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2009.12.12

フィナンシャルタイムズは民主党の緊急経済対策をどう見たか

 政権交代のギャンブルを勧めていたフィナンシャルタイムズだが(参照)、今回の民主党の緊急経済対策をどう見ていただろうか。9月時点では、日が浅いこともあり日本人に済まなかったなという感じではなかった(参照)。しかしさすがに今回の、自民党麻生政権ゾンビのような緊急経済対策については、弁解のしようもないのではないか。どう評価していただろうか。8日付けの該当社説「Japan attempts another stimulus(日本は別の財政刺激を試みる)」(参照)を仔細に読むと、笑ちゃっていいのか泣いたほうがいいのか、なかなか微妙な見解だった。
 大筋で今回の緊急経済対策を肯定的にフィナンシャルタイムズは見ているものの、連立政党の亀井金融・郵政改革相に掻き回わされた対応はまずかったとしているようだ。


The \7,200bn fiscal stimulus announced on Tuesday may not be bad economics --- but it will make it harder to fulfil the DPJ’s ambitious manifesto pledges. More than a third of the money comes from restoring the new government’s cuts to stimulus plans the LDP had prepared before leaving office. The DPJ and its partners originally wanted the savings to fund expensive promises such as bigger child credits in the next fiscal year.

8日火曜日に公開された7兆2000億円の景気刺激策は日本経済にとって悪くはないが、民主党の野心的なマニフェスト実現を困難なものにするだろう。総額の三分の一以上は、自民党が下野前に用意した刺激策を新政権で削減して得たはずの金額を復活したものだ。民主党と連立政党は元来この削減分を子供手当など次年度の巨費支出に充てる元金にしたかった。

This turnabout is hardly a technocratic decision. The prime minister, Yukio Hatoyama, has sided with his small coalition partners, such as Shizuka Kamei, leader of the People’s New Party, who have pushed strongly for more stimulus spending to keep growth going. The package was delayed at the behest of Mr Kamei, who successfully demanded that its size be increased from original plans.

この逆走は経済を考慮した決定ではない。経済刺激策強行を求めてきた連立小党の国民新党亀井静香党首に鳩山由紀夫首相が同調したからだ。経済対策が遅れてしまったのも、原初案を膨らませるのに成功した亀井のせいである。


 デフレ日本に悪い経済刺激策ではないが、民主党としてはなんの考慮もなく、連立小政党に引っかき回された結果だとしている。
 そのとおりなのだが、フィナンシャルタイムズのトーンには、「そんなことしなくてもよかったのではないか」というトーンも感じられる。そこはどうなのか。背景として、フィナンシャルタイムズは、それほど日本経済は悪くはないという視点に立っている。

Japan’s recession was severe but ended early. Indeed the initial severity gives cause for optimism, as it was more due to now-rebounding world trade than domestic financial sins. Japan outdid other rich economies with impressive output growth of 1.2 per cent in the last quarter.

日本の不況は深刻だが早期に終了している。実際初期の低迷に楽観的でいられたのは、国内の金融政策の悪行より、世界経済の回復があったからだ。日本は先進国のなかでも、前四半期の成長率は1.2パーセントと群を抜いていた。


 うーん、うなるところだ。元来日本はそれほどリーマンショックの影響を受けるはずはなく、どちらかといえば、自民党政権下でも続いていた実質的なデフレに心理的な要素が加わったものではないかとも思う。だが、第三四半期で成長率が維持できてのは、麻生政権の思い切った経済政策が功を奏したからではないだろうか。世界経済の回復の恩恵が得られたのも輸出企業を援助する麻生政権の政策によるところが大きく、民主党政権下ではその期待が弱まっている点が大きな問題だ。私はビル・エモット氏の「民主党政権の現在のマクロ経済運営は、残念ながら、予想以上に酷いと言わざるを得ない」(参照)という見解に同意する。
 フィナンシャルタイムズは随分と民主党寄りで、かつ日本経済を楽観視しているようだが、この先にはけっこうブレも見られる。

But danger signs abound. The growth figure was boosted by inventories; it is also expected to be revised down significantly on Wednesday. Several leading indicators dropped markedly in November.

しかし日本には経済危機の兆候も多い。成長率の数値も在庫で水増しされている。だから、9日水曜日には大幅下方修正されることになる。その他の主要経済指標も11月には目に見えて低下した。

As in other big economies, policymakers are therefore wise to keep the foot on the accelerator: doing too little is a greater risk than doing too much. Judging by a deflation rate of 2.2 per cent, the balance of risks favours stimulus more in Japan than elsewhere.

だから日本は他の経済大国と同様に、政策立案者はアクセルを踏み続けておくほうがよい。わずかな刺激策では、やり過ぎよりもはるかにリスクを高くする。2.2パーセントというデフレ率からすると、リスクとのバランスにおいて日本は他国よりも刺激策が好ましい。


 このブレは何? さっきの話と違うじゃないか思わず突っ込みたくなるところで、フィナンシャルタイムズは民主党を援護しようとして矛盾してしまっている。だが、どちらかといえばこちらの認識が正しく、現状の執拗なデフレ下においては多少やり過ぎのリスクがあっても、刺激策が好ましいし、結局、亀井案は民主党を救うことになるだろうし、やっぱり経済モラトリアムが求められる時期の政権交代は国民に不利益をもたらしたなという印象が強い。
 財政出動は赤字国債を伴う。そこをフィナンシャルタイムズがどう見ているかというと、「国債発行残高は疑いなく度を超している(Government debt is without doubt beyond extravagant.)」とのこと。それでも手に負えないほどではないし、国債が国内で消化されていることも指摘している。ざっくり言えば危険領域という認識だ。日銀が買い取りをすればよいといった示唆はない。いわゆるリフレ派とは違う。
 打開策はどこにあるのだろうか。結語はジョークなのかもしれないが、こう述べている。

If only domestic consumers were as willing. But Japan has always had a half-hearted attitude to stimulus, fiscal or monetary. Unless leaders show confidence in the policy, it will not inspire consumers.

日本国民がもっと活発に消費してくればよいのだが。しかし、日本はいつでも経済刺激策を真剣にはやらない。財政出動も量的緩和もいいかげんだ。政府が信念をもった政策を実施しないかぎり、消費が活性化するわけもない。


 まあ、率直に言えば、フィナンシャルタイムズの結語はめちゃくちゃになっている。民主党政権はどのような政策に信念を持つべきだったのか。マニフェスト? へ? へっくしょん。

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2009.12.11

米国の報道も同じく鳩山首相に困惑

 普天間飛行場の移設問題について、「アメリカは怒ってる」と日本のマスコミが連呼してるように感じる人がいる。5日にはローレス前米国防副次官が「年内に合意受諾を」、8日にはアーミテージ元米国務副長官が「合意通りに辺野古へ移設しないと日米同盟は白紙に戻る」、グリーン元米国家安全保障会議アジア上級部長が「普天間基地をこのままにしておくのは危険だ」といったニュースばかり垂れ流しているかにも見える。
 しかも、これら親日派と言われている彼らの肩書きを見ると、「前」や「元」などみんな前ブッシュ政権時代の人間である。現政権とは関係ないと誤解する日本人がいても不思議ではないが、彼らが登場せざるをえなくなってしまったのは、国家安全保障の責任者であるロバート・ゲーツ米国防長官の鳩山政権への交渉失敗を懸念してのことだった。
 なにより象徴的なのは、ゲーツ米国防長官もまた前ブッシュ政権時代の人間でありながら、オバマ政権の現職でもあることだ。つまり米国は、国防問題においてブッシュ政権との一貫性を持っていることを明確に世界にアピールしている。そして、その関連としてこれらの「前」や「元」の知日派の人々が出てきているのであって、日本国民に愛想をつかされて下野した自民党が現鳩山政権のやることにケチをつけてるのとはまったく構図が違っている。
 数々の報道の中で興味深いのが4日、岡田克也外相と北沢俊美防衛相を前にルース駐日米大使が、「顔を真っ赤にして大声を張り上げ、年内決着を先送りにする方針を伝えた日本側に怒りをあらわにした」という産経新聞記事だ(参照)。岡田外相は8日の記者会で「ルース大使もしっかりと自らの主張を言われましたが、別に顔を真っ赤にするとか、怒鳴り上げるとか、冗談じゃないと思っております」と否定したものの、同席した外務省幹部も厳しい表情で「にこやかな雰囲気ではなかった」と証言しているように(参照)、報道に誇張はあるとはいえ険悪な対談であったと見てよいだろ。
 激怒の背景も想像に難くない。鳩山首相はルース米大使に「心配されているかもしれないが、そうした報道などに惑わされないでください」と極秘書簡を11月13日に渡していたとFNNは3日に報道していたが(参照)、それが事実なら、ルース大使には鳩山首相は二枚舌に見えたことだろう。ただ、これもFNN報道なので産経系と同じ疑うならそれまでのことではあるが。
 普天間飛行場移設に関連して米国のメディアが困惑しているようすは、10月時点ですでにウォールストリート・ジャーナル(参照)やワシントンポスト(参照)などでも報じられたが、これらの高級紙に対して日本の政権交代に好意的な配慮を見せていたニューヨークタイムズも、12月10日「Obama's Japan Headache(オバマは日本で頭が痛い)」(参照)を掲載して、その困惑の一端を伝えるようになった。たとえば、一部を抜粋すると、こんな感じだ。
 「日米の信頼は醤油に入れたわさびよりも速く溶けきってしまった。対立の炎は沖縄南部の海兵隊基地の将来についてだ。当地では、基地騒音や犯罪や環境汚染への嫌悪は在沖米軍のせいだとされている。ことの真相は複雑だ。日本人は、3万7千人の在日米軍を冷戦後の米国依存の苛立ちの象徴としている。鳩山はその苛立ちを公言している」
Instead, trust has dissolved faster than wasabi in soy sauce. The spark has been the future of a Marine air station in the southern island of Okinawa, where local feelings run high over the noise, crime and pollution many associate with the U.S. military presence. The deeper issue is more complex: growing Japanese restiveness over postwar dependency on Washington of which the most visible symbol is the 37,000 American troops here. Hatoyama has given voice to that chafing.
 さらに肝心の部分だが、こんなことも書かれている。長島昭久防衛政務官が鳩山首相を弁護したのに関わらずだ。
 「長島氏の弁解にもかかわらず、米国側には疑念が縫い込まれ、疑念は誤解を通して膨れあがった。米国大統領が先月当地に滞在したおり、鳩山は信頼を強調し、オバマもそれを確かなものと受け止めた。しかし、両者は相互の信頼が何を意味するのか明確にはしなかった。鳩山にとって、それは同盟の未来であったが、オバマにとっては、260億ドルを要する沖縄に関する2006年の同意の実行であった。」
But doubts have been sewn on the American side. They’ve multiplied through misunderstanding. When the president was here last month, Hatoyama appealed for trust, Obama said sure, but they never cleared up what the mutual trust was about. To Hatoyama, it was the future of the alliance. To Obama it was the implementation of the $26 billion 2006 Okinawa accord.
 アーミテージ元米国務副長官の訪日の活動についても、オバマ大統領も同意していると補足している(Richard Armitage, a former deputy secretary of state who’s been running around town, is only the most visible expression of U.S. impatience. Obama shares it.)。産経報道などの主張とニューヨークタイムズのこの記事との差はほとんどないことがわかる。米国には多様な意見はあるが、基調としては米国政府は日本の鳩山政権に困惑していると見てよいだろう。
 ワシントンポストも11日、「Does Japan still matter?(日本は依然問題なのか)」(参照)の記事で、鳩山首相の「僕を信じてくれよ(Trust me)」というオバマ米大統領へのメッセージについて、「この問題対処での鳩山の素人芸に愕然としたものの、オバマ政権高官はなんとか困難を越えて、政治経験不足の同盟と同盟合意実施の適当な配分に到達している」と、鳩山氏の幼稚な態度に呆然としたようすを伝えながらも、米国が大人の対処したことを報じている。
Frustrated by Hatoyama's amateurish handling of the issue, Obama administration officials are scrambling to come up with the right mix of tolerance for the coalition's inexperience and firmness on implementing an agreed-upon deal.
 とはいえ、両記事は米国の怒りに賛同しているわけではない。むしろ日本に向けられる米国の怒りを緩和しようと議論している。結語を次のように結ぶあたりは、ニューヨークタイムズらしいところだ。
 「手短に言えば、たとえ日本人が現状の卑屈な状態から逃れたいと望むとしても、日米同盟は現実的な課題なのである。この問題では誰もが、まず深呼吸をしようではないか。鳩山党が、おとぎ話のような友愛の世界とやらの夢想にふけっているとしても、米国はもっと忍耐づよくあるべきなのだ。普天間問題は柔軟に考えよう。だが、日米間の戦略的な必要性はより強固にしていかなくてはならない」
In short, the need for the Japan-U.S. alliance is real even if the Japanese urge for liberation from its more demeaning manifestations is growing. That says to me that everyone should take a deep breath. U.S. impatience should be curbed along with the pie-in-the-sky “world of fraternity” musings of elements in Hatoyama’s party. Be flexible on Futenma but unyielding on the strategic imperative binding America and Japan.
 マッカーサー将軍は「日本はまだ12歳の少年だ」といった言葉が思い出される。もっともこの将軍の真意は、12歳にもなれば平和憲法の欺瞞くらいわかるだろうという意味だった。あれから半世紀以上経ったが、戦後最強のニートとの尊称もある鳩山由紀夫氏は、その夢を未だに抱いているのかもしれない。将軍からすれば12歳の知能に足りないほど清廉潔白なのは、普天間飛行場は硫黄島へ行けと主張する社会民主党ばかりでもない。東大法学部在学中社青同の構造改革派の活動家だった仙石由人行政改革担当相も、早稲田大学政経学部在学中同じく社青同で解放派であった赤松広隆農林水産相も、連合国軍総司令部(GHQ)が吹き込んだ美しい夢を信じ続けているのかもしれない。元はといえば米国が撒いた種。刈り取り時期には我慢も必要になる。
 現状、米国は我慢を見せている。懸念されていた在沖海兵隊のグアム移転予算は米国議会を通ったし(参照)、鳩山政権側も普天間飛行場移転予算は計上する意向だし(参照)、さらに沖縄の新米軍基地受け入れの見返りにも手付け金は出している(参照)。カネの流れだけ見るなら、あたかたも事は問題なく進んでいるように見える。

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2009.12.10

ドバイショックって結局、何?

 人類は滅亡する。確実に滅亡する。私は冗談で言っているのではない。本当だ。幸い、2012年のことではない。もう少し先。宇宙の時間からすればわずかなひととき。1億年は保たないのではないかと思う。いずれ60億年ほどで太陽は膨張し赤色巨星となり、地球の公転軌道が大きく外側に逸れ、地球は生物の生存に適さない極寒の星になる。人類は滅亡している。あれだけ地球温暖化阻止にがんばったのにな。残念。
 で、この前振りの教訓は何か?
 不吉な予言は、いつかは当たるということだ。
 世界経済の破綻など根気よく10年も唱えていれば、チャンスはやって来る。不吉な予言者に必要なのは、ちょっとした不幸の予兆におっちょこちょいな馬鹿騒ぎをしない忍耐力だ。
 今月の文藝春秋「「ユニクロ型デフレ」で日本は沈む」の浜矩子同志社大教授の発言を読んで、そんなことを連想した。


 こうして議論している間にも、今度はアラブ首長国連邦の一角、ドバイ発の信用不安が地球経済を震撼させることになりましたね。デフレ旋風が吹き荒れている中で、いわば最後のバブルの砦となっていた砂漠の大御殿に金融大激震が及んだ格好です。まさに砂上の楼閣が崩れたという感じですね。この間、それこそヒト・モノ・カネのすべてが「ドバイ詣で」モードになっていた。そのドバイが、へたをすれば国家全体として巨大な不要債券化する恐れが出て来ました。そうなれば、打撃を受けた金融機関の経営難でまたカネは回らなくなる。巨大建設プロジェクトのためのモノづくりは行き詰まり、ヒトの働き口も消えてなくなる。
 グローバル時代は連鎖の時代ですから、その影響は立ちどころに世界を巡ることになるでしょう。

 ハズレ。
 不幸の予言は見事に外れた。この予言は、もうちょっと我慢したほうがよかった。1億年も待つことはないけど、世界の識者がこの問題をどう見ているかくらいはざっと見ておくべきだった。例えば、11月27日の時点でフィナンシャルタイムズはドバイを"It's a small financial player.(金融プレヤーとしては小者)"(参照)と割り切っていた。そんな世界の金融規模からすれば世界を揺るがすほどの規模をそもそも持っていないのである。

During the boom, the government of Dubai and its enterprises ran up at least $80bn of debt obligations. This may be a lot of money for a small country, but it pales in comparison to Lehman Brothers’ $613bn of liabilities. Dubai is a big property developer and a heavily indebted government, but a small financial player.

好調期にドバイ政府とその企業は少なくとも800億ドルの負債を重ねた。小国にとっては大金といえるかもしれないが、リーマン・ブラザーズの6130億ドルの負債には見劣りがする。ドバイは不動産開発者であり政府負債が重いとはいえ、金融プレヤーとしては小者なのである。


 そもそも世界経済にリーマンショックのようなインパクトを与えられるような玉ではない。
 が、実際にはインパクトはあるにはあった。フィナンシャルタイムズ記事も記しているが、FTSEは2.3%、日経平均は3.8%、米国債は0.12%、英国債は0.09%低下した。日本でもドバイショックと騒がれて、経済音痴で、浜矩子教授に傾聴する民主党は、ドバイショックを受けて亀井金融相のブラフをごっくんしてしまった。
 じゃあ、影響力はあったんじゃないのか?
 いやその影響力とは何かが問題ということだった。影響力は浜教授が宣わったようなカネの問題ではなく、まさに浜教授のような不吉な予言そのものが問題だった。
 12月3日のニューズウィーク記事「Economic Panic Attack」(参照)がよく解いていた。

So why did the markets stage a mini-meltdown? Chalk it up to muscle memory, an important concept in markets as well as in physiology. Financial behavior is conditioned by prior trauma. Once a lightning bolt strikes, people tend to over-estimate the likelihood of a repeat strike.

ではなぜ市場は小規模なメルトダウンを演じたのか? 筋肉レベルの記憶のせいだ。それは生理学同様に市場でも重要な概念だ。金融の活動はトラウマがあれば影響を受けるものだ。雷に遭えば、人はまたそれに遭遇するのではないかと過剰に反応する傾向を持つ。


 つまり、市場の心理的な問題だった。過剰な不安に浜教授のような不吉な予言が合わさり、メディアも不幸ネタはおいしいこともあって記者が書き散らし、愚かな政治家が踊って、そしてパニックを演出した。
 それだけのことだった。
 もっともそれでギリシャ経済は危機に陥ったということもあるかもしれないが、そのからくりもフィナンシャルタイムズの先の記事にあるように、ざっくりいえば国の運営の問題だった。しいていえば、国がしっかりしてないと小さな心理パニックが社会パニックになりかねないのだが、現下の日本人だと、お前が言うなの話ではある。

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2009.12.09

自民党麻生政権のゾンビと化した民主党鳩山政権

 結論から言えば、8日に決まった鳩山民主党政府による7兆2千億円規模の緊急経済対策は正解であったと私は思うし、であればそれを押し通した亀井静香金融相の政治力は大したものだった。そしてこの財政出動によって、民主党鳩山政権は自民党麻生政権のゾンビと化した。
 新規国債の発行は緊急経済対策で53.5兆円に跳ね上がった。自民党小泉政権時代に「国債発行額を年30兆円以下に抑制する法案」を提出していた当時の鳩山由紀夫民主党代表が懐かしい(参照)。当時は「民主党では、財政健全化への取組み開始後5年以内にプライマリー・バランスを均衡させることを主張しており、本法律案は、その第一ステップとなるものだ」と述べていたものだった。
 この鳩山氏の志は今年の総選挙時も変化がなく、「国債というものをどんどん発行して、最後に国民の皆さんに負担を求める。こんなバカな政治をやめたいんです。みなさん」(参照)と熱弁していた。しかしもうお馴染みの鳩山ブーメランのとおり、その「バカな政治」とやらを彼自身が推進することになった。悪口ではない。鳩山首相は素直に反省している(参照)。


これはあの、リーマンショックからきていますからね。それまで私ども野党時代を通じて、経済対策をもっと早く打てば良かったのにな、という思いがあります。それだけに、ここまで深刻になってしまったことは、残念なことではありますけども、しかし経済をある意味では、しっかりと立て直していかなければならんということで、補正を組んだ前政権の考え方も分からんわけではない。

 自民党麻生政権のリーマンショック対応をようやく民主党鳩山首相が理解した。しかも、政権交代にあたり経済対策が無策であったことも、ようやくきちんと反省された。この素直な低姿勢が、いくら脱税をしても国民から愛想を尽かされない秘訣もあるのだろう。
 民主党の遅まきながらの緊急経済対策は、エコカー購入補助金や省エネ家電へのエコポイントの期間延長など麻生政権の劣化コピーと言えるような代物(景気対策には力不足)となっているが、麻生元首相が信念を持って効果を問うた種を、ようやく果実を見てからであれ、きちんと真似することはよいことだし、断熱改修住宅の省エネ化といった味付けもご愛敬がある。
 1次補正の見直しで執行停止した公共事業約4800億円分もきちんと自民党時代に復元された。野党時代に非難していた公共事業とハコモノ(老朽化した橋の架け替えや電線地中化など)や、公共事業を目的とする交付金(建設国債を充てて2千億円)の盛り込みも自民党政権の懐かしさに戻った。もともとこの民主党政権は、自民党の経世会の流れを組む人たちが牛耳る政権じゃないか。
 亀井静香金融相の胆力の結果とはいえ、民主党単独としては実際には無策だった状況も露わになった。民主党自体の元来の2009年度第2次補正予算案の緊急経済対策は2兆7千億円だった。自民党麻生政権の1次補正分の執行を停止した分を当ててその場を凌ごうとしていたのである。また、鳩山首相の時論であった赤字国債の上限44兆円を意識してのことだった。
 しかし、これが天籟ドバイの音を背景に、民主党内の合意もなく、ただイラ管こと菅直人国家戦略担当相の些細な口論はあったものの(参照)、土壇場の鳩の一声でエイと4.5兆円跳ね上がった。
 先日のアフガン小切手外交でも民主党は米国に言われたままの金額をエイと50億ドルに決めてしまった。密室でエイやと何兆何億というカネの使途を決まってしまうのは、さすがのリーダーシップと評価する向きもあるだろう。が、事業仕分けであれだけ連日多数で大騒ぎをして、埋蔵金を除けば0.6兆円しか出て来ず、しかもこれから削りすぎを修正することになる金額の10倍近い額が、エイと密室で決まる様は感動的でもある。
 鳩山首相が政権交代時に想定した44兆円の赤字国債を、今回10兆円近くのびのびと足を出したのは、09年度の税収見込みが36.9兆円となったこともある。私は実際にはこれよりさらに落ちるのではないかと思うが、民主党はこの額を想定していなかったようだ。だから、のほほんと10年度予算の概算要求は史上最大の95兆円に積み上げていた。積み残しの事項要求分を含めれば97兆円規模まで膨らむだろう。
 民主党の金色に輝く印籠たるマニフェストの実現には97兆円かかるのだが、かたや税収はというと、今回の緊急経済対策でも力不足で二番底が懸念されている状態であり、おそらく今年と変わらないのではないか。来年度は、37兆円の収入で、97兆円の支出。その差の不足は小学生の算数で60兆円になるはずで、それを赤字国債で補うしかないはずだが、鳩山首相は「そのバランスの中で私は44兆円、来年度に関してはそれに向けて努力しようじゃないか、ということで申し合わせたわけです」(参照)と述べているのが常人には理解しづらい。普通に考えれば、ここは算数の仕方が間違っているのであって、税収37兆円足す44兆円の国債を全収入として、81兆円でなんとか切り盛りしましょうということだろう。
 当然その意味は、97兆円まで積み上げたマニフェストのバラの夢を16兆円分刈り込むということだし、民主党の掲げたマニフェストで予算のかかるものは消えてしまうということだ。この点ではなんとなく民主党内で合意が取れつつあるようだ。
 藤井裕久財務相はマニフェストの目玉とも見られてきた子供手当について、「誤解があるが、マニフェストには国が全額払うとはいっさい書いてない」として、地方財政への責任転嫁を計ろうととしている。野田佳彦財務副大臣はマニフェストに掲げた農家の戸別所得補償制度について、「公約には負担の詳細を書いておらず、解釈はいろいろある」(参照)として解釈に逃げ込んだ。これらはようするにマニフェスト撤回の言い訳であり、その点を小沢一郎幹事長は、「国民に約束したことを完全にできることが最も望ましいが、人間だから、結果に出せないこともあるかもしれない。しかし、その目標に向かって全力でがんばる姿が尊い」(参照)と明確にしている。マニフェストというものは実現することが大切なのではなく、達成しようと努力する姿の尊さが大切なものなのだ。
 もちろん外国人参政権や夫婦別姓などの改革にはそれほどの予算はかからないから、そうしたことに今後民主党は注力していくことでマニフェスト達成ということになるのかもしれない。が、実質的には民主党のマニフェストは終了した。これで普天間飛行場の沖縄県外移設が達成できなければ、政権交代の意味もなかったということに終わるだろう。
 民主党鳩山政権は自民党麻生政権のゾンビと化したのである。鳩山首相はそれでも「ない袖は振るものだ」(参照)と考えているようでもあり、このゾンビが暴れるようなら額にお札を貼るしかない。それができるのは、恐らく国民でもマスコミでもなく、長期金利上昇の数字だろう。

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2009.12.06

黒色炭素(Black Carbon:ブラックカーボン)の地球温暖化効果

 人為的影響による地球温暖化(AGW:Anthropogenic Global Warming)の原因とされる温室効果ガスの代表は二酸化炭素(CO2)だが、米航空宇宙局(NASA)によると、全体の影響で占める割合は43%。半分以下である。その他の温室効果ガスで影響力の高い順に見ていくと、メタンガスが27%、黒色炭素(Black Carbon:ブラックカーボン)が12%、ハロカーボン(Halocarbons:ハロゲンを含む炭素化合物)が8%、一酸化炭素と揮発性有機物は7%となる(参照)。
 一位のCO2と二位のメタンガスについてはよく知られているが、三位の黒色炭素はいわゆる煤のことである。ろうそくの炎の上にガラスを軽く当てると、きめの細かい煤が採取できる。落ち葉焚きといった通常のバイオマス燃料の燃焼でも発生する。この黒い色の特性が熱吸収をもたらすことで温暖化を促進している。氷や雪に付着して溶解をを促進する働きもある。
 黒色炭素の地球温暖化への影響の度合いは比較的近年になってきてわかってきたものだ。昨年3月24日付のサイエンスデイリーもその影響推定の研究をニュースとして扱っていたほどだった(参照)。
 ニュースの元になった研究は、カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所の気候学者ラマナタン(V.Ramanathan)氏と、アイオワ大学の気候技術学者カーミケル(Greg Carmichael)氏によるもので、「Nature Geoscience」4月号に「Global and regional climate changes due to black carbon(黒色炭素によるグローバルおよび地域気候変動)」(参照)として発表された。
 結果はある意味で衝撃的でもあった。彼らの研究では、1立方メートル当たりの黒色炭素の温室効果は0.9ワットで、従来従来のIPCC(気候変動に関する政府間パネル:he Intergovernmental Panel on Climate Change)による黒色炭素の温室効果推定の0.2~0.4ワットに比べると、二倍から四倍に及んだ。推定値に大きな差が出たのは従来の推定では、他微粒子との混合による温室効果増幅と、高度の推定が十分ではなかったことによる。
 ラマナタン氏によると、地球温暖化防止の面において、黒色炭素1トンの削減は200~3000トンのCO2削減の同等の効果を持つらしい。また、現状、黒色炭素の排出の25~35%は中国とインドよってなされている。当然、これらの地域からの黒色炭素削減が進めば、地球温暖化遅延に大きく貢献するだろう。
 黒色炭素削減はさまざまな点でメリットがある。その筆頭は日本のような先進国では黒色炭素低減の技術確立していることだ。石原都政の先進的な取り組みでディーゼル車が排出する黒色炭素の低減もすでに実施されている。
 二酸化炭素の削減は途上国のエネルギー政策とも関係し複雑な問題を起こすが、黒色炭素の低減は直接的にはエネルギー問題とは抵触しないこともメリットの一つだ。各国間の協調も容易である。地域住民への健康上のメリットは、東京都のディーゼル車破棄ガス規制でもわかる。
 黒色炭素低減は今後日本でも注目されるだろう。日本が今後CO2を25%削減するという鳩山イニシアティブは、国民生活への経済負担が大きい割に、実際に達成できるのかすら疑問視されているが、現実の地球温暖化を遅延させるということを第一の目標とするなら、黒色炭素低減が打開策になる。一案に過ぎないが、日本が率先して黒色炭素による温室効果と二酸化炭素のそれと交換レートを策定し、中国やインドなど途上国の黒色炭素排出低減技術・装置の提供で相殺してはどうだろうか。それが可能なら、鳩山イニシアティブはおそらく比較的容易に達成できるだろう。

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