この数日酒井法子覚醒剤取締法違反容疑関連の報道が続いた。NHKの7時のニュースですら大きく時間を割いていた。私は酒井容疑者がのりピーと呼ばれた時代から知ってはいるがさして関心を持つタレントでもなく、事件にもさして関心はなかった(よくある事件でしょ)。それでも今回の事件を見ていくとまるでドラマのような仕立てと展開でなるほど関心が寄せられるのもわからないではない。しかもこの事件については覚醒剤拡散が背景にあり、社会的な、象徴的な事件と言えないこともない。ブログが時代の記録なら言及する意味はあるかもしれないし、つらつらと思うに気になることもある。まさに、この事件報道が面白いという点の謎だ。
ざっと事件の経緯を自分なりに整理してみたい。事件の発端は、酒井容疑者(38)の夫高相容疑者(41)が、3日未明渋谷区路上にて、覚醒剤取締法違反容疑で警視庁渋谷署に現行犯逮捕されたことだが、逮捕前の2日夜11時前、高相容疑者に同署員が職務質問しているとき、酒井容疑者が高相容疑者に電話で呼ばれ現場に来ており、署員が酒井容疑者にも同行を求めたが拒絶した。
その後、高相容疑者のズボンから取り出した白い粉末が簡易鑑定で覚醒剤と判明する及び、参考人として事情を聞くべく酒井容疑者にも任意同行を求めたが、「あとで行きます。子供がいるから」と言い残し、そこにやってきた自動車に乗って立ち去り行方不明となった。10歳の長男の行方もわからず安否も話題にもなった。
酒井容疑者の携帯電話の電波が途絶えたのは4日、山梨県の身延山付近であったことから、その地理と関連した噂も流れた。5日長男は知人宅にいることがわかった。失踪時の3日に預けられていた(参照)。
酒井容疑者が行方不明になっている間、自宅からアルミ箔に包まれた覚醒剤0.008gと、酒井容疑者のDNA型に一致する唾液が付着した吸引用と見られるストローが押収され、覚せい剤取締法違反容疑で7日逮捕状が請求された。容疑者として報道されたのはこれ以降になる。
7日の夕方高相容疑者の弁護士が警視庁に酒井容疑者の出頭を連絡し、8日夜、酒井容疑者は親族らに伴われて出頭した(参照)。
酒井容疑者が容疑を認めた印象を深める報道もあるが、組織犯罪対策5課の玉村道雄課長の記者会見では、酒井容疑者は「容疑を認めたとは言い切れず、難しい捜査になる」と述べている。司法上は容疑を認めたことにはなっていないようだ。また認めたとしても、過去の類似のケース(小向美奈子、加勢大周、ジョン・健・ヌッツォ)などから考えて、有罪であっても執行猶予がつくだろう。
事件の経緯を顧みながら不可解だと思えるのは、まず酒井容疑者自宅から覚醒剤と大量の吸引用のストローの押収された時刻だ。東京新聞「酒井法子容疑者を逮捕 警視庁に出頭」(参照)では、「逮捕容疑は、三日午前十一時四十分ごろ、自宅で、アルミ箔(はく)に包まれた覚せい剤〇・〇〇八グラムを所持していた、とされる」とあるが、この時刻が自宅押収の時点を指すのか、逮捕状の形式上その時点に遡及できるということなのか。おそらく前者ではないだろうか。
今回の事件は劇場型報道事件と言ってよいと思うのだが、ドラマの山場の一つは、悪い夫を持つ清純派女優が夫の逮捕で動転し失踪したかに見えたが、彼女もまた同罪の容疑者であったと一転する7日の変化である。ところが、容疑の証拠と思われるブツは3日、失踪とほぼ同時点で見つかっているようだ。だとすると、警察は今回の事件の発端から酒井容疑者とわかっていて、メディア的には悲劇のヒロインの章を繰らせていたことになる。つまり、ドラマのシナリオを書いていたのは警察だということになる。
そうなのだろうか。あるいは逮捕状の請求までに時間がかったのだろうか。3日にガサ入れはしたものの、DNA鑑定を含めブツの確認ができたのは6日頃であったということだろうか。私にはこの時系列がよくわからないが、警察の演出のように思えてならない。ガサ入れ発表には意図的な遅れがあったように見える(というか3日の時点で別居の「悲劇のヒロイン」をガサ入れしたウラは何だったのだろうか)。他にも、高相容疑者逮捕時の当初のニュースには、酒井容疑者がそこから失踪したという話は入ってなかったが、その後含まれたように思える。報道的には、後から「そういえばあのとき」的エピソードがけっこう突っ込まれていたようだった。
悲劇のヒロインから黒い容疑者への転身することで、酒井容疑者も、失踪者から逃走者に変わるのだが、当初の失踪時に40万円をATMから降ろしたあたりで、動転した失踪でもなくまた1Q84の青豆さんほど組織的な逃走でもないあたりで、常識的には数日もすればカネが尽きて出てくるとも予想されていたわけだが(出てくる形態にはイヤな予想もあったが)、この時間稼ぎはすでに一部で言われているように、ヤク抜き期間だったのだろうか。
覚醒剤(シャブ)がその程度の日数で抜けると常用者に信じられているものか(誤解であれ)という基礎知識が私にはないのでわからないが、私の印象では、ヤク抜きではないかと思う。というのも、出頭が弁護士付きで、しかもその供述も弁護士リハーサルどおりといった印象を受けるからだ(参照)。
この事件の面白さはそのドラマ性であるとして、事件としての本質はなんだろうか。ブログらしいネタのエントリを書きたいわけではないが、私は、これは警察対酒井容疑者のインテリジェンス対決なのではないかと思う。
3日のガサ入れ時点で、逮捕状が取れるだけのブツは押収したといっても、0.008g、つまり8mgのシャブに対して、ストローを「吸引具」として大量に押収するあたりにソープオペラを見ているような滑稽さがある。私はビタミンCの補給にアスコルビン酸原末を1000mgほどジュースに入れて飲むことがあり、人に見られてシャブですかと笑われるが、それから推測するに8mgの白いお粉は耳かき一杯にもならないだろう。とはいえ、8mgのシャブが押収されたのは確かだろうし、酒井容疑者の供述もそれを前提に進められている。わからないのは、それで立件できるのだろうかという点だ。DNA鑑定といってもようするにストローに唾液がついていましたというだけの話だ。玉村課長会見にもそのあたりの操作の困難さや焦りが感じられる。
だんだん陰謀論みたくなってきたが、警察がドラマ仕立てにして世間の関心を盛り上げたのだとすると、ヤク抜き隠居中の酒井容疑者が出てこないことや事件を複雑にさせないことへの懲罰的な意味合いがあったのではないだろうか。さっさと出てくるなら、さらっと執行猶予付きで終わるぞ、出てこないともっともっと、お話を面白くしちゃうからね、と。マスコミ制裁取引。これに対して、酒井容疑者からすれば、いつかバックレる日のためにヤク抜き期間が取れれば、起訴には持ち込めねーよ、だろうか。いやさすがに起訴回避を冷静に見ていたとは思えないので、だとすると、瓶の蓋としての彼女の、別の物語の書き割りを見据えていたのかもしれない。
1Q84の第三部が待たれるように、ドラマスペシャル「清純派女優の足のタトゥーに隠された背徳~ワルの夫で目覚めた一族の本能~替え玉の女は身延の寺にこもっていた」の第二部「法廷でのインテリジェンスな争い~私はやっているけどやっていない~オッカムのカミソリ的冤罪の背後にある悪党の群れ」みたいのがあるのだろうか。ありそう。
補足
8月4日時点の報道では高相祐一容疑者逮捕時の酒井法子容疑者同行の話はない。
8月4日FNN報道「酒井法子さんの夫でプロサーファー・高相祐一容疑者、覚せい剤所持で現行犯逮捕」(参照)
歌手で女優の酒井法子さんの夫が、覚せい剤所持の現行犯で、警視庁に逮捕されていたことがわかった。
酒井法子さんの夫でプロサーファーの高相祐一容疑者は2日、東京・渋谷区で警察官に職務質問を受けた際、覚せい剤を隠し持っているのが見つかり、覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕された。(08/04 00:27)
8月4日日テレ報道「酒井法子さんの夫 覚せい剤所持で逮捕」(
参照)
< 2009年8月4日 4:40 >
警視庁は3日未明、覚せい剤を所持していたとして、女優・酒井法子さんの夫で、自称・プロサーファーの高相祐一容疑者(41)を覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕した。
警視庁によると、高相容疑者は2日深夜、東京・渋谷区の路上で職務質問を受けた際、微量の覚せい剤を隠し持っていた疑いが持たれている。調べに対し、高相容疑者は「自分で使うために持っていた」と容疑を認めているということで、警視庁は入手先などを追及する方針。
8月4日日刊スポーツ「酒井法子の夫を逮捕、覚せい剤所持容疑」(
参照)
タレント酒井法子(38)の夫でプロサーファー高相祐一容疑者(41)が3日、覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで警視庁渋谷署に現行犯逮捕された。同署によると、高相容疑者は2日夜、東京・渋谷区内で同署員に職務質問された際、覚せい剤を隠し持っているのが分かり、3日未明に現行犯逮捕された。
[2009年8月4日6時39分]
ガサ入れは8月4日報道では高相祐一容疑者のみの文脈で「自宅などを家宅捜索」とし、酒井容疑者宅は伏されている。なお、高相祐一容疑者の覚醒剤発覚はズボンの下というよりパンツ脱がしたようだ。さらに後の情報からこのパンツ降ろしに酒井容疑者は立ち会っていることがわかる。
8月4日共同「覚せい剤「使うため所持」 酒井法子さん夫、容疑認める」(
参照)
女優酒井法子さん(38)の夫で自称プロサーファー高相祐一容疑者(41)が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで警視庁渋谷署に逮捕された事件で、高相容疑者が「自分が使う目的で所持していた」と容疑を認めていることが4日、同署への取材で分かった。
渋谷署によると、3日未明に東京都渋谷区道玄坂の歩道を1人で歩いていた高相容疑者に署員が職務質問し、覚せい剤が入ったビニール袋を下着の内側に隠していたため、現行犯逮捕した。
同署は3日、自宅などを家宅捜索し、覚せい剤の入手経路などを調べている。
高相容疑者は98年に酒井さんと結婚した。
酒井容疑者の失踪も8月4日時点では高相容疑者の逮捕現場とは報道上はリンクされていない。
8月4日スポニチ「のりピー失踪!所属事務所沈痛「返事がない」」(
参照)
夫で自称プロサーファー高相祐一容疑者(41)が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで警視庁渋谷署に逮捕された事件で、女優の酒井法子(38)が3日以降、連絡が取れず行方不明になっていることが分かった。所属事務所のサンミュージック・相沢社長が記者会見で明らかにした。
サンミュージックが酒井容疑者と連絡が取れなくなったとしているのは、3日昼頃。別居酒井宅にガサ入れがあった時点だが、このことはこの時点では報道されていない。
8月4日毎日新聞「酒井法子さん:行方不明に 親族が警視庁に捜索願」(
参照)(2009年8月4日 20時7分)
酒井さんの夫の高相祐一容疑者(41)は3日未明、東京都渋谷区内の路上で覚せい剤を持っていたとして、覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕された。酒井さんの所属事務所のサンミュージックによると、3日昼ごろから連絡がとれなくなったという。
高相容疑者現行犯逮捕時に酒井容疑者が同行した話は5日になって登場する。
8月5日日テレ「酒井法子さんと長男、いまだに連絡取れず」(
参照)(2009年8月5日 12:52)
酒井さんの夫で自称プロサーファー・高相祐一容疑者(41)は2日深夜に東京・渋谷区の路上で覚せい剤を隠し持っていたとして、逮捕された。警視庁によると、覚せい剤が見つかった際、酒井さんは高相容疑者に電話で呼ばれ、現場に来たという。しかし、高相容疑者が連行される際、酒井さんは「子供を人に預けているので」と話し、現場を離れたということで、その直後から連絡が取れなくなっている。
高相容疑者現行犯逮捕時に酒井容疑者が同行情報は報道上は5日警察側から。
8月5日日テレ「行方不明の酒井法子…携帯の電波、山梨で途絶える」(
参照)
< 2009年8月5日 14:12 >
歌手で女優の酒井法子(38)に捜索願が出された問題で、酒井の携帯電話の電波が山梨県南部で4日午後に確認されていたことが、分かった。警視庁は酒井が山梨県内にいる可能性もあるとみて調べている。警視庁によると酒井は、夫で自称プロサーファーの高相祐一容疑者(41)が、覚せい剤取締法違反の疑いで3日未明に東京都渋谷区の路上で逮捕された際、同容疑者に電話で呼ばれ、現場に駆けつけたという。しかし、高相容疑者が連行される際、「子供を人に預けているので」と話して現場を離れ、その直後から連絡が取れなくなっている。現在は10歳の長男と一緒にいると見られているが、携帯電話の電源は切れた状態だという。
高相容疑者現行犯逮捕時に酒井容疑者が同行したという情報は5日以降「新たに判明」した。
8月6日産経新聞「酒井法子さん、なぜ山梨? 父事故死、親せきも」(
参照)(2009.8.6 07:36)
覚せい剤取締法違反(所持)容疑で夫が逮捕された後に消息不明となっている歌手で女優、酒井法子(38)が、山梨・身延山付近にいた可能性が5日、浮上した。4日夜に携帯電話の電波が同所で確認されたが、その後は再び途絶えた状態に。また3日未明に夫が現行犯逮捕された現場に、酒井も“居合わせていた”ことが新たに判明した。
警察側からは酒井容疑者の関連情報の詳細は6日でも封じれていた。
8月6日デイリースポーツ「渋谷署は“失踪”ノーコメント」(
参照)
警視庁渋谷署によると、高相容疑者は、取り調べに素直に応じているという。一部で高相容疑者が逮捕直前に職務質問された際、酒井が現場に駆けつけたと報じられたが、同署は「奥さんがどうこうというのは話す立場でない」と詳細を明かさなかった。酒井の“失踪”を高相容疑者が知っているかについても「ノーコメント」とした。
酒井容疑者に逮捕状が出た7日には別居自宅の捜査が「7日まで」とし3日であった報道はない。
8月7日共同「警視庁、酒井法子容疑者に逮捕状 自宅から覚せい剤、行方捜査」(
参照)
警視庁は7日までに、酒井容疑者の東京都港区の自宅を家宅捜索し、微量の覚せい剤を押収した。高相容疑者の供述なども踏まえ、酒井容疑者の逮捕状取得に踏み切った。
酒井容疑者の下着買いこみが情報となるのは逮捕状が出てから。
8月7日日テレ「酒井容疑者 不明初日に下着など買い込む」(
参照)
< 2009年8月7日 14:44 >
警視庁は7日、覚せい剤を所持していた疑いが強まったとして、3日から行方不明になっている女優・酒井法子容疑者(38)に対し、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕状を取った。酒井容疑者は3日早朝に都内にある量販店で、下着などを買い込んでいたことがわかった。
酒井容疑者が覚せい剤所持であったと認める高相容疑者の供述が公開されたのも、逮捕状が出た7日から。また、この供述は別居の酒井宅で覚醒剤が押収されたことに関連しているが、押収時点も供述時点も警察は公開していない。
8月7日共同「酒井容疑者の覚せい剤所持認める 現行犯逮捕の夫供述」(
参照)
2009年8月7日(金)19:23
覚せい剤取締法違反容疑で女優酒井法子容疑者(38)に逮捕状が出た事件で、夫の高相祐一容疑者(41)が、酒井容疑者の覚せい剤所持を認める供述をしていることが7日、警視庁への取材で分かった。覚せい剤が押収されたのも酒井容疑者が別居後に住んでいた自宅で、高相容疑者は普段、立ち寄っていなかった。警視庁はこうした状況から、見つかった覚せい剤が酒井容疑者のものと判断している。
7日になって高相容疑者現行犯逮捕時に酒井容疑者にも尿検査が求められていたことを警察は発表した。報道を見るとわかるが、警察は最初から酒井法子を容疑者と疑っていたようだ。
8月7日産経「【酒井法子逮捕状】切迫感?時間稼ぎ?失意一転…どこへ」(
参照)(2009.8.7 22:26)
警視庁によると、酒井容疑者は高相容疑者が職務質問を受けた直後に、電話で呼び出された。酒井容疑者はこの際、高相容疑者が隠し持っていた袋の中身について警察官に問われると、「下半身の薬だからみせられない」と説明。簡易検査で袋の中身が覚醒剤と判明すると、その場で泣き崩れたという。現場には高相容疑者が呼び出した「社長」と呼ばれる男性もいた。
警察官は、酒井容疑者の尿検査を求めたが、「絶対に嫌です」と拒否。さらに参考人聴取するため、「(路上から)場所を変えましょう」と渋谷署へ任意同行を求めたが、酒井容疑者は「子供を(知人に)預けているので、あとで行きます」と言い残し知人男性の車で立ち去った。
この後、酒井容疑者は高相容疑者の母親に電話し「どうしたらいいか分からない」と伝え、消息を絶った。
7日から警察の報道は拡大する。が、その割に、別居酒井容疑者のガサ入れ時点は曖昧。
8月8日産スポ「酒井法子容疑者逃亡、逮捕状にも出頭せず」(
参照)(2009.8.8 05:07)
容疑が濃厚となった根拠は2点ある。警視庁は千葉県内の高相容疑者の自宅とは別に、東京・南青山の酒井容疑者の自宅を家宅捜索し、微量の覚せい剤や吸引器具を押収した。同宅に高相容疑者はふだん立ち寄っておらず、押収物は酒井容疑者の所持品と判断。事件を機に不仲説が根強かった夫妻が、別居していたことが明らかになった。
高相容疑者は、酒井容疑者宅の覚せい剤について「自分のものではない」と供述し、「妻と一緒に使ったことがある」とも。別居中とはいえ、妻をよく知る夫の言葉は重い。警視庁は酒井容疑者にも薬物使用の疑いがないか高相容疑者の取り調べを進め、所持を認める供述を得た。
7日でも酒井容疑者のガサ入れ時点は公開されていないが、7日報道を見ていくと、高相容疑者現行犯逮捕の場所から遁走した酒井容疑者が自宅に戻り逃走しているまでの経緯を警察は押さえていたように見える。ガサ入れは、高相容疑者の供述とこの逃走行動によるものではないだろうか。なお、酒井容疑者のシャブの入手経路は高相容疑者のそれとは異なる含みがある。
8月7日日テレ「吸引器具の付着物、酒井法子容疑者のDNAと一致」(
参照)(2009年8月8日 12:47)
女優の酒井法子容疑者(38)に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕状が出た事件で、同容疑者の自宅マンションから押収した吸引器具の付着物を鑑定したところ、酒井容疑者のDNA型と一致したことが8日、明らかになった。酒井容疑者は、夫で自称プロサーファーの高相祐一容疑者(41)の住居とは別に、港区南青山にあるマンションの一室に居住。酒井容疑者はいったん同室に立ち寄った後、逃走したと見られる。その後、警視庁が同室を家宅捜索したところ、無造作に隠してあった微量の覚せい剤と吸引器具を見つけて押収。同庁が高相容疑者にただしたところ、「自分も部屋に出入りするが、この覚せい剤は自分のものではない」と説明しているという。
悲劇のヒロイン酒井法子さんが「酒井容疑者」に書き換えられた7日は、ヤク抜け時期として警察側の焦りが頂点に達した時期でもあった。
8月8日スポニチ「酒井法子容疑者:もうギリギリ “リミット”近づき捜査員に焦り」(
参照)
薬物使用は通常、尿検査で調べる。覚せい剤使用後、尿内で確認できる期間について、薬物事件に詳しい小森栄弁護士は「個人差はあるが48時間すなわち2日間で、摂取した覚せい剤の約80~90%は排せつされてしまう」と説明。1回の使用の場合、4日でほとんどが排せつされ、1週間から10日が経過すれば尿検査で陽性反応が出る可能性はほぼないという。
毛髪には2週間以上残るとされる。しかし、毛髪をまとめて採取するのには身体検査令状が必要で、それには尿検査で陽性反応が出なければ令状は請求しづらい。酒井容疑者の安否も含め、捜査員が焦る理由はここにもある。
また、小森氏によると、自宅から押収された覚せい剤0・03グラムは、だいたい1回分の使用量だという。
時系列で興味深いのは、こうした7日の警察報道のバーストと同時点で酒井容疑者の出頭交渉は並行して進んでいたことだ。9日の報道でこのことが明かされる。また、酒井容疑者宅ガサ入れが高相容疑者現行犯逮捕と同日3日であったことも、9日になって出てくる。
8月9日朝日新聞「酒井法子容疑者を逮捕 都内で出頭、覚せい剤所持の疑い」(
参照)
高相容疑者の弁護士が7日夕、警視庁に「酒井容疑者が出頭したいと言っている」と連絡。打ち合わせをした上で8日夜、親族らに伴われて出頭したという。
また。
組織犯罪対策5課と渋谷署によると、逮捕容疑は3日に東京都港区南青山2丁目の自宅マンションの部屋で、アルミはくに包まれた覚せい剤0.008グラムを隠し持っていたというもの。
8月11日になってようやく警察は最初から酒井容疑者に疑問を持っていたことを、警察自身から明らかにした。
8月11日時事「夫から覚せい剤入手か=職質時から薬物疑惑-知人女性に手紙も・酒井法子容疑者」(参照)(2009/08/11-05:29)
高相容疑者が3日、東京都渋谷区の路上で職務質問を受けた際、酒井容疑者が駆け付けたが、警察官は同容疑者のやせ方や言動から、薬物使用の疑念を持ったという。
不起訴を見越しての懲罰的な情報戦であった可能性は結果的にメディアからも認める声がある。
8月11日サンスポ「微量で立証困難…酒井容疑者“不起訴”?」(
参照)(2009年08月11日 07:49 )
今回は微量で、薬物事件を多く手掛ける小森栄弁護士は「通常なら起訴猶予になる」と指摘。検察幹部も「所持での起訴はハードルが高い。今回は微量なので鑑定してももほとんど残らず、公判で鑑定の適法性などを立証するのが困難になる」と慎重。警視庁の捜査幹部は「微量の事件は検事が起訴したがらない」と苦慮する。酒井容疑者は使用を認めているが、6日間行方不明だったこともあり、尿検査で覚せい剤反応は出なかった。
一方、検察出身のある弁護士は「芸能人の麻薬汚染がここまで深刻化している以上、捜査当局は今回の事件を一罰百戒の意味も込めて是が非でも起訴、有罪に持ち込みたいはず。組織犯罪対策5課が捜査の中心となっているのは、入手経路も含めて背後関係を徹底的に洗い出す意図がうかがえる」と話す。
また、別の法曹関係者は「使用についての立件は困難が伴うが、所持は本人も吸引まで認めており立件できるはず。警視庁も相手が有名人なので、社会的影響を考えて不起訴という事態は避けたいはず」との見方を示した。不起訴となったとしても、清純派として人気を集めてきた酒井容疑者にとっては、イメージが大きく損なわれたことは間違いない。
8月14日なって渋谷での初動時に酒井容疑者が逃走したらしいことが警察情報で出された。これまでこの事実を警察は隠蔽していた。
「酒井容疑者、運転男性に「早く行って」」(
参照)
酒井法子容疑者が逮捕された事件です。酒井容疑者が夫の逮捕現場から立ち去った際、待っていた車の運転手に「早く行って」などと指示していたことが警視庁への取材で新たに分かりました。
酒井法子容疑者は今月3日、夫の高相容疑者が東京・渋谷で逮捕された際、自分も所持品検査や任意同行を求められ、「あとで警察署に行きます」と話し、待っていた車に乗り込みました。
警視庁への取材で、その際「早く行って」などと運転席に乗っていた男性に、逃走を促すような指示をして行方が分からなくなったことが新たに分かりました。
8月12日時点で
背後に覚醒剤組織がありそうなので最大限に留保しなければならないが、この事件は基本的には執行猶予の芸能人覚醒剤使用でしかない。酒井容疑者が覚醒剤を使用したのは悪いし処罰はされなくてはならないが、警察がより対応すべきは彼女に覚醒剤をデリバーした組織のほうだ。しいて言うなら、酒井容疑者は組織のカモの被害者ポジションにあり、それをここまで悪玉に仕立てたのはなぜかということになる。そのことは警察もわかっていながら、今回は、酒井容疑者に焦点を当てすぎてしまったことには相応の理由があると考えざるを得ない。
すでに初動から警察は酒井容疑者を狙っていたことは明らかにしている。現場失踪の同日にガサ入れをやっていてたが、起訴できるだけのブツが挙げられず、小便から覚醒剤が抜ける時期が迫っていた。なんとか小便とその元の身柄をゲットしないとまずいという焦りが背後にあったことももう確かなところと見てよいだろう。
つまり、警察は酒井容疑者のガサ入れ前に遂行するはずだった小便の身柄押さえに失敗したことを隠しているのだろう。なお、ここは以上の流れからの推測になるが。
すでに報道されているように酒井容疑者の逃走ではいろいろな持ち出しがあったと見られている。普通に考えればブツの処分だろう。酒井容疑者の背後で逃走を助けるために手際よくスタッフが働いていたのも、酒井容疑者のブツからルートが割れるのを恐れたと見てよいだろう。警察としてはそれを処分させないように尽力したはずだが、なにかの理由で失敗したのだろう。これを仮定すると、今回の警察シナリオはほとんど解ける。
今後はこの状況で警察としてはなにがなんでも起訴に持ち込むしかない。8月12日デイリースポーツ「酒井法子容疑者 逃げ得ダメ!毛髪鑑定検討」(参照)
覚せい剤取締法違反(所持)容疑で女優の酒井法子容疑者(38)が逮捕された事件で、検察幹部や専門家から不起訴の可能性が指摘される中、警視庁が酒井容疑者の常習的な覚せい剤使用を裏づけるため、毛髪鑑定の準備を進めていることが11日、分かった。酒井容疑者の自宅から押収された覚せい剤があまりに微量すぎ、所持容疑での立件は困難とみられるが、容疑を「使用」や夫の高相祐一容疑者(41)との「共同所持」に切り替え、調べるもようだ。
小便は逃げおおせたが毛髪ではたぶん逃げられない。だが、所持容疑での立件はできない、だろう。では共同所持かというところで、実はこの事件の問題が浮かび上がる。8月12日スポニチ「ウソついてる?酒井容疑者 夫とは別の独自ルートも存在か」(
参照)
いつ頃から妻が常用し始めたかは分からない様子で、目安として、高相容疑者自身は「数年前から使っていた」と説明。「妻は1人でやっていると思った」とも話し、酒井容疑者が独自ルートから入手していたとの可能性も示唆した。
警察が狙いたいのは「酒井容疑者が独自ルート」のほうだが、「共同所持」立件だと、高相容疑者が主体になり、独自ルートが曖昧になる。
それでもなんとか立件するには、警察としても酒井容疑者の協力が必要になるし、酒井容疑者側も通常の芸能人覚醒剤使用の線で折れてくださいよという取引で応じているようすだ。
事実上の司法取引が始まっていると見ていい。ようするに独自ルートの蓋が成立するかというところで警察の苦戦がわからないでもない。警察を責めたいわけではないし、独自ルートはおそらくあるだろうからそこをなんとか解明していただきたい。常識的には、日本国内のシャブの大手ルートは予想が付くがなかなか公に言及しづらい。タブーはまだ深い。