« 2009年10月18日 - 2009年10月24日 | トップページ | 2009年11月1日 - 2009年11月7日 »

2009.10.27

ウォールストリート・ジャーナル紙社説は鳩山政権に怒りを表しているようだ

 ゲーツ米国防長官は23日に日韓の訪問を終えたが、この期間中、また直後、日米間の安全保障問題について米国メディアを通して鳩山政権に圧力を加える論調が見られた。とはいえ、怒りを表すといったほどには強い論調でもなかった。米国政府としてはその後は日本を過度に刺激せず、とりあえず沈静化し、ある程度腰を据え、韓国の盧武鉉政権のような末路を忍耐強く待つのではないかとも思われた。だが、26日付けウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)に掲載された社説「Tokyo Defense Kabuki(鳩山政権の形ばかりのお芝居)」(参照)にはかなり明白な怒りが感じられた。この社説が、ここまでのメディアを介した怒りの頂点となるのか、これにいよいよ米国政府が実質的なフォローする転換点となるのか。気になることでもあるので言及しておこう。
 気になるというのは、タイミング的にも、このウォールストリート・ジャーナル紙社説掲載を直接反映したように、北沢俊美防衛相が泡を吹き出したからだ。今日の話題だが、毎日新聞「在日米軍再編:普天間移設 北沢防衛相、「辺野古」容認を示唆 「公約違反にあらず」」(参照)で、北沢防衛相は子供じみた詭弁を吐き出した。


 北沢俊美防衛相は27日午前の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)をキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)へ移設する現計画について「国外移設や県外移設という我々(民主党)の選挙公約をまったく満たしていないと認識するのは間違いだ」と述べ、容認する姿勢を改めて示唆した。

 「選挙公約をまったく満たしていないと認識するのは間違い」という表現はなんかの冗談だろうか。普天間移設見直しについて鳩山首相が述べた「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」という冗談に呼応したのだろうか。いずれもわけのわからない言明である。マニフェストの詳細に当たる「民主党沖縄ビジョン」(参照)には次のように明記されているからだ。

民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。

 毎日新聞記事に戻る。北沢防衛相は矛盾した弁明をしている。

日米政府が合意した在日米軍再編計画には沖縄の米海兵隊の一部をグアムへ移すほか、普天間飛行場のKC130空中給油機を岩国基地(山口県)に移転することが盛り込まれており、北沢防衛相は鳩山由紀夫首相が衆院選で公約した「国外・県外移設」に当たるとの見方を示した。しかし、同党は衆院選マニフェスト(政権公約)で米軍再編計画について「見直しの方向で臨む」としており、現行の再編計画をそのまま認めることはこれと矛盾する。

 その日米合意部分は自民党下の政策そのものであり、民主党が自民党政権から変えるとした選挙公約ではまったくない。仲井真沖縄県知事も「基地問題をレトリック・ことばの言いかえで処理しようというのは、やはり軽い。内容的にポイントを押さえるべきところは押さえて、関係者とよく相談して決めてほしい」(NHKニュース・参照)と北沢防衛相に応答していたが、詭弁を弄してその場を取り繕うのではなく、公約を破ることになるなら公約を破るとして、それはそれで国民に新しく問い直していくほうがよいのではないか。
 ウォールストリート・ジャーナル社説では、北沢防衛相の動揺を予告するように、彼が問題を理解してないわけはないだろうとも見ていた。普天間飛行場移転関連する諸問題について。

Military leaders seem to understand how these pieces fit together. Japanese Defense Minister Toshimi Kitazawa said Wednesday that the Futenma move is "extremely important."

防衛省の指導者はこれらの諸問題をどうまとめるか理解はしているだろう。北沢俊美防衛相は水曜日に普天間飛行場の移転は「極めて重要である」と述べていた。


 ウォールストリート・ジャーナル社説の冒頭に戻ろう。今回の論点では、昨日の鳩山氏の所信表明演説を踏まえている。

When the U.S. and Japan announced a sweeping military alliance realignment plan in 2006, both governments characterized their relationship as "the indispensable foundation of Japan's security and of peace and stability in the Asia-Pacific region."

2006年日米間で包括的な軍事同盟再編成案が発表された際、両政府は二国間の関係を「日本の安全保障とアジア太平洋地域の平和安定にとって不可欠な礎石」と表現した。

Yesterday, Prime Minister Yukio Hatoyama paid lip service to the alliance and then told parliament he wants to "frankly discuss" the implementation of a crucial part of that pact, the relocation of a U.S. air base on Okinawa.

昨日、鳩山由紀夫首相は、口先では同盟に触れ、協定の重要部分、すなわち在沖空軍再編成の実現について「率直に話し合ってまいります」と国会で述べた。

This isn't a minor tiff. Mr. Hatoyama's grandstanding endangers the entire 2006 agreement, a complex document that took more than a decade to hash out.

これはそんな些細なもめ事ではないだ。鳩山氏のスタンドプレーは、10年以上にわたり議論し尽くしてきた複雑な文書からなる2006年の協定を危うくしている。


 「率直に話し合ってまいります」と"frankly discuss"では、多少語感が異なるが、ウォールストリート・ジャーナル社説がここを強調したのは、英語的な語感を強調したのだろう。「やあ、バラク、あれはなかったことにしてくれ、友愛だよ友愛♥」ということじゃない。
 社説の締めはきびしい問い掛けが列挙されている。

Mr. Hatoyama may feel that he's simply sticking to a campaign pledge to put more distance between Japan and the U.S.

鳩山氏は日米間に距離を置こうとする選挙公約にこだわりすぎているようだ。

But it doesn't sound like he's thought much about the alternatives.

しかし、選挙公約にこだわるだけでは、代案について考えていないかのように見える。

Will Japan spend more on its own defense?

日本は自国防衛に支出する気がないのか。

Does Mr. Hatoyama think the North Korean nuclear program and growing Chinese military force aren't serious enough to warrant a closer U.S.-Japan relationship?

北朝鮮の核開発計画や中国の軍拡は、緊密な日米関係の維持を要するほどには重大な問題ではないと鳩山氏は考えているのだろうか。

Does he think diplomacy alone can keep Japan safe?

鳩山氏は、外交だけで日本の安全保障が維持できると思っているのだろうか。

These are the questions Japan's new prime minister needs to be asking, rather than putting on a kabuki show on defense.

これらが日本の新首相に問われている問題である。歌舞伎のように形ばかりのお芝居を演じてもらうことが求められているわけではない。


 エントリに書き写しながら再読すると、怒りというよりは、何考えているんだ日本人という、違和感のほうが強いのかもしれないと思った。しかし、この違和感は、すでに韓国盧武鉉政権時代に米国は慣れてもいる。ブッシュ政権からオバマ政権へと米国の政権は大きく「取っ替えっこ(change)」したと言われるが、ロバート・マイケル・ゲイツ国防長官はブッシュ政権から留任している。そこには「取っ替えっこ(change)」はなかった。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2009.10.26

フォーリン・ポリシー誌掲載マイケル・グリーン氏寄稿をめぐって

 フォーリン・ポリシー誌(電子版)に米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長のマイケル・グリーン氏が23日寄稿した「Tokyo smackdown(民主党政権にお灸を据える)」(参照)が現下の日米関係の状態を考える上で示唆に富んだものだった。同氏はこの寄稿の前に、今月(11月号)のフォーサイト誌に「米国はいつまでも鳩山政権にやさしくはない」を寄稿していて、その論調からすると、現下の民主党政権の状況に対して氏は相当に困惑か悲嘆を感じているのではないかと思って私は読み出した。中盤までそういう悲憤のトーンも感じられたが、最終段では楽観的な展望を述べていた。
 話の流れとしては最初にフォーサイト誌の寄稿から見たほうがわかりやすいかもしれない。


 発足から一か月を経た鳩山政権は、世論調査で高い支持率を維持している。米国のオバマ政権も敬意と寛容をもって支持する姿勢を示し、あからさまな衝突は避けるように努めつつ、日本の民主党政権がより現実的な方向へと着実に舵を切っていくことを期待してきた。

 期待は裏切られていく。民主党政権内の閣僚たちの混乱した発言に米政府は当惑しているようだ。

新閣僚に「発言統制」が必要なのは珍しいことではないが、オバマ政権や韓国の李明博政権、オーストラリアのラッド政権などの立ち上がり時期と比較すると、日本の連立政権から飛び出す発言の雑多さは群を抜いている。

 雑多な発言のなかで、米国政権の関心を持つ点としてグリーン氏は普天間飛行場移設問題に関連する在日米軍のフォーメーションと、インド洋給油問題の二点に注視していた。

 沖縄では来年、参議院選挙とともに県知事選、名護・沖縄市長選が行われ、米軍基地反対派が勢力を強めると見られている。そうなる前に決断を下さないかぎり、鳩山由紀夫首相は普天間問題での掌握力を失い、これまでの合意が無に帰す恐れもある。そして、十三年前に米日が普天間基地の閉鎖と沖縄の基地再編で合意して以来続いてきた出口のない状況がさらに続くことになる。

 市街地のど真ん中に存在する普天間飛行場は2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故でも明らかなように、沖縄県民の生活に今なお危険をもたらしており、早急の撤退が望まれているが、これに対してすでに社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は「少し時間がかかっても、きちんと態勢を整えて交渉すればいい」(参照)と述べることで、結果的に、この危険な状態を存続させる意思を表明した。福島氏としては、理想的には、住民の危険とトレードオフしても普天間飛行場を近未来に撤去させたほうがよいという判断があるのだろう。
 グリーン氏の指摘からはむしろその反対の結論が予想させるし、実際のところ、グリーン氏のフォーサイト誌寄稿後にゲイツ米国防長官の訪日があったが、その内容はグリーン氏の見通しを裏付けていた。なお、鳩山首相は、普天間移設見直しについて「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」と述べ、判断をやはり遅延させている。
 インド洋給油問題では、対案への期待が高まっている。

 オバマ政権は、インド洋派遣という単一の問題が米日の同盟関係全体を揺るがす事態は望んでおらず、日本の民主党が海自に対して、たとえ現在とは別の任務になるとしても、意義ある役割を割り当てることを期待している。そのため、今は”ガイアツ”の行使を避けているものの、社会民主党の唱える「平和主義」に民主党が屈するといった、易きに流れる展開は求めていない。


新政権が対テロ戦争から撤退するということになれば、日本の国際的な名声にも傷がつく。

 この点については、民主党からは代替案として民生支援が出ているものの、北澤防衛大臣は、「ヨーロッパを含めた国際世論を探ってみると、民生支援だけで代替案になるのかという懸念は少し持っている」(20日NHKニュース「自衛隊参加支援策 あるか検討」より)と述べている。かねてから小沢一郎氏が述べているアフガニスタンのISAFが民主党内では検討されているはずだ(参照)。
 この二点の問題をグリーン氏は重視している。

鳩山首相とオバマ大統領の協調が全般的にどれほどうまく運んだとしても、両国間の関係の全体的な基調を決めるのは、この二つの問題に他なるまい。

 このことから、ゲーツ国防長官訪日についてもこう想定していた。

 こうした課題について米国は十月二十日からゲーツ国防長官が訪日する機会に日本から何らかの前向きな回答を得なくてはならないだろう。解決のメドが立たないまま十一月のオバマ大統領訪日の日を迎えれば、ホワイトハウスは米国のマスメディアに叩かれることになる。

 ここが非常に微妙な問題だ。すでにゲーツ国防長官訪日は無回答で帰国することになった。おそらく現民主党政権は裏で確約するといった自民党のような芸当ができるわけもないから、グリーン氏が危惧する展開となっている。
 グリーン氏の予想は当たるだろうか? ポイントはホワイトハウスが対日世論をどれだけ恐れているかにかかっている。そして、この問題はオバマ大統領が医療保険改革などその他の問題で、どれだけ世論に劣勢に立たされているかにもかかっている。
 米国の対日世論動向だが、現状は、「極東ブログ:ウォールストリート・ジャーナル掲載「広がる日米安保の亀裂」について」(参照)や「極東ブログ:ワシントン・ポスト紙掲載「米軍一括案の米側圧力」を巡って」(参照)で見たように懸念は表明されているが、全体としてオバマ政権にとって脅威となるほどの世論にはなっていない。
 このまま安閑と推移していくだろうか。というところで、ゲーツ国防長官訪日後の、冒頭触れたフォーリン・ポリシー誌「Tokyo smackdown(民主党政権にお灸を据える)」(参照)の話になる。寄稿全体のトーンはフォーサイト誌寄稿と同じだが、グリーン氏は民主党の変化を楽観視している。

On the whole, this could be a rough year for managers of the alliance with Japan. But the future looks brighter. The Upper House election next year will probably flush the Socialists out of the coalition and allow the DPJ to move to the center.

全体として見れば、日本との同盟担当者にとってきびしい一年になりうる。しかし、展望は明るい。来年の参議院選挙でおそらく、連立政権から社会主義者を閉め出し、民主党は中道に舵を切ることができるだろう。

The next generation of leaders in the DPJ is made up of realists who want a more effective Japanese role in the world and are not afraid to use the Self Defense Forces or to stand up to China or North Korea on human rights.

民主党の若手は現実主義者からなり、国際問題における日本の役割を遂行し、自衛隊の活用や、人権問題で中国や北朝鮮に向き合うことを恐れない。

Gates did the DPJ a favor by forcing the debate on national strategy that the party was never willing to have while in opposition, and that Hatoyama was eager to avoid for his first year in power.

ゲーツ氏が訪日でしたことは、民主党が野党時代には好まず、鳩山氏も初年度の政権では避けたいとした国家戦略の議論を促したことだ。


 フォーサイト誌寄稿に見られた強い危惧のトーンは落ちて、米政権はしばらく静観するだろういうことになっている。ただしその前提には、来年の参院選を契機に現在の連合政権が破綻することがある。
 国内問題に視点を戻せば、はたしてそうなるだろうかという問題になる。ごく単純に言えば、社民党が連立を離脱するだろうか。グリーン氏は明瞭には触れていないが、このストーリーの背景には普天間飛行場移転問題で社民党と民主党が割れる可能性がある。
 私の現状での予想だが、社民党はすでに党存続の命運がかかっている現下の連立政権から離脱することはないだろう。そのためにこそ、普天間飛行場移設問題は、遅延策が続くのではないか。ただ、いつまでも遅延策が続くかはわからない。また、暗にすでに参院選での自民党の復権といった可能性は事実上排除されている。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

« 2009年10月18日 - 2009年10月24日 | トップページ | 2009年11月1日 - 2009年11月7日 »