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2009.12.12

フィナンシャルタイムズは民主党の緊急経済対策をどう見たか

 政権交代のギャンブルを勧めていたフィナンシャルタイムズだが(参照)、今回の民主党の緊急経済対策をどう見ていただろうか。9月時点では、日が浅いこともあり日本人に済まなかったなという感じではなかった(参照)。しかしさすがに今回の、自民党麻生政権ゾンビのような緊急経済対策については、弁解のしようもないのではないか。どう評価していただろうか。8日付けの該当社説「Japan attempts another stimulus(日本は別の財政刺激を試みる)」(参照)を仔細に読むと、笑ちゃっていいのか泣いたほうがいいのか、なかなか微妙な見解だった。
 大筋で今回の緊急経済対策を肯定的にフィナンシャルタイムズは見ているものの、連立政党の亀井金融・郵政改革相に掻き回わされた対応はまずかったとしているようだ。


The \7,200bn fiscal stimulus announced on Tuesday may not be bad economics --- but it will make it harder to fulfil the DPJ’s ambitious manifesto pledges. More than a third of the money comes from restoring the new government’s cuts to stimulus plans the LDP had prepared before leaving office. The DPJ and its partners originally wanted the savings to fund expensive promises such as bigger child credits in the next fiscal year.

8日火曜日に公開された7兆2000億円の景気刺激策は日本経済にとって悪くはないが、民主党の野心的なマニフェスト実現を困難なものにするだろう。総額の三分の一以上は、自民党が下野前に用意した刺激策を新政権で削減して得たはずの金額を復活したものだ。民主党と連立政党は元来この削減分を子供手当など次年度の巨費支出に充てる元金にしたかった。

This turnabout is hardly a technocratic decision. The prime minister, Yukio Hatoyama, has sided with his small coalition partners, such as Shizuka Kamei, leader of the People’s New Party, who have pushed strongly for more stimulus spending to keep growth going. The package was delayed at the behest of Mr Kamei, who successfully demanded that its size be increased from original plans.

この逆走は経済を考慮した決定ではない。経済刺激策強行を求めてきた連立小党の国民新党亀井静香党首に鳩山由紀夫首相が同調したからだ。経済対策が遅れてしまったのも、原初案を膨らませるのに成功した亀井のせいである。


 デフレ日本に悪い経済刺激策ではないが、民主党としてはなんの考慮もなく、連立小政党に引っかき回された結果だとしている。
 そのとおりなのだが、フィナンシャルタイムズのトーンには、「そんなことしなくてもよかったのではないか」というトーンも感じられる。そこはどうなのか。背景として、フィナンシャルタイムズは、それほど日本経済は悪くはないという視点に立っている。

Japan’s recession was severe but ended early. Indeed the initial severity gives cause for optimism, as it was more due to now-rebounding world trade than domestic financial sins. Japan outdid other rich economies with impressive output growth of 1.2 per cent in the last quarter.

日本の不況は深刻だが早期に終了している。実際初期の低迷に楽観的でいられたのは、国内の金融政策の悪行より、世界経済の回復があったからだ。日本は先進国のなかでも、前四半期の成長率は1.2パーセントと群を抜いていた。


 うーん、うなるところだ。元来日本はそれほどリーマンショックの影響を受けるはずはなく、どちらかといえば、自民党政権下でも続いていた実質的なデフレに心理的な要素が加わったものではないかとも思う。だが、第三四半期で成長率が維持できてのは、麻生政権の思い切った経済政策が功を奏したからではないだろうか。世界経済の回復の恩恵が得られたのも輸出企業を援助する麻生政権の政策によるところが大きく、民主党政権下ではその期待が弱まっている点が大きな問題だ。私はビル・エモット氏の「民主党政権の現在のマクロ経済運営は、残念ながら、予想以上に酷いと言わざるを得ない」(参照)という見解に同意する。
 フィナンシャルタイムズは随分と民主党寄りで、かつ日本経済を楽観視しているようだが、この先にはけっこうブレも見られる。

But danger signs abound. The growth figure was boosted by inventories; it is also expected to be revised down significantly on Wednesday. Several leading indicators dropped markedly in November.

しかし日本には経済危機の兆候も多い。成長率の数値も在庫で水増しされている。だから、9日水曜日には大幅下方修正されることになる。その他の主要経済指標も11月には目に見えて低下した。

As in other big economies, policymakers are therefore wise to keep the foot on the accelerator: doing too little is a greater risk than doing too much. Judging by a deflation rate of 2.2 per cent, the balance of risks favours stimulus more in Japan than elsewhere.

だから日本は他の経済大国と同様に、政策立案者はアクセルを踏み続けておくほうがよい。わずかな刺激策では、やり過ぎよりもはるかにリスクを高くする。2.2パーセントというデフレ率からすると、リスクとのバランスにおいて日本は他国よりも刺激策が好ましい。


 このブレは何? さっきの話と違うじゃないか思わず突っ込みたくなるところで、フィナンシャルタイムズは民主党を援護しようとして矛盾してしまっている。だが、どちらかといえばこちらの認識が正しく、現状の執拗なデフレ下においては多少やり過ぎのリスクがあっても、刺激策が好ましいし、結局、亀井案は民主党を救うことになるだろうし、やっぱり経済モラトリアムが求められる時期の政権交代は国民に不利益をもたらしたなという印象が強い。
 財政出動は赤字国債を伴う。そこをフィナンシャルタイムズがどう見ているかというと、「国債発行残高は疑いなく度を超している(Government debt is without doubt beyond extravagant.)」とのこと。それでも手に負えないほどではないし、国債が国内で消化されていることも指摘している。ざっくり言えば危険領域という認識だ。日銀が買い取りをすればよいといった示唆はない。いわゆるリフレ派とは違う。
 打開策はどこにあるのだろうか。結語はジョークなのかもしれないが、こう述べている。

If only domestic consumers were as willing. But Japan has always had a half-hearted attitude to stimulus, fiscal or monetary. Unless leaders show confidence in the policy, it will not inspire consumers.

日本国民がもっと活発に消費してくればよいのだが。しかし、日本はいつでも経済刺激策を真剣にはやらない。財政出動も量的緩和もいいかげんだ。政府が信念をもった政策を実施しないかぎり、消費が活性化するわけもない。


 まあ、率直に言えば、フィナンシャルタイムズの結語はめちゃくちゃになっている。民主党政権はどのような政策に信念を持つべきだったのか。マニフェスト? へ? へっくしょん。

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コメント

>民主党政権はどのような政策に信念を持つべきだったのか。マニフェスト? 

麻生政権みたいに、信念を持って景気対策すべきってことかと。

投稿: よしふ | 2009.12.13 00:19

海外は、亀井応援団(ばかり)である、とこういうわけですか?

「政府は気前よくしなきゃいけないですよ」一点張りとも言える亀井節は、かつての、吉宗将軍の享保の改革に大反対した尾張大納言徳川宗春を想起させます。

農本社会だったから徳川宗春大納言は財政破綻して失敗したんで、上げ潮の時代、IT革命の時代の亀井「大納言」は、比類なき成功を収めるのか?

なんか、こう考えると、小飼弾氏なんかは、一皮剥けば亀井「大納言」と考えていることは同じかもしれませんね。

亀井「大納言」の考えも、部分的には正解なのだろうと思います。

でも、なんか、2010年末に東北新幹線が新青森まで開通して、2011年春には九州新幹線が博多まで完全開通するそうだから、それまでは財政出動は用心深いほうがよいと思います。東北新幹線と九州新幹線が完全開通した後も、後先考えない大盤振る舞いはするべきではありません。ただ、福岡周辺地域と仙台周辺地域への投資は、今後すごく回収しやすくなると思うんで、いろいろな意味で、東京一極集中の打開のための大きなきっかけにはなると思います。

それまで、今の民主党政権はもつのかなあ。

投稿: enneagram | 2009.12.13 10:39

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