« 民主党の行政改革は、ようするに小泉改革じゃないのか | トップページ | 酒井法子覚醒剤取締法違反容疑、司法取引ならぬマスコミ制裁取引か »

2009.08.07

民主党の租税特別措置見直しはビミョー

 民主党マニフェストβの税制の項目で掲げられている租税特別措置見直しの、やや詳細な話が読売新聞記事「民主、租税特別措置3割廃止で1兆円超捻出」(参照)で報道されていた。他ソースは見当たらないようなのと、私がこの問題を十分理解しているわけでもないので、おっちょこちょいかつ拙速な感想ということになるかもしれないが、書かないでいると忘れそうでもあるのでメモ書きしておこう。
 結論からいうと、ビミョー。そう悪くもないんじゃないのとは思った。租税特別措置見直しは、現下の文脈では財源捻出議論でもあり、自民党あたりからの風当たりが強いはずでもあるが、民主党の財源構想17兆円の内の1兆円分なので、枠組みからすればそう大きな比重でもない。「極東ブログ:民主党マニフェストの財源論は清和政策研究会提言に似ているのではないか」(参照)で触れた、民主党政策財源論の枠組みでは、「所得税の配偶者控除の廃止などで2兆7000億円」の「など」に当たるだろう。話が逸れるが「など」の租税特別措置見直しが1兆円となると、所得税の配偶者控除の廃止分は2兆円近いので、そっちのほうがけっこうな増税になりそうだ。
 複雑な税制の見直しは新しい政権にとって必須のものだろうし、民主党としてもこの問題は継続的に検討されていた。2007年11月29日ロイター記事「企業関連租税特別措置の抜本的見直し、民主党内では先送りの声も」でもそのようすが伺えた。


「租税特別措置は隠れた補助金」―――。こうした問題意識から、民主党は、租税特別措置の抜本的見直しを行うべく、各省庁からのヒアリングを続けている。しかし、どの企業にどの程度の恩恵があり、政策効果はどの位上がっているのか、という基本的なデータが揃わない状況。民主党税調幹部からは、来年1年かかって基本的なデータを集め、見直しはそれを基に考える、という意見も出始めている。

 当時、民主党は政権与党でもないこともあり、事実上ブラックボックスというか、禁断の聖域にぶち当たっていた。

 28日には総務省や財務省など6省、29日には経済産業省からヒアリングを行った。なかでも、経済産業省は、研究開発促進税制や情報基盤強化税制(IT促進税制)など比較的大規模な企業向け租税特別措置を抱えている。
 ただ、経産省が提出した資料には、民主党が求めた具体的な企業名や減税規模は記載されていない。ヒアリングの席上、民主党議員からは「個別企業ごとに見れば、一部上場企業でも相当使われているはず」との指摘があったが、経産省側は「国税庁しか把握していない」と繰り返し、明らかにはならなかった。

 私の印象では、この側面の民主党の政策も「やっぱそれって小泉改革じゃね」だが、リアル小泉改革を担った本間正明元政府税調会長の顛末を思い出すと……桑原桑原……(参照)。
 民主党マニフェストβに戻ると、租税特別措置見直しの理念と方針はこう謳われている(参照)。

租税特別措置透明化法の制定
 租税特別措置について、減税措置の適用状況、政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定します。
 特定の企業や団体が本来払うはずの税金を減免される点で、租税特別措置(租持)は実質的な補助金であると言えます。しかし、民主党の調査の結果、税務当局も要求官庁も各租特の必要性や効果を十分に検証しておらず、国民への説明責任を全く果たしていない実態が浮かび上がってきました。
 租特の透明化を進める中で、租特を含めた実質的な負担水準を明らかにし、それにより課税ベースが拡大した場合には、法人税率の水準を見直していきます。

 なんとなく、ふーんといった印象だし、「特定の企業や団体が本来払うはずの税金を減免」というのも違和感がないようだが、民主党の租税特別措置見直しは法人を狙っている。このことは民主党マニフェストβの別箇所にもある。

法人税改革の推進
 租税特別措置の抜本的な見直しを行いますが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していきます。
 なお、租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、現在の時限措置から恒久措置へと転換していきます。また、温暖化を中心とする環境対策、雇用の維持・拡大、自治体の工夫や努力などによる地域活性化などの重要課題への対応を法人税制の中で図ることも検討します。
 欠損金の繰戻還付制度は凍結を解除します。

 これだと基本の狙いは法人のように見える。それとこの政策だが、失敗したら後で法人税率のほうで調整するつもりということのようだ。自民党の現行の制度と結果的にはそれほど変わらないのではないかという印象はそのあたりにある。
 法人ターゲットに加えて気になるのは、「研究開発の促進など真に必要な措置」と「温暖化を中心とする環境対策」が触れられている点だ。後者の温暖化についていえば、高速道路無料化はピグー税の観点からすればべたな逆行だろうし、前者については後で触れたい。
 さてエントリのネタ元、読売新聞記事「民主、租税特別措置3割廃止で1兆円超捻出」に入る。まず大枠だが。

 財務省試算では、08年度の租税特別措置は減税分が約7・5兆円、増税分が約2・3兆円で、差し引き約5・2兆円の減税となっている。

 つまり7.5兆円から1兆円絞るぞということのようだが、そうでもない。最初から民主党党首の関連かなと思われるような大きな除外部分がある……いや、ここは普通に考えても削れないだろう。

石油化学製品の原材料となるナフサへの免税措置(3兆7890億円)については、プラスチックなど幅広い製品価格の上昇にはね返るため、すでに免税の継続方針を示している。

 ざっくりナフサ免税の3.8兆円は除外なので、残る3.7兆円から1兆円ひねり出すということになる。この比率だと、絞るのはちょっときっついはずだ。で、どこが狙われたかというと。

 例えば、住宅ローン減税(8240億円)は「最高控除額が大きすぎる」、企業の研究開発を後押しする試験研究費の特別控除(6510億円)も「どの程度の効果があるのか不明」などと指摘している。民主党は、減税適用者に明細報告を義務づける「租税特別措置透明化法案」を遅くとも10年の通常国会で成立させ、実態調査を急ぐ方針だ。11年度から廃止する方針を示している所得税の扶養控除、配偶者控除分と合わせ、2・7兆円分の財源を確保したい考えだ。

 ナフサへの減税を除いた以降の順序で見ると、住宅ローン減税(8240億円)、企業の研究開発を後押しする試験研究費の特別控除(6510億円)に続き、確定申告を要しない配当所得(3360億円)、中小企業投資促進の特別控除(2560億円)となっている。以降は200億円以下になる。
 目立ったところは住宅ローン減税なのだが、All About「2009年からの住宅ローン減税」(参照)を見ると、これが「大きすぎる」ということなのかなと、普通考え込むものがあるのではないか。同サイトの説明だと、「年収500万円の給与所得者で、夫と妻、子2人(内、1人が特定扶養親族)の場合」に、「1年の減税額は所得税・住民税合計で119,000円」とのこと。年間12万円くらいの減税効果。それが10年ほど続く。家を持ちたい庶民としては嬉しいが、これが削れるか。もっとも、このくらいの年収の場合は民主党案でもお目こぼしになるかもしれないが、それでも3000万円までの借入を狙っているのはどうだろう。。
 自民党というか麻生政権としてはけっこうな減税だったように見えるし、それなりの効果もすでにあったようだ。6日付けロイター「住友不の2010年3月期業績予想は据え置き、マンション販売は好調」(参照)を見ると、住宅ローン減税でマンションの売れが伸びていた。

 4─6月期の業績は、マンションの竣工戸数が前年同期比で減ったことなどから前年比で減収減益となった。しかし、マンション販売の契約戸数は1115戸と前年比で457戸増え、3年ぶりの高水準となった。
 会見で同社の竹村信昭・財務本部長は、地方と首都圏で比較すると首都圏が好調で、なかでも都心のタワーマンションの販売がいいと指摘した。住宅ローン減税の効果などもあり「月を追うごとに契約戸数が増えている」と述べた。

 これが民主党政権で、なくなる、というわけでもないだろうが、圧縮の筆頭になる。それと、これ、ターゲットが法人ではなくて、民間というか、これから家を持とうとする人たちへの直撃になる。民主党さんとしては、ローンを抱えて家を持とうなんていう人は今後減るだろうし、減らしてよいぞということかもしれない。ただ、目先の話としてみると、麻生政権の措置が生きている間に駆け込み需要が増えて、その分が民主党の利益に見えるかも。
 試験研究費の特別控除(6510億円)のほうは法人を狙っており、企業の研究部門をいじめることにならないかと懸念するが、おそらく企業が溜め込んだ資産を結果的に吐き出させるということではないかと思うが、どうだろうか。確定申告を要しない配当所得(3360億円)は、金持ちからふんだくりますよ、だろう。
 総じて租税特別措置見直しだが、都営住宅・県営住宅で暮らしています、という人にとっては増税感はないだろう。その意味で「格差是正」になる。が、成長戦略がなければ、再配分はようするにゼロサムゲームなので、富んだ人と目されるところからぶんどるのだが、富んだ人の基準がけっこう庶民になるかもという印象はある。年収500万円で3000万円くらいのマンション買いたいなという人は富んでいることなるだろうか。
 いずれにせよ、そういう再配分ゲームが政治だとも言えるし、国民はこの政治を選択することになるのだろう。オバマ大統領のお好きな孟子に「恒産なければ因って恒心なし」とお言葉があるが、チェンジとはまさに恒心を排することなり。

|

« 民主党の行政改革は、ようするに小泉改革じゃないのか | トップページ | 酒井法子覚醒剤取締法違反容疑、司法取引ならぬマスコミ制裁取引か »

「時事」カテゴリの記事

コメント

>なお、租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、現在の時限措置から恒久措置へと転換していきます。

(最近までの)半導体関連の特許みたいに、技術の中身の質をほとんど無視して、思いついた端から特許出願する、という種類の「研究開発」とはとてもいえた代物ではない「技術開発」の扱いはどうなのでしょう。

会計上、帳簿上数字がどう扱われているかではなく、やってることの中身をよく調べて減税措置、控除措置をとるべきなのでしょう。本来は。

知的財産権などについては、会計のコンセプトを変える必要があるのだろうと思います。いろいろ困難はあるけれど、不動産鑑定士があるのだから、知的財産権鑑定士の資格も設けるべきなのかもしれません。最初のころは、いろいろ問題が噴出するとは思われますが。成立した権利の経済的、税務財務上の意味を考えるプロフェッショナルを育てるには、現在の弁理士や弁理士会のあり方では、まず不可能であろうと思われます。

投稿: enneagram | 2009.08.08 06:58

うーむ。数字を追うと、概ねお説の通りの道をたどるのかなという感触はぬぐえません。実質の増税のターゲットはやぱり平均的な庶民の暮らしだというのはわかっています。ま、覚悟せいよ、ということですね。

最後の孟子のお言葉ですけど、「恒産なくして恒心あるは、ただ士のみよくすとなす」は論外ですかしらね。私は無理。国民の不満を軽くするどころか、恒心を排すことになりますね。分相応に満たされてこなかった結果が今の世の中だと思うのですがね。

ここを読み進めるうちにはっとしたのは、民主党に対して野党的な立場にでもなったような、ちょっと苛立ちというような気持ちが湧いてきて、自分の中に大きな抵抗感が存在しているようです。複雑です。この間「堪え性」という、よいお言葉をいただいたばかりですのに。

いっそのこと、「民主党政治ばんざーい」みたいに何も考えずに洗脳でもされて、とことん信じて疑わない世界などは楽だろうなぁとか思いました。そして、その束の間のお気楽を味わっているうちに、歳をとって抵抗するのが面倒臭くなるのかな、とも。
桑原桑原。

投稿: godmother | 2009.08.08 10:46

民主党代表は、鳩山由紀夫から、美濃部由紀夫(笑)と改名すべき?

私の最寄り駅の駅前は、駅から少し離れるともう、流通業やサービス業がひどく成り立ちにくくなるんだけれど、民主党政権になったら、この暮らしの面白くなさの問題もなんとかなるのかね?駅前にお好み焼き屋さんくらい何軒か成立してもよさそうなものだけれど。それさえ成り立たない。サイゼリヤがくると、サービス業はほかは根絶やしになるのかなあ。

投稿: enneagram | 2009.08.09 14:41

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/657/45864155

この記事へのトラックバック一覧です: 民主党の租税特別措置見直しはビミョー:

« 民主党の行政改革は、ようするに小泉改革じゃないのか | トップページ | 酒井法子覚醒剤取締法違反容疑、司法取引ならぬマスコミ制裁取引か »