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2009.12.10

ドバイショックって結局、何?

 人類は滅亡する。確実に滅亡する。私は冗談で言っているのではない。本当だ。幸い、2012年のことではない。もう少し先。宇宙の時間からすればわずかなひととき。1億年は保たないのではないかと思う。いずれ60億年ほどで太陽は膨張し赤色巨星となり、地球の公転軌道が大きく外側に逸れ、地球は生物の生存に適さない極寒の星になる。人類は滅亡している。あれだけ地球温暖化阻止にがんばったのにな。残念。
 で、この前振りの教訓は何か?
 不吉な予言は、いつかは当たるということだ。
 世界経済の破綻など根気よく10年も唱えていれば、チャンスはやって来る。不吉な予言者に必要なのは、ちょっとした不幸の予兆におっちょこちょいな馬鹿騒ぎをしない忍耐力だ。
 今月の文藝春秋「「ユニクロ型デフレ」で日本は沈む」の浜矩子同志社大教授の発言を読んで、そんなことを連想した。


 こうして議論している間にも、今度はアラブ首長国連邦の一角、ドバイ発の信用不安が地球経済を震撼させることになりましたね。デフレ旋風が吹き荒れている中で、いわば最後のバブルの砦となっていた砂漠の大御殿に金融大激震が及んだ格好です。まさに砂上の楼閣が崩れたという感じですね。この間、それこそヒト・モノ・カネのすべてが「ドバイ詣で」モードになっていた。そのドバイが、へたをすれば国家全体として巨大な不要債券化する恐れが出て来ました。そうなれば、打撃を受けた金融機関の経営難でまたカネは回らなくなる。巨大建設プロジェクトのためのモノづくりは行き詰まり、ヒトの働き口も消えてなくなる。
 グローバル時代は連鎖の時代ですから、その影響は立ちどころに世界を巡ることになるでしょう。

 ハズレ。
 不幸の予言は見事に外れた。この予言は、もうちょっと我慢したほうがよかった。1億年も待つことはないけど、世界の識者がこの問題をどう見ているかくらいはざっと見ておくべきだった。例えば、11月27日の時点でフィナンシャルタイムズはドバイを"It's a small financial player.(金融プレヤーとしては小者)"(参照)と割り切っていた。そんな世界の金融規模からすれば世界を揺るがすほどの規模をそもそも持っていないのである。

During the boom, the government of Dubai and its enterprises ran up at least $80bn of debt obligations. This may be a lot of money for a small country, but it pales in comparison to Lehman Brothers’ $613bn of liabilities. Dubai is a big property developer and a heavily indebted government, but a small financial player.

好調期にドバイ政府とその企業は少なくとも800億ドルの負債を重ねた。小国にとっては大金といえるかもしれないが、リーマン・ブラザーズの6130億ドルの負債には見劣りがする。ドバイは不動産開発者であり政府負債が重いとはいえ、金融プレヤーとしては小者なのである。


 そもそも世界経済にリーマンショックのようなインパクトを与えられるような玉ではない。
 が、実際にはインパクトはあるにはあった。フィナンシャルタイムズ記事も記しているが、FTSEは2.3%、日経平均は3.8%、米国債は0.12%、英国債は0.09%低下した。日本でもドバイショックと騒がれて、経済音痴で、浜矩子教授に傾聴する民主党は、ドバイショックを受けて亀井金融相のブラフをごっくんしてしまった。
 じゃあ、影響力はあったんじゃないのか?
 いやその影響力とは何かが問題ということだった。影響力は浜教授が宣わったようなカネの問題ではなく、まさに浜教授のような不吉な予言そのものが問題だった。
 12月3日のニューズウィーク記事「Economic Panic Attack」(参照)がよく解いていた。

So why did the markets stage a mini-meltdown? Chalk it up to muscle memory, an important concept in markets as well as in physiology. Financial behavior is conditioned by prior trauma. Once a lightning bolt strikes, people tend to over-estimate the likelihood of a repeat strike.

ではなぜ市場は小規模なメルトダウンを演じたのか? 筋肉レベルの記憶のせいだ。それは生理学同様に市場でも重要な概念だ。金融の活動はトラウマがあれば影響を受けるものだ。雷に遭えば、人はまたそれに遭遇するのではないかと過剰に反応する傾向を持つ。


 つまり、市場の心理的な問題だった。過剰な不安に浜教授のような不吉な予言が合わさり、メディアも不幸ネタはおいしいこともあって記者が書き散らし、愚かな政治家が踊って、そしてパニックを演出した。
 それだけのことだった。
 もっともそれでギリシャ経済は危機に陥ったということもあるかもしれないが、そのからくりもフィナンシャルタイムズの先の記事にあるように、ざっくりいえば国の運営の問題だった。しいていえば、国がしっかりしてないと小さな心理パニックが社会パニックになりかねないのだが、現下の日本人だと、お前が言うなの話ではある。

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コメント

>亀井財務大臣
!?

投稿: hoge | 2009.12.10 22:51

誤記のご指摘ありがとうございます。修正しました。

投稿: finalvent | 2009.12.11 10:35

ドバイに貸し込んでた銀行、特に英国の銀行にとっては致命傷になるかもしれませんよ

投稿: KAZ | 2009.12.12 08:49

FTは今回の当事者の一部だからね。今回の記事は朝鮮中央通信のニュースキャスターのおばちゃんと同じレベルにしか見えない。

>そもそも世界経済にリーマンショックのようなインパクトを与えられるような玉ではない。

「平時」ならね。今は平時じゃない。今は、リーマンが潰れた後だから、このクラスのデフォルトでも金融機関の屋台骨が揺らぐくらいの破壊力がある。もう二、三、デフォルトが出てくれば、イギリスの金融機関にさらに公的資金の追加が要る。
しかし、さらに公的資金の追加ができるのか?それでなくともUKの格付けがAAAから格下げされかねない状況下で?
だから、FTは今回の件に関しては、中立な報道機関じゃない。自分の首を絞めるような記事を書くようなことはしない。残念ながら朝日とか産経とか同じレベルだ。

投稿: F.Nakajima | 2009.12.12 20:43

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