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2010.01.14

小沢氏土地疑惑へ強制捜査

 昨夕、小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体陸山会をめぐる土地購入疑惑で東京地検が、陸山会、秘書でもあった石川知裕衆院議員の事務所、および大手ゼネコンの鹿島を対象に強制捜査に入った。容疑は、政治資金規正法違反である。18日には通常国会が召集されるので、実質民主党の最高権力者である小沢氏の疑惑は民主党政権にも大きな影響を与えるだろう。
 意外でもあるのだが、今回の強制捜査を巡って、小沢疑惑という点でとりわけ新しい話は出て来ていない。元旦に書いたエントリ「年明け早々から多発するカネを巡る小沢疑惑: 極東ブログ」(参照)の枠組みで収まっている。ただしこのエントリを書いたときは、読み取れる人にはわかるように「鹿島」のキーワードを配置しておいたが、この本丸にこうも早く検察が向かうのかというのは、私にとっては多少想定外でもあった。
 今回の強制捜査で、おそらく最も重要な点は、鹿島が明示化されたことだ。検察が鹿島を軸にした大きな絵でどこまで独走できるのかが、今後の注視点だろう。この点については、他の背景もある。報道も鹿島には及び腰だし、ブログで散見する、当初は居丈高に騒いでいた各種のポジションの人々も奇妙な沈静感が感じられることだ。恐らくこの奇妙な鹿島タブーの空気は、検察と小沢氏の手打ちの先読みと理解できるかもしれない。
 小沢氏関連の疑惑による強制捜査という点では、今回は昨年春の小沢一郎公設秘書逮捕に次ぐものになる。だが、今回の強制捜査はかなり性質が異なる。昨年の強制捜査には、裏のカネが関わっているわけでもなく、長期政権の自民党でもありがちな政治資金報告書の記載ミスにすぎなかった。だから、なぜそんな微罪に検察が強制捜査したのかという点で世論でも検察の暴走が非難されたものだった。
 今回の疑惑には裏のカネが関わっている。原資不明のカネが随所に存在している。強制捜査をしないかぎり見えないと検察が判断しても、それなりに合理性も説得力もある。
 関連のカネの動きは、産経新聞記事「「やましいカネ」隠蔽? 小沢氏「陸山会」24億円を不透明移動」(参照)がわかりやすいので、あえてそれを借りたい。

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 図中赤色の背景の白抜き文字で「原資不明」となっている部分に、公開された政治資金の記載から見えない裏のカネが関与しているのではないかと疑われている。
 私がこの問題を十分にフォローしているわけではないので誤解もあるかもしれないが、2007年時、「小沢ハウス」疑惑が問題化されていたときは、黄色背景の部分しか見えていなかった。つまり、平成16年10月29日、陸山会は4億円の定期預金を担保に、銀行から小沢氏へ4億円融資を行い、この融資金を小沢氏から陸山会に貸し付けて、小沢ハウスの土地購入の資金としたという話だった。この話は、きちんと当時の陸山会の資金報告がまとめられている官報号外第223号247ページ(参照)にあるとおりで、まったく問題はないかに見える。

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 ところが実際の疑惑の土地購入が行われたのは、融資が下りる前日10月28日以前のことでで、4億円のカネも直接小沢氏が、当時の小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員に渡していた。しかも、産経新聞の図からはわからないが、石川氏は小沢氏から4億円の現ナマを受け取ったあと、これを複数の銀行に分散して預金し、さらに分散した銀行から一つの銀行にまとめ直して後、土地代金に充てるという不自然なカネの操作をしていた。
 この間、小沢氏本人からの4億円と、融資を経由した4億円の、都合8億円が動いているのだが、前者の小沢氏本人からの4億円に収支報告書には掲載されていない。
 面白いことに、年末年始の動向だが、この2つの4億円の疑惑を多少奇妙とも思える理屈で合理化するお話がどこからともなくネットに広まっていた。お話には2段階あって、まずそもそも疑惑の4億円などないというお話。これは収支報告書に記載されているもので都合8億円をごまかすものだったが、これは稚拙すぎてブロガーには騙される人がいてもジャーナリズムでは嘲笑されただけだった。
 2段目のお話は、私が誤解しているかもしれないが、小沢氏からの直接の現ナマの借り入れは融資金で相殺されているから、結局、融資金を再度陸山会に貸し付けた金額だけ記載すれば、収支報告書上は問題がないといった類である。お話としては面白いが、石川氏はそのようなお話を検察にしているわけでもないので、ただの非理屈の類でしかない。また、相殺されて4億円の借入なら、なぜ17年5月の4億円⑥と、19年4~5月の4億円⑦の都合8億円の返済なのだろうか。購入した不動産が返済用に現金化されているふうでもない。が、関連して個人的に残念に思ったのだが、昨年春の小沢一郎公設秘書逮捕の際に明晰な議論を展開していた、元検察の郷原信郎氏もその類の説明(参照)をしていた。
 愉快な煙幕のお話はさておき、当の話はこの複雑なカネの動きにある。なぜ、小沢氏から直接4億円を現ナマで陸山会が借りられるのに、別途預金担保の融資金4億円を用意するということ(預担)をしたのか。
 検察リークの情報だが、石川氏によれば預担は慣例化していたとのことだ。ではなぜ慣例化していたのか、それ以上の説明を見かけたことは私はないが、おそらく原資を政治資金団体に帰着させるためだったのだろう。今回の話でも、本来はそういう話ならここまで突かれることはなかった。
 ではなぜ、小沢氏本人から謎の4億円のマネーが出て来たのか。
 この点は、私の誤解もあるかもしれないが、石川氏が陸山会の預金では預担ができないと判断したからだろう。このあたりの事情についても報道があまりないので私の想像なのだが、平成15年の陸山会の収支では、預金が7千150万円、小沢氏からの借入金が1億1千855万円なので、4億円の預担には2億円近く足りない状態になっている。だから、10月29日の寄付1億8千万円(原資不明)が必要になったとも言えるのだが、28日までの時点ではなんらかの理由でこの寄付が無かったのだろう。
 問題を整理しよう。今回の強制捜査、何が問題なのか。もちろん、随所に潜む原資不明のカネの存在で、それがゼネコンの談合利権に帰着するだろうかという疑惑がある。だが、ここではもっと手短に見ると、昨晩7時のNHKニュースの4点まとめがわかりやすい、と同時に、NHKはこう見て報道していた。


  1. なぜ複数の口座に
  2. 4億円の融資
  3. 土地購入の時期
  4. 資金をどう捻出

 NHKは謎をそのまま放置していたが、私の常識からコメントしておく(私の常識は非常識とかのわかりやすいツッコミはナシね)。
 (1)複数の口座は、先に触れたように小沢氏本人からのカネを石川氏が各種銀行に分けてさらにまとめた行為を指す。常識的に見れば、マネーの出所を複雑にするありがちなマネーローンダリングと疑われてもしかたがない。
 (2)なぜ小沢氏から直接4億のカネがあるのに、別途融資で4億のカネを作ったか。常識的に見れば、小沢氏からの直接のカネを相殺・隠蔽するためだろう。
 (3)土地購入の時期については産経新聞の図からわからないが、実際には平成16年10月の土地取引は政治資金報告書上は翌年の1月の扱いになっている。常識的に見れば、前年に突出したカネを動きを作らないためだろう。
 (4)これはわからない。というか、それがゼネコンに由来するかということが現下の疑惑であり、NHKは最後に置いたが、一番大きな疑惑のポイントだ。
 ところで今回の強制捜査だが、本当に大きな問題なのだろうか。
 産経新聞の解説図では原資不明のカネを3箇所に絞り込んでいるが、当面問題になっているのは、疑惑の土地用に小沢氏が工面した4億円の原資である。これが、小沢氏本人の資産であるとか、夫人の資産であるとか、いずれにせよゼネコンとか関係ないということなら、あるいは「ない」という建前にできるなら、昨年春の小沢一郎公設秘書逮捕の場合と同様に、報告書の記載ミスで終わる。小沢氏が事情聴取に応じ、報告書を修正して終わりというわけだ。
 しかし、そういかないだろうという雰囲気は、12日の記者会見(参照)で小沢氏が実質述べていることから察せられる。

 それはそれとして、以前から何度も申し上げております通り、私自身も、また、私の事務所の者たちも、計算上のミスやら、そういったものは、あったかもしれませんけれども、意図的に、法律に反するような行為はしていないものと信じております。

 言葉尻を捉えて非理屈を言うようだが、小沢氏は「意図的に、法律に反するような行為はしていない」とは思っていても、意図的ではなく法律に反するような行為をしてしまったという認識がここで示されている。

 また、ご承知のように私の東京の後援会の事務所、盛岡の事務所、あるいは水沢の実家の事務所が強制捜査の対象となっておりまして、すべての書類等々が押収されております。それからまた、その後も弁護士等を通じて事実関係には包み隠しなく話しておると思います。
 従いまして、今の段階で私が申し上げるのは差し控えますけれども、検察当局においては、当局におきましては、この問題についてすべてご存じのことであるという風に思っております。以上です。

 小沢氏は、検察がすべてを知っていると認識している。つまり、小沢氏を政治的に生かすも殺すも検察の手にあって抗弁の余地はないとしている。その前提で小沢氏が聴取に応じようとしないのは、結末が決まっていてそれなりの覚悟があるのか、もう少し先に検察との手打ちの位置があるかだら。私は前者ではないかと思う。
 というのも、今回の強制捜査はある意味で、一つの政治ショーなのではないかと私は見ているからだ。昨年春の小沢一郎公設秘書逮捕は、これまでの日本の政治風土からすれば異質なルール変更だったし、暴走とも言えるものだった。しかし、それをあえて検察は行った。
 背景は、大きな絵のための証拠隠滅を恐れたためかもしれない。7日付け産経新聞「西松違法献金 石川議員ら証拠隠滅か 強制捜査前後に資料搬出」(参照)より。

 関係者によると、石川氏や小沢氏の元秘書らは強制捜査が入る数時間前、陸山会の事務所から大量の書類を段ボール5箱に詰め、元秘書の車に保管。翌3月4日には東京・永田町の衆院議員会館の石川事務所にあった書類などをバッグに入れて、段ボール箱と一緒に別の場所に運んだという。

 この話の詳細は今月の文藝春秋「西松事件 元秘書の告発 消えた五箱の段ボール 田村建雄」に詳しい。また、類似の話は今朝の産経新聞記事「「石川議員に頼まれ証拠隠した」 元秘書が自民勉強会で告白」(参照)にもある。

 金沢氏によると、特捜部が陸山会事務所を捜索した昨年3月3日、石川氏から「小沢氏から『チュリス(陸山会事務所が入る都内のマンション)でまずいものを隠せ』と指示があった。手伝ってほしい」と電話を受け、勤務先の札幌市から上京し、同日夜に石川氏と合流した。
 石川氏は「隠せるものは隠したが、自分の衆院議員会館事務所も捜索が入るかもしれない」と話し、翌4日に石川氏の事務所に出向き、鹿島建設や西松建設などゼネコン関係の名刺や資料を黒いナイロン製のボストンバッグに詰め込んだという。バッグは一度松木謙公民主党衆院議員の事務所に預けたことも明らかにした。
 金沢氏は当時小沢氏の秘書だった樋高剛民主党衆院議員から「陸山会事務所の証拠隠滅工作に加わった」と聞いたことも暴露。樋高氏は「資料が押収されていたら小沢氏を含め全員逮捕だった」と話したという。

 こうした資料が現在どうなっているかは不明だが、おそらく概要はすでに検察が掴んでいるだろう。今日付の毎日新聞記事「小沢氏団体不透明会計:「証拠隠した」上申書 西松献金で石川議員元秘書」(参照)によれば、石川氏の秘書(上述の金沢氏と見られる)は「昨年3月の西松建設違法献金事件の際に証拠を隠した」とする上申書を東京地検にすでに出している。

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コメント

>これは稚拙すぎてブロガーには騙される人がいてもジャーナリズムでは嘲笑されただけだった


郷原さんの立場は・・・
ああ、彼は分かっててやってるからいいのかw

投稿: くれふ | 2010.01.14 13:20

> これが、小沢氏本人の資産であるとか、夫人の資産であるとか、いずれにせよゼネコンとか関係ないということなら、あるいは「ない」という建前にできるなら、昨年春の小沢一郎公設秘書逮捕の場合と同様に、報告書の記載ミスで終わる。

それが出来るのであれば、小沢氏はさっさと聴取に応じてそう言えばよかったんじゃないかと思います。しかし実際は拒否したわけで…。

投稿: Cyhyraeth | 2010.01.14 14:57

上申書を提出したのは石川氏ではなく石川氏の元秘書ではあいでしょうか。

投稿: | 2010.01.14 18:40

石川氏の元秘書の件、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2010.01.14 20:39

まあ新聞を普通に読めばそんなところですよねー。
ただ、新聞も検察も少し常軌を逸しているように見えるわけで・・強制捜査したのに誰も逮捕されていないし・・。

まあ、さすがに大久保公判維持困難隠しはうがちすぎと思うけど、ムネオやホリエモンの検察批判が地味に効いていて、国民が検察も正義の組織ではなく、必ずしも正しいわけでなく、公憤に駆られているわけでもない組織というイメージが昔より増えているのが検察の悩みどころ。

投稿: lc | 2010.01.14 21:18

今回も検察は何も立証できないでしょう。
石川さんの元秘書ね。小沢憎しで検察に魂を売った方ですね。
その方の証言・・・ははは、馬鹿馬鹿しい。

野党に転落してから後の小沢を追求したって何も出てきません。
自民党時代に遡れば別ですけどね。(すでに時効)

それに小沢の個人資金は奥さんの実家からポンと出る。
鳩山家ほどではないが今の小沢なら4億円程度ならどうとでも出来るのだ。

岩手の小沢家実家は普通の家(小沢の幼少時代はむしろ貧しかった)だが、父佐重喜が東京のあちこちに小さな土地をたくさん持った。
ひとつひとつは大した土地ではない。
しかし、全て併せると現在の総額は結構な大きさになる。
この資産を使えば市中金融からも個人からもどうとでも融通できる。

また、建設業界を基盤としていた自民党時代と異なり、日教組を主な支持母体とする現在では、小沢は地元や支持団体への利権誘導は不用となっている。
「民主党の小沢」には検察が思い描いているような怪しいことをする必要は全くないのだ。

本当に小沢を追及したいなら自民党時代に遡らなければならない。
そのときは自民党の闇も同時に明らかにされ、自民党は完全に壊滅するだろう。

そこまでやるようでないと検察が正義の味方だなんて思えない。
所詮検察は何者かの指図による国策捜査・・・ですらないな、特定の誰かの利益のために国家権力を私的に乱用しているのだろう。
そうとしか思えない。

投稿: 田舎から | 2010.01.15 09:19

こんなことより、その石川議員の元秘書の方と自民党の資金関係を洗ったほうが面白いことが見えると思うけどなぁ。
その元秘書さんの会社、商売そんなにうまく行ってるかな? でもなんであんなに金があるのかな? どっかからもらった金、プールしてんでないの? 
民主党に公認してもらえなかったことへの逆恨みでしょ?
でも、代わりにどっかから公認してもらえるのかな?
選挙資金どっから出るのかな?
元秘書さんの自前の政治団体の通帳、見たいな~、見たいな~、見たいな~。

今回の小沢騒動第・・・第何段だろ、あんまり多いから分からなくなりました・・・これ、馬鹿馬鹿しい三文ネタの可能性、大ですよ。大。

北海道の建設業界を経由して不動産業界に取材しよう。

投稿: 田舎から | 2010.01.15 18:35

元秘書まで逮捕されたが、違う人だ。

投稿: | 2010.01.15 23:17

うんざりしますね。日本を動かす力のある政治家が4億だか8億だか私腹を肥やしたところでどうだというのです。金にきれいな政治家がなんぼのもんですか。政治には金がいるのです。当り前の話じゃないですか。しかし、これで小沢という政治家が、権力の中枢にいつつ潰れるというのなら、それまでの政治家だった、ということでしょうけれども。その意味では、これからが注目ですね。

投稿: 名無し | 2010.01.15 23:46

長々と書いているけど、マネーロンダリングとは絶句。早い話、鹿島なり水谷なりから闇献金があったかどうかでしょ。
その証拠(鹿島側の帳簿とか)があれば、逮捕すればいいだけ。
水谷建設筋は古い話ですから、立件できるだけの証拠がなかったと考えるのが妥当です。
これから証拠を押収。。意味不明です。

それから小沢個人と陸山会の人格としての小沢との金の流通は政治資金とは言わないから念の為。


投稿: まぐ | 2010.01.16 00:51

アルカポネも殺人や組織犯罪ではなく脱税で捕まったからね。小沢の最後には案外お似合いなんでは?

投稿: | 2010.01.16 14:24

郷原信朗氏は六本木ヒルズ、サウスタワーに弁護士事務所をかまえてますが、月200万円弱の家賃は、高いですね。
弁護士になられてから、儲かるのですね。

投稿: ozawanotuma | 2011.02.08 11:38

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