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2009.09.08

自民党の未来は霧深き「森」のなか

 私は政局にはほとんど関心はないが、政権交代があり、日本も二大政党化するというなら、代替政党として野党となった自民党にも関心が向けられることだろう。現状、自民党の総裁指名選挙はどうなっただろうかとニュースを見たら、未だにもめているようだった。情けないことだなという思いと、すでに小泉内閣で離党した党員を安倍内閣で復党させた時点で、自民党は終わっているのだから現状は終わりの確認という程度かという思いと相半ば。民主党も自民党も大きな政府を志向している点で、もはや時代にそぐわなくなっているのだが、それがはっきりと可視になった時点で、深い傷を負った日本に新しい政治の枠組みができるかどうか心配といえば心配だが、それこそ国民の総意の問題だろう。ブロガーとしては時代を記録し、そして自分の意見をわずかに孤独に書くばかり。
 先日の選挙で自民党が大敗し、敗軍の将として麻生さんが語っているなかに、正確な言葉は忘れたが、敗北の責任を取って引退するとさらりと述べた後、党内のこともあるから自分の身の振り方は自分勝手に決められるものではないかと、留保していたのが心にひっかかった。私としては麻生さんらしい粗忽と配慮だなと微笑ましく思ったが、まさかその後、ここまで自民党がぐだぐだするとも想定していなかった。
 渦中「麻生降ろし」がうでうでと画策されていたのだから、その玉がぞろぞろと上がってくるのではないかと思っていたが、そうでもない。今朝未明時刻の読売記事「麻生首相、16日に総裁辞任へ…混乱収拾図る」(参照)を見ると、自民党内の混乱を収拾すべく、麻生さん自身が自民党総裁指名選挙前に自ら身を引く決意をしたようだ。どんだけ麻生さんに頼っているだよ、というのと、この体たらく自民党を知って敗軍の将を勤めることが人生最後の仕事になる運命というのもあるのだと、歴史というものの感触を学ぶ。個人的には麻生さんは引退後、しかし、もう一つ大きな仕事をされるのではないかなと期待している。
 「麻生降ろし」とはなんだったのだろう。冒頭書いたように私は政局には関心ないし、前二首相がころころと政権を放り投げる状態で、またぞろ首相に政権を投げ出せるわけいかないだろうに、なんなんだろうこの動きはと思っていた。反面、その「麻生降ろし」の本丸が中川秀直自民党元幹事長だというのも知って微妙な思いはあった。
 私は大雑把に言えば、小さい政府を志向する点では小泉改革は間違っていないし、「新自由主義」というのは無内容なレッテルに過ぎない、また靖国神社参拝問題など右翼・左翼が騒ぎ立てるような問題は日本の存亡における疑似問題というか雑音に過ぎない、と考えている。そうした立場にもっとも近い政治家というと、自分がその政治家を好きか嫌いかというのを別にすれば、上げ潮派の中川さんということになるし、御神輿に載せるなら、これも自分の好悪とは別に小池百合子元防衛相というのもありだろうと思っていた。
 で、あれば、「麻生降ろし」など姑息なことをやらずに、どうせ衆院選で自民党は敗北するのだから、小泉チルドレンをつれて約束の地へエクソダスしてもよいのではないかと思ったが、その気配もなかった。「おい、小泉チルドレン、君たち、存在しなくなるんだよ、逃げろよ」と思ったが、政治観において、ええ塩梅の力の抜け加減にして熱量足りずの私としては、その気概がない政治家なら最初からだめでしょと見ていた。
 渡辺喜美元行革担当相はそれとは別に離党し、誰のものでもない「みんなの党」という面白政党を作ったが、恐らく平沼赳夫元経済産業相と同じく、キャスティングヴォート狙いだったのだろうが、後が続かなかったし、読みを大きく損じた。渡辺さんに中川さんが続くなら本物だろうになとは思ったが、なかった。そのあたりで、政局ってわからんものだな、中川さんが自民党にへばりついて、小泉チルドレンを全滅させるだけのメリットがあるのか、わからんなと思っていた。
 政局というのは多様に語られ、むしろ語りの面白さが売りのつまらぬ物語なのだが、この背景はいったいなんなのだろうとは、いぶかしく思っていたし、それなりに筋の通った物語でもないものかとは見つくろっていたが、私が目にしたものでは、「フォーサイト」9月号「深層レポート 日本の政治 198 『現実路線』へのシフト図る民主党の敵は『楽勝ムード』(参照)がそれに一番近い。政局に疎い私のことだから、この話は誰もが知っているということかもしれない。話題のシーンは、今となれば、「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」みたいな自民党両院総決起集会のことだ。


 満場が大いに盛り上がった。だが、こんな勢いも見かけ倒しにすぎない。実際の自民党は、解散に至るまでのドタバタ劇で、深く傷ついてしまっていた。それを象徴するような場面が、この決起集会が終わるころにあった。町村信孝前官房長官が「反麻生勢力」の急先鋒である中川秀直元幹事長に近寄って、こんなふうにささやいたのだ。
「これから戦いが始まります。党や派閥の結束を乱すようなことを言うのはやめてください」

 町村さんの苦言は、あの状況なら特段の含みはないようにも思うが、同記事はそれを受けた中川さんの心中のドラマを面白く描いている。「麻生降ろし」をするなら、自民党議員総会開催を求める署名も順調に進んでいたのだから、最後のチャンスだった。状況的にもそれは面白いドラマになるが、問題はその先だ。このあたり政局話の真相がいつもわからないところではある。

 これに対して、麻生擁護派は情報戦を仕掛けてきた。十四日夜、中川氏が仲間とともに自民党を離党し新党を旗揚げするとの怪情報が政界を駆けめぐったのだった。

 この怪情報話はフォーサイト記事だけの話ではない。7月15日付け産経新聞系Zakzak「麻生降ろし不発…中川秀直“新党結成”の怪情報」(参照)にもある。

 その情報とは「中川氏が、加藤、武部両氏に加え、塩崎恭久元官房長官らとともに小泉チルドレンを引き連れて離党し、新党結成に動き始めた」「先に自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相が目指す新党に合流するらしい」などというもので、メンバーには日本郵政の西川善文社長の続投問題で麻生太郎首相と対立する鳩山邦夫前総務相の名前も挙がっていた。

 「鳩山邦夫前総務相の名前も挙がっていた」という点で面白ろ情報だとすぐわかる仕立てではあるが、「加藤、武部両氏に加え、塩崎恭久元官房長官」というくだりのメンツの密談はあったようだ。逆に言えば、だからそこを突かれた形だったのだろう。名指しが効いた。
 私はミクシはほとんど利用しないのだが、Zakzak記事によると中川さんのミクシでは「さて、今夜は、とんでもない謀略情報がかけめぐりました。私に賛同する議員を疑心暗鬼にさせて、お前も離党するのかと切り崩すのが目的なのでしょう」とあったそうだ。また、

 中川氏は14日夜、記者団に「一切ない。話したこともないし、考えたこともない」と否定。さらに、「官邸の方から、そんな謀略情報が流れているようだ」と述べた。官邸サイドが、両院議員総会から総裁選前倒しという流れを求める勢力を分断しようとしたのだろう、という見方だ。

 ある意味、よくある怪文書による陰謀だし、私もこの時は、くだらねーなと読み過ごして、「官邸の方から」については考えていなかった。というより、自民党としては引き締めとして当然だろうくらいに考えていた。しかし現時点でから振り返ると、微妙に面白い話ではある。フォーサイト記事に戻る。密談メンバーの思いについて。

 メンバーたちは、ほっと胸をなで下ろしたが「派閥の上の方」とは誰か。その場にいた全員が暗黙のうちに、それは森元首相のことを指していると理解した。


情報戦を仕掛けたのが、本当に森氏だったのかどうかという真相は霧の中だが、いずれにしても、偽情報は効果覿面だったわけだ。

 フォーサイト記事はお茶を濁しているが、それでも森元首相だろうなとは誰もが思うだろう。安倍政権以降のドタバタの影にはいつも森さんがいる。
 もっとも、かくいう森さんも今回の選挙ではしょっぱい目に合っているのだから、そんな力があるのかわからないし、麻生政権で「ああ玉砕」となるのもわからないわけもないだろうにとも思う。
 だが、現状の自民党の総裁指名選挙の混乱を見ていると、逆に、自民党のグリップを握ったのは森元首相だろうし、そもそも小泉チルドレンを一掃することがそのグリップのメリットだったのだろうと思えてくる。かくして残る自民党ってなんなの?

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コメント

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この件に関しては、一読することをお勧めします。
書評も
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c04449900fe06b86908a9c8b46061796

http://d.hatena.ne.jp/solar/20090903と二つでています。
特に驚いたのが池田信夫先生が真面目に書評していることですね。あの方は大抵の著者にはけちをつけますが、もし、真面目に論評した本は間違いなくいい本です。

投稿: F.Nakajima | 2009.09.08 13:28

実は、この件については、私はあまり心配していないんです。

時間は掛かるかもしれないけれど、たぶん、小渕優子さんや、小泉進次郎さんの世代が、政権交代にふさわしい責任政党を成立させてくれると期待しています。

ただ、それが、自民党のひこばえが大きくなるのか、どこかに接木するのか、まるっきり別のところに挿し木をするのか、それは未来のことだから詳細は不明だけれど、そんなに心配することは無いと思います。

明治維新の時だって、30年たって日清戦争が始まれば、新政府の藩閥と旧佐幕派の生き残りが協力できたんです。少なくとも社会を機能させるためには、何をしてよくて、何をしてはいけないかは、民主党の若い人たちも、自民党の若い人たちも、きちっと最低限の知識は身につけているはずです。先生や私なんかより、今の30代、20代のリーダーたちのほうが、たぶん、ずっと優れた教育を受けていて、よっぽど賢いはずです。

投稿: enneagram | 2009.09.08 13:29

麻生降ろしというのは、小選挙区制でメディア支配が強くなったために、議員の価値判断が議員間の評価よりもメディアの評価に引きずられるようになった結果だと思います。
日本の明治維新と戦後成長は、米英の監督下で起きたことで、日本人の独力の事業ではないと思います。明治維新後に沖縄・台湾に展開する発想は日本人のものではありません。外国人の助言などが強く影響しているはず。
日本人の単独の改革事業は、大政翼賛新体制運動だと思います。

投稿: PK | 2009.09.08 14:10

大きな政府が時代にそぐわないと誰が決めたの?
そういう空気が今みたいな財界の意志がイデオロギーより国民の意志より優先される日本を作ったんじゃないの?

投稿: ななし | 2009.09.08 15:17

池田信夫さんはNHK出身、その本はNHKブックスからの出版です。
其れを考えると褒めているとしてもあまり当てにはなりませんね。

投稿: HK | 2009.09.08 15:43

大きな政府が時代にそぐわないのは、単純に少子高齢化だからじゃないのかな。
思えば民主党にも同じように党内が混乱しまくってた時期があったかと思いますが、結局は執行部が強権で押さえ込むしかないって事なんでしょうかね。
地方分権して、国と地方の権限をもうちょっと切り分けた上で国会議員を減らしたら、二大政党制も今よりは機能するんじゃないかとか思ったりします。
あと、自民党の首相指名選挙での投票先はリリーフエース・若林正俊氏に決まったみたいですね。
農相繋がりで次は石破さんとかだったら、濃い党首討論が見れそうで面白いかも知れません。

投稿: kaze | 2009.09.08 19:43

>時間は掛かるかもしれないけれど、たぶん、小渕優子さんや、小泉進次郎さんの世代が、政権交代にふさわしい責任政党を成立させてくれると期待しています。

え?ギャグ?え?
小渕とか小泉とか、どっから見ても利権集団のお神輿でしかない世襲議員にナニを期待しろと。

投稿: | 2009.09.08 21:06

前掲の書籍を読ませてもらった感想としては、今は、日本の大抵の政治的主張は使えません。
まず、民主党を攻撃するのももっともで、多分マニフェストのほとんどは反故にされてしまうでしょう。
しかし、同時に、有権者はそれを薄々わかっていても投票せざるを得ませんでした。
このことに対して、右翼の皆さんは、有権者汚職だとまでののしっていますけど、それは自業自得。あなたがたが新自由主義と手を結んだ時点で一蓮托生だったのですから。

さて、finalventさんが擁護する新自由主義ですが、言ってしまえば、日本の右翼・左翼が同時に反近代主義であり、そのアンチテーゼとして登場したことは否定しません。(最近、やっと山本七平や吉本隆明の主張がわかりましたよ。結局彼らの反近代主義が嫌いなんですね)ですが、リーマン破綻以後、新自由主義を正当化する根拠は失われました。新自由主義が成立する根拠に、経済が政府の干渉を受けずに自立的成長を遂げることが必要ですが、短くとも今後10年後までにそれが復活するとは私は思いません。

したがって、いまの日本の思想というのは結局、反近代としての右翼(古い自民)と左翼(民主)。反・反近代としての新自由主義(小泉・竹中)しかないという不毛な選択肢しかない世の中なんです。

投稿: F.Nakajima | 2009.09.08 21:30

>ななしさん
別にfinalventさんの意見が絶対というわけではないですし。
あなたが大きな政府を望むならそう主張し、その意に沿った政党を応援すれば良いだけのことです。国民の総意の問題、とはそういうことですよ。

投稿: カラ | 2009.09.08 21:58

 まぁ、なるようになるんじゃないですかね?

 私が最も危惧するのは、自由人文化が行き過ぎると用心棒商売が後追いで幅を利かせることなんですけどね。アメリカの6,70年代~8,90年代への流れが、正にそんな感じでしょ。

 用心棒商売ってのは、結局「強い者には逆らうな・長いものには巻かれろ」でね。巻いてくれる人や国があるうちはそれでいいですけど、無くなったら、それでお仕舞いですよ。

 そこんところは、気を付けておいた方がいいかもしれませんね。

投稿: 野ぐそ | 2009.09.08 22:46

 ちなみに、今回自民党が負けたのは、「小さな政府を放棄した」からではありません。むしろ「大きな政府への舵取りが中途半端」だったからです。これは、郵政の西川社長人事のときの世論にでています。
 finalvent さんの望む「小さな政府」主義者は、大政党には成長できないので、第三極としてキャスティングボートを握るほうがいいでしょう。そのほうが政策を実現できます。

投稿: タカダ | 2009.09.08 23:41

アメリカで政権交代といったら、単に共和党から民主党に政権が移るというだけでなく、福音派などロビー活動をしている連中の比重が変化する等があると思うのですが、
そういうことは大したことではないのでしょうか?
中東各国では政権選択でコーランの比重が変わるわけですし。
日本ではそこまでの変動はないと思います。

投稿: てんてけ | 2009.09.09 00:15

私は、世界的には、保守中道に属するらしいが、
日本では、極右で国家主義者でナチらしい。

小泉改革は、国外が信用できるという前提の下では、

愚かな馬鹿な狂った民主党よりは、整合性が取れ、論理的だった。

前提が崩れたから、失敗に終わっただけだ。
成長路線が崩れた以上、分配や支出の構造を粘り強く説得して変えていく道が、選択すべき道だ。

民主党のような論理性の無い馬鹿に4年も付き合うのかと思うとウンザリする。消費税を凍結だって!!!!!

投稿: PK | 2009.09.09 23:11

いや、PKさん、民主党なんて、上層部はほとんどがうそつきの集まりのはずだから、公約なんて、絶対に反故にしますよ。

でも、小泉改革の後の自民党が4年間総選挙しなかったように、民主党も4年間衆議院を解散させないで任期満了待ちをすることでしょう。これも国民の自業自得です。

私が一番心配するゆり戻しは、来年の参議院選挙で、劇的に投票率が低下してしまうことです。そうすると、自民党圧勝による衆参のねじれを創出できなくなってしまう。大半の国民に絶望的な政治不信にならないでほしい。今のところそう願っています。

投稿: enneagram | 2009.09.12 10:52

大きな政府、小さな政府というのもまた無意味なレッテルだというのがいまどきの常識ではないでしょうか

投稿: さて | 2009.09.16 11:08

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