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2009.10.12

どうやらあと20年くらい、地球温暖化は進みそうにない

 どうやらあと20年くらいは、地球温暖化は進展しなさそうだ。9日のBBC「What happened to global warming? (地球温暖化に何が起きたか?)」(参照)を読んでそう思った。率直に言うと、私としては科学的議論がどうたらということではない。そうではなく、日本で言えばNHKみたいな公共放送であるBBCが気候変動懐疑論者(Climate change sceptics)の話をそれなりに、おちょくりでもなく取り上げてきたのかと驚いたということだ。つまり、このあたりが一般向けの国際ジャーナリズム的な転機の潮時の合図なのかなと思ったのだった。


What happened to global warming?

 科学と非科学は厳密に区別ができると言う人々がいるが、私には、地球温暖化の是非について問われるとよくわからなくなる。そのあたりは以前、「極東ブログ:[書評]正しく知る地球温暖化(赤祖父俊一)」(参照)にも書いた。もっとも、これは科学対非科学というより、科学対科学の対立ということでもある。ただし、どっちにしても科学で真実が極まるというものでもなさそうだ。
 私としては、赤祖父先生の意見にけっこう説得されている面があるので、地球温暖化は科学的に見て正しいのか保留状態だが、それでも化石燃料に依存した現代文明のあり方は政治的に見て好ましいとは思えないので、まあ、地球温暖化は科学的真実というより宇宙船地球号の合意事項ということでいいんじゃないか、と納得している。日本の鳩山政権もがんばれと思っている。日本国民はみんな年間30万円以上の生活費をその阻止に当てると痛みを覚悟して鳩山さんを支持しているんだよ、と。
 BBCの報道だが、ありがちな気候変動懐疑論者のつまみ食いかなと読んでいくと、さらっと書いているわりに、おや、へぇと思うことが数点あった。ので、ちょっとブログのネタにいただこう。


This headline may come as a bit of a surprise, so too might that fact that the warmest year recorded globally was not in 2008 or 2007, but in 1998.

見出しにちょっとビックリした人もいるかもしれないが、記録が付けられてからこのかた、もっとも暑かった年はというと、2008年でも2007年でもなくて、1998年だったという事実も、ちょっとビックリ。

But it is true. For the last 11 years we have not observed any increase in global temperatures.

でも、本当なんですよ。過去11年間を振り返ると、地球の気温上昇は観察されていない。

And our climate models did not forecast it, even though man-made carbon dioxide, the gas thought to be responsible for warming our planet, has continued to rise.

しかも人類の気候モデルは予測に失敗している。地球温暖化の原因と見られる二酸化炭素を人類が排出しつづけているのに、予想できていない。

So what on Earth is going on?

地球に何が起きているんだ?

 ということで、まず、事実として、この10年間、地球の平均気温は上がっていない。気候変動懐疑論者にしてみると、温暖化の原因は太陽活動だから、それは太陽の問題でしょ、というわけだ。このあたりは、先に紹介した赤祖父先生もそうだった。
 しかし、こうした言明はミスリードとも言える。というのは、英国王立学会が二年前に行った調査では、太陽の要因は計算に含まれていて、そしてなおかつ、人類が排出する温暖化ガスによって地表気温が上昇していると結論しているからだ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の学者さんもそのことはすでに考慮の上とのことだ。つまり、地球温暖化の問題を推進してきた学者さんたちにとって、この10年の「異状」はけして異状ではない。
 だが、現実として見ると、地球の温暖化はこの10年は進んでいないのも事実。なので、気候変動懐疑論者も徐々に勢いづいてきた。地球温暖化なんてないんじゃないの、というのが証明されれば、革命的じゃないか("If proved correct, this could revolutionise the whole subject.")。
 BBCの記事の前半はこのように太陽活動論による気候変動懐疑論者の議論の紹介だが、後半、海洋科学に移る。
 結論から言うと、どうも地球の気候変動に大きな影響を与える海の温度だが、これはそれ自体の30年ほどの周期的な特性をもっているらしい。


These cycles in the past have lasted for nearly 30 years.

過去の(海温)サイクルはだいたい30年続いた。

So could global temperatures follow? The global cooling from 1945 to 1977 coincided with one of these cold Pacific cycles.

それに地球の気温は追随するのか。1945年から1977年までの地球の寒冷化は、太平洋の寒冷サイクルの一つに一致する。

Professor Easterbrook says: "The PDO cool mode has replaced the warm mode in the Pacific Ocean, virtually assuring us of about 30 years of global cooling."

イーストブルック教授によれば、PDO(the Pacific decadal oscillation:太平洋の10年単位のサイクル変動)による寒冷化モデルは、太平洋の温暖化モデルに置き換わっている。実際、約30年では我々には確実だ、とのこと。

So what does it all mean? Climate change sceptics argue that this is evidence that they have been right all along.

何、それ? 気候変動懐疑論者の議論では、これもまた彼らが正しいことの証拠になる。


 もちろん、地球温暖化論では考慮済みの話ではあるらしい。まあ、そうこなくちゃ。とはいえ、向こう20年くらいは寒冷化が続くという予想は認めている。

To confuse the issue even further, last month Mojib Latif, a member of the IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) says that we may indeed be in a period of cooling worldwide temperatures that could last another 10-20 years.

話がややこしいのは、先月のことだが、IPCCのメンバーであるモジブ・レイティフ氏は、向こう10年から20年の間は、世界的に見て寒冷化の状態にあるだろうと述べた。


 温暖化論のIPCCにしてみると、この寒冷化の時代が終われば、その埋め合わせで温暖化ガスの効果が強化され、結局温暖化になるということらしい。
 それでも、ようするに、あと20年くらいは、地球は寒冷化するというのは、現状正しい認識として妥当なようだし、それは地球温暖化の議論とも、鳩山イニシアティブとも矛盾しない。
 でも、そうは言っても、ねえ。

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「科学」カテゴリの記事

コメント

田舎では焼き芋なんて普通にやってますからね。焼き芋うめえwwwwwwwww

投稿: rabi | 2009.10.12 16:39

僕は余りBBCには行かないのですがNYTなどを読んでみると結構両サイドを紹介したりします(じゃなければpolitically incorrectなので)。AGW懐疑論を報じてるのは全然珍しくはないと思うんですけどねぇ。

この記事もHadleyのデータをcherry pickしたりPiers Corbynみたいな気象予報士を四塔の一角みたいに紹介したりするのもどうかと。メソッドの詳細や論文の提出などしてないみたいですし。まぁ彼の予測が当たれば莫大な資産が入るからオープンにする訳ないか。

温暖化の議論は終わってないと報じてるが1970年代の温暖化議論も1920年代のタバコ-肺がん関係も同じ事言ってたですよね。つまり僕はメディアは懐疑論に時間を与えすぎ派です。2009年、ぁぁ暑い(笑)。

投稿: apeescape | 2009.10.12 17:27

finalventさん、こんにちは、

気象現象こそべき分布かなと。それこそ相転移があちこちにあるから気象現象なわけです。この範囲くらいでだいたい推移するだろうなと予測することは可能かもしれませんが、唐突に変化することがないとはいえないファットテールなのだと私は思います。

投稿: ひでき | 2009.10.12 20:22

温暖化=人間による仕業を指示する連中は、氷河期がなぜ終わったかを説明できないんだ。だから心配すんな。

投稿: 心配すんな | 2009.10.12 23:11

> So what on Earth is going on?
うまいなぁ

投稿: えーご | 2009.10.12 23:36

 今年は冷夏でしたな。我が家の不味い米の収穫量は1反8畝で18俵。親戚や友人知人に配って後は我が家で食してお仕舞い。売る物はござんせん。

 温暖化も寒冷化も、今のところ関係御座いません。

投稿: 野ぐそ | 2009.10.13 00:11

な、なんとこの10年は気温が上がっていないだと!ぶったまげた!!

それじゃ巨大ハリケーンとかツバル水没とかマラリアが日本へとか氷河融解、とかの異常気象報道は何だったのだぁあああ!すべて局部的な変動だというのかい?

げに怖ろしきは報道の過熱化ではあるまいか?プ

投稿: 玉虫 | 2009.10.13 02:31

懐疑論派はまず経済活動推進からくるバイアスを払拭しないといけないですね。
グリーン・ニューディールとか言われると簡単に乗り過ぎです。

投稿: cyberbob:-) | 2009.10.13 08:08

一応、大気中の二酸化炭素濃度は少しずつ増大しているのは間違いないと思います。

でも、今くらいなら、海洋の深層水をくみ上げて、巨大褐藻類を人工的に大量生育させれば、瞬く間に濃度減少が起きるような気もするんです。

ハイパーカミオカンデで太陽ニュートリノの増減の定時観測できないかなあ。太陽の挙動が素粒子単位でいろいろわかることで、地球環境、特に海流や気象のことなんかはもっとよくわかるようになるような気がするんですが。

投稿: enneagram | 2009.10.13 09:04

20年後には未曽有の温暖化が来るのでは?

投稿: | 2009.10.13 09:36

所詮は太陽の機嫌次第。
人間ごときが何かしたって変わるレベルの事象じゃないってこと。
温暖化とやたら騒ぐ理由は裏にこそあるということ。

投稿:   | 2009.10.13 12:34

温暖化が本当にあるかどうかはともかく、排出権の売買なんてものは絶対にやめるべきだと思う。
ちゃんと、各国が責任を持って減らさなければ意味はない。

投稿: | 2009.10.13 17:25

この辺の論争を読むと良いのでは?

エネルギー・資源学会のメール討論 http://www.jser.gr.jp/activity/e-mail/boutou2.pdf

3-4ヶ月前に読んだ時は疲労コンバイになりました

で、今のところ個人的には以下のような立ち位置です

IPCCのデータ等について
元になる平均気温データの信頼性にバラつきがある点はどうしようもないが、
以前指摘されたような論点については真摯に対応しているし
排他的ではなく、広く学術的な知見・研究結果を取り入れるべく他所からの参画も歓迎しているようなので
今後は信用しても良さそう
ただ意図的ではないかも知れないが、第5次評価報告書の発行が2013年から2014年頃というのはCOP15が今年12月ということを考えると遅すぎる

過去の平均気温そのもののデータ精度は
かなり低いと思いますので1998年が一番暑かったって
何に基づいていっているのかチェックが必要ですね

ただ、そのチェックも上と同様に相当疲労しそうな感じ

後日時間があればトライしたいです

投稿: 健冒症 | 2009.10.13 17:28

あと20年後には世界中の氷河が消えているかもしれませんね。小さい島国とかと一緒に。

投稿: | 2009.10.13 18:55

仮に本当に太陽活動が原因で温暖化が起こっているとしても、二酸化炭素が原因の一つとして可能性がある限り、対策を講じないのは愚かだ。
しかも二酸化炭素を削減すれば地球の環境保護にもつながる可能性があり、これにより最終的には我々の生活に良い影響を及ぼすだろうと思う。

投稿: by by by | 2009.10.13 21:26

>過去11年間を振り返ると、地球の気温上昇は観察されていない。
Hadleyのデータは一番温暖化の影響を受けた北極のデータを含んでない。含んでるNASAのデータは2005年が一番暑いとなってる。しかもトレンドを見れば上昇してますよ。
http://www.realclimate.org/index.php/archives/2009/10/a-warming-pause/

>温暖化=人間による仕業を指示する連中は、氷河期がなぜ終わったかを説明できないんだ
そうイデオロギー的にならんでも(笑)。太陽活動らの自然作用とCO2両方が気温変動に貢献していると考えられないのですか?

>所詮は太陽の機嫌次第。
太陽の活動が低いくせに気温のトレンドは上昇してますよ。

>でも、今くらいなら、海洋の深層水をくみ上げて、巨大褐藻類を人工的に大量生育させれば、瞬く間に濃度減少が起きるような気もするんです。
すごいリッチですね(笑)。

投稿: apeescape | 2009.10.14 07:35

自動翻訳を使っているのでしょうか。訳文でところどころ、おかしなところが。

上の「えーご」さんのコメント:
> So what on Earth is going on?
うまいなぁ

は、そのことの指摘でしょうが、この慣用的表現でのearthには地球という意味では無いでしょう。「いったいどうなっているの?」という意味。そこで使われているearthをcapitalizeしたのは、ちょっと駄洒落っぽい気持ちでしょう。

投稿: mi | 2009.10.14 17:31

http://sankei.jp.msn.com/science/science/090821/scn0908211047001-n1.htm
7月の世界の海面水温は、過去約130年間で最も高い16・99度だったことが20日、米海洋大気局(NOAA)気候データセンターのまとめで分かった。これまで最高だった1998年の記録を0・01度、20世紀の平均を0・59度、それぞれ上回った。

海は一度温まると冷めにくい性質があり、専門家らは「陸地の気温上昇以上に不吉な兆候だ」と指摘している。


ということで、今も1998年並みは変わっていないですね。BBCでも2010年から2015年の大半は1998年より暑くなる可能性ありとも紹介してます。

投稿: 佐藤秀 | 2009.10.15 23:35

北極の氷は2007年をピークにだいぶ回復してきてますね^^
http://www.ijis.iarc.uaf.edu/jp/seaice/extent.htm

投稿: | 2009.10.18 01:51

自分の立ち位置としては二酸化炭素が温暖化の原因ってのは懐疑的。
ただ、環境保護の観点から最近のエコブームはいいことだと考えています。
政治的、企業的にCO2削減に取り組むのはしょうがないし、地球規模での科学力があがるのならCO2が原因でなかったとしてもどこかにその技術は活かされると考えています。

投稿: toyo | 2009.11.14 13:32

地球温暖化の原因が、CO2なのか? あちこち調べてみました。結論は、そんな訳ねえだろ!というものでした。CO2
原因説には、データ以外、科学的根拠が無いのです。CO2
否定説には、科学的根拠が明確です。では何故CO2原因説が、かく流布されているのか?アル・ゴアという人物を調べると、なんとなく解ってきたりします。

投稿: waraizuki | 2009.12.19 18:15

>ハイパーカミオカンデで太陽ニュートリノの増減の定時観測できないかなあ。太陽の挙動が素粒子単位でいろいろわかることで、地球環境、特に海流や気象のことなんかはもっとよくわかるようになるような気がするんですが。

これは無理。
太陽光線は数十万年前の太陽中心の核融合で生まれた光が数十万年かかって太陽表面にでてきたもの。
それに対してニュートリノは今現在の太陽の中心で生まれてすぐ出てきたもの。

投稿: | 2010.01.10 00:57

こんなに猛暑なのに、ノンキですね?自動車使用者、タクシー、トラック、深夜営業店の増加。世界中の森林、環境破壊。タバコの使用。などなどなど人間が、原因です

投稿: ホットマン | 2010.08.24 01:11

地球温暖化とは?
極の氷がすべて解けたら海面が65メートルになります。気温は85度になります。とのことでNGO関係団体会社がありますがほんとうでしょうか?あなたはCO2削減について考えたことがありますか?とのことで会員集めをしているようですが、CO2が原因なのでしょうか?教えてください。

投稿: みき | 2012.01.13 18:12

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