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2009.05.26

第二回北朝鮮核実験、雑感

 昨日、北朝鮮が2006年の核実験に続き、第二回目の核実験を行ったようだ。厳密には放射性物質の観測結果が出るまで確定はできないが、概ね事実と見てよいだろう。私は昨日に実施されるとは想定していなかったので驚いたが、まったく想定外のことではなかった。
 日時まではわからないものの、プラン通りに推進された結果だった。北朝鮮は先月29日の時点で、「核実験なども辞さない」と報道官声明を発表しており、先日のミサイル実験を律儀に実施したことも考慮すれば、今回も有言実行であったにすぎない。ゆえにこの時点の文脈に戻れば、北朝鮮の今回の核実験の意図は理解しやすく、ミサイル発射に対する国連安保理の議長声明への反発であったということになる。あの時点で国際社会が中国への配慮から強硬な制裁に躊躇を示すなか、なんとか日本が議長声明という形でまとめたことですら北朝鮮の意向に沿わなかった。日本もこの問題の蚊帳の外でもないということかもしれない。
 今回の実験は、日本の報道では単純に核実験とされているが、実際にはミサイル搭載用の核弾頭の実験であり、前回の実験が単に核保有国宣言だったこととは意味合いが異なる。加えて、先日のテポドンにおいてきちんと技術進歩を見せたように、今回の核弾頭実験もその破壊力から想定すると、前回より着実な進歩を見せている。
 日本が直面する危機という点から言えば、韓国とは異なり、来年にも日本が北朝鮮の核の影響下に置かれるということはない。もう数年はかかるだろう。だが今回の着実な進歩だけを見れば、その延長線の情景は想定しやすい。また小型化にはまだ成功していないという議論は、基本的に米国を射程に収めるテポドンの文脈であって、日本のほぼ全域を射程に収めるノドンに装着するサイズと見るなら少し早期に実現できる。
 今回の実験に利用されたのは、核弾頭として小型化しやすい、おそらく長崎原爆と同様のプルトニウム爆弾だが、現状北朝鮮が保持しているプルトニウムには限界があり、30キロから40キロ程度と見られる。二回の実験で虎の子を効果的に消費したが、残りは5発程度だろう。この量のままであれば、テポドンやノドンに装填可能化するまでの技術開発途中で効果的に消費するか、あるいはより短距離向けの核爆弾にするかだろう。北朝鮮としてはさらなるプルトニウムが欲しいところだが、従来のように日本からの実質的な支援が受けられるかは難しい。代わりにミサイル同様イランとの連携も想定されないではないが、現状ではイランにはプルトニウムはない。
 今回の実験が前回と異なる点には、前回のミサイル実験同様、世界に向けた広報の改善がある。前回は直前になって中国に伝えたようだが、今回は事前に、中国のみならず米国にも通知していたようだ。当然、韓国政府も日本政府もそれを知っていただろう。事後の各国政府の動向を見ていても沈着であり、北朝鮮の国際協調の改善と見てもよい。
 今後の動向だが、国際社会が中国に配慮したミサイル実験への議長声明ですら気にくわないということで、形式上北朝鮮が中国の顔に泥を塗ったことになる。中国としてもそれなりの対応が迫られるだろうが、この点もすでに中国では織り込み済みだろう。私の推測では、中国は今回も大した動きは見せないだろう。米国はオバマ政権の核廃絶スローガンに隠した冷戦軍備整理もあって、表面的には非難するだろうが、すでにワシントンポスト社説などの論調でも明らかだが、米国では近日に迫る、北朝鮮に捕らわれた米国人ジャーナリストの裁判が優先するだろう。存外にイランが同様の事件で見せたように、釈放というメッセージを米国に送るかもしれない。その芸当をやってのけたとしたら、外交力の点で北朝鮮は日本のかなう相手ではない。
 今回の実験では、金正日体制後の北朝鮮内部の抗争の表現ではないかという見方がある。後継王については大筋では、日本びいきとも見られる長男正男の他、後妻で在日朝鮮人高英姫夫人による次男正哲、三男正雲の三名が後継にノミネートされている。従来は、正男か正哲かという話題だったが、正哲氏を担ぐ李済剛が失脚したことから、正男か正雲かという話に移り、正雲が継ぐという情報がこのところ連発されている。
 キーになるのは従来正男派と見られていた金正日義弟張成沢だが、正雲でよいとしている可能性がある。だとすると、実際には中国・張成沢・金正男が実質の地歩を固めた上で、高英姫支持だった軍との妥協が成立していることになる。
 この推測が正しければ中国にとってはすでに北朝鮮は制御可能な状態にあるので、中国としては今回の事態も無問題だろう。そうであるかが今後注視点になる。その文脈のなかで今回の核実験を見なおすと、軍側のガス抜きということではないか。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

「中国にとってはすでに北朝鮮は制御可能な状態」

本当にそうだろうかと思います。金日成時代、北朝鮮は、中国とソ連と二股膏薬戦略を使っていました。いまになって、清朝時代にまでさかのぼる中国の朝貢国になるだろうか。

韓国を見れば、韓国は、「宗主国」のアメリカ合衆国の朝貢国になどなっていません。

日帝三十六年の植民地時代の前に、短いけれど、朝鮮国は、大韓帝国時代を経験しています。

いったん独立した民族が、また、元の宗主国の朝貢国に簡単に成り下がるか?

私は、中国と北朝鮮の間の緊張は、高まっていると思います。そう考えるほうが素直だと思います。ウクライナが核実験をするとして、ロシアにとって「無問題」な事態がありうると思われますか?

投稿: enneagram | 2009.05.26 12:43

今朝の読売新聞朝刊一面では、日本には今回の核実験は知らされていなかったとあります。

投稿: 閂 | 2009.05.26 15:53

「日本びいきの正男」といっても、その「日本人」って、誰なんでしょうね。
たしか、桜吹雪か唐獅子か知りませんが、背中にもんもん背負っているのでしょ?あの人。杯事交わしている親分達もいる、という噂もあるみたいですし、彼が隣国の昼間の親分になれば、日本も彼の兄弟が太陽の下で活躍する国にするように要求するのではないでしょう。
革命により日本やくざ共和国の成立。輸出商品は堅気の日本人の資産に臓器に労働力と。

投稿: kurukuruP | 2009.05.27 08:18

 途中経過がどうなるかは知りませんけど、取り敢えず弁当翁さんの言うように「中国としては今回の事態も無問題」でしょうね。なので、その線で対応してくることと思いますよ。


 あと、ですね。毎度お馴染みと言ってしまえばそれまでなんでしょうけど、太陽政策や宥和政策は相手によりけりですよ。ナチスもそうだし北朝鮮もそうだけど、最初寛大に接して後で問題発覚してからクレーム付けても、突っ走りだしたら聞きませんわ。クラッシュするまで止まりませんわ。

 何事に依らず、諸事そういうもんでしょ。明らかに良性(人畜無害)な零細個人のやることなら別ですが、特定集団化したり企業等組織化したりグローバル化する(している)集団にそういった温かい目(←笑)を向けると、大抵行く末どうしょうもなくなる。世界規模で見ても企業単位で見ても、悪性因子は絶対に良化しませんよ。
 言い方厳しいですけど、腐った蜜柑は早めに排除しないと周辺も腐るの好例です。>北朝鮮。

 ひろゆきや切込隊長等2ちゃんねる界隈の人やホリエモンなんかも同類ですけど、出初めに中途半端に頑張らせて、将来何やったよ? って話ですわ。碌なことしないし良化もしない。相も変わらず競合者?の誹謗中傷と自己弁護と身内同士の小競り合いばっかりでしょ。どうしょうもなくなったら誰かを道連れとか。我が儲かりゃそれでいいでしか動いてないんだから、そりゃ当然だっちゅう。チンピラはどこまで行っても結局チンピラ止まりって事が分かっただけです。日々リアルタイムで追跡してると凄そうに見えるけど、一歩も二歩も引いて5年10年20年のスパンで見たら、どう見てもどうしょうもないだけ。

 点描を 遠目で見たら 人物画
  悪どい笑顔が ほくそ笑んでる

 ってヤツですわ。

 そういう類の連中はエンガチョ切って二度と関わらないのが無難ですよ。問題起こしそうな時だけ警察さんに処置して貰えば十分ですわ。北朝鮮と一緒や。

 私は2009年からそういう類の連中に接する気は無いって明言してそのように処してますけど、世界の皆さんも、いい加減そのようにシフトした方が宜しいと思いますよ。遅れたら遅れただけ破滅が近付くんじゃないですかね? 今からでも良化するんですかね? 無理だと思いますがね。世の中が、そういう風には出来ておりませんからな。残念なことに。いや残念残念。

投稿: 野ぐそ | 2009.05.27 21:09

 韓国と日本には米国の基地が多数、東海には日米の艦船がうようよ。長年にわたってこの状況は変わらない。
 これに引き比べ、フィリピンやグアムの米軍基地、トンキン湾に米機動艦体、北の中国とも不仲であったにも拘らず,米軍や傀儡政権を追い出し南北統一を成し遂げた国、経済発展も成し遂げつつある。これは第一世代に成し遂げられたもの。
 かの国は第三世代への交代も迫っている、半島の開放統一がいまだに出来ていないことに焦りを感じて当然だ。しかし私としては、かの国にザップ将軍が現れないことを祈るばかり・・・。

投稿: gangaze | 2009.05.28 08:25

北朝鮮の行動には 一定のパターンが有ります。
交渉を始めるー要求受け入れと引き換えに援助を引き出すー自国の当然の権利と称して問題を起こすー国際社会が非難する事で自国の約束を反故にする 結果 北朝鮮は何も失う事無く 重油やテロ支援国家指定解除等の実利を獲得して来ました。
この事が10年近くもの間繰り返され とうとう核保有と言う事態にまで至ってしまいました。
日本政府が言う アメと鞭 この アメの部分だけ食い逃げされ続けたと言う事です。
今回の核実験 この後 国連の要求により 近いうちに新たな交渉が始まる事になるでしょう。
その時 北朝鮮には 核 と言う強力なカードが有るわけです。
これを放棄させる為に どのようなアメが与えられるのか その後表面だけのポーズで核廃棄のふりをした後 再度問題行動を起こし 国際社会の非難を理由に交渉を破棄し 核開発を続ける  多分この様になると考えられます。
北朝鮮にとって 6カ国協議を初めとする交渉の場は 物資や支援を得る為の「餌場」に過ぎないのです。
果たしてこの「餌場」にされている6カ国協議が 本来の機能を発揮できる日は来るのでしょうか。

投稿: 止まり木 | 2009.05.28 20:22

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