の場合、「元事務担当者の石川知裕衆院議員(36)らと共謀」しているかいないか、その共謀の有無である。そこを検察側がクリアする条件は、疑惑の土地代金に充てた4億円を石川氏が収支報告書に記載しないことへの、小沢氏の了承の有無である。では、その有無はどのように判断されるかというと、石川容疑者の供述調書が基になる。同記事では、「供述している」とあるが、法的に有効な供述調書として成立しているかどうかが重要になる。
 そこはどうか。今日付の東京新聞記事「共謀立証なら立件も 地検特捜部、徹底捜査へ」(参照)はこの点についてこう報道している。

 共謀が立証されれば小沢氏も立件対象に含まれるのは間違いない。立証には虚偽記入について、小沢氏の指示や関与を認める石川容疑者らの供述や、その供述の裏付けが必要となる。石川容疑者は既に虚偽記入を認めているとされるが、検察側による供述調書の作成を拒んでいるとの情報もある。

 現状、今回の小沢疑惑で局所的に問題になるのは、この点、つまり、石川容疑者の供述調書をすでに検察側がもっているかどうかだ。私は、今回の検察の動向から、検察はすでに持っているのではないか、あるいはその点についての焦りはないのではないかという印象を持っている。もちろん印象に過ぎないが、昨日の小沢氏の会見を見ていると、民主党大会のときのような小沢氏本人の信念というより、弁護士が用意した書き割りを小沢氏が不安げにこなしているだけに見えたのだが、そのあたりの対応ではないか。
 昨日の小沢氏の会見では、この点、つまり、虚偽記載については小沢氏は関知していないと主張しており、またその供述調書も上がっていることになるが、石川容疑者の供述調書があれば、法的なプロセスとしては検察の意向通りに進むだろう。
 この局所問題だが、顛末の可能性としては3つある。(1)石川氏・小沢氏ともに無罪、(2)石川氏有罪(小沢氏無罪)、(3)石川氏・小沢氏ともに有罪である。
 昨日の小沢氏の会見からは、1と2のスコープを持ちながら、実質的には2の線での終息を図っていると大方は見るだろう。俗に言う、トカゲの尻尾切りである。が、刑事上は秘書だけが責を負うとしても、小沢氏の政治責任は免れない。その意味では、政権与党の民主党の対応としても、事実上のチェックメイトになっているのではないかと思うが、民主党にはその認識はないようだ。
 小沢氏側の関与の決め手は必ずしも必要ではないだろうが、それでも、小沢氏側で物的な決めとなりうるのは、2点ある。(1)疑惑の土地購入にあたり、原資の4億円を現金で石川容疑者に渡した後、銀行融資書類に小沢氏自身が署名している。(2)3年前の小沢ハウス疑惑の際、記者会見で自身の所有ではないとした署名付きの「契約書」を提示し、小沢氏自身がこの土地購入経緯を熟知していたことを示したが、この「契約書」が作成日の点で偽装の疑いがある。当然、偽装であれば小沢氏本人が関わっていた証拠のようなものに意味合いが変わる(犯人が追い詰められて墓穴を掘るといった刑事コロンボのお話みたいだが)。
 この2点について、検察側が今後どの程度詰めてくるかはわからない。
 ただし、現下のこれらの小沢疑惑の局所の問題については、つまり、小沢氏による疑惑の土地への関与の有無だが、小沢氏を立件するスコープを持ちながらも、政治資金規正法違反という限定性を持つ。ゆえに、局所的な問題だと言える。もちろん、政治資金規正法違反が微罪だという意味ではないが。
 連立与党である社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は「これが政治資金規正法の事件なのか、贈収賄事件までいくのか、今の報道だけではすべての証拠を見ているわけではないのでわからない。消極的な意味でなく、しっかり捜査の行方を見守っていきたい」(参照)と述べていたが、実際上の問題点は、政治資金規正法を越える点にある。
 そしてそこにこそ検察側の難所がある。現下問われている各種の疑惑(最終的には鹿島につながる小沢王国の権力基盤の解明であろうが)は、小沢氏の野党時代に根を持つもので、当然、氏には職務権限がなくまた大半は時効であり、原理的に福島氏が弁護士らしく暗黙に見切っているように、疑惑の土地に水谷建設からの「裏献金」があっても、贈収賄事件として扱うことは検察にはできないだろう。
 あまり良い趣味ではないが、検察対小沢氏ということであれば、局所戦においては、検察が確実な地歩を固めつつあるものの、最終的な絵を仕上げる決め手はまだ欠けた状態であり、であれば、ようやく大きな戦いの端緒についたとも言えるかもしれない。
 もちろん、事は誰もが想像するように、話の展開によっては、現状の民主党政権を事実上吹き飛ばす可能性がある。日本の安全保障にも関わる巨大な問題になりかねない。そこを避けるために、より強い何かが作用するかもしれない。そう言ってしまえば陰謀論のようだが、そうではなく、国民が、もう止めてよ、検察様、小沢様と音を上げるかもしれないという意味だ。

|

« 「愛は花、君はその種子」と「The Rose」 | トップページ | [書評]ヒトラーの秘密図書館(ティモシー・ライバック) »

「時事」カテゴリの記事

コメント

「職務権限」にしか言及していないのが引っかかったのですが、
「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律」はチェックしていますか

投稿: | 2010.01.24 18:49

とうとう秘書に責任転嫁か。
政治家が転落するいつものパターンにハマってしまった。
終わったな、この人…。

投稿: | 2010.01.25 01:26

今回の件は
ttp://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010012402000138.html
と関係あるのではないでしょうか

投稿: | 2010.01.25 02:08

法律破ってる!ずるい!
逮捕されればいいんだ!

法を守ってるあなたはなんの役に立ってるんですか、と。

投稿: ぷるきんえ | 2010.01.25 02:19

たしか東京佐川急便事件ですか?

金丸信氏の事務所を地検が徹底捜索したら、ゼネコン汚職事件の資料がいくつも見つかったのは。

東京地検が陸山会を調べていくうちに、岩手県政、青森県政、秋田県政に火の粉が飛んでいく可能性はないのかなあ?胆沢ダムは岩手県奥州市だし。

まあ、地検が陸山会を調べていったら、田名部匡省(たなぶまさみ)代議士(参議院青森選挙区)の名前が出てきた、なんてことはたぶんないだろうね。

私は、田名部さんは、一本筋が通った優れた政治家だと思っているから、こんな事件で田名部さんなんかの名前がでてきたら、私も、日本の政治と日本の政治家に対して認識を変えないといけないということになるだろうな。

まあ、それでも、田名部家は、親子そろって代議士(次女匡代代議士が衆議院議員)だから、ある意味現在、「小沢恩顧の名門武将一門」の中枢といってもよくて、自民党でも、秋田県選出の村岡兼造代議士が橋本龍太郎元首相の代わりに血祭りにあげられたくらいだから、田名部家も、東北人らしく人を良くしていたら、いつの間にか党中枢に地検向きのエサにあてがわれていた、なんてことがないように気をつけないといけないのかもね。

投稿: enneagram | 2010.01.25 10:58

ゼネコンから一切金はもらっていないと強調しているのだから、もらったと立証されれば仮に収賄に問われなくても辞めなくてはならないが、そうでなければ辞めないでいいという理屈じゃないでしょうか。そこは結構自信たっぷりに見えましたが。

投稿: 痴本主義者 | 2010.01.27 21:59

党解体時の党政府助成金は返還したのですか

投稿: 尾形耕一 | 2010.02.08 18:22

テレビに顔が写るたびに、吐き気がします。

投稿: 小沢が嫌い | 2010.02.09 17:22

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小沢一郎民主党幹事長被疑者聴取:

» ついてはいけない最期の嘘をついた小沢:小沢擁護派の説明責任に... [ある日ぼくがいた場所]
マスコミと検察の癒着や、自民党議員だってやってるとか、形式犯だとか、水谷建設の元会長の証言の信用性には疑いが持たれるとか、小沢擁護派の言い分の大半を仮に認めたとしましょう。比較的冷静な内容なのは、永田町異聞さんのこちらの記事。・小沢報道でメディアが果た...... [続きを読む]

受信: 2010.01.26 03:00

« 「愛は花、君はその種子」と「The Rose」 | トップページ | [書評]ヒトラーの秘密図書館(ティモシー・ライバック) »