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2009.10.26

フォーリン・ポリシー誌掲載マイケル・グリーン氏寄稿をめぐって

 フォーリン・ポリシー誌(電子版)に米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長のマイケル・グリーン氏が23日寄稿した「Tokyo smackdown(民主党政権にお灸を据える)」(参照)が現下の日米関係の状態を考える上で示唆に富んだものだった。同氏はこの寄稿の前に、今月(11月号)のフォーサイト誌に「米国はいつまでも鳩山政権にやさしくはない」を寄稿していて、その論調からすると、現下の民主党政権の状況に対して氏は相当に困惑か悲嘆を感じているのではないかと思って私は読み出した。中盤までそういう悲憤のトーンも感じられたが、最終段では楽観的な展望を述べていた。
 話の流れとしては最初にフォーサイト誌の寄稿から見たほうがわかりやすいかもしれない。


 発足から一か月を経た鳩山政権は、世論調査で高い支持率を維持している。米国のオバマ政権も敬意と寛容をもって支持する姿勢を示し、あからさまな衝突は避けるように努めつつ、日本の民主党政権がより現実的な方向へと着実に舵を切っていくことを期待してきた。

 期待は裏切られていく。民主党政権内の閣僚たちの混乱した発言に米政府は当惑しているようだ。

新閣僚に「発言統制」が必要なのは珍しいことではないが、オバマ政権や韓国の李明博政権、オーストラリアのラッド政権などの立ち上がり時期と比較すると、日本の連立政権から飛び出す発言の雑多さは群を抜いている。

 雑多な発言のなかで、米国政権の関心を持つ点としてグリーン氏は普天間飛行場移設問題に関連する在日米軍のフォーメーションと、インド洋給油問題の二点に注視していた。

 沖縄では来年、参議院選挙とともに県知事選、名護・沖縄市長選が行われ、米軍基地反対派が勢力を強めると見られている。そうなる前に決断を下さないかぎり、鳩山由紀夫首相は普天間問題での掌握力を失い、これまでの合意が無に帰す恐れもある。そして、十三年前に米日が普天間基地の閉鎖と沖縄の基地再編で合意して以来続いてきた出口のない状況がさらに続くことになる。

 市街地のど真ん中に存在する普天間飛行場は2004年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故でも明らかなように、沖縄県民の生活に今なお危険をもたらしており、早急の撤退が望まれているが、これに対してすでに社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は「少し時間がかかっても、きちんと態勢を整えて交渉すればいい」(参照)と述べることで、結果的に、この危険な状態を存続させる意思を表明した。福島氏としては、理想的には、住民の危険とトレードオフしても普天間飛行場を近未来に撤去させたほうがよいという判断があるのだろう。
 グリーン氏の指摘からはむしろその反対の結論が予想させるし、実際のところ、グリーン氏のフォーサイト誌寄稿後にゲイツ米国防長官の訪日があったが、その内容はグリーン氏の見通しを裏付けていた。なお、鳩山首相は、普天間移設見直しについて「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」と述べ、判断をやはり遅延させている。
 インド洋給油問題では、対案への期待が高まっている。

 オバマ政権は、インド洋派遣という単一の問題が米日の同盟関係全体を揺るがす事態は望んでおらず、日本の民主党が海自に対して、たとえ現在とは別の任務になるとしても、意義ある役割を割り当てることを期待している。そのため、今は”ガイアツ”の行使を避けているものの、社会民主党の唱える「平和主義」に民主党が屈するといった、易きに流れる展開は求めていない。


新政権が対テロ戦争から撤退するということになれば、日本の国際的な名声にも傷がつく。

 この点については、民主党からは代替案として民生支援が出ているものの、北澤防衛大臣は、「ヨーロッパを含めた国際世論を探ってみると、民生支援だけで代替案になるのかという懸念は少し持っている」(20日NHKニュース「自衛隊参加支援策 あるか検討」より)と述べている。かねてから小沢一郎氏が述べているアフガニスタンのISAFが民主党内では検討されているはずだ(参照)。
 この二点の問題をグリーン氏は重視している。

鳩山首相とオバマ大統領の協調が全般的にどれほどうまく運んだとしても、両国間の関係の全体的な基調を決めるのは、この二つの問題に他なるまい。

 このことから、ゲーツ国防長官訪日についてもこう想定していた。

 こうした課題について米国は十月二十日からゲーツ国防長官が訪日する機会に日本から何らかの前向きな回答を得なくてはならないだろう。解決のメドが立たないまま十一月のオバマ大統領訪日の日を迎えれば、ホワイトハウスは米国のマスメディアに叩かれることになる。

 ここが非常に微妙な問題だ。すでにゲーツ国防長官訪日は無回答で帰国することになった。おそらく現民主党政権は裏で確約するといった自民党のような芸当ができるわけもないから、グリーン氏が危惧する展開となっている。
 グリーン氏の予想は当たるだろうか? ポイントはホワイトハウスが対日世論をどれだけ恐れているかにかかっている。そして、この問題はオバマ大統領が医療保険改革などその他の問題で、どれだけ世論に劣勢に立たされているかにもかかっている。
 米国の対日世論動向だが、現状は、「極東ブログ:ウォールストリート・ジャーナル掲載「広がる日米安保の亀裂」について」(参照)や「極東ブログ:ワシントン・ポスト紙掲載「米軍一括案の米側圧力」を巡って」(参照)で見たように懸念は表明されているが、全体としてオバマ政権にとって脅威となるほどの世論にはなっていない。
 このまま安閑と推移していくだろうか。というところで、ゲーツ国防長官訪日後の、冒頭触れたフォーリン・ポリシー誌「Tokyo smackdown(民主党政権にお灸を据える)」(参照)の話になる。寄稿全体のトーンはフォーサイト誌寄稿と同じだが、グリーン氏は民主党の変化を楽観視している。

On the whole, this could be a rough year for managers of the alliance with Japan. But the future looks brighter. The Upper House election next year will probably flush the Socialists out of the coalition and allow the DPJ to move to the center.

全体として見れば、日本との同盟担当者にとってきびしい一年になりうる。しかし、展望は明るい。来年の参議院選挙でおそらく、連立政権から社会主義者を閉め出し、民主党は中道に舵を切ることができるだろう。

The next generation of leaders in the DPJ is made up of realists who want a more effective Japanese role in the world and are not afraid to use the Self Defense Forces or to stand up to China or North Korea on human rights.

民主党の若手は現実主義者からなり、国際問題における日本の役割を遂行し、自衛隊の活用や、人権問題で中国や北朝鮮に向き合うことを恐れない。

Gates did the DPJ a favor by forcing the debate on national strategy that the party was never willing to have while in opposition, and that Hatoyama was eager to avoid for his first year in power.

ゲーツ氏が訪日でしたことは、民主党が野党時代には好まず、鳩山氏も初年度の政権では避けたいとした国家戦略の議論を促したことだ。


 フォーサイト誌寄稿に見られた強い危惧のトーンは落ちて、米政権はしばらく静観するだろういうことになっている。ただしその前提には、来年の参院選を契機に現在の連合政権が破綻することがある。
 国内問題に視点を戻せば、はたしてそうなるだろうかという問題になる。ごく単純に言えば、社民党が連立を離脱するだろうか。グリーン氏は明瞭には触れていないが、このストーリーの背景には普天間飛行場移転問題で社民党と民主党が割れる可能性がある。
 私の現状での予想だが、社民党はすでに党存続の命運がかかっている現下の連立政権から離脱することはないだろう。そのためにこそ、普天間飛行場移設問題は、遅延策が続くのではないか。ただ、いつまでも遅延策が続くかはわからない。また、暗にすでに参院選での自民党の復権といった可能性は事実上排除されている。

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コメント

>ポイントはホワイトハウスが対日世論をどれだけ恐れているかにかかっている。

今のアメリカで、対日外交問題でホワイトハウスになんくせ吹っかける手合いは少ないと思います。

ただ、アメリカの共和党と日本の自民党の外交がほとんど軋轢を生まないものだったので、アメリカの民主党と日本の民主党がうまく歯車がかみ合わないことに対する苛立ちというのはあるでしょう。

でも、アメリカに本当の知日派というのは、どれくらいいるのかなあ。米民主党内部に、リチャード・アーミテージ級の東アジアの専門家が何人用意されているか。もっとも、知日派は、数こそ少ないけれど、アメリカの内政外交に対する影響力はおそらく絶大であろうとは思いますが。

現状では、アメリカ発の謀略を日本の現政権に仕掛けるということは、ひどく考えづらいと思います。CIAだって、そんなことをしても何の得になる話は見つからないだろうし。現時点では、日米関係をあまり心配はしていません。ジョージ・ジュニアと純ちゃんがたぶん仲がよすぎたんですよ。

投稿: enneagram | 2009.10.27 09:32

10月18に実際にマイケル・グリーン博士とお会いしたのですが、「民主党は何がしたいのかよくわからないよ」と冗談を言ってられました。

まあ、何かしたいけどどうしたらいいのか手探りなんでしょうね。

経済政策のみならず、外交・安保政策も混迷しているようです。

投稿: forrestal | 2009.11.01 20:02

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■ゲーツ国防長官が来日している。かなり、普天間も、アフガン支援も念を押されたよう [続きを読む]

受信: 2009.11.01 20:05

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