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2009.10.27

ウォールストリート・ジャーナル紙社説は鳩山政権に怒りを表しているようだ

 ゲーツ米国防長官は23日に日韓の訪問を終えたが、この期間中、また直後、日米間の安全保障問題について米国メディアを通して鳩山政権に圧力を加える論調が見られた。とはいえ、怒りを表すといったほどには強い論調でもなかった。米国政府としてはその後は日本を過度に刺激せず、とりあえず沈静化し、ある程度腰を据え、韓国の盧武鉉政権のような末路を忍耐強く待つのではないかとも思われた。だが、26日付けウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)に掲載された社説「Tokyo Defense Kabuki(鳩山政権の形ばかりのお芝居)」(参照)にはかなり明白な怒りが感じられた。この社説が、ここまでのメディアを介した怒りの頂点となるのか、これにいよいよ米国政府が実質的なフォローする転換点となるのか。気になることでもあるので言及しておこう。
 気になるというのは、タイミング的にも、このウォールストリート・ジャーナル紙社説掲載を直接反映したように、北沢俊美防衛相が泡を吹き出したからだ。今日の話題だが、毎日新聞「在日米軍再編:普天間移設 北沢防衛相、「辺野古」容認を示唆 「公約違反にあらず」」(参照)で、北沢防衛相は子供じみた詭弁を吐き出した。


 北沢俊美防衛相は27日午前の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)をキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)へ移設する現計画について「国外移設や県外移設という我々(民主党)の選挙公約をまったく満たしていないと認識するのは間違いだ」と述べ、容認する姿勢を改めて示唆した。

 「選挙公約をまったく満たしていないと認識するのは間違い」という表現はなんかの冗談だろうか。普天間移設見直しについて鳩山首相が述べた「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」という冗談に呼応したのだろうか。いずれもわけのわからない言明である。マニフェストの詳細に当たる「民主党沖縄ビジョン」(参照)には次のように明記されているからだ。

民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。

 毎日新聞記事に戻る。北沢防衛相は矛盾した弁明をしている。

日米政府が合意した在日米軍再編計画には沖縄の米海兵隊の一部をグアムへ移すほか、普天間飛行場のKC130空中給油機を岩国基地(山口県)に移転することが盛り込まれており、北沢防衛相は鳩山由紀夫首相が衆院選で公約した「国外・県外移設」に当たるとの見方を示した。しかし、同党は衆院選マニフェスト(政権公約)で米軍再編計画について「見直しの方向で臨む」としており、現行の再編計画をそのまま認めることはこれと矛盾する。

 その日米合意部分は自民党下の政策そのものであり、民主党が自民党政権から変えるとした選挙公約ではまったくない。仲井真沖縄県知事も「基地問題をレトリック・ことばの言いかえで処理しようというのは、やはり軽い。内容的にポイントを押さえるべきところは押さえて、関係者とよく相談して決めてほしい」(NHKニュース・参照)と北沢防衛相に応答していたが、詭弁を弄してその場を取り繕うのではなく、公約を破ることになるなら公約を破るとして、それはそれで国民に新しく問い直していくほうがよいのではないか。
 ウォールストリート・ジャーナル社説では、北沢防衛相の動揺を予告するように、彼が問題を理解してないわけはないだろうとも見ていた。普天間飛行場移転関連する諸問題について。

Military leaders seem to understand how these pieces fit together. Japanese Defense Minister Toshimi Kitazawa said Wednesday that the Futenma move is "extremely important."

防衛省の指導者はこれらの諸問題をどうまとめるか理解はしているだろう。北沢俊美防衛相は水曜日に普天間飛行場の移転は「極めて重要である」と述べていた。


 ウォールストリート・ジャーナル社説の冒頭に戻ろう。今回の論点では、昨日の鳩山氏の所信表明演説を踏まえている。

When the U.S. and Japan announced a sweeping military alliance realignment plan in 2006, both governments characterized their relationship as "the indispensable foundation of Japan's security and of peace and stability in the Asia-Pacific region."

2006年日米間で包括的な軍事同盟再編成案が発表された際、両政府は二国間の関係を「日本の安全保障とアジア太平洋地域の平和安定にとって不可欠な礎石」と表現した。

Yesterday, Prime Minister Yukio Hatoyama paid lip service to the alliance and then told parliament he wants to "frankly discuss" the implementation of a crucial part of that pact, the relocation of a U.S. air base on Okinawa.

昨日、鳩山由紀夫首相は、口先では同盟に触れ、協定の重要部分、すなわち在沖空軍再編成の実現について「率直に話し合ってまいります」と国会で述べた。

This isn't a minor tiff. Mr. Hatoyama's grandstanding endangers the entire 2006 agreement, a complex document that took more than a decade to hash out.

これはそんな些細なもめ事ではないだ。鳩山氏のスタンドプレーは、10年以上にわたり議論し尽くしてきた複雑な文書からなる2006年の協定を危うくしている。


 「率直に話し合ってまいります」と"frankly discuss"では、多少語感が異なるが、ウォールストリート・ジャーナル社説がここを強調したのは、英語的な語感を強調したのだろう。「やあ、バラク、あれはなかったことにしてくれ、友愛だよ友愛♥」ということじゃない。
 社説の締めはきびしい問い掛けが列挙されている。

Mr. Hatoyama may feel that he's simply sticking to a campaign pledge to put more distance between Japan and the U.S.

鳩山氏は日米間に距離を置こうとする選挙公約にこだわりすぎているようだ。

But it doesn't sound like he's thought much about the alternatives.

しかし、選挙公約にこだわるだけでは、代案について考えていないかのように見える。

Will Japan spend more on its own defense?

日本は自国防衛に支出する気がないのか。

Does Mr. Hatoyama think the North Korean nuclear program and growing Chinese military force aren't serious enough to warrant a closer U.S.-Japan relationship?

北朝鮮の核開発計画や中国の軍拡は、緊密な日米関係の維持を要するほどには重大な問題ではないと鳩山氏は考えているのだろうか。

Does he think diplomacy alone can keep Japan safe?

鳩山氏は、外交だけで日本の安全保障が維持できると思っているのだろうか。

These are the questions Japan's new prime minister needs to be asking, rather than putting on a kabuki show on defense.

これらが日本の新首相に問われている問題である。歌舞伎のように形ばかりのお芝居を演じてもらうことが求められているわけではない。


 エントリに書き写しながら再読すると、怒りというよりは、何考えているんだ日本人という、違和感のほうが強いのかもしれないと思った。しかし、この違和感は、すでに韓国盧武鉉政権時代に米国は慣れてもいる。ブッシュ政権からオバマ政権へと米国の政権は大きく「取っ替えっこ(change)」したと言われるが、ロバート・マイケル・ゲイツ国防長官はブッシュ政権から留任している。そこには「取っ替えっこ(change)」はなかった。

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コメント

少なくとも北朝鮮については、日本を揺さぶる手段として利用してきたのは中国よりもアメリカだと思うのですけどね。
そういう意味ではもっとゴタゴタしても良いと思う>日米関係

投稿: himorogi | 2009.10.28 02:11

>米国政府としてはその後は日本を過度に刺激せず、とりあえず沈静化し、ある程度腰を据え、韓国の盧武鉉政権のような末路を忍耐強く待つのではないかとも思われた。

こうするのが一番賢いと思います。

>在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。

民主党がそうしたくても、アメリカにはそんな考えは少しもないかもしれないわな。

>エントリに書き写しながら再読すると、怒りというよりは、何考えているんだ日本人という、違和感のほうが強いのかもしれないと思った。しかし、この違和感は、すでに韓国盧武鉉政権時代に米国は慣れてもいる。

日本は分裂国家ではないから、韓国の盧武鉉政権ほど極端ではないと思います。ただ、民主党には旧社会党の隠れ北朝鮮シンパはある程度いるでしょうね。しかも強烈な連中が。


社民党も、与党になってある程度は聞き分けがよくなるんじゃないですか。村山内閣のときがそうだったし。野党になったら、野次飛ばして揚げ足取ることしかできないのは、よく知っているはずだから。現時点の日本は、残念ながら、どう考えても沖縄から米軍を追い出す実力を持っていませんよ。実力の担保がない以上、公約を反故にしないといけなくなるのはどうにもなりません。

投稿: enneagram | 2009.10.28 08:50

お怒りは分かりますっていうか、共感しますが、訳が荒れている気がします。

Mr. Hatoyama may feel that he's simply sticking to a campaign pledge to put more distance between Japan and the U.S.

鳩山氏は日米間に距離を置こうとする選挙公約を守ろうとしているだけだと自分では思ってるのかもしれない。

But it doesn't sound like he's thought much about the alternatives.

しかし、彼は、何を持って代替とするのかきちんと考えてないように見える。

Will Japan spend more on its own defense?

日本は、自国の防衛にもっと金を出すつもりなのか?

These are the questions Japan's new prime minister needs to be asking, rather than putting on a kabuki show on defense.

これらが日本の新首相が問うべき問題である。防衛問題で歌舞伎を演じることは必要ではない。

投稿: akira | 2009.10.28 12:29

このゲーツは93年時には米国の最大の脅威は日本(経済)と言っていた。
こんな不快感をいちいち取り上げられても、だからどうなんだ感が強い。
もしかして、アメリカの機嫌を損ねるのは日本の国益を損なうって話ですか?

投稿: 通りすがり | 2009.10.28 14:35

普天間移設先をめぐっての国家レベルの駆引きと、イデオロギーの代理戦争、それに応じた地元の醜い直接利権誘導が沖縄に渦巻いているのは当地に住まれたことのあるスレ主様のご案内のとおりです。このgdgdを政権交代によって(青臭い防衛論であろうと)いったんリセットできるのは有意義と思われませんでしょうか。

投稿: | 2009.10.28 20:27

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