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2009.07.15

オバマ外交の手旗信号:青上げて赤上げないで青下げる

 「アホでマヌケ」と言われた米国ブッシュ元大統領の外交に比べて、オバマ大統領の外交は「賢い」と言われる。そのやり方はこうだ。人立たせ、「進め」の青い旗を右手に持たせ、「止まれ」の赤い旗を左手に持たせて、こう呼びかける、「はい、青上げて、赤上げぇ……ないで、青下げる」 ちゃんとわかったかな。
 とりあえず話の発端は、5日米国オバマ大統領を支えるバイデン副大統領によるABCニュースでの発言に世界がぶったまげた(参照)。話題はイスラエルによるイランの空爆だ。


BIDEN: Look, Israel can determine for itself -- it's a sovereign nation -- what's in their interest and what they decide to do relative to Iran and anyone else.
バイデン:いいですか、イスラエルというのは主権国家ゆえに自国で何事でも国益に沿って事を決することができるのです。それが対イランであろうがどこの国であってもですね。

STEPHANOPOULOS: Whether we agree or not?
ステファンプーロス:米国は合意しているのですか?

BIDEN: Whether we agree or not. They're entitled to do that. Any sovereign nation is entitled to do that. But there is no pressure from any nation that's going to alter our behavior as to how to proceed.
バイデン:米国が合意するしないの問題ではないのです。イスラエルはできるということです。主権国家というのはそういうものです。しかも米国の対処行動を変更するよう他国から圧力はありません。

What we believe is in the national interest of the United States, which we, coincidentally, believe is also in the interest of Israel and the whole world. And so there are separate issues.
米国には自国の国益があるように、イスラエルやその他の国にも国益があると確信しています。そして国益の内容は別の問題です。

If the Netanyahu government decides to take a course of action different than the one being pursued now, that is their sovereign right to do that. That is not our choice.
もしネタニヤフ首相率いるイスラエル政府が、現状求められている政策とは異なる手段に訴えるとしても、主権国家なのだからそれができます。それは米国の選択の問題ではありません。

STEPHANOPOULOS: You say we can't dictate, but we can, if we choose to, deny over-flight rights here in Iraq. We can stand in the way of a military strike.
ステファンプーロス:つまり、指図はできないとしても、米国が選択するなら、イスラエルによるイラク空域通過は認めないということですね。空爆経路に米国は関われる。


 微妙な会話なのだが、反響が話を明瞭にした。バイデン副大統領はイスラエルによるイラン空爆に「進め」の青旗を揚げたがオバマは否定したということだ。時事「「イラン攻撃容認」説を否定=イスラエルの自制求める-米大統領」(参照)などからわかる。

ロシア訪問中のオバマ米大統領は7日、CNNテレビのインタビューで、イラン核問題に絡んで米国がイスラエルによるイラン攻撃を容認したとの説について、「絶対にそんなことはない」と明確に否定した。
 米国では、バイデン副大統領が5日のテレビ番組で「イスラエルは主権国家であり、イランやその他の国への対処を自ら決定できる」と発言したため、イラン攻撃に「青信号」を出したとの解釈が一部で広がっていた。

 当のCNN報道はニュアンスが違う。CNN「イスラエルによるイラン攻撃の容認ないと、オバマ大統領」(参照)より。

大統領の今回の発言は、バイデン米副大統領が5日、米ABCテレビとの会見で、「イスラエルは主権国家であり、イラン問題を含め自ら決定したことを遂行出来る」とイスラエルのイラン核施設への空爆も許されると受け止められる言動を受けたもの。オバマ氏は副大統領の発言について「あくまでも事実に言及したものであり、シグナルを送ったわけではない」と擁護した。

 つまり、バイデン副大統領が上げた青旗について、ボスのオバマ大統領はイスラエルによる空爆はダメだとの「止まれ」の赤旗は上げていない。下げろとも言ってないようにも見える。結局どうなの?
 報道の流れを見ていると、バイデン副大統領がフライングして、尻ぬぐいをオバマ大統領がしているようにも見えるが、ABCニュースのインタビューにもあるが、イスラエルのネタニヤフ首相は米国からの認可を得ている公言しているわけで、外交的には、オバマはイスラエルよるイラン空爆を認可していると見てもよさそうだ。
 そのあたりの苛立ちはニューヨークタイムズ「10 Weeks」(参照)からも感じられる。

President Obama told CNN that Washington has not given Israel a “green light” to attack. He needs to make sure the Israelis believe him

オバマ大統領はCNNで米国政府がイスラエルに空爆許可の青信号を与えていないと述べた。彼は、イスラエルの人々の信頼を勝ち得ているか確認する必要がある。


 つまり、オバマがその確認作業を対イスラエル政府で行うかどうかが、オバマの実質的な外交の内容を示すだろうということで、その後の流れからすると、その確認作業はないようなので、とすれば9月下旬にはイスラエルによるイラン空爆はオンスケジュールと国際的に見られる余地は残る。
 他方言い出しっぺのサルコジ大統領は真っ青になって、米国を牽制している。時事「イスラエルがイランを攻撃すれば大惨事に=仏大統領」(参照

フランスのサルコジ大統領(写真)は9日、訪問先のイタリア中部ラクイラで、イランの核開発の野心をくじくために、イスラエルが同国を攻撃すれば、大惨事となるのは確実だと警告した。

 ところで9月下旬というスケジュールでことが進むとすると日本はどうなるか。現状の趨勢からすると、民主党鳩山内閣の最初の外交の大仕事になる可能性がある。
 先のニューヨークタイムズでは、「10週後は遠い先のことではない。その間も、イランの核開発は進展する(Ten weeks is not a lot of time. And Iran’s program is moving ahead.)」としているが、国際原子力機関(IAEA)の、期待の天野之弥次期事務局長は、実績あるエルバラダイ現事務局長とは正反対に、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示している(参照)。鳩山内閣としては、IAEAの見解に沿ってイスラエルや米国に軍事行動は慎むよう、友愛の兜を掲げての奮迅が期待される。

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コメント

弁ちゃん、鳩山さんに電話して9月のことを耳打ちしてあげて!と思っちゃいます。
 
なんだか変な不安というか心配な気持ちになります。
イデオロギー的には、野党である民主党は老人福祉や国民の声的立場を取ってきた政党なので、外交に関してあまり考えてこなかった(考えなくてもよかった)ため、政権が交代すると一番不得意な部分です。この前のエントリーに触れていらっしゃいますね。
それが見事に9月のスタートとかち合うということですよね。

オバマさんの旗の話がここへ来るとは思いませんでしたが、凄い調べ方です。いつもながら天晴れです。

投稿: godmother | 2009.07.15 15:12


What we believe is in the national interest of the United States, which we, coincidentally, believe is also in the interest of Israel and the whole world. And so there are separate issues.
米国には自国の国益があるように、イスラエルやその他の国にも国益があると確信しています。そして国益の内容は別の問題です。
→ われわれが信じる方策は,米国の国益に適っていますし,同時に,イスラエル及び全世界の利益にも適っているものと信じます。ですから,複数の論点があるのです(イスラエルに何ができるかの問題と,何が米国やイスラエルの利益に適うかは別々の問題です。)。

投稿: firedup | 2009.07.16 00:20

 アホでマヌケの野ぐそさんの外交パターンは、「はい、青上げて、赤上げて、青下げ…ないで、赤下げない」

 馬鹿でネクラの弁当翁さんの外交パターンは、「はい、青上げないで、赤上げないで、青下げ…ないで、赤下げない」

 あんま変わらん。結果的にどっちも万歳アタックですやん的な。弁当翁さんは誰かが万歳したら様子を見てから万歳するから、ワンテンポ遅いですよね。

 拙速の全てが良いとは言いませんけど、拙速は巧遅に勝れり、ですよ。頑張れ金魚のフン、って感じ。

投稿: 野ぐそ | 2009.07.16 00:28

バイデン副大統領の言い分だと、日本が、韓国と中国と3カ国でFTAを締結するのも主権国家の勝手、日本が、カナダ産、アルゼンチン産、オーストラりア産小麦の輸入枠割り当てを完全撤廃して、外国産小麦輸入の完全自由化をするのも主権国家の勝手、ということになります。

そういう勝手なまねは、アメリカは、絶対に日本に許しません。

そういうことを考えると、日本も、イスラエルなみの対米ロビイ活動をすべきであるということになります。

それと、中国の外交官にたくさんのジャパン・スクール会員を養成することも大切です。

そういうことになってしまうと思います。

投稿: enneagram | 2009.07.16 08:47

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