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2009.12.26

習近平国家副主席訪日の意味は何だったか、その後の文脈から見えてくるもの

 習近平国家副主席訪日が何だったのかは、その後の文脈から見えてくるものがある。そして見えてきたものからして、民主党政権がどのような外交をしてしまったのかということがあらためて問われるだろう。
 国内報道やネットでの騒ぎという点で見るなら、習近平国家副主席と天皇陛下会見を巡る話も一段落ついたころだろうか。私は「習近平副主席訪日の天皇特例会見のこと: 極東ブログ」(参照)で紛糾の遠因に中国国内の後継者選びの問題を見ていた。そうした私の意見はブログにありがちな奇矯な意見として孤立していたようにも思えたが、ようやく中華圏からも同種の視点が出て来たようだ。「後継者問題の対立が原因か=副主席の「天皇会見」申請遅れ-中国」(参照)より。


【香港時事】中国政府が習近平国家副主席と天皇陛下の会見を日本側のルールが定める1カ月前までに申し込まず、特例として会見が認められたことについて、胡錦濤国家主席の後継者問題をめぐる内部対立があったためとの見方が出ている。
 香港紙・リンゴ日報は22日の論評で、習副主席と天皇の会見を希望していながら、申し込みが遅れたことについて「このような低級なミスを中国外務省が絶対に犯すはずがない」と指摘。習副主席の次期最高指導者としての「身分」をめぐる同国指導部内の意見対立が原因だった可能性があるとの見方を示した。

 問題は私の見立ての正否というよりも、「習副主席の次期最高指導者としての「身分」をめぐる同国指導部内の意見対立」の有無であり、有るというなら、民主党政権の対応がそれにどうかかわったか、かかわっていくかについては、日本国側の今後の問題になる。そしてその点で、その後の文脈が重要になってきた。
 文脈といってもそう難しい読みではなく、習近平国家副主席訪日は日本が対象であったというのではなく、実は米国オバマ大統領のアジア訪問が日本を皮切りに実施されように、習氏においてもアジア諸国、つまり日本、韓国、ミャンマー、カンボジアの4か国7日間のアジア歴訪の皮切り的なものであったことだ。その全体の成果は、習副主席の次期最高指導者の演出であったことは間違いないのだが、さらに微妙な成果とも言えるものだったのは、国際的に非難の高まるミャンマーが含まれていることでもわかる。結論から言えば、もっと複雑な問題を孕んでいたのはカンボジアへの訪問であった。
 事実としては毎日新聞記事「習・中国副主席:「後継」の存在感 4カ国歴訪、東南アジアで成果」(参照)がわかりやすい。

 ミャンマー軍政は8月、対中国境地帯の少数民族と武力衝突し、数万人規模が中国側に越境していた。習氏は軍政トップのタンシュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長から国境安定化に努力するとの言質を引き出した。
 また、両国間で建設が進む石油パイプラインについて、中国国有石油大手、中国石油天然ガス集団(CNPC)の子会社に独占経営権と所有権などを与えるとした文書にも調印している。
 カンボジアでは、中国新疆ウイグル自治区ウルムチで7月に起きた大規模暴動の後、ベトナム経由でカンボジアに密入国したウイグル族20人が首都プノンペンの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に亡命を申請していた。しかし、カンボジア政府は習氏訪問前の19日、国際社会の非難を無視する形で全員を中国に送還。習氏はフン・セン首相から「いかなる勢力も反中国の活動をすることを許さない」との約束を引き出した。

 さらりと書かれているが、ようするに中国は習氏によって、ミャンマー軍政を是認し、カンボジアという対外的でありながらウイグル人弾圧を行うという意思表示を行ったことになる。言うまでもないが、この文脈に天皇陛下会見が配置されたことに注意されたい。
 ウイグル人弾圧と習氏の関係は先にも言及した「習近平副主席訪日の天皇特例会見のこと: 極東ブログ」(参照)でも触れたが、私の見立てでは習氏の失策とした。しかし、この失策は、失策故にウイグル人弾圧をやめるように是正されるのではなく、どうやら習氏を旗頭に強化される動向にあるようだ。習氏のアジア諸国歴訪と並行した形でさらなる弾圧が継続していた。
 まず4日CNN「ウルムチ騒乱で死刑判決新たに5人、計17人に」(参照)が注目される。

北京(CNN) 新華社電によると、中国の裁判所は3日、今年7月に新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた騒乱で、新たに5人に死刑判決を言い渡した。
 英字紙チャイナ・デーリーによると、同日判決を受けたのは13人。死刑判決を受けなかった8人には禁固刑が言い渡された。

 9日のAFP「中国当局、逃亡中の94人を逮捕 新疆暴動に関与の疑い」(参照)ではさらに逮捕者が増えた。

【12月9日 AFP】中国の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)当局は、今年7月5日に区都ウルムチ(Urumqi)で発生した暴動に関与した疑いがもたれていた、逃亡中の94人を逮捕した。国営新華社(Xinhua)通信が9日、報じた。
 中国当局はウルムチの暴動をめぐり、すでに9人の死刑を執行し、8人に死刑判決を下しているが、新華社の報道からはさらなる厳しい判決が下されることが予想される。

 25日共同「ウルムチ暴動でウイグル族さらに10人に死刑判決」(参照)はさらに関連する死刑を伝える。

 中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市で7月に起きた大暴動で、同市の中級法院(地裁)は22~23日、殺人などの罪で10人に死刑判決(うち5人は執行猶予付き)を言い渡した。同自治区政府が25日、発表した。
 暴動に絡む死刑判決は計30人となった。10人は名前からいずれもウイグル族。7月5日夜、市内で漢族住民の頭部を殴るなどして殺害したとされる。

 このような文脈のなかで、習氏のカンボジア訪問に際して国際社会の非難を無視する形でカンボジアに密入国したウイグル人の中国引き渡しが実施された。これが中国によるカンボジア支援とバーターで行われたことは、22日ニューヨークタイムズ「China, Cambodia and the Uighurs」(参照)が伝えている。さらに送還者に幼児が含まれていたことにも言及している。過去の問題に触れた後次の話になる。

That was then. Today, Cambodia has baldly violated its international commitments and put at risk the lives of 20 members of the Uighur minority --- including two infants --- who were forcibly deported back to China on Friday.

それはかつての話。今日の話としては、カンボジアは国際公約を悪しく違反し、金曜日(18日)中国への強制送還によって、2人の幼児を含む少数民族ウイグル人20人の生命を危機に陥れた。

Poor, weak Cambodia is not the only villain in this piece. China shoulders even more blame for misusing its growing wealth and clout to force Cambodia to do its bidding. Already Cambodia’s largest foreign investor, China rewarded Cambodia on Monday with 14 deals, valued at an estimated $850 million, including help in building roads and repairing Buddhist temples.

貧困・弱小国カンボジアがこの問題の唯一の元凶ではない。成長経済の富と影響力の悪用し強制した中国の罪責がより大きい。すでにカンボジアにとって最大の対外投資国となっている中国は、月曜日(21日)、道路建設や寺院修復援助も含め、推定8億5000万ドルを与えた。


 もう一点注目したいのは道路建設や寺院修復という地域慰撫策は中国がカンボジア・ミャンマー経由で中近東・アフリカからのシーレーン確保の意図もありそうなことだ。
 こうした習氏旗頭の動向は実はこの機に吹き出したものではない。国際的には失言として話題になったメキシコ発言だが、この一連の文脈からして習氏の政治的なポリシーで実施されたと見てよさそうだ。今年の2月の共同「「中国あげつらうな」…中国の習近平副主席、メキシコ訪問で失言」(参照)より。

 中国の習近平国家副主席が外遊先のメキシコで、「腹がいっぱいになってやることのない外国人がわれわれの欠点をあれこれあげつらっている」と発言し、「国家指導者にふさわしくない失言」(中国紙記者)と話題になっている。
 副主席は11日、華僑と会談した際、中国が13億人の食糧問題を基本的に解決したのは人類に対する貢献だとし、「中国は革命も輸出せず、飢餓や貧困も輸出せず、外国に悪さもしない。これ以上いいことがあるか」と述べた。

 さらに

 中国でもインターネットで発言や映像が伝わり、直後からブログなどで「酒に酔った勢いでの発言ではないか」「穏健な胡錦濤指導部のイメージを傷つける」と批判が広がった。習副主席は胡国家主席後継の最有力候補とされる。

 インターネットでの関連映像はユーチューブで「堂堂國家副主席「吃飽沒事幹」都講得出,太子黨果然係狗口長不出象牙!」(参照)などで見ることができる。
 日本としては、国際的に非難を浴びるこのような中国外交に天皇を駆り出してまで日本が同意しているのではないことは、中国に直接的に対抗するという稚拙な手をとらずしても、アジア諸国やその他の国際社会にアピールしていく必要があり、つまりは民主党の課題でもある。すでに岡田克也外相は22日の記者会見で、カンボジアからのウイグル人強制送還について「そういった措置によってこのウイグル族の皆さんが、生命や安全の危険にさらされる可能性があり、難民条約の精神に照らして、かつ人道的見地から今回の措置が適切であったとは言い難く遺憾であるとその旨カンボジア政府には日本政府として懸念を表明した」(参照)と述べたが、大手紙社説が沈黙している現状、日本政府側からさらに国際社会に日本の立場を鮮明にする必要があるだろう。

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コメント

終風先生、小沢幹事長の事務所に、実弾が入った封書が郵送されたそうですよ。

この話題は、たぶん、あんまり深入りしないほうがいいと思います。

このエントリーで打ち切りましょうよ。

投稿: enneagram | 2009.12.26 14:56

週刊文春12月31日・1月7日新年号で上杉隆氏がこう書いています(192頁)。以下引用

北京特派員のひとりが事情を明かす。
「もともと、当然ながら、中国側も一ヵ月ルールを熟知していて、外交通商部を通じてかなり早い段階から会見の打診をしていたのです。ところが、中国の国内事情によって、習副主席の細かい来日スケジュールが確定しない。だから、幅のある日程を伝え、確定後、再度連絡するということで了解をもらっていたのです。
 ところが、それを内閣官房が宮内庁に伝えていなかった。正式な要請を『一ヵ月ルールだから』とはじかれ、青ざめた外交通商部は、なんとかならないかと、方々にお願いしたということです。仮に天皇陛下にあえなかったら、習副主席の将来がぶっとぶような話です。ナーバスになっていたのは中国側です」
 取材を進めると、連絡を遮断した人物が明らかになった。首相官邸の政務のひとりが証言する。
「平野官房長官が宮内庁に伝えるのを忘れた、それだけの話です」
 つまり、官邸の要である平野官房長官が、引き起こした騒動だったのだ。(引用終わり)

投稿: Kappa | 2009.12.26 15:20

二つ目の参照のリンクが間違ってますよー。

投稿: 匿名 | 2009.12.26 22:20

習近平はどうしようもないやつですね。それに迎合する民主党も、戦前のナチス賛美者から全く進歩していません。

中国の核実験によるウイグルでの悲惨な死

楼蘭近くであったメガトン級の3回の核爆発で、急性死亡19万人以上を含む死傷者100万人以上となった核実験災害。
多数の中国軍兵士にも犠牲があったはず。初めての科学報告です。
http://www15.ocn.ne.jp/~jungata/NEDonSilkRoadJap1.html カザフスタン国境調査とRAPSによる計算が根拠

世界ウイグル会議総裁で、ノーベル平和賞候補のラビア・カーディル女史が言う共産党機密情報では、現地で75万人が死んでいるのです。
しかも甚大な核放射線被害を受けた多数のウイグル人たちが、なんら補償もされずに放置されています。

これは決して対岸の火事ではない、日本の問題です。
ひとつは、こうした危険国家、中国独裁政府が、日本を標的にメガトン級の核を搭載した弾道ミサイルを配備しているからです。
もうひとつは、NHKの番組に誘導されて、中国が核爆発を繰りかえしていた1996年までに、
日本人が楼蘭周辺のシルクロードを27万人も観光していたからです。
このリスクには、核爆発に巻き込まれる最悪の事態から、帰国後に白血病などの健康被害が想像されるのです。

シルクロードでの危険な核ハザードは、こうして長年にわたり中国共産党と日本のNHK・偽反核団体により隠蔽されてきました。
その結果、大量の日本人がその核放射線被爆のリスクを負わされたのです。
http://junta21.blog.ocn.ne.jp/blog/

投稿: 火竜 | 2009.12.27 05:25

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