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2009.10.24

ワシントン・ポスト紙掲載「米軍一括案の米側圧力」を巡って

 普天間飛行場移設に伴う日米安全保障体制を政権交代後も維持するよう、米側から日本への圧力が高まっている。この件についてワシントン・ポスト紙にも興味深い記事が掲載され、日本でも報道された。昨日のエントリ「ウォールストリート・ジャーナル掲載「広がる日米安保の亀裂」について: 極東ブログ」(参照)に続き、こちらも触れておきたい。まず日本での報道の状況、つまり、日本のマスメディアは該当のワシントン・ポスト紙記事をどう受け止めたのか。受け側の状態から確認しておきたい。
 ワシントン・ポスト紙の対日安全保障確認圧力の記事は、22日付けの第一面に掲載された。第一面は当然ながら主要な話題であることの指標でもあるので、日本の大手各紙はウォールストリート・ジャーナル紙の寄稿よりも取り上げていた。
 朝日新聞による「米高官「最も厄介なのは中国ではなく日本」 米紙報道」(参照)では、前半でワシントン・ポスト紙の意見、後半でウォールストリート・ジャーナルの寄稿を扱い、両者を一括したものとしてまとめていた。ここではワシントン・ポスト紙対応の部分を見てみよう。


 【ワシントン=伊藤宏】米紙ワシントン・ポストは22日付の1面で、米軍普天間飛行場の移設問題をはじめとする鳩山政権の日米同盟への対応について、米国務省高官が「いま最も厄介なのは中国ではなく日本」と述べたと伝えた。日米関係について米主要紙が1面で報じること自体が少ないだけに、米の懸念の強さが浮き彫りになった。
 ポスト紙は、訪日したゲーツ国防長官が日本側に強い警告を発したのは、日本が米国との同盟を見直し、アジアに軸足を置こうとしていることへの米政府内の懸念のあらわれと指摘。米政権がパキスタンやアフガニスタン、イラン、北朝鮮などへの対処に苦しんでいる時、普天間飛行場移設問題などで「アジアで最も親密な同盟国との間に、新たに厄介な問題を抱え込んだ」とした。国務省高官は、鳩山政権や民主党が政権運営の経験に乏しいうえ、官僚組織への依存から脱却しようとしていることが背景にあると語ったという。

 第一面掲載の意義に加え、鳩山民主党政権が米国政府から厄介者扱いになっているとの話が主軸になっている。報道ソースとして米国務省高官が伝えた点も重視している。
 オリジナル記事との比較は他紙を見てからにするとして、基本事項で留意しておきたいのは、ワシントン・ポスト紙の第一面記事は社説ではないということだ。ではどういう立ち位置の記事だったのか。朝日新聞の報道からはわからない。ざっと読むと、一般ニュースのように匿名記者のニュースのような印象を与える。朝日新聞記者は失念していたのかもしれないが、以下に見るようにこの点の留意のなさは他紙も同様である。
 読売新聞「「最もやっかいな国は日本」鳩山政権に米懸念」(参照)では、ワシントン・ポスト紙の記事に絞り、前半は朝日新聞記事と類似内容だが、後半に日本人なら関心を持つだろう論点を取り上げている。

鳩山政権については、「新しい与党(民主党)は経験不足なのに、これまで舞台裏で国を運営してきた官僚でなく政治家主導でやろうとしている」とする同高官の分析を示した。さらに、民主党の政治家たちが「米国は、今や我々が与党であることを認識すべきだ」(犬塚直史参院議員)などと、米国に公然と反論するようになった風潮も伝えた。

 具体的に民主党議員の名指しを読売新聞では伝えている。
 毎日新聞では目立った報道を見かけなかったが、「クローズアップ2009:米国防長官、東アジア歴訪 温度差、顕著に」(参照)でごく簡単に次のように言及していたのを見た。

 22日の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、国務省高官の話として、安定し不変の関係だった日本が「今や、中国より厄介な存在になっている」と報じた。

 産経新聞「米国務省高官「中国より日本が困難」 Wポスト紙」(参照)は短い記事ながらも、朝日新聞や読売新聞の記事より、オリジナルの内容に踏み込んでいるのであえて長めに引用したい。

 【ワシントン=有元隆志】米紙ワシントン・ポストは22日付の1面で、オバマ政権のアジア政策について、「現時点で(米国にとって)最も困難なのは中国ではなくて日本だ」との国務省高官の発言を紹介、日米関係を見直し、アジアにおける日本の立場を変えようとしている鳩山政権に対する懸念が米政府内で強まっていると報じた。
 同紙は、良好だった日米関係の雰囲気が変わった象徴的な例として、20日に訪日したゲーツ国防長官が防衛省での栄誉礼や歓迎食事会を断ったことを挙げた。
 長官と北沢俊美防衛相との食事はいったん日米間で合意したものの、会談に多く時間を割きたいとの長官の意向を受けて、米側が断ってきたという。鳩山政権が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設の見直しや、インド洋での自衛隊の給油活動を撤収させる方針を決めたことへの強い不快感の表れといえる。
 長官は鳩山由紀夫首相らとの会談で、11月のオバマ大統領の訪日までに普天間飛行場移設の結論を出すよう求めた。しかし、日本側は困難との考えを示した。
 同紙は「米側の圧力に対して日本側は平然としているようだ」と日米の距離感の広がりを指摘した。

 産経新聞記事とオリジナルの対応は後で確認したい。
 日経新聞は、朝日新聞と同様ウォールストリート・ジャーナルの寄稿と合わせ「米、鳩山外交に厳しい論調 主要紙が掲載、米軍再編など巡り」(参照)で報道していた。ベタ記事に近いので引用は省略する。
 報道社系では共同も時事も手短に扱っていたようだ。共同は「「鳩山外交に米が懸念」 米紙」(参照)、また時事は「鳩山政権への懸念強まる=同盟再定義や脱官僚で-米紙」(参照)である。内容は、朝日新聞・読売新聞と特に変わった点はない。
 これらの国内報道が日本人にどう読まれたかはわからない。だがネットでは、はてなブックマークからうかがえる部分がある。特に読売新聞の記事にはコメントが比較的多く寄せられていた(参照)。時系列では下からの順になる。ざっと眺めてみよう。


asrite 政治, 読売, 鳩山政権, アメリカ, 民主党, theme_民主始まったな, 外交 毅然と対応することと、けんかを売ることは別物。 2009/10/24
toaruR 敵として対する厄介さじゃなくて、子供の厄介さなんだろうなぁ('A`) 2009/10/24
georgew 多少厄介に思われるくらいが色んな交渉上有利。単なる腰巾着としてなめられるよりまし。 2009/10/24
kadotanimitsuru アメリカ にとって日本はペリー提督以来「下僕でなければ敵」だからなぁ。中国と日本を天秤にかける時は常に中国を取るし。 2009/10/24
tykk1978 アメリカ, 日本, 外交 最も厄介な国はお前だろう、アメリカ。そんなことでおどおどするな、読売。 2009/10/24
ken409 アメリカ, 日米関係 存在を無視されるよりは、やっかいな国だと思われた方がいい。 2009/10/24
nofrills WaPoはたぶんこの記事→ http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/22/AR2009102201312.html 2009/10/24
hiragumo 民主党, 日本, 米国 日本国憲法と安保はセット。吉田茂はそれで日本を独立させた。「戦争を放棄するから、あんたなんとかしてよ」と。その結果、何が産まれたかと言えば… 2009/10/24
hatkyma35 補正予算修正の勢いで思いやり予算削減したら認めるけど・・・ 2009/10/24
powerhouse63w news "U.S. pressures Japan on military package"http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/21/AR2009102100746.html (facebookのアカウント等でログインが必要)元記事を探すのがめんどくさい書き方はやめてほしい 2009/10/24
ones-inch 政治 米国が「のび太のクセに生意気だぞ!」って言うジャイアンにかぶって見える。 2009/10/24
y_arim news, diplomacy, usa, japan, politics, government, 民主党 公然と反論して何が悪い 2009/10/24
tombox おいおいアメリカを敵に回すなよと思ってしまうが、ふと考えなしてみると、やっと日本もアメリカのいいなりじゃなく、自分の意見をいえるようになってきたのかと清清しい気持ちにもなってくる。 2009/10/24
cinnamon77 外交 本当に”やっかい”だったらそんな事言わないという罠。 2009/10/24
octavarium 日本, アメリカ, 政治 国務省高官の「今や、最もやっかいな国は中国でなく日本だ」という発言を伝えた。 2009/10/23
crow2008 "新しい与党(民主党)は経験不足"どんくらい経験不足なんだろ?半世紀分くらい? 2009/10/23
buckeye ニュース, 日本, 民主党, アメリカ, 外交 Noと言えるお子様、日本。/ 「世界の嫌われ者」ブッシュ政権ではなく同じ中道左派で本来は仲間であるオバマ政権を困らすことの意味を鳩山政権はもう少し考えるべき。/ b:id:entry:16892562 2009/10/23
hati50 日本, アメリカ, 外交, 政治, 社会 アメリカが「今や、最もやっかいな国は中国でなく日本だ」と言ってきましたが、単に従順な犬が反抗的にありつつあるので起こっているだけでしょう。どう考えても最近の欧米の態度は中国>>日本です。 2009/10/23
xevra 世界一厄介な国に言われたくないよな。 2009/10/23
luliazur 揺さぶりではありますが、米政府、Washington Post、読売新聞のどれが揺さぶっているのでしょうね 2009/10/23
rakusupu 「ふはははははは!みろ!これが空気読まないパワーだ!」/良くも悪くも青い政権。熟成まではちょっと渋い。 2009/10/23
yoshikogahaku かわいいからわがままでもいいの! 2009/10/23
tsugo-tsugo 連中はすぐmostとかbestとか言うから気にしなくていんじゃね。アメリカにとってやっかいな相手って自国以外全てかと思ってた。/従順で主体性は無いが協調はする相手と、一貫性が無い人間、マシなのはどっちって話かと 2009/10/23
nminoru Politics これは細川内閣のデジャビューなのか。クリントン大統領の首脳会談との決裂がしたのはもう15年前。今も小沢だけは生き残っている… 2009/10/23
toycan2004 民主党, 日本, 国際, 外交, アメリカ 本当に米に対抗しえるようになったのかはオバマさんが来たときにわかるだろう/普天間の一連の流れを見ているとあまり期待はできそうにないのだが 2009/10/23
bn2islander 政治, 国際 アメリカとタフな交渉しているのなら、厄介者扱いされて喜ぶ所なんだけどね/中国は明確な外交方針がある。だから、交渉可能。日本は外交方針そのものがないから、交渉できない。確かに、日本の方がやっかいだよね 2009/10/23
binwa 民主党, アメリカ, 政治 最も操りやすい国でなければ、やっかいな国って。どんだけわがままなんだ 2009/10/23
gyogyo6 やっと一人前扱いしてもらえましたっ! 2009/10/23
gruxxx 政治 「今まで居心地の良い相手だった」(この句の前にある言葉。因みにFNNニュースより)そうだから、まあそうだろう。民主主義でさえ民意を全部反映できるわけではない。米国の名物なのにね 2009/10/23
hyoro 民主党, 国際 アメリカが「世界の父親」ごっこをしていられる時代は終ったんじゃないかな。 2009/10/23
mahal 外交 いやこれ、「噛みつくなら、せめて地政学考えて噛みつけ」ってお話じゃないの? 2009/10/2315
akizuki_b ニュース まぁ、簡単にあしらえる国だと思われるよりはましだよね、きっと。 2009/10/23
Tamansky 政治・経済, 国際問題 いやあ、今までが従順すぎたってだけでしょう。 2009/10/23
rz1h931f4c 政治, 民主党, 米国 自分たちに非はないと思ってるんだから救いようが無いな 2009/10/23
tow-mas 米国, 民主党, 政治, みんす 日替わりで言ってることが変わってたら、そりゃやっかいに見えるわ(w ただでさえオバマ政権の尻に火が付いている状態だというのに。 2009/10/23
BUNTEN 国際, 政治 議論はすべきだし米要求を丸呑みする必要もないと思うけど、わが民主党は思いつきでもの言う印象があるのが頭痛いところだ。orz 2009/10/2322
metabodepon 米国に反発する態度は勇ましいのだけど、もう少し外交的な含みを持たせて発言してほしいなと思う。経験不足からくる悪影響も国内だけならまだ民意なのだからと我慢できるが、外交はそうもいかない。 2009/10/23
oukayuka まあジャパン・パッシングと称されてシカトされるよりかはマシなんじゃないの? 2009/10/23
kamikawa2007 aho, USA つい最近まで「世界一やっかいな大統領」が君臨してた国にそんなこと言われると照れちゃうぜw 2009/10/2316
shukaido170 民主党, 米国 ようやく植民地から解放された気分だ 2009/10/23
tanacc 日本, 民主党, アメリカ, 政治, 防衛, 国防 ワシントンに盾突いて田中角栄みたくつぶされなければいいけど・・・。 2009/10/23
filinion 国際, 政治 外交とは相手国にとって厄介な存在になることだ、とは思う。しかし「経験不足なのに、官僚でなく政治家主導でやろうとしている」というのは妥当な心配ではある。経験を積むまでは国民も苦労するだろうな…。 2009/10/23
Ar234B2N 今までがいい子ちゃん過ぎたような。 2009/10/23
hokuto-hei この日本語の記事からは、怒りよりは狼狽が伝わってくるけどソースではどうなんだろう?と英語嫌いの私は思うのだった 2009/10/23
guldeen usa, society, international, politics 米国の唯々諾々にならない、って姿勢を見せただけで、ここまで大騒ぎになる米政権内部の阿呆っぷり。下請けから値段要求を突っぱねられて、狼狽する大企業の姿にダブって見える滑稽さ。 2009/10/2325
biconcave それはよかったねw 2009/10/23
Francamente_Pinocchio もうすぐこの国は滅ぶ 外圧に期待するしかないてことか。 2009/10/23
rajendra 外交 (ノ∀`) アチャー 2009/10/23
yukitanuki アメリカ様がお怒りじゃあ 2009/10/23
fireflysquid 社会, 米軍, 国際 「米国に公然と反論するようになった風潮」飼い犬が「お手」を素直にしなくなって大騒ぎ、の図。属国としてではなく対等の友好国にならないと。 2009/10/23


 ざっと見てもわかるが、ワシントン・ポスト紙の記事の背景、あるいは論点とされる日本とアジアの安全保障問題についてのコメントは、ほとんど見当たらない。アメリカが上から目線で日本に物を申してきたので、「世界一厄介な国に言われたくないよな」というように、日本人は反感を持って言い返したという印象が強い。
 この傾向は、おそらく読売新聞記事が「さらに、民主党の政治家たちが「米国は、今や我々が与党であることを認識すべきだ」(犬塚直史参院議員)などと、米国に公然と反論するようになった風潮も伝えた」と結んだことや、最初のコメントの反感が否定的であったことにひっぱられたのかもしれない。はてなブックマークは最初のコメントの論調が否定的だと同様の否定的なコメントが炎上のようにつづく傾向がある。
 朝日新聞記事へのはてなブックマークのコメントでは、脊髄反射的な言い返しもそれほどには顕著ではないが、やはりワシントン・ポスト紙の論点はあまり読み取られていない(参照)。


deep_one 東アジアの安全保障はすでにアメリカなしで行く路線と聞くが?…ああ、それが東アジア共同体構想だったか。アメリカの代わりに中国の軍事力を使うだけなんですけどね。 2009/10/24
buckeye ニュース, アメリカ, 日本, 民主党, 外交, 安全保障 「米民主党は反日」との誤解を解くためにオバマ政権は言葉だけでなく政権人事という行動で対日重視を示した。対する鳩山政権は口先だけ同盟重視で実際の行動は逆。そりゃ米側の堪忍袋の緒が切れて当然だろう。 2009/10/24
quatroshe 「国務省高官」だの「国防省高官」だの言ってないで具体名出せよ。特派員なら見当ついてるんだろ。日本の米国ケツ嘗め忠犬派どもとつるんだ3~4人程度が騒いでるだけなら大笑いだぜ/http://bit.ly/395oCg (2005年の記事) 2009/10/23
Talkiyan_Honin_Jai 日米関係, 民主党, 鳩山内閣 この60年間アメリカ様に尽くしてきたのに、ちょっと不満を言っただけでこれですか?日本人はアメリカという国について考え直すべき時が来ていると思う。今回はマジで腹が立った。 2009/10/23
jt_noSke ダジャレ 好感の持てない発言である 2009/10/23
suyntory_junnama bouei p 米 日 米高官「最も厄介なのは中国ではなく日本」 米紙報道 2009/10/23
nofrills Japan WaPoはこの記事→ http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/22/AR2009102201312.html ... あれ、この記事昨日読んだか。WSJは登録してないから探さない。 2009/10/23
kunitaka 民主党, 政治, 日本, 米国 今までが舐めてただけだろ! 2009/10/23
suzu_hiro_8823 asahi.com, 米国, 政治, ただしソースは○○ 但しソースはWP、で、WSJも同じようなネタが出たと。WPは知らんけどWSJって右だからそう言いたくなるよね。 2009/10/23
wartanenemon 新聞 朝日新聞 まぁ良いんじゃない、これでどんどん対等に話出来る様になるだろうから 2009/10/23
depthwinter 東南・東アジアがアメリカ抜きの秩序・経済圏を作るのはアメリカにとっての悪夢だろうしね。 2009/10/23
u-chan us, japan 51番目の州が敗戦後初めて(ホントは2度目)造反してるから、キレてるだけでしょ。 2009/10/23
mustelidae 中国の軍事力の増大が脅威だと言いながらその中国より厄介なんですか 2009/10/23


 オリジナル記事の情報を比較的多めに伝える産経新聞記事へのはてなブックマークコメントはどうか。やや以外なのだが、朝日新聞や読売新聞の記事よりも少ないというか、ほぼコメントがない(参照)。さらに、ワシントン・ポスト紙のオリジナル記事は「U.S. pressures Japan on military package」(参照)に寄せられたコメントは、現状3点のみに限られている。が、国内報道の記事へのコメントのように感情的に言い返すといった短絡なものはない(参照)。
 はてなブックマークのコメントを読む限り、この問題について伝聞報道には反応はあるものの、オリジナル記事への関心は薄く。また国内報道の表現に感情的に反応しているように見える事例が多い。
 オリジナルのワシントン・ポスト紙の記事「U.S. pressures Japan on military package」(参照)と国内報道の対応を見ていこう。
 オリジナルの記事が書かれたポジションだが、次のように記者名が明記され、ワシントン・ポスト紙の社内の人間であることがわかる。日本の大手紙記事のように「ワシントン・ポスト紙が伝えた」というものではない。社説には近いが、社として述べるよりは記者の個性で書かれている記事だ。

U.S. pressures Japan on military package
Washington concerned as new leaders in Tokyo look to redefine alliance

By John Pomfret and Blaine Harden
Washington Post Staff Writer
Thursday, October 22, 2009


 記者のJohn PomfretとBlaine Hardenの両氏については、過去の記名記事が参照できる(参照)。John Pomfret氏が米国内政、Blaine Harden氏が外交を扱っており、どれもアジア全体の安全保障問題に深い見識を持っていることが伺われる。もちろん、だからこそワシントン・ポスト紙の第一面を飾ったのだが、半面、社説として書かれていないこともこの記事の重要性でもある。つまり、個人的な見解の範囲に留まっているとも言える。
 朝日新聞と読売新聞の記事で、報道のポイントにおかれていた「最もやっかいな国は日本」という論点をまずオリジナルとの対比で見てみよう。

【朝日新聞】
米政権がパキスタンやアフガニスタン、イラン、北朝鮮などへの対処に苦しんでいる時、普天間飛行場移設問題などで「アジアで最も親密な同盟国との間に、新たに厄介な問題を抱え込んだ」とした。


【読売新聞】
 記事は、オバマ政権がパキスタンやアフガニスタン、イラクなど多くの課題をかかえており、「アジアの最も緊密な同盟国とのトラブルは、事態をさらに複雑にする」という米側の事情を紹介した。

 オリジナルの対応は次のとおり。

For a U.S. administration burdened with challenges in Pakistan, Afghanistan, Iraq, Iran, North Korea and China, troubles with its closest ally in Asia constitute a new complication.

パキスタン、アフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮、中国との関連で問題に直面するという重荷を負った米国政権としては、アジアにおける緊密な同盟国(日本)との間い起きたトラブルは、新たな厄介な問題となっている。


 朝日・読売の報道に間違いはないが、朝日新聞がイラクと中国を隠し、読売新聞がイラン、北朝鮮、中国を隠したのは、それぞれの社風が感じられて興味深い。些細なことのようだが、オバマ政権が直面しているこれらの国の難題はそれぞれに微妙な色合いがあり、ただ反米的な国家を列挙したわけではなく、それらの微妙な色合いのなかで日本が起こした新しい問題の位置がある。
 「高官」も日本での報道のポイントだったが、どのように対応しているだろうか。

【朝日新聞】
国務省高官は、鳩山政権や民主党が政権運営の経験に乏しいうえ、官僚組織への依存から脱却しようとしていることが背景にあると語ったという。


【読売新聞】
鳩山政権については、「新しい与党(民主党)は経験不足なのに、これまで舞台裏で国を運営してきた官僚でなく政治家主導でやろうとしている」とする同高官の分析を示した。

 はてなブックマークのコメントに「高官名を出せ」というコメントがあったが、そこはどうだろうか。日本の報道でも国務省高官とのみしているのは気になるところだ。

quatroshe 「国務省高官」だの「国防省高官」だの言ってないで具体名出せよ。特派員なら見当ついてるんだろ。日本の米国ケツ嘗め忠犬派どもとつるんだ3~4人程度が騒いでるだけなら大笑いだぜ

 この点については、「特派員なら見当ついてる」のかもしれないが、オリジナルには次のような配慮があった。

The official, who spoke on the condition of anonymity because of the sensitivity of the issue, said the new ruling party lacks experience in government and came to power wanting politicians to be in charge, not the bureaucrats who traditionally ran the country from behind the scenes. Added to that is a deep malaise in a society that has been politically and economically adrift for two decades.

日本との軋轢という微妙な問題から匿名条件で語った政府高官ではあるが、彼は、新政権は行政の経験不足であり、政権交代の機に、伝統的に裏方取り仕切る官僚によるのではなく、政治家によって権力を集中したいと望んでいると、述べた。また、現況は、二十年にわたり漂流しつづけた政治と経済をもつ日本社会の根深い問題であると加えた。


 重要なことは、高官名の匿名性ではなく、米国の認識として、日本が民主党政権になって米国の厄介者となったというより、つまり民主党が主体というより、日本社会の長期混迷の必然的な結果だと米国務長高官が認識しているという点である。「高官」が匿名なのは、むしろ日本への配慮であると見てもよい。いずれにせよ、この高官による論点には多くの日本人が是認せざるを得ないのではないだろうか。その点で、日本での新聞報道はややミスリードだったように思える。
 日本側で報道された他の点についても簡単に眺めてから、オリジナルの自体の問題に戻りたい。

【読売新聞】
さらに、民主党の政治家たちが「米国は、今や我々が与党であることを認識すべきだ」(犬塚直史参院議員)などと、米国に公然と反論するようになった風潮も伝えた。


【対応オリジナル】
DPJ politicians have accused U.S. officials of not taking them seriously. Said Tadashi Inuzuka, a DPJ member of the upper house of Japan's parliament, the Diet: "They should realize that we are the governing party now."

民主党の政治家たちは、米国高官が真剣に対応しないと責めてきた。民主党の犬塚直史参院議員にいたっては、「米政府高官は、我々が支配政党であることを理解すべきだ」と述べた。



【産経新聞】
 同紙は、良好だった日米関係の雰囲気が変わった象徴的な例として、20日に訪日したゲーツ国防長官が防衛省での栄誉礼や歓迎食事会を断ったことを挙げた。
 長官と北沢俊美防衛相との食事はいったん日米間で合意したものの、会談に多く時間を割きたいとの長官の意向を受けて、米側が断ってきたという。鳩山政権が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設の見直しや、インド洋での自衛隊の給油活動を撤収させる方針を決めたことへの強い不快感の表れといえる。


【対応オリジナル】
U.S. discomfort was on display Wednesday in Tokyo as Gates pressured the government, after meetings with Prime Minister Yukio Hatoyama, to keep its commitment to the military agreement.

米国側の不快感は水曜日の東京でも示されたが、それはゲーツ国防長官が日本政府に圧力をかけるためで、軍事同盟を遵守するよう鳩山首相と会合後のことだ。

"It is time to move on," Gates said, warning that if Japan pulls apart the troop "realignment road map," it would be "immensely complicated and counterproductive."

「進展すべき時期だ」とゲーツ氏は述べ、日本が「在日米軍再編成ロードマップ」を引き裂くようなことになれば、「とてつもなく厄介で逆境ととなる事態」になるだろう」と述べた。

In a relationship in which protocol can be imbued with significance, Gates let his schedule do the talking, declining invitations to dine with Defense Ministry officials and to attend a welcome ceremony at the ministry.

重要性をもって外交手順を踏むという関係から、ゲーツ氏は伝達の予定をこなしたものの、自衛隊高官と夕食会と政府歓迎式典参加を断った。


 産経新聞は「日米関係の雰囲気が変わった象徴的な例」としているが、これは単純に外交上のメッセージであったので、ややミスリードのきらいはあるが、「強い不快感の表れ」についてはオリジナルを正確に反映している。

【産経新聞】
 長官は鳩山由紀夫首相らとの会談で、11月のオバマ大統領の訪日までに普天間飛行場移設の結論を出すよう求めた。しかし、日本側は困難との考えを示した。


【対応オリジナル】
Hatoyama said Gates's presence in Japan "doesn't mean we have to decide everything."

鳩山は、ゲーツ訪日は、米側要求をすべて決定しろという意味ではないと言ってのけた。


 一応対応を挙げたが、この点については対応はちょっと無理で、産経側の独自の書き込みだろう。

【産経新聞】
 同紙は「米側の圧力に対して日本側は平然としているようだ」と日米の距離感の広がりを指摘した。

 ここは引用符でくくってあるわりに、オリジナルの対応箇所は私にはわからなかった。だが、オリジナルの記事の最終部では、この点を強く、かつ皮肉に暗示してはいる。

"I have never seen this in 30 years," Calder said. "I haven't heard Japanese talking back to American diplomats that often, especially not publicly. The Americans usually say, 'We have a deal,' and the Japanese respond, 'Ah soo desu ka,' -- we have a deal -- and it's over. This is new."

コールダーが語こう語った。「30年も間、米国外交官への口答えを、公式ではないにせよ、これほどまで聞いたことはなかった。米国人から「協定があります」と言えば、日本人は「ああ、そうですか」と答えたものだった。しかし、その時代は終わった。新しい時代となった。


 口答えする日本人というのを強調してオリジナル記事は終わる。
 当然ながら、これは日本人に不快感を残す。読売新聞が「米国に公然と反論するようになった風潮も伝えた」と記事を締めるのもわからないではないし、はてなブックマークに、同種の口答えが多く見られたのも、共感しやすいだろう。ただし、それがこの問題の本質ではなく、むしろ、東アジアの安全保障の同盟の困難な条件を示すだけのはずであった。
 さて、国内報道から抜け落ちたオリジナル報道を見ていこう。
 一番重要なことは、ワシントン・ポスト紙のこの記事がどのような意図をもって書かれたかという点だ。これは冒頭に明記されている。国内報道でも概括的には言及されてはいたが、原文で確認しておこう。

Worried about a new direction in Japan's foreign policy, the Obama administration warned the Tokyo government Wednesday of serious consequences if it reneges on a military realignment plan formulated to deal with a rising China.

日本外交の新進路への懸念から、オバマ政権は水曜日東京の民主党政府対して、もし日本政府が、台頭する中国対処のための軍事再編成を破棄するのなら、深刻な結果をもたらすだろうと警告した。


 ある意味露骨に書かれているのだが、今回の普天間飛行場移設見直しに関する米側の要求は、単に同飛行場の移転問題ではなく、アジア全域に関わる軍のフォーメーションに関連しており、それは、先日の中国建国60周年で世界が見ることにもなった兵器に暗示される、中国の目覚ましい軍拡への対応である。また、この件について日本が対応しないなら、深刻な結果(serious consequences)になるという。
 問題は、その深刻な結果とは何を指すのかだが、私が読んだ限りでは、同記事には書かれていない。現状、他報道から推察されることは、在日米軍のグアム移転が頓挫することであり、沖縄市街に危険な軍事基地と多数の海兵隊駐留が残ることになる。おそらく、それを民主党政府が認めないとしても、軍事力をもって鎮座している米軍を撤去することはできないのではないか。
 また、中国の軍拡への対応が論点の中核にあるということが、この記事の後半で扱われる、鳩山氏による「東アジア共同体構想」との関連がある。米側ではこの構想を滑稽なものと見ているものの、日本が米国同盟から親中国外交に切り替わり、そのことから日本が中国側の軍拡の影響下に組み入れれるべく変貌することの懸念が感じられる。

Other Asian nations have privately reacted with alarm to Hatoyama's call for the creation of the East Asian Community because they worry that the United States would be shut out.

その他のアジア諸国も非公式な対応ではあるものの、鳩山氏による「東アジア共同体構想」へ警告を発している。理由は、アジア諸国は米国が排除されることに懸念を覚えているからだ。

"I think the U.S. has to be part of the Asia-Pacific and the overall architecture of cooperation within the Asia-Pacific," Singapore's prime minister, Lee Hsien Loong, said on a trip to Japan this month.

リー・シェンロン・シンガポール首相は、「米国はアジア太平洋地域の一部であり、かつこの地域の協調機構の一部でもある」と、今月の日本訪問で言及していた。


 アジア諸国から、鳩山氏による「東アジア共同体構想」へ懸念の声があるとワシントン・ポスト紙記事は述べているが、事例としてはリー・シェンロン・シンガポール首相の言及に留まっていて説得力には乏しい。だが、この問題こそ、台頭する中国を前に非公式(privately)にしか言及できない性質の問題であるからかもしれない。
 もう一点だけ述べてこのエントリを終えよう。

The DPJ rode to power pledging to be more assertive in its relations with the United States and has seemed less committed to a robust military response to China's rise. On the campaign trail, Hatoyama vowed to reexamine what he called "secret" agreements between the LDP and the United States over the storage or transshipment of nuclear weapons in Japan -- a sensitive topic in the only country that has endured nuclear attacks.

政権を得た日本民主党が米国との関係により強行な態度になっていくことに対して、中国の軍事的台頭への対応により尻込みしつつある。選挙遊説中のことだが、鳩山氏は、自民党と米国間で交わされた、いわゆる核疑惑(核保有と核持ち込み)について再検討すると公約した。これらは、唯一の被爆国である日本にとって微妙な話題である。


 この段落だけでは理解しづらいし、またオリジナル記事では、鳩山政権の反米的な傾向を示す文脈にあるのだが、米国側の不快感を暗示させているように読める。
 少し踏み込んでいうことになるが、米国としては日本が自国防衛を放棄して核の傘を出るなら、太平洋地域における中国の軍事的台頭を許すことになり、ひいては、不安定な弧、つまり、太平洋からインド洋、中近東に至る地域の自由貿易の地歩を放棄することになるだろう。日本が中国の一部となっても、それが主権国家の選択であるなら、米側としては日本を同盟から仮想敵国に移し換えるだけのことだが、不安定な弧全体への軍事的な支配を放棄することはないだろう。その点から考えれば、米国が日本での軍事プレザンスを放棄することはおそらくないだろう。

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コメント

はじめまして、面白い記事ですね。

アメリカは海兵隊移転なんかも含めた合意全部が白紙に戻る事を恐れてるんですかね。
多分、民主党としては沖縄の負担を減らすというスタンスを理由に、
ただ県外移設するか、新規に施設を造るのを避けたがってるだけだと思うんですけど。
単に互いにすれ違いしてるだけなんじゃないんですかね。違うか。
でも長さ45メートルのヘリコプター発着帯ぐらいどっかの基地にちょっと付け足せば済みそうな
もんなのに、なんでこんなに米国が既存契約に拘るのか理解できないです。
グアム整備の日本負担に民主が突っ込んでる訳でもないし。

個人的にあの辺野古の海は埋め立てるべきじゃないと思うんですけどね、環境保護の視点からですが。
貴重なサンゴ礁があるらしいし。
自然保護に熱心な米国の有権者が移設計画にどういう反応を示すか興味もありますね。

投稿: bnimal | 2009.10.24 18:57

東アジア、中東、南北アメリカ、EUでそれぞれまとまればいいのではと思います。
アメリカが問題をややこしくしてるだけで、長い目で見れば日本や韓国は中国に組み込まれるのでしょう。
差別や偏見は人間の本能の裏返しですからアメリカとは本来、水と油。
日本も車は止めて武器でも作って、中国に買ってもらえばどうだろうか。
アメリカは攻めてきたが、中国は攻めて来たことはない。

投稿: ぷるきんえ | 2009.10.26 07:46

アメリカもロシアもインドも、いままでの西ヨーロッパ中心に向いた外交を東アジア向きに向きを変えようと努力しているところだと思います。

日本を「下請け」にしているアメリカは、ロシアやインドより、東アジア「統治」では、ずっと先を進んでいるようなものです。

でも、日本も、アメリカ寄りだけでなく、もっと自前で東アジアに食い込みたいわけで、アメリカと利害があまり一致できなくなっている。

日本の政治や経済や社会が主たる原因ではなく、こういう軋轢は、アメリカが西ヨーロッパ中心の外交を東アジア向きに軌道修正しているから起きてるんじゃないでしょうか。アメリカは、対日外交だけでなく、対露外交、対印外交でも、予想外の事態に出くわすと思います。

それが、まず、対日外交で最初に起こっているだけなのではないでしょうか。なんか、そんな気がします。だから、そんなに気を揉んで心配しなくてもいいと思います。日米軍事同盟さえ条約破棄しないでいれば、日本の咎めはそんなにはなくて、アメリカは、すぐに別のトラブルにぶつかって別のうめき方をするような気がします。

投稿: enneagram | 2009.10.26 13:26

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