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2009.04.10

フィナンシャルタイムズ曰く、頑張れ、麻生太郎

 ブログ更新にまた空きが出てしまった。この間、何があったかな。あまり世事に疎くなってもなんなので、NHK夜の7時のニュースはできるだけ見るようにしているが、それでもどうでもいいニュースやスポーツには関心がないので、いったん録画して、8時頃飛ばし飛ばしという感じで見ている。私は犯罪事件にはだんだん関心がなくなりつつあるせいもある。さてこの数日なにがあっただろう? 半井さんのファッションがレトロっぽくなったなくらいしか思い出せない。
 株価は上がったか。つまり、なんとか日本政府ももちこたえているということだろう。というか、15兆円真水というのはいいんじゃないの。いちおう公式予想としては需給ギャップが20兆円とされ、真水の乗数効果もそれに見合うということで、辻褄はあっているのではないかな。高橋洋一はもっとギャップがあるように推測していたが、なにかとしかたないでしょう。
 そういうわけで、麻生さんを叩いて総選挙総選挙と騒いでいた勢力も少しは沈静するのかなと今朝の大手紙の社説を眺めたら、いやなかなか手厳しい。朝日新聞社説「15兆円補正―大盤振る舞いが過ぎる」(参照)より。


 米国政府に「国内総生産(GDP)の2%相当の財政刺激」を約束した麻生首相は2%、つまり10兆円規模の財政支出を指示していた。しかし、総選挙を控えた与党の議員から「需要不足が20兆円超とされるのに足りない」といったむき出しの要求が高まり、膨れ上がった。
 この結果、すでに決定ずみの対策も合わせると、今年度の財政出動はGDP比3~4%程度となる。超大型景気対策をとっている米国や中国とも肩を並べるような水準だ。いくら深刻な経済危機に直面しているとはいえ、先月成立した経済対策の予算執行が始まったばかりの段階で、これだけ大規模な追加対策が必要だったのだろうか。

 自民党員がごり押しして10兆円増やしたが、こんな大規模追加は不要だったのではないかというのが朝日新聞さんの御主張なのだが、え? 需給ギャップ、知らないのか。
 いやそう無碍に否定するのではなく、朝日新聞はどういう理屈なのかというと。

 「規模ありき」で性急に検討が進んだため、メニューには不要不急の項目がかなり紛れ込んだようだ。

 不要不急の項目があるからイカンということらしい。しかしな、そんなことに手間どっている事態じゃないと思うが。
 他の社説はどうかと見るに、読売新聞社説「緊急経済対策 「真水15兆円」を賢く使え」(参照)はごく妥当な見解。

 15兆円の財政出動で約20兆円の需要が生まれるとの試算がある。日本経済の需要不足を穴埋めできる数字だ。内閣府は、7%台に上昇しそうな失業率が5・5%程度におさまると見込む。経済情勢からみて規模は妥当と言えよう。
 政策メニューには、雇用対策や中小企業の資金繰り支援など不況の痛みを和らげる応急策に加え、消費や投資など内需を呼び起こす政策も幅広く並んだ。米国など海外経済は早期回復の道筋が見えず外需に期待できないためだ。

 毎日新聞社説「15兆円対策 大盤振る舞いの結末は」(参照)は、予想通りのご意見なのだが、需給ギャップに触れてないようなあたりがちょっと痛過ぎる。日経社説での言及はなかった。明日に触れるのだろうか。
 社説で朝日と毎日のトーンが合うのはたいていはイデオロギー的なものが多いのだが、今回の件はごく経済の基本ということだと思うのだが……と考えていや、これってイデオロギー的な問題なのか。両方とも総選挙総選挙と吹かしていたから、それで経済の話もねじ曲がっているのだろうか。よくわからない。よくわからんのは、今回の真水だが、全体象で見るなら民主党も20兆円規模で大して変わるわけでもない。目下の政局で問われているのは経済なんで、そこに選択肢がない状態で企業献金がいかんとかわけのわかんないことでがたがた騒いで総選挙してもしかたないじゃん、と思うのだけど。
 そういえば、真水発表のちょっと前になるが、フィナンシャルタイムズは麻生内閣を評価しているようだった。gooあたりに翻訳記事が出るかと思ったし、他でも外信のネタになっているかなと思ったが、特に見当たらなかった。フィナンシャルタイムズが麻生内閣を批判すると日本では記事になるのに、褒めると記事にはならないものなのか。
 5日付けのフィナンシャルタイムズ社説”Not time to pause”(参照)ではこう指摘した。

The government, on the other hand, now seems to see the depth of Japan’s predicament. It is preparing a further stimulus – its third this year – to be unveiled in April. From the current vague plans, the content seems good; putting money in the wage packets of low earners who have not enjoyed income growth for years is socially fair and will help increase domestic demand. Health and social care are also perfect areas for public investment in an elderly and ageing economy.

他方、日本政府はようやく、日本の困窮の深さを理解したようだ。4月に公表されることになっている、今年三度目の追加刺激策を見るとわかる。現状の曖昧ではあるが計画によると、内容は良いと言える。例えば、近年の経済成長の恩恵を受けてこなかった低所得者の賃金増加策は社会的にも公正である。また、それは国内需要を高めることに寄与するだろう。高齢化の進む経済では、健康保険・社会保障は、公共投資に最適な分野である。


 規模については言及してないが、麻生内閣の経済対策を概ね是としている。一番の評価ポイントは三度目という追加部分であるだろう。
 麻生総理への期待も高い。

Taro Aso, the prime minister, had trouble getting budgets through the Diet earlier in the year because of his weak position in the governing coalition. He seems to have done enough to quell this parliamentary mutiny, delaying the need for an election. Japan’s political paralysis has, for the time being, cleared up. But Mr Aso must now be brave and use his authority to push through the stimulus measures he has proposed. Japan can ill afford to wait.

麻生総理が今年始めの国会で予算通過に苦戦したのは、連立政府内での弱い立場によるものだが、総選挙の要請を遅らせつつ、国会での反対勢力を十分に押さえ込んだもようだ。日本の政治的な麻痺状態は、しばらくの間ではあるが、解消している。だから、麻生総理は今や勇気をもち、その権限を使い、提案された経済刺激策を押し通さねばならない。日本に停滞している余裕などないのだ。


 すでに経済刺激策がごりっと進むことになったので、フィナンシャルタイムズ的にはアッパレ麻生総理というところだろうし、これは国際的にもそういうことなのではないか。
 ところで同社説だが、日銀にも言及している。「他方、日本政府は」という前段ではあるが。

Through this crisis, as before, the Bank of Japan has been overly hesitant. It must reflate the economy; after months of fiddling with micro-cuts in interest rates, it is, finally, edging towards unconventional measures. It must be bolder, and boost the supply of money to the economy by a greater degree. It is time for Japan to return to formal quantitative easing.

今回の経済危機にあって、以前と変わらず日銀は過度に及び腰だった。日銀はリフレ政策を実施しなければならない。ご機嫌うがいよろしく金利をちょぼちょぼと下げてみる数ヵ月の後に、ようやく、前例無き手法に向かいつつある。日銀はより大胆にならなくてはならない。かなりの規模で、日本経済に貨幣供給を行わなければならないのである。今や、日本は、公式に量的緩和に戻るべき時期にある。


 だから、リフレしろ、日銀、と。
 ああ、なるほど、もしかしてこの社説があまり話題にならなかったのは、麻生頑張れというより、日銀への強いご意見への日本のメディアのご配慮だったりして。どうなんでしょうね。まあ、リフレしろよ、日銀、だろうと思うけど。

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2009.04.05

ファー!

 長距離弾道ミサイル「テポドン2」改良型に搭載された人工衛星が北朝鮮から打ち上げられ、一段目は秋田県西の日本海、さらに日本上空を越えて二段目は太平洋に落下した。懸念された日本領土内への落下物はなかったようだ。人工衛星として成功したかどうかについては、いずれ北朝鮮から音曲豊かな報道があることだろう。とりあえずこの数日の、日本国内の大騒ぎは終わった。
 今回の打ち上げだが、私は初期の段階で失敗するのではないかと思っていた。理由は、燃料やエンジンのテストが十分にできておらず、しかも国際社会での北朝鮮のプレザンスに焦る印象が感じられたからだ。また「極東ブログ: 北朝鮮竜川駅爆破とシリアの関連」(参照)でも触れたが、あの事件はミサイルと関連があるのではないか、ミサイル燃料の扱いに不慣れなのではないか、という憶測を持っていた。
 私の予想に反して、北朝鮮の「人工衛星の打ち上げ」は、射程を伸ばせた点で、成功した。見事と言っていいのではないか。
 1998年8月にテポドン1号が日本上空を超えたものの、2006年7月のテポドン2号は飛翔に失敗している。この間、十分にエンジンや燃料のテストをしたふうでもない。無理でしょ、ダメでしょ……しかしもし成功したなら……とよからぬことも僅かに思った。私はこうした問題にはけっこう楽観主義なので、失敗するでしょうと高を括っていたのだが、間違った。なので、よからぬ話を少し。
 今年の2月、イランは人工衛星を搭載したサフィール2の打ち上げに成功したが、この技術もまた弾道ミサイル開発・改良にも転用可能なものだった。成功に至るまでは、人工衛星を搭載せずに3回ほど実験している。そのくらいは普通する。なので、いくらこれまでイランにノドン技術を提供したミサイル技術先進国の北朝鮮でも、新型の実験をしないことにはね、と思っていたのだが、これは逆に考えることもできる。北朝鮮がイランの実験をパクっていたのかもしれない。ただ、サフィール2とテポドン2の関係は私にはよくわからない。
 2007年2月にイランは前段となる観測ロケット打ち上げに成功しているが、これについて米民間軍事研究機関グローバル・セキュリティーはテポドン2の技術をベースにした可能性を指摘している。また、英軍事情報企業ジェーンズ・インフォメーション・グループはイランのロケットについて、テポドンの組み立て施設に類似していると指摘していた。フカシのようだが、一応専門スジの観測なのだろう。
 これに対して、2008年11月にイランが実験した地対地ミサイルであるセッジールのほうは、ノドンに起源をもつシャハブ3を改良したものだった。なので近年までイランと北朝鮮のミサイル技術協力があるかというのがこのミステリーを解く鍵になる。この年、実験に先立って、イラン反体制組織・国民抵抗評議会はそうアナウンスしていた。読売新聞「イランの核弾頭開発、北朝鮮が支援」(参照)より。


 同評議会によると、テヘラン南東部ホジルの丘陵地帯に秘密開発拠点があり、北朝鮮技術者が核弾頭の形状やミサイルの空力設計で協力している。北朝鮮技術者の関与は約2年前から強まり、専用の宿泊施設があって、多いときは数十人が滞在。秘密拠点には地下施設もあり、核爆弾を起爆する高性能爆薬の爆発試験が行われているという。

 こうした情報の系列だが、3日読売新聞「北朝鮮のミサイル開発、イランが協力か…米専門家指摘」(参照)では、グローバル・セキュリティーの情報からこう指摘していた。

 3月26日に公表された、北朝鮮・舞水端里(ムスダンリ)に設置されたミサイルの商業衛星画像を見て、米民間研究機関グローバル・セキュリティーのミサイル専門家チャールズ・ビック氏は「発射場でほこりを防ぐ構造がイランの設備とそっくり」と述べ、ミサイル組み立て施設のレイアウトもイランの建物と酷似していると指摘する。
 衛星写真を解析すると、管制設備の付近にバスや賓客用乗用車が確認できたという。ビック氏は「テヘランからの客だろう」と話す。同氏によると、イランには北朝鮮のための専用エンジン試験場があり、今回発射されるとみられるテポドン2改良型のエンジンもイランで燃焼試験が繰り返されたとみられる。
 また、米政府当局者は本紙に「イランの技術者は、たびたび北朝鮮を訪れている」と明言する。

 こうした情報の真偽はなかなか日本からは確認できないが、私としては、テポドン2がすんなりお見事に成功したということが、これを多少なりとも裏付けてしまう面があるのではないかと思うし、おそらく米国や西欧社会にとって、テポドン2はイランの文脈の意味を持つのではないか。
 あと余談めくが、テポドン2発射アナウンスに呼応したように沖縄にF22が16機もやってきて演習していた。関連の暗黙のメッセージを北朝鮮や中国にデモンストレーションで伝えるというということなのだろう。実際の人工衛星発射予定日前には撤収した。F22については、当初オバマ政権下では開発・生産縮小の声もあったようだが、免れるようだ。
 今回の北の人工衛星も結果的にMD産業を支えることになったし、F22も同じく栄えていくのではないか。ぶっちゃけ、MDというのは北朝鮮の脅威というより米国の長期的な対中国の軍事的な問題だし、F22もそうした流れにある。北朝鮮の脅威というならテポドン2ではなく、300発もあるといわれるノドンのほうで、今回の「ファー!」は日本の国防という点ではあまり関係ないようだが、世間の空気はけっこう変わったなという印象はもった。

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