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2009.03.28

簡単ガイトナー案

 たまには経済の話でも。何かな。と、ガイトナー案を考えながら思った。あ、ガイトナー案。
 ガイトナー案のガイトナーさんは、米国財務長官。80年代後半、駐日米大使館勤務していた。「ああ、あれか」と思う人がいたら、そうあれです。いや、私はたぶん会ったことない。
 それはさておき。ガイトナー案のことを書きそびれていたので、メモ。というか、これよくわからないので、つまりなんだかわからんなという話。なので、読んでも大したことじゃないです。だからぁ、ネットの言論はなぜ質が低いかって、こういう頭の悪ぃブロガーがいっぱいいるからですよ。
 さて、ガイトナー案って何? ということだが。現下の金融危機をどうすんの、と。巨大金融機関の財務表から住宅ローン関係の不良資産をどうしようか、と。そこで、これを解決、毒物一掃というのが今回のガイトナー案なのだが、どうも質の高い日本のマスコミ言論を読んでいてよくわからない。
 というか、この話、「バッドバンク」の話とされているようだ。それで間違いではないのかもしれないし、私がどうも基本的な誤解をしているのかもしれないが、気になる。
 読売新聞社説を読むとこんな感じ。26日付け「米バッドバンク 不良資産の買い取りを急げ」(参照)より。


 米国の金融機関が巨額の不良資産を抱えたままでは、金融危機はいつまでも終息しない。「負の連鎖」を早急に断ち切ることが重要だ。
 米国政府は、官民で不良資産を買い取る「バッドバンク」構想の詳細を発表した。

 「バッドバンク」構想として論じられている。

 対策のポイントは、政府が金融安定化法の公的資金枠から、最大1000億ドル(約9・6兆円)を拠出し、民間資金も取り込んで、最大1兆ドル(約96兆円)の買い取りを目指すことだ。

 公的資金と民間資金で「買い取りを目指す」というのだが、それが「バッドバンク」ということか。こう続く。

 官民で複数のファンドを設立し、住宅ローンなどの不良債権と証券化商品を買い取る。その価格は、民間の出資者間の競争入札などで決まる。
 民間投資家の損失が膨らまないように、政府は手厚く債務保証するなど、好条件の支援策も決めた。公的資金を呼び水に、幅広い民間の参加を促し、買い取りを加速する狙いといえよう。

 「バッドバンク」というより、ファンドとオークションに見えるのだが。というか、同社の別の解説記事「米、バッドバンク設立へ」(参照)だと、基金がバッドバンクだよと書いてある。ほれ。

 米メディアによると、米政府は23日にも、銀行から不良資産を買い取る官民共同の買い取り基金、いわゆる「バッドバンク」を複数設立することを発表するという。

 そうなのか。
 毎日新聞記事「エコナビ2009:米、バッドバンク詳細 金融安定化策が始動 公的資金増、見送り」(参照)も同じ。

米財務省は23日、米金融機関から不良資産を買い取る官民合同基金(バッドバンク)の詳細を発表、包括的な金融安定化策が実現に向けて動き出した。


 民間金融機関の不良債権や不良資産を政府が関与して処理する「バッドバンク」は過去に金融危機に陥った各国で設立された。破綻(はたん)金融機関から不良債権を買い取った90年前後の米整理信託公社(RTC)や問題銀行を国有化した90年代前半のスウェーデンはバッドバンクが機能した例といえるが、今回の米国は政府の判断だけでは不良債権や不良資産を買い進めることができないだけに、機能を十分発揮できるか疑問視する声もある。

 官民合同基金をバッドバンクと呼べるのだろうか。引用しないけど、産経新聞記事「米財務長官が不良資産買い取りの「バッドバンク」構想詳細を発表」(参照)もそう。
 読売社説に戻って。
 「公的資金を呼び水」のところが、ぶっちゃけ、レバレッジなんでしょうけど、これは後で触れる。読売社説はこう続く。

 しかし、この対策にも、課題が山積している。
 まず、不良資産買い取り実施へのスピードだ。来月中にも、実施する必要がある。
 資産の売り手となる金融機関が損失を嫌い、売却に二の足を踏むことも懸念される。民間投資家から、どれだけの出資を集められるかも不明だ。
 買い取りをうまく機能させるためには、制度設計をさらに詰めなければならない。
 景気悪化で不良資産が増えている。最大1兆ドルの買い取り規模でも不十分、との見方がある。追加的な公的資金が必要となるかもしれない。
 さらに不安要因として、公的支援で救済された米保険大手AIGの巨額賞与問題が、波紋を広げていることもある。米国では、AIGだけでなく、見過ごした政府に対して批判が高まっている。

 つまり、実施を急げ、が、まずある。次に、民間出資が集まるのか疑問、というのがある。それはそうか。
 制度設計にも問題があるらしい、が、説明はない。わかれよ、ということだろう。一兆ドルじゃ足りないというのもあるけど。AIG云々の話はわかりやすすぎるのでどうでもよし。
 この社説でわかるもんなんですかね。他、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞の各紙社説ではスルーしていたけど、大した問題ではないのか。
 日経では同日の社説「米不良資産買い取りへの期待と不安」(参照)で取り上げていた。「バッドバンク」というキーワードはない。

 米政府は今週、民間投資家と共同で基金をつくり、最大1兆ドル規模の不良資産を買い取ると発表した。金融機関は住宅関連のローンや証券化商品が不良化し、資本を棄損している。貸し渋りを通じて景気の悪化を加速しているため両者を取り除く。

 日経の社説のほうは普通に読んだら、バッドバンクというより、官民共同ファンド(PPIF)に読める。こっちが質の高い日本のマスコミ言論かもしれない。
 いずれにせよ、バランスシートを棄損している不良資産を除き、貸し渋りを減らそうということ。バブル以降にしょっぱい人生を歩んだ日本人ならよくわかる話ではあるが。
 仕組みはこう説明されている。

 第1に、買い取り価格に客観性を持たせようとした点だ。価格は枠組みに参加する投資家が入札などで決める。不良資産には公の価格がない。納税者の負担を抑えるために安く買いたい政府と、高く売りたい金融機関側とが折り合わない恐れがあるため、透明性を高めて双方が納税者や株主に説明しやすくした。
 第2に、投資家の参加を促すために、当局が融資や融資保証を基金に提供する点だ。投資家は少ない資金で大規模な投資ができ、資産が高く売れたときの利益率は大きくなる。凍り付いた民間マネーが動き出すきっかけとするねらいもある。

 今一つピンとこない。第一では、価格の客観性や透明性というより、オークションを通して価格を決める、市場に任せる、という仕組みではないかと思う。第二では、レバレッジを掛けるための資金をFRBが出しますよということだと理解しているのだが、ようするに手元の持ち金のない人でも、公的機関というか日本でいったら日銀がカネ貸すから、ちょっくらヘッジファンドやってみないかね、そこのお兄さん、みたいなことでは。っていうか、国家がヘッジファンドに加わるのかよ的なことなんじゃないか。
 当のガイトナー案だが、預金保険機構のサイトにある「米国の官民共同出資によるLegacy資産の買取りについて」(参照)が米財務省公表文に拠っているので正確といえば正確のようだ。

月23日に米財務省は、官民共同出資によるLegacy資産買取りプログラムを公表した。当該プログラムは、Legacy Loans ProgramとLegacy Securities Programの二つからなる。この二つのプログラムに対して、昨年10月施行の緊急経済安定化法TARPより750億ドル~1,000億ドルの拠出が見込まれており、5,000億ドルのlegacy assets の購入が可能と見込まれている。また、Legacy Loans Programにおけるファンドの資金調達に対しては、FDIC(連邦預金保険公社)の保証が付されることになった。

 「Legacy資産」って何?とか思うけど、ようするに不良資産のことのようだ。Newsweek”Man Up, Capitalists! - Will Geithner's Bank Rescue Plan Work?”(参照)だとこんな感じ。

The Treasury acknowledges that private investors will be subsidized to take on the ownership of what it's calling "legacy loans" and "legacy securities." (If these horrific securities are legacy loans, then the funeral industry should reclassify corpses as "legacy bodies.")

財務省は、民間投資家が「レガシーローン」と「レガシー証券」を呼ばれるものの購入助成を認めている。ところでもし、この恐るべき証券がレガシーローンだというなら、葬儀業界は遺体のことをレガシーボディーと分類しなおすべきだろう。


 ガイトナー案だが、これはPublic-Private Investment Programということで、PPIPと呼ばれているもので、Legacy Loans Program(LLP)とLegacy Securities Program(LSP)に分かれる。どちらも、PPIF(Public-Private Investment Fund)が使われることになるようだ。
 仕組みとしては、先のNewsweek記事でも次の事例が引用されている。

The Treasury cites as an example a loan valued by a bank at $100 that is sold for $84. In that instance, the private investor and the government would each put in $6, and the investor would borrow the other $72 from the government. If you're keeping score at home, it means the private investor would put in 7 percent of the cash but would receive a much higher percentage of the profits.

財務省では、銀行が100ドル貸し付けたローンが84ドルで売り出されている例を挙げている。これを買う場合、民間投資家と(TARP:緊急経済安定化法によって)政府が6ドルずつ出す。(これで12ドルだから、72ドル足りない)そして民間投資家のほうは、(返済責任なしの)72ドルを政府(FDIC:連邦預金保険公社)から借りる。民間投資家がこれを帳簿に載せて保有すると、(元手6ドルだから全体の)7%の現金投資となるけど、資産としては帳簿上はそれ以上の利益になる。


 自分なりの理解を補足をしたのだけど、いま一つわかりづらい。1兆ドルがTARPを指しているなら、このプログラムではFDICからよりカネが出せるということはないのか? 
 それと、買い取った資産だけど、実際には毒物だった場合、つまり、84ドルなんて価格は全然ねーよという場合、最終的には民間投資家が売却するわけだけど、FDICのカネは踏み倒せるからリスクがねーよという話なんだろう。
 そんなうまい話はねーよな、というか、元来は本来の意味でバッドバンク的に買い取るからそれでもいいのだろうけど。ちなみに、ファンド12ドルに対してFDICの72ドルは6倍のレバレッジだが、そこが限界らしい。
 ところでなんでこんなプログラムにするかというと、日経社説にあったように、価格に市場機能を働かせるためだろう。あと折半は所有権の問題で、見かけ上、国家にしないためだろう。
 うまくいくのか? 諸議論がありそうだ。別エントリを起こして触れるかもしれない。
 ところで話が込み入るが、これって「バッドバンク」なんだろうかの蒸し返し。
 3月14日のNewsweek”A Plan that Obama Can Bank On”(参照)で気になっていたのだった。こちらは日本版ニューズウィークに邦訳があるので、それを引用する。

2月に発表された金融安定化策は漠然としすぎていた。ティモシー・ガイトナー財務長官は近く新たな案を発表するという。その前に、考えられる選択肢を検討してみよう。
 今の銀行危機に取り組むうえで選択肢は四つある。うち二つはうまくいきそうにない。

 うまくいかない二つは、「市場に任せる」と「国有化する」。残りの二つだが。

 第三の選択肢は官民共同ファンド(PPIF)。公的資金を使って不良債権を買い取る「受け皿」になるため、米連邦預金保険公社(FDIC)のシーラ・ベアー総裁は「受け皿銀行」計画と呼ぶ。ガイトナーの話によると、最大1兆ドルの不良債権を買い取る。
 第四の選択肢は「グッドバンク・バッドバンク」構想だ。政府が不良資産買い取り専門銀行を設立して、銀行の不良資産を完全に切り離す。この案はベン・バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長が大筋で支持している。
 バッドバンクという名前は縁起が悪いので、「暫定銀行」プランあるいはホームズ案と呼びたい。

 ということで、その後蓋をあけたガイトナー案だが、第三案PPIFを含むものなので、第四案のバッドバンクとは違うのではないか、と。それとも、第四案のホームズ案もPPIPに含まれているのか。
 第三案でも広義にバッドバンクと言えるのかもしれないが、フィナンシャルタイムズ”Double or quits in Washington”(参照)も、ワシントンポスト”Mr. Geithner's Plan”(参照)も、ニューヨークタイムズ”The Bank Rescue”(参照)も、「バッドバンク」はキーワードにはなってないようだが。むしろ、 エコノミスト”Second time lucky - Fixing America's banks”(参照)ではむしろこう述べている。

He rejected both the standard “bad bank” model, in which the government takes on rotten assets, and takes over the banks most riddled with them; and the asset-insurance approach favoured by Britain, in which the state takes on the risk of a credit portfolio for a fee.

 とはいえ、FOXニュース"'Bad Bank' Buying Binge: Dow Soars 497"(参照)などでは「バッドバンク」と言っているからそれはそれでいいのかもしれないが。

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2009.03.27

簡単リエット

 たまには食い物の話でも。何かな。と、リエットを食いながら思った。あ、リエット。
 リエットは、お肉のペースト。バターみたいにパンに塗って食べるハムみたいなもの。「ああ、あれか」と思う人がいたら、そうあれです。なんだろとレバーペーストを思い描く人がいたら、あんなにべとぉっとしたものではありません。いや、ものによってはべとぉっとしているか。いきなり余談だけど、デビルド・ハムっていうハムを悪魔風に潰したものがあるけど、あれとは違うというか、全然違う。
 ググってみると、日経トレンディネット「バゲットに合うリエット」(参照)という記事があり、作り方まで載っている。ほいじゃ、私がくだらんゴミ情報を書く必要はないじゃん……とも思わないのがエントリの趣旨なのはあとで説明しますね。
 先の記事を読むと。


前回から引き続き豚バラ肉のレシピ、フレンチのビストロなどではポピュラーな“リエット”をご紹介します。“プティサレ”同様、これも保存食で、500年ほど前からフランスのトゥーレーヌ地方で親しまれてきた郷土料理です。本場のものはラードなどを足して煮るため、こってりと脂を含んでいますが、僕はあまり脂が好きじゃないのでサッパリと仕上げました。なのでバターの代わりに、というカンジではありませんが、バゲットに塗って食べるととても美味しいペーストです。

 そういうものだそうです。
 作り方も丁寧に書かれていて。

豚バラ(ブロック)とタマネギを2cm角にカットします。深めの鍋にオイルをすこし入れ、タマネギ、ローリエ、タイムを炒めて香りを引き出します。つぎにバラ肉を入れ、「肉じゃが」をつくるような感じで軽く炒めます。ここはわりとテキトーでかまいません。なじんだところで水と白ワインを入れ(分量は“ひたひた”で)塩をします。

 さらに説明は続く……はあ、めんどくさ。
cover
フランスの常備菜
前菜、主菜、デザートの
手軽な作りおきレシピ
 いや、そうやってきちんと作るとよいと思いますよ。好きな料理本「フランスの常備菜 ― 前菜、主菜、デザートの手軽な作りおきレシピ(大森由紀子)」(参照)でも、基本はそんな感じ。
 こちらの本では、さらに書名通り常備菜的な使い方として、パスタのソースにした例を挙げているけど、あれですね、ツナ缶の要領で使える……というか、今思いついたけどツナ缶のフレークと似たようなものです、リエット。っていうか、ツナ缶でもリエットと言っていいはず。同書には、サーモンのリエットも載っているし。
 さて、私のリエットの作り方。
 とても簡単です。難しいことできないし。ちなみにさっき食ったリエットは鶏です。豚肉でも別にかまわない。英語のウィキペディア”Rillettes”(参照)より。

Rillettes are also made with other meats, goose, duck, chicken, game birds, rabbit and sometimes with fish such as anchovies, tuna or salmon.

 鶏でもよい、と。
 私の作り方だけど、ローストチキンの余りをスロークッカーの強で6時間煮込むだけ。ただの水煮。ローストチキンの余りというか、ある程度多めに作ってリエットにするというか。
 煮込むときに入れるのは、ホールクローブを2つくらい。ローリエや胡椒を入れてもいいと思う。白ワインとかタマネギとかは入れないです。入れてもいいのだろうけど。
 豚で作るときも別段作り方は変わらない。ローストポークの余りを同様に水煮するだけ。水は肉が被るくらい。6時間も煮るので鍋の蓋に穴があると水が上がるので、穴のない蓋がよいと思う。
 で、6時間後、というか、朝が来る。
 水煮の水を別の容器に取っておく(捨ててもいいけど)。柔らかく煮えた肉の塊はボールに移して、スプーンの背で、へにょっ!へにょっ!と潰す。簡単に潰せますよ。このとき、塩やスパイスで調味する。塩とスパイスが最初から入っているグラインダー付きチキンスパイスで調味するともっと簡単。
 あまりばさばさとした感じなら、水煮の水を加える。脂気が足りないなら油を足す。ラードとかオリーブオイルとか。
 これでできあがり。

Rillettes

 普通は塩味を強くして油も多めにして常備菜らしくするけど、私の簡単リエットは数日で食って終わりだから、あっさり仕立て。
 つうわけで、スロークッカーがないとできないよ、そんなもの、と言われるとそうだけど、スロークッカーがあれば、別段、料理のうちにも入らないくらい簡単にできますよ。

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2009.03.25

多分、小沢、投了

 昨日の民主党小沢代議士の、大久保公設秘書の起訴はすでに書いたとおりの想定以上はなかった。そしてそれは同時に、政治資金規正法違反以上のものではなかった。何か、今回の特徴でもある異例づくめから、またまた異例の展開でもあるかと思ったが、なかった。
 夜になって党首でもある小沢の会見があり、一世一代の言葉でも聞けるものかと期待していたが、拍子抜けするほど特にどうというものはなかった。が、小沢が涙ぐんでいたのは、え?と思った。話を聞くに、民主党や支持者の声援に寄り立つという人情話ではあるのだが、私が見てきた小沢さんは、いつでもリーダーな人なので、人の見えるところでこういう情の折れ方はしない人だった、と思う。そこだけが違和感だった。ああ、越すに越されぬ田原坂か、とは思ったが、その一点にもやっとした思いが残った。
 理由は今朝になってわかった。というか、自分なりの思い込みの早飲み込みではあるかもしれないが、NHK「小沢代表秘書 虚偽記載認める」(参照)のように、大久保公設秘書が自白していたのだろう。この事件、検察から報道へのリークのスキームでは、大久保被告の認識の有無が問われているように見えていて、元検事の郷原教授が指摘するような、献金団体の実体性は意図的なほどぼかされている。


大久保秘書は、逮捕後、東京地検特捜部の調べに対し、「西松建設からの献金とは認識していなかった」と不正を否定していましたが、関係者によりますと、最近になって「献金は、西松建設からだと認識していた」と、うその記載を認める供述をしているということです。

 ああ自白か。またこれかと嘆息してから、気がついたのだが、これはおそらく自白ではなく、大久保被告なりが事実確認の説明をしているうちに、検察のスキームに見事に嵌ったということだろう。いや、嵌められたという詐欺まがいのことではなく、こうすれば政治資金規正法違反として裁判に勝てるという検察側の穴埋めパズルみたいのがあって、そこに大久保証言を嵌めていくと一丁上がりというものだろう。それがどういうものかは、昨日読売新聞「「納得いかぬ」と小沢代表、検察は事件の悪質性を強調」(参照)で佐久間達哉・特捜部長が言うように、今は言えないということだろう。

 報道陣の質問に応じた佐久間達哉・特捜部長は、西松建設の政治団体を大久保容疑者がダミーと認識していたとする根拠などについて、「今は言えない。我々の責任は、裁判できっちり説明すること」と明言を避けた。

 つまり、これは、ライブドア・村上ファンドの時のしょっ引きと同じで、ご本人たちはナイーブにぺらぺらしていたところで、突然、カチっと穴埋めパズルに嵌ったということだろう。
 どういう穴埋めパズルになっているのかは、私にはよくわからない。だから、それがどう反証されうるのかもわからない。ただ、大筋では、多分、小沢、投了、ということだろう。
 今回のドタバタでは、当初は実際のところ、巨悪小沢を正義の検察が仕留めるという筋書きだった。政治資金規正法違反はどちらかというと最初に見せたけど、とば口であり、それは巨悪の最後のワンピースになるはずだった。今朝あたりの大手紙の社説は、政治資金規正法違反は微罪ではないと検察様の顔色をうかがって言っているが、それをやるなら焼畑農業になってしまう。一例だが、九州企業特報記事「東京地検、小沢代表の秘書を起訴 ほかの政治家はどうなった」(参照)の指摘のように見えてしまう。

 政治資金規正法のみの事件であり、小沢氏側だけが立件されるのなら、やはり今回の捜査は悪い意味での「国策」というべきだろう。

 国策などというものは日本にはないが、私を含めて検察暴走と見る人も少なくなく、先の郷原教授もまるで、古巣との掛け合い漫才のように間合いよく、昨日朝、起訴前に、検察の異例の説明会を事実上のアナウンスしていた。「小沢代表秘書刑事処分、注目すべき検察の説明(日経ビジネスオンライン)」(参照・要登録)より。

 一般的には、検察は捜査処理について説明責任を負うことはない。起訴した事件については、公判で主張立証を行い、その評価は裁判所の判決に委ねられる。また、不起訴にした事件について不服があれば検察審査会への申し立てという手段が用意されている。
 今回の事件について検察の説明責任が問題になっているのは、政治資金規正法という運用の方法いかんでは重大な政治的影響を及ぼす法令の罰則の適用に関して、不公正な捜査、偏頗な捜査が行われた疑念が生じており、同法についての検察の基本的な運用方針が、同法の基本理念に反するものではないかという疑いが生じているからだ。
 検察は、そのことの重大さ、深刻さを認識し、誠実に、真摯に説明責任を果たすべきだ。その説明が国民に納得できるだけのものでない場合には、不公正で偏頗な捜査が行われた疑いが一層顕在化することになる。検察は、その責任を正面から受け止めなければならない。

 実際、検察は異例の説明会を行った。NHKニュース「地検 秘書起訴で異例の説明」(参照)より。

 東京地方検察庁は、大久保秘書の起訴について「収支報告書に虚偽を記載して政治資金の実態を偽ることは、国民を欺き、政治的判断をゆがめるものにほかならない」と異例の説明をしました。
 この中で、東京地方検察庁の谷川恒太次席検事は「政治資金規正法は政治資金をめぐる癒着や政治的腐敗を防止するため、収支の公開を通じて政治と金の問題を国民の不断の監視と批判の下に置くことを目的にしている。議会制民主主義の根幹を成すべき法律であり、その中心である収支報告書に虚偽を記載して政治資金の実態を偽ることは、国民を欺きその政治的判断をゆがめるものにほかならない。今回の事件は、ダミー団体の名義を利用する巧妙な方法により、国会議員の政治団体が特定の建設業者から長年にわたって多額の寄付を受けてきた事実を隠したものだ。犯行の動機、犯行の経緯、被告の果たした具体的な役割については、裁判で具体的に明らかにする。今回の事件は、国会議員の政治団体が特定の建設業者から長年にわたり多額の金銭の提供を受けてきたという事実を国民の目から覆い隠したもので、政治資金規正法の趣旨に照らして看過しえない重大・悪質な事案と判断した」と異例の説明をしました。

 異例である理由を、あっさり言ってしまえば、「不公正で偏頗な捜査が行われた疑い」を検察としても妥当なものだと受けいれざるをえなかったことになる。
 そしてこの異例の説明を聞くに、これはそれほど、理の通ったことではない。なぜ、大久保秘書を狙い撃ちしたのかといえば、的は小沢議員であり、「政治資金規正法の趣旨に照らして」やったわけだ。法の趣旨の正義の御旗で、ええいやっちゃえと。実際の個々の法の規定で行ったわけではないから、当然その後の展開はガダルカナル戦になっていった。
 検察様による法の趣旨が狙ったのは、「今回の事件は、ダミー団体の名義を利用する巧妙な方法により、国会議員の政治団体が特定の建設業者から長年にわたって多額の寄付を受けてきた事実を隠したものだ。」ということで、つまり、先にふれたように、政治資金規正法違反はこの壮大な絵の最後のワンピースとなるものだった。
 が、それは失敗したと見ていいだろう。理由は、時事「「認識の違い」「確信犯」=小沢氏側と検察、法廷で全面対決へ」(参照)が暗示するように、法の観点からは無理スジだった。郷原教授も指摘していたが時効の壁は大きかった。

 その後も政権交代への意欲を強調し、「(政治資金)収支報告書の処理の認識の違いだ」と繰り返した。小沢氏の法律顧問やかつての秘書が弁護団に加わり、起訴まで一貫して否認した大久保秘書を支えており、小沢氏の意向に従って法廷闘争が展開されそうだ。
 検察側は「証拠がなければ逮捕しない。架空の政治団体を使った巧妙な手口で、時効の関係から立件した不正献金額はその一部」と強調した。大久保秘書から西松建設に送られたとされる陸山会名義の「請求書」や、同秘書と献金額などを直接交渉したとする同社関係者の証言を立証の軸に据える見通しだ。

 検察のガサ入れショーは不発におわり、当初から小沢も知っての上の、陸山会名義の「請求書」くらいしかブツはなかった。そしてあとはすべて、西松側のゲロだけで、つまりは、大久保秘書側からの認識はなかったということになる。いや、今となれば、なかったわけでもないだろうが。
 もう少し検察ドジをわかりやすく説明しているのが、毎度の産経新聞の記事「【西松献金】今後の捜査はどうなる 政界ルート追及は継続」(参照)だ。検察側の本スジだった、談合と斡旋利得のボケをきちんと挙げている。

 小沢氏側が関与したとされる公共工事での受注調整は平成17年末、ゼネコン各社が行った「談合決別宣言」の前後までだったとされ、刑法の談合罪は時効とみられるが、その後も小沢氏が代表の政党支部には建設業者からの企業献金が続いており、小沢氏側が工事受注への便宜を続けていれば談合罪に問われる可能性がある。

 冗談書いているみたいだが産経としてはそうでもないのかもしれない。が、談合時効後も「小沢氏側が工事受注への便宜を続け」という条件は普通に考えればありえないだろう。

国の出先機関や自治体への働きかけがなかったかについても慎重に捜査を進め、あっせん利得処罰法などに抵触する事実の有無も調べるとみられる。

 権限のない野党にそれができるかも普通に考えれば無理だろうし、ここにも時効はあるだろう。
 まあしかし、検察を腐して失墜させればよいというわけもなく、失態は失態としてこのあたりで引いておくのが検察のためにもよいだろうと思う。私は、このラインの撤退は良識あるじゃんか、検察……OBはと思う。
 小沢側は、終わっただろう。公判は選挙後になるだろうが、今回の大久保自白的なリークは続くだろうし、その大手紙の表明は今朝の社説でわかる。
 というか、目下の日本の状況はこんな問題が争点になるべきでもない。もう少し言えば、小沢は大連立の失敗の際に、民主党では総選挙に勝てないとはっきりと認識していた。民主党の現在の戦いこそ、大きな無理スジだろう。日本に議会制民主主義が実現するのは、まだまだ遠い日のことになる。私が死ぬまでには見たいものだとは思うけど。
 今回のドタバタで、ジャーナリズム的に面白かったのは、昨日の大久保秘書起訴までに小沢代議士への聴取がないというニュースの伝搬だった。共同、時事、日経、毎日はきちんと報道したが、朝日、読売、産経、NHKはバックれたようだった。産経のバックレは、乱発したリーク記事の整合からしかたないとはいえ、読売もだいぶ日和っていたのだろうなと思った。もともと大連立で小沢を立てようとした、ある意味で微妙な小沢シンパでもあっただろう。
 朝日は23日のどん詰まりを確認して流した。朝日内部では、小沢に聴取が及ばないということに確信が持てない、別系のリークとそれにぶら下がる一派があったのだろう。この間、朝日新聞の本体外のリソースからはいろいろ傾聴すべき意見が見られたが朝日新聞本体からはなかったように思う。朝日新聞も変わったな。NHKのバックレ方はそれなりに見事なものだった。NHKがあれば大手紙や通信社は要らないと思っていたが、やばいな。
 きれい事になるが、お上のリークの経路に依存しないジャーナリズムっていのはないものかとは思う。鳩山総務相の元秘書さん? はあ。


追記
 大久保被告が違法献金を認めたというNHKや朝日新聞等の報道について、弁護士からのコメントが出た。「小沢氏秘書の弁護人、報道機関へのコメント公表」(参照)より。


 準大手ゼネコン「西松建設」から民主党の小沢代表の資金管理団体「陸山会」への違法献金事件で、小沢代表の公設第1秘書と陸山会の会計責任者を兼ねる大久保隆規(たかのり)被告(47)=政治資金規正法違反(虚偽記載など)の罪で起訴=の弁護人が27日、報道機関に対するコメントを公表した。コメント全文は以下の通り。
 「大久保隆規氏の起訴後、新聞、テレビ等において、同氏が政治資金規正法違反に係る起訴事実について、その大筋を認めている等の報道がなされているところですが、同氏の弁護人らの認識は全く異なっております。この点について、検察庁が前記の報道内容に沿った事実を公表することなどあり得ないことから、誤解に基づく報道ではないかと考えております。公判に向けて予断を排除するためにも、今後は、十分な取材に基づき、客観的かつ公正な報道を行っていただきますよう申し入れます」

 弁護人からの認識としてはそうだろうと思う。ただ、このエントリで書いた私の認識は検察側の絵なので、この問題への考えは変わらない。ただ、NHKを含めてマスコミのこの関連の報道はフェアではないという印象はさらに深くなった。

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2009.03.23

2009年度、世界の独裁者トップ10

 パンパカパーン♪ 今週のハイライト! 米国メディアが選ぶ、2009年度世界の独裁者、トップ10。では、第10位から。

第10位 ムアマル・カダフィ大佐(66)
 何時まで経っても日本では「カダフィ大佐」と呼ばれるムアンマル・ムハンマド・アル=カッザーフィーさん。ナセル元エジプト大統領の説く「アラブ民族主義」に共鳴し、「大佐」自称もナセルの顰みに倣ってのこと。
 1969年に国王を追放し、軍事政権を樹立。米国レーガン時代は、中東の狂犬と呼ばれ、西側諸国は悪の権化のレッテルを貼りつけ攻撃に次ぐ攻撃、どっちがテロリストやねんと話題となったものだが、時代は代わり、子ブッシュ政権の成果で国交正常化。2003年には核兵器を含む大量破壊兵器開発計画も放棄し、すっかり良い人……世界の他の独裁者さんもコローネルのようになれよと模範を示すも、昨年は惜しくも10位内から脱落。今回辛うじてのランクイン。

第9位 グルバングリ・ベルドイムハメドフ大統領(51)
 誰? トルクメニスタンの大統領。トルクメニスタンってどこ? 中央アジア。で、ベルドイムハメドフ大統領ってどんな人。独裁者……ああ、話がわからん。
 トルクメニスタン、アシガバート州出身。1957年生まれ。あ、俺と同い年だ、チャオ。
 1979年にトルクメン共和国の医科大学を卒業して歯科医師となる。開業はぜず病院に勤務、旧ソ連だし。
 2006年、独裁者と言われた前大統領サパルムラト・ニヤゾフ氏急死の後、副首相から大統領代行を経て大統領兼独裁者となる。
 医者の資格はあるがドクサ医者ではない。いまだ医療には関心があるようだ。

第8位 イサヤス・アフェウェルキ大統領(63)
 誰? エリトリアの大統領。エリトリアといえばあれ、虫歯にならない甘味料……違う。アフリカの国だ。
 1946年、現エリトリア州都アスマラで、エチオピア統治下の政府職員の息子として生まれるも、20歳で独立運動に参加。急進左翼ゲリラとして、エリトリア解放戦線(ELF)に参加し、その分派エリトリア人民解放戦線創始者の一人となる。さらにこの後継となる民主正義人民戦線(PFDJ)書記長となり、1993年の独立後、初代大統領となる。
 あー、何か悪いことしているの? ジャーナリスト弾圧? まあ、それはするでしょ。

第7位 アリー・ホセイン・ハメネイ師(69)
 イランの最高指導者。イランといえばブッシュ政権下ではなにかといろいろ米国と対立していたのだから、昨年同様第7位は頷けるところ……か?
 イランの実権はハメネイ師にあると言っていい。イラン革命の時代を見てきた年代にはいろんな思いはあるけれど、地味な民主化を期待して、ま、次行ってみよう。

第6位 胡錦濤国家主席(66)
 惜しい。昨年より1ランクダウン。チベット弾圧・ウィグル弾圧でお馴染みの中国政府なので、その権力者はもっと独裁力がアップしているかと思いきや、意外にぼちぼちでんなということろ。
 胡錦濤さんの経歴に輝くチベット弾圧をもってようやくこのランク。微妙。

第5位 アブドラ・ビン・アブドル・アジズ国王(85)
 言わずと知れたサウジアラビアの国王。全世界がそのご長寿を固唾を呑んで見守もっております。そりゃ、もう。
 初アブドルアジズ代国王の第11子。ちなみに息子全員集合だと37人。異母弟でもある、ファハド国王の2005年死去に伴い第6代国王となるが、前王は1995年に脳卒中に倒れており、それ以来実質国家実権を握っていた。いろいろあったよね。
 昨年第4位からワンランク落ち。納得できる面もあるし、ちょっと厳しい評価と言えないこともない。ごちゃごちゃ。

第4位 タン・シュエ議長(76)
 ミャンマー軍事政権の最高指導者。2008年サイクロン被害で死亡・行方不明者14万人、被災者200万人を出すも国際救援を拒んで非難囂々。他、何かと独裁の名に恥じないアジアの独裁者。ちょっと最近話題に欠けるのか、昨年からワンランク落ち。

第3位 金正日総書記(67)
 お馴染み金さんは堂々の第3位、と言いたいところだけど、昨年は第1位だったので、ツーランクダウン。やっぱ、あれだ。独裁者であるには健康に問題が。というか、それ以前に生存していないとね……ああ、生存しています、いますってば、元気です。チャオ。あとで隣国にドカンと祝砲を送りますからね。
 最近のまるで本当に別人のように痩せたお姿は、アジア的独裁者ならではのワビサビを漂わせつつ、次なる王朝の行方は何処の関心をかき立ています。では、また次回。

第2位 オマル・アル・バシール大統領(65)
 国際的犯罪者にして、日本もお尋ね者にしましたよのスーダン大統領。ご本人はそれほど悪い人じゃないんですけどねの声も聞かれるせいか、いまいち日本では人気が盛り上がっていない。
 現代のホロコーストと呼ばれることもあるダルフール危機もやはり人気がありませんねえ、なぜなんでしょうか。ジンケンだかスフだかの日本国のジャーナリズムといったところでしょうか。
 いえいえ、そんなことはありません。視点・論点「国際刑事裁判所 スーダン バシル大統領に逮捕状」(参照)の国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ東京ディレクター土井香苗さんは厳しい。


国際刑事裁判所は、独自の警察組織を持ちません。よって、自らバシル大統領を逮捕することはできません。しかし、国連安全保障理事会決議1593により、スーダン政府は、国際刑事裁判所に協力することが義務付けられています。また、日本を含めた国際刑事裁判所の締約国は、国際刑事裁判所の判断に応え、バシル大統領を逮捕する義務を負っています。


日本政府は、逮捕状の発行が発表された3月4日、外務報道官 談話を発表し、国際刑事裁判所の独立性とその決定を尊重する、と明らかにしました。そして、「ダルフールにおける『和平』と『正義』を両立させる道を国際社会が一致して・・・探っていくことが必要である」と、決意を示しました。

しかし、日本は、安保理での態度を明らかにしていません。国際刑事裁判所の手続の延期が提案がされた場合、反対するか賛成するかを明らかにしないあいまいな態度に終始しているのです。とても残念です。

国際刑事裁判所を尊重するとした談話の路線をしっかりと堅持し、世界に対し、「日本政府は、国際刑事裁判所に対する政治介入には反対する。私たちは、人権を蹂躙された被害者たちとともにあり、脅迫には屈しない」と、しっかり声をあげていくべきではないでしょうか。


 だと思うのですけどね。

第1位 ロバート・ガブリエル・ムガベ大統領(85)
 ジンバブエ大統領にして、現代経済学に挑戦と爆笑を投げかける男……というだけではなくて、すでに事実上国家は崩壊に向い、国民は悲惨な状態。14日毎日新聞記事「コレラ8万人感染のジンバブエ「予防教育が必要」」(参照)より。


コレラの被害が深刻化しているアフリカ南部ジンバブエ。世界保健機関(WHO)の集計では、昨年8月の発生以来、2月27日時点で死者3933人、感染者8万4818人を数える。

 酷い事態。だけど、なかなかこれも実際にはどうにもならないに等しい状態。独裁者金メダルの輝きが眩しすぎる。

 以上、今年の世界の独裁者トップ10。元ネタは「パレード・マガジン」の「The World Worst Dictators」(参照)でした。

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2009.03.22

どうして英語では、"I like a cat."って言えないのだろうか?

 このところ鬱陶しい話ばっかだったので、ここらでボケ話。いや、まじボケなんでそこんところよろしく。で、何か? どうして英語では、"I like a cat."って言えないのだろうか? である。何故?
 いや、"I like a cat."って言えるんじゃないの? 文法的にも間違っていないはずだし……うーん、そうなのか。じゃ、意味は? 「私は猫が好き」……そうか? いや、それなら、"I like cats."だよね。なんで、"I like a cat."じゃだめなのか。不定冠詞の総称的な用法っていうのがあったんじゃなかったっけ。
 逆に、表面的には文法的に"I like a cat."は間違いじゃないというなら、それってどんな意味があるのだろうか? 「私は猫が好き」に近い意味はあるだろうけど、その不定冠詞の意味合いはなんだろか? 「私は猫ならなんでも好き」かな。語感的には、「私には猫というのものが好きで、好きな猫もいるんだけどぉ……」みたいな感じはする、というか、a catを修飾する部分がぼけている含みというか。"I like a white cat."みたいな……うーむ。"I like a cat in my arms."だと、たぶん問題ないだろう。
 ぐぐると変な話があった。「洋書と英語の日々」というサイトで「「英文法の謎を解く」副島隆彦(著)」(参照)の孫引きだが、「英文法の謎を解く (ちくま新書:副島隆彦)」の初版ではこう書いてあるらしい。


たとえば、「私は、猫が好きです」は、

I like a cat.

である。


 はぁ。
 で、「完結・英文法の謎を解く (ちくま新書:副島隆彦)」では訂正されているとのこと。

I like a cat. の誤文を訂正する
私が前書『英文法の謎を解く』の 101 ページで挙げた、例文の I like a cat. 「私は猫が好き」は間違いである。英文としては誤文であった。私は自分が書いた文をはっきりと誤文と認めなければならない。

 副島先生は潔いんですよ。だからきっと……それはまあ別の話として。

私の前作の × I like a cat. の誤りは、既に、コソコソと I like cats. に訂正させていただいているので、ご指摘いただいた3人の読者には感謝申し上げる。それにしても、この「させていただく」とか「ご指摘いただいた」という日本語は何とかならないものだろうか。言語自体が卑屈でどうしようもない。「誤りを指摘されたので、訂正した」と書いて、これが少しもおかしくないような国に日本も早くなるべきだ。

 なので、"I like a cat."は、誤りらしいのだけど、つまり、英語だと、そう言えないってことか。
 余談だけど。

「私に、ジュースを下さい」は英語でなんと言うでしょう。
(略)

自然な英語の表現として最もよいのは、
Juice, please.
である。



Juice, please. の'......, please' という一語を自然に言えるようになるのは、奇妙きわまりない日本式の英語勉強を10年やらされたのち、アメリカや英語圏の国々で1年ぐらい暮らしてからだろう。そのころにようやく、初めて、この'......, please.' 「○○○、プリーズ」という言い方をレストランや喫茶店で気軽に言えるようになるのである。私自身がそうだったから。

 そうかなぁ。違う気がするが、まあ、いいや。
 話を戻して。
 ぐぐるとYahoo!知恵袋にズバリこういうのもあった。「『私は猫が好きだ。』という文を英文にするとき『I like a cat』じゃダメですか?」(参照)。

『私は猫が好きだ。』という文を英文にするとき『I like a cat』じゃダメですか?
参考書の答えは『I like cats』になっています。
『I like cats』だと『私は猫達が好きです。』って文章になるんじゃないでしょうか?

 ベストアンサーが含蓄深い。

日本語は複数形を使わない場合が多いので、「猫が好き」といいますが、「猫が好き」の“猫”は色んな猫をひっくるめた
猫なので、catsになるんです。

「私は猫が好きです」には「私は猫達が好きです」という意味も含んでいるということです。


 さて。そうか?
 たとえば、「私は猫が好き」というとき、私の脳裏に猫たちはいるだろうか? 「私は鳥が好き」というとき、鳥が複数想起されているか。してないような気がするんだが。もうちょっというと、不定冠詞的な感覚も複数感覚もないような。
 他の回答も……興味深い……かな。

ちなみにコーヒーは複数形にsがつかないので、「I like coffee.」と言えます。
「1杯の」と言いたい場合は、「I like a coffee.」ではなく、「I like a cup of coffee.」となります。
が、「1杯のコーヒーが好き」というのは意味的におかしいので、文法的にあっていても文章問題としては間違いになります。

 いや、これだけど、"I like a coffee."はいいんじゃないかな。
 実際のコーパスはどうなんだろと、べたに、"I like a cat."をぐぐると、こんなものが出てくる。

If i like a cat i had and we put it in for adoption should i think about her or not?

 これは言えそうだ。仮定だからなのか、I hadで限定されているからなのか。
 他には、と、あ、言えてるコーパスがある(参照)。

Suddenly Flossie called to her little brother;

"Oh, look! There's a cat! It's just like our Snoop!"

Freddie looked to where Flossie pointed with her chubby finger.

"No, that isn't like our Snoop," said the little boy, shaking his head.

"Yes, 'tis too!" declared his sister. "I'm going to get down and look at it. I like a cat, and I didn't see one close by for a long time."


 どうも言えているようだ。状況がわかるようでわからないような。
 まあ、別段、猫に限らないわけで、"I like a dog."も同じことになるというか、先日、「新感覚☆わかる使える英文法」(参照)を見ていたら、"I like a dog."ってどんな感じですかと田中先生がダリオ戸田に聞くと、たしか、「食べ物って感じですね」と言っていた。あれは、"I like dog."だったか。え?とちょっと思った。
 dogがたぶん、Hot dogを略した感じになるからではないかと思うが、つまり、"I like chicken"のような感じなのだろう。"I like a chicken."として不定冠詞があっても、さっきのa coffeeみたいにいいんじゃないか。
 というか、これは定冠詞の問題というより、likeの問題か。"I held a cat."なら特に違和感はなさそうだが。
 あるいは……。たとえば、猫を抱いて「a cat」と指さすことはできそうだ。が、そのとき、"I like a cat."とは言えそうにない感じはする。会話された時点で、聴者に既知情報になるから、"I like the cat."にしかなりえないのでは。というか、仮定で"If I like the cat"が言えそうなのはそういう情報の既知・未知による限定性なのか。つまり、"I like a cat."とが変な感じがするかどうかは、その発話の状況の情報性によるのか? うーむ。
cover
文法がわかれば英語はわかる!
(NHK新感覚・わかる使える英文法)
田中 茂範
 結論は特にないのだが、これって、つまり、"I like a cat."って、英語的に正しいというより、そう言ったとき、それってどんな意味の感覚があるのか、よくわからん、ということか。

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