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2009.09.01

民主党政権への米英紙の関心は日米同盟

 フィナンシャルタイムズ、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストの社説で民主党政権成立の話題が掲載されていた。結論から言えば、政権交代でようやく日本も民主主義の仲間入りができてよかったねという期待と、日米同盟について指針を出してほしいという懸念の二つが軸になっていた。欧米ならではの上から目線という印象もないではないが、基本には彼らの歴史意識としては、日本の自民党は冷戦のために米国が作成した政党なのだから、そういう視点もしかたがないだろう。以下、ざっくりメモ風に見ておきたい。
 フィナンシャルタイムズは「Sun rises on a new era for Japan(新時代の日が昇る)」(参照)で新政権の期待を述べたあと、日米同盟を基軸に外交について意見を出している。


Finally, on foreign policy, where the new government wants to re-calibrate relations with the US and the rest of Asia, particularly China, it must quickly graduate from opposition posturing to practical politics.

最後に外交についてだが、新政権は米国、アジア諸国、特に中国との関係を改めようとしているようだが、なんでもかんでも反対の野党を早急に卒業して現実の政治に向き合わなければならない。

It is perfectly acceptable to point out that Japan’s future is intertwined with that of Asia and that a one-dimensional foreign policy of subservience to Washington is inadequate. But there are ways of reaching out to Asia and of asserting Japan’s national interest without causing jitters in Washington.

日本の未来がアジアに織り込まれること、また米国政府にべったりの外交は適切ではないということは、まことにごもっともな話だ。しかし、アジアに手を伸ばすにしろ、米国政府を不安に陥れずに国益を主張するにしろ、物事にはやり方がある。

Japan must tell the US clearly what it can and cannot do, both in terms of military support, say in refuelling ships in the Indian Ocean, and in other areas, such as transfer of environmental technology, where it has much to offer.

日本は米国に対して、はっきりと、軍事支援とその他の分野で何ができて何ができないかを言うべきだ。つまり、インド洋上給油活動と、より提供可能な環境技術の移転についてだ。

Critics are right to point out that the DPJ is a mixed ideological bag. Now it has gained power, it must prove it can rally around a coherent and pragmatic set of principles. Japan’s voters have revealed themselves to be extremely skittish. They will not settle for anything less.

日本民主党は各種イデオロギーの詰め合わせセットだと批判するのはもっともなことだ。が、政権を獲得しちゃったんだから、一貫して現実的な原則のもとで結集できることを示す必要がある。今回の選挙で日本の有権者の尻が極めて軽いことは明白になった。党内一致すらできなければ、有権者の気は変わるだろう。


 いちいちごもっともなところだが、たぶん、こうしたご意見は通じないのではないか。
 ニューヨークタイムズ紙社説「Japan’s New Leadership(日本の新しい指導体制)」(参照)は、政権交代に概ね好意的だが、鳩山論文(参照)を掲載したこともあり、その文脈から懸念を表明していた。

One concern: Mr. Hatoyama’s suggestion that Japan not renew the mandate for its ships on a refueling mission in the Indian Ocean in support of United States military operations in Afghanistan. President Obama is implementing a new Afghan strategy. Japan should continue its risk-free mission, at least through next spring.

気がかり:鳩山氏が、アフガニスタンにおける米国軍事活動支援のためのインド洋上給油活動の指令を継続しないと示唆していること。米国オバマ大統領は新アフガニスタン戦略を遂行中だ。日本は、リスクのない活動を、少なくとも来春末まで継続すべきだ。


 日本叩きで朝日新聞と仲むつまじいリベラルなニューヨークタイムズが、親切にもインド洋上給油活動はリスクがなくてよいよと提言するの図なのだが、しかし民主党はよりリスキーな選択をすると、元小沢党首は、2007年岩波書店「世界」11月号「公開書簡 今こそ国際安全保障の原則確立を 川端清隆氏への手紙」(参照)で確言していた。

もちろん、今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています。また、スーダン(ダルフール)については、パン・ギムン国連事務総長がかつてない最大規模のPKO部隊を派遣したいと言っていますが、PKOは完全な形での国連活動ですから、当然、それにも参加すべきだと考えています。

 この見解が小沢氏個人のものではないのは、次の明言からわかる。

貴方は海外にいらっしゃるから、民主党の政策論議の結論をご存知ないのかもしれませんが、昨年末まで2ヵ月余の党内論議の末、先ほど私が述べたような方針(「政権政策の基本方針」第三章)を決定しています。このことは正しく認識しておいていただきたいと思います。

 「政権政策の基本方針」第三章(参照)を見ると、次のとおり。

8.国連平和活動への積極参加
 国連は二度に亘る大戦の反省に基づき創設された人類の大いなる財産であり、これを中心に世界の平和を築いていかなければならない。
 国連の平和活動は、国際社会における積極的な役割を求める憲法の理念に合致し、また主権国家の自衛権行使とは性格を異にしていることから、国連憲章第41条及び42条に拠るものも含めて、国連の要請に基づいて、わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加する。

 おそらくニューヨークタイムズはそのリスクを考えに入れたうえで、先の懸念を表明していると言えるだろう。
 ワシントンポスト紙社説「Shake-Up in Japan(日本の変革)」(参照)は、フィナンシャルタイムズやニューヨークタイムズよりも踏み込んだ意見を述べている。自民党政権の失敗から小沢一郎氏へ言及する指摘が興味深い。それは単なる批判ではなく、現実政治への期待でもあるようだ。

Can the Democratic Party of Japan, a mix of former LDP politicians, ex-socialists and civic activists, succeed where the LDP has failed? One irony of the party's reform message is that its behind-the-scenes leader is Ichiro Ozawa, a former LDP boss with a knack for power politics.

元自民党議員や元社会主義者、市民活動家のごちゃ混ぜである日本民主党に、自民党が失敗した諸問題を解決できるだろうか? 民主党の改革案の皮肉の一つは、陰のボスである小沢一郎だ。彼は力の政治の才覚をもった自民党のボスでもあった。


 日本経済についても言及している。

Japan needs further restructuring of an economy that depends heavily on exports to support less-efficient sectors such as construction and agriculture. Greater reliance on domestic demand would help both hard-pressed Japanese families and the United States, insofar as such a policy might reduce Japan's trade surplus: The DPJ has several pro-consumption proposals, from lower highway tolls to increased support for couples with children.

日本はさらなる経済の構造改革を必要としている。現状では、建築業や農業など効率の悪い分野を支援するために輸出への依存度が高い。民主党の政策は日本の貿易黒字が削減できるという意味で、国内需要への依存が増せば、逼迫した日本の家計と米国の双方を援助することになる。例えば、高速道路料金を下げることから、子育て家族の支援を増やすなど、消費を活性させる政策がそれに当たる。

Alas, the party has been less clear about how it will pay for these goodies, no small omission given that the national debt is already almost twice Japan's gross domestic product. Unfortunately, too, the DPJ bought the votes of Japan's farmers with promises of money and protection.

嘆かわしいことだが、民主党はその財源を明らかにしてこなかった。国内総生産(GDP)の二倍の財政赤字があるというのにだ。しかも、民主党は農家の票を得るためにバラマキと保護まで約束したのは、残念な話だ。


 日米同盟についても、当然言及している。

There will no doubt be room for negotiation with the Obama administration, perhaps over such issues as the basing of U.S. Marines in Okinawa. But the threat of a nuclear North Korea makes Japan's neighborhood too dangerous, we think, for the government in Tokyo to seek a rupture with Washington or for the Obama administration to let one develop.

沖縄海兵隊基地問題などでオバマ政権と交渉の余地がないわけではない。しかし、北朝鮮の核化で日本近隣は非常に危険なので、思うに、日本の政府は米国政府と決裂するわけにはいかないし、オバマ政権にとっても放置するわけにはいかない。


 英語でさらっと目を通したときは、この米人の感覚は知っておいたほうがいいかなと思ったが、改めて読み直してみると、米国様沸騰寸前という印象がある。
 引用中、"the basing of U.S. Marines in Okinawa"というのは、日本で言うところの普天間基地移設問題である。すでに選挙後、即座に米国は言及した。朝日新聞記事「「普天間移設、再交渉しない」米国務省、民主政権牽制」(参照)より。

米国務省のケリー報道官は8月31日、総選挙で大勝した民主党が沖縄県の米軍普天間飛行場の移設計画見直しに言及していることに関連し「米政府は普天間飛行場の移設計画や(在沖縄米海兵隊の)グアム移転計画について、日本政府と再交渉するつもりはない」と記者団に述べ、同飛行場の移設や海兵隊グアム移転を計画通り進める考えを示した。

 この文脈を事実上踏まえて、先のワシントンポスト紙社説は、そうはいっても交渉の余地はあるだろうとしているわけだ。その余地というか、自民党案とは異なるシグナル(参照)もまったくないわけでもない。

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コメント

ファイナンシャルタイムズは、ろくに知りもしないし調べもしないで記事を書いてしまう編集長がいる程度のメディアなのでどうしようもないです。
http://www.ft.com/cms/s/0/0365d6f6-9635-11de-84d1-00144feabdc0.html

The former official’s remark was meant as gentle provocation to his countrymen, most of whom would take it as given that Japan was the most politically sophisticated country in east Asia. Yet in some ways, even now, it lags behind. Both South Korea, where military dictatorship ended in 1987, and Taiwan, where the authoritarian Kuomintang lost power (after half a century in power) in 2000, have seen power shift from one party to another and then back again. Japan, so far, has pulled off that feat only once.

日本は戦後に始まった新興国家じゃない。何度も政権交代してきた歴史を持っているというのに。

投稿: としさと | 2009.09.01 22:18

小沢一郎氏について言えば、アメリカ合衆国が小沢のやっていることは気に入らないと判断したら、また、ロッキード事件みたいな政治スキャンダルをアメリカ発で作り出すのではないかと思うというところです。

でも、今の中国には、周恩来のような政治家はたぶんいないだろうから、小沢さんは大丈夫でしょう。

むしろ、ロシアに周恩来みたいな政治家がいて、鳩山由紀夫首相がみごとに相手の仕掛けた嵌め手にはまったら、アメリカは、鳩山由紀夫首相のことを、故田中角栄首相なんてもんじゃなく許さないだろうと思います。

故鳩山一郎首相が日ソ国交回復(自主外交!)をした人なので鳩山由紀夫首相にも、ロシアの地雷には用心して欲しいものだと思っています。特に、鳩山由紀夫首相の選挙区は北海道でもありますので。

投稿: enneagram | 2009.09.02 08:57

鳩山や小沢が自民党を出て民主党を作った意味を考えないといけないのかも。
自民党の中で討米をやると、流石に日本にとってリスクが大きい。自民党は一応、保守本流に近い政党だから。
だからこそ、討米用の自称リベラル政党の民主党を、自民党の外にこしらえる意味がある。
日本民主党がアメリカと刺し違えて、その後、民主党に全て責任を押し付けて、自民党が復活すれば、何の問題もない。
アメリカはアフガンでも追い込まれている。アフガンの米軍関係者は、アフガンでは勝てないことを口にしている。
ここで、日本が経済の神風攻撃をすれば、アメリカはアウト。アメリカが中東を一度失えば、もう、アメリカの覇権は確実に崩壊。日本経済も同時に崩壊だが、その後、自民党が復活して、「民主党がやったことです。我々は民主党と違う考えだった。」と言えばよいだけ。

投稿: jieigyou | 2009.09.02 11:14

アメリカの軍事力は強大で、誰も歯向かいませんよ
だから、アメリカは、こういう鳩山や小沢のような連中が大好きです。
鳩山や小沢は、そういう要員なんだと思いますけどね。私は陰謀論者なので。

投稿: PK | 2009.09.02 12:36

鳩山代表が、Voiceの論文で、何か間違ったことでも言っているんですか。

そうは思えませんけれど。

当たり前のことを言っているのに、当たり前でない反応があるというのは、アメリカのほうが当たり前でなくなっているのでは?

投稿: enneagram | 2009.09.03 08:19

逆のたとえを出せば、たとえば鳩山代表が論文で、

「アメリカ発のIT革命のおかげで、世界は劇的にフラット化できた。人類はその大きな恩恵に、今、浴している。そして、日本にとって、ロシアと中国は江戸時代以来の仮想敵国であり、それゆえ、日米は、現在の片務的な日米安全保障条約を双務的な軍事同盟条約に改正すべきである」

とでも論述すれば、アメリカは論文を歓迎するのかしら。たぶんそんなことをいったら、頭がおかしいと思われるだけだと思います。

鳩山論文をアメリカが問題にしているというけれど、アメリカの要人の中では、具体的に、誰と誰が不快感をあらわにしているのか明確にすべき。

私は、小沢さんを党役員として処遇する鳩山代表を正直言って好きになれないけれど、あいまいな外圧を持ち出して、鳩山代表を落としいれようとするやり方を採る人たちとは、絶対に連帯できないね。ニューヨーク・タイムズに掲載された論文の英訳文は、どう読んでも、外交問題に発展しそうなほど問題を含んだ内容とは思われません。

投稿: enneagram | 2009.09.03 15:10

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