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2009.07.13

2009年東京都都議選、雑感

 後出しじゃんけんのようになるが今回の都議選の結果は概ね想定の範囲だった。率直に言うと、実質的な争点もなく、それほど重要な選挙でもないようには思えて、あまり関心はなかった。が、都民の一人として一票の意味が重い選挙でもあり、昨日は早々に投票した。
 事前の関心事は、しいて言えば、自公で過半数が取れないという事態になるか、だった。微妙に僅差で取れないというあたりか、と見ていた。蓋を開けたところ、自公が61、野党が66なので、自分が思ったよりやや野党の伸びが目立った。
 概ね想定の範囲と言いながら、ここの読みは違ったかなというのは二点あった。一つは公明党の全勝だった。この手の選挙に強いというのは知っているが今回はガチな強さを見せつけられた形になって唸った。逆に言えば、自民はそれだけガチにはなれない弱さもあったということだが、では民主党がガチに進めていたかというとそれほどでもないだろう。自民が10席減らし、民主が20席増やしたのは、時代の空気の影響も大きいだろう。実際一都民としてみると、自公と民主の候補に政策的な差はほとんど感じられなかった。
 自民減10席が民主に移ったのかというと、民主はこれに上乗せの10席があり、共産など小勢力から奪った形になっている。共産党の言う「たしかな野党」は議論の外に出された感もあるが、この勢力が東京オリンピック反対など、むしろ争点を担っていた。自民党大敗と言われているが、民主の勝利分の半分の要因にすぎないので、それほどでもないという印象が強い。
 争点は明確ではなかった。少なくとも投票者の立場からすると、自公と民主の差は見つけづらい。しいて言えば、新銀行東京存続、築地移転見直し、オリンピック開催という三点になるのだろう。新銀行への追加融資400億円について民主は反対していたので、ここは石原都政としては方向転換が求められるだろう。が、この問題、方向を変えれば好転するということもない。実際のところ、どの選択でもあまりよい未来はなく、その意味では都民生活の展望に関わることとは言い難い。
 新銀行東京存続で自公がごり押しのように見えたのは、「融資先企業をつぶせない」というご事情があったからで、つまりその融資先が自公の利益地盤になっている。今回の選挙で自民が「大敗」したかに見えるが、この利益地盤の必死さの最低ラインは防衛されているようにも見えるし、民主党もその利益地盤に無関係ともいえず、ごりっと押すこともできないだろう。その意味でも、それなりに緩和な顛末になるだろう。
 築地移転見直しも民主は推進しているが、有害化学物質対策がイコール移転という強い政策を推すわけにもいかないだろう。オリンピック開催については、OICからダメが出てほっとするのではないだろうか。そう考えると都政の変化は乏しいし、自公都政への否定と捉える向きもあるが、石原都政にあまり変化はないのではないか。
 今回の都議会の勢力配置変化が政策決定の際にどう現れるか。あまり変化が想定できない。野党が優勢とはいえ、民主に対抗しているのも野党内の勢力なので野党協調ということは難しいだろう。国政の場合は社民・国民新が民主に取り込まれた形になっているが都政にはこれらは存在しない。とすると、実質都政は、自公に民主の大連立という形にならざるを得ない。そのあたりでいろいろ個別の利害で落とし所が決まるという、やはり緩和な行政となるだろう。
 投票率がアップしたとのことだが、個人的には若い人の層がどのくらいアップしたかが気になる。どこかに統計が出ているだろうか。私の印象では、普通の国家に相当する行政体である東京都の市民における本質的な利害の対立は、自営業的な自公支持、対、老後安定を願う郊外市民的な民主支持、ではないかと思う。世代間闘争のようなものが表面化し投票に反映したなら、若い人はどっちも嫌だということになり、ここまで民主党は伸びなかったのではないか。つまり、小党の票を奪った民主の伸びからは、若者の政治離れというか、じんわりまったりした挫折感が広がっているように感じられた。
 大手紙を含めマスメディアは、今回の結果で衆院選を占い、また総選挙時期の前倒しが叫ばれているようだ。都議選と国政選挙は関係ないかというと、県知事選のように一人を選ぶのではなく、多数を選ぶという点で党の指導性が問われるという点から、それなりの影響はあるだろう。党の指導性という点からしても、端的に言って、衆院選挙では自民党は大敗するだろう。
 衆院選挙のほうでは都議選より小選挙区制の部分があり、まさにこの時期に読まれるべき「バカヤロー経済学」(参照)の先生が指摘しているデュヴェルジェの法則が強く働き、二大政党化が進む。それゆえに小政党にキャスティング・ヴォートが握られることを予見して社民・国民新がすでに民主に巻き込まれているが、実際に政権を担えば、個別案件で民主党政権では合意は出せない。朝日新聞社説は「都議選終えて - 混沌の出口はただ一つ」(参照)と主張しているが、「出口」ではなく「入口」となるだろう。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

次の総選挙の話もひっくるめてすると、麻生太郎自民党総理総裁は、歴代の自民党総理総裁に比べて、決して見劣りする指導者とは思っていません。むしろ、いい方の部類かもしれないとさえ思っています。

でも、自民党という機構自体が制度疲労を起こしていて、時代に適合適応できなくなっていると思っています。鳩山前総務大臣更迭もその一つの症状の現れでしょう。

民主党が勝利するのではなく、自民党が(時代に)敗北するというだけのことです。

いずれ、本当に、この世の現実のあり方に対して責任を持つ綱領を掲げて政治行動を起こす人たちの集団が、最初は目立たなくても、遠からず誰の目にも明らかな形で現れるはずです。

世界中が本当に異質な時代に向かって突っ走っていくのはそれからだと思います。現在は、いろいろな試行錯誤の最中というところだと思われます。

投稿: enneagram | 2009.07.13 14:58

都民ではないので都議選には関心もなく、特にどのメディアも注目している「麻生下ろし」「政権交代」などの騒ぎも全く興味がなく・・・。前にもどこかでコメントしましたが、今の政党はどこがやっても結果は同じ、誰が総理をやっても同じで日本が変わる訳ではないです。と思っていますから期待などありません。
 ここで初めて、投票者の立場からとして都議選の争点(だった)を知ったというのは何て皮肉なんでしょう。選挙というのはこういう姿でなくてはいけません、と思います。そういう視点で見ようとしたら、ちゃんと争点があったのですね。
 東京発の政治・経済情勢は即地方都市に影響しますから、視点の当て方如何では地方だって都議選を見る必要性も出てくるのです。
 二党政治の長所を生かして民主党が上手くコントロールできれば正に「入口」ですね。ここが素直な気持ちで言えないのですが、でも、そう願うことですね。

投稿: godmother | 2009.07.13 15:25

 この道はいつか来た道、を。また征くだけですよ。「いつ」を知らないか知ってて黙ってる人にとっては、新鮮そうに映るだけのこと。

 日本の時代区分で言うところの室町中~末期と同じような状態が、ぶり返してるだけですから。その時代がどんなだったかをある程度予習復習しておくなら、まぁ近々5,6年くらい先までなら読めるんじゃないかと。
 世間様で10年先20年先100年先を見据えて…なんて言ってる人が居るなら、それは先ず胡散臭いと思って掛かった方がいいかもね。

 あと、いわゆる「仕掛け・勝負」なら、最初から100億単位じゃないと駄目かもって思いましたよ。国が主導して数千億~兆円単位のお金が動くのに群がる連中は、結果的に「自前ではそこまでの額を動かせてる訳ではない(だから、どうしても嘘ハッタリの類に頼らざるを得ない)」のもある程度分かってきたわけで。
 そういうの抜きで、100億単位からの勝負を仕掛けるのは誰かを見極めるなら。そこが突破口?になるのかな?って思いました。

 その勝負を仕掛ける連中が旧態然としているようなら、時代は変わらんと思います。単に、博打のレートが上がっただけ。

投稿: 野ぐそ | 2009.07.13 21:28

 ソースは失念しましたが、都議選は50代以上が投票率を伸ばし、若年層の伸びはほとんど無かったようですね。

>godmother さん

>今の政党はどこがやっても結果は同じ、誰が総理をやっても同じで日本が変わる訳ではないです。
 惰性に流され、政策をきちんと見比べていないから、そういう発言になるのでしょうね。

>二党政治の長所を生かして民主党が上手くコントロールできれば正に「入口」ですね。
 何の「入口」ですか? 管理人さんは、(民主党政権の成立は)混沌の…「入口」となるだろう、と指摘しているのです。

 「市場」は正直です。都議選での民主党の躍進を株価の暴落で歓迎しました。
 漸く曙光が見えたかに思われた日本経済も、二番・三番底に向けて転落を始めるのでしょうね。

投稿: frb | 2009.07.13 23:46

私は関西在住ですが、都議選の結果は気になっていました。なにしろ、民主党は関東では強そうな政党だったので、都議選が民主党支配の出発点だと思っていたからです。
そして結果は、・・・。
やはり民主党汚染は着実に進んでいるようです。

投稿: YUMEYUME | 2009.07.14 08:51

frbさん、私に言及されて質問されているので返信です。

finalventさんの仰る「混沌」はその通りの意味で読んでいます。

何の「入口」ですか?>は、国民が政権を選びやすくなるという長所です。それ以外にありません。ただ、比較しやすい状況をつくればの話です。

混沌の入口になるだろうというのは私もそう思っています。短所である政党を支える他の少数派の意見が反映され難いことや、死票の問題などが出てくるでしょうし。ですが、政権が変われば、それを受け止めてプラスの方向で考えていかざるをえません。

投稿: godmother | 2009.07.14 10:03

 残念なくらい、frbさんのご指摘で当たっているような気がしますよ。

 あと。こういうことをgodmotherさんに言うたらまた嫌われるんでしょうけど、「二党政治の長所を生かして上手くコントロールでき」るのは、自民党でも民主党でもなくgodmotherさんご自身であり、ご家族の皆さんの努力なのでは? その部分を人任せにしちゃ遺憾ですよ。

 自助努力が勝ち過ぎて疲弊するのも仕方ない(日本は往々にこの道を歩む)から、ある種の諦観を持つことも結構だと思いますけど、諦観が勝ち過ぎて「投げる」「すがる」ようになるくらいなら、じゃあ最初から何もするなとしか言いようが無い。

 そうでは無い、んですから。先行きも見えようものです。

投稿: 野ぐそ | 2009.07.14 11:19

そりゃ、中選挙区制を懐かしがる気持ちも分かるってもんですよね>公明党

小選挙区制度がどの程度この政党を締め上げる潜在力を持っているか、初めての実証実験になるのかな。

投稿: あ | 2009.07.14 12:13

野ぐそさん、こんにちは。

努力が足りないとあらば、確かに叩けばこほこりがはらはらと飛び散るような浅はかなな考えや思いに振りまわされ、奔走する毎日のようでもあります。

ご指摘の二党政治云々の下りですが(失礼な言い方でごめんね、語彙の程は勘弁ね)、文脈が読み取れません。「選ぶのは一国民である私」という基本の上で「コントロール」は、自分が託した政党の政治手腕のことを指しています。文章が足りなかったかと思う部分ですが。

私の感性と力量では伝えきれないのだと重く受け止めています。こちらは、多くの方が読まれるだろうことは承知ですが、finalventさんに対話的なスタンスでコメントをしています。それがもしや間違いの元なのか、よく分かりません。

私は野ぐそさんをはじめ、ここでコメントなさっている方もですが、嫌っていませんよ。むしろ親近感こそ感じています。この間、釣られて「まずい」と言われていた野ぐそさんのお米を頂きたいとさえ思ったくらいです。同じ釜の飯的な。

投稿: godmother | 2009.07.14 18:05

肝心なことを言いそびれました。

frbさん、野ぐそさん、私に言及して伝えようとしてくれているそのお気持ちは、嬉しいです。
ありがとう。

投稿: godmother | 2009.07.14 19:11

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